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掲載日:2025年11月21日

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自然再生・循環社会対策特別委員会視察報告

調査日

令和7年7月28日(月曜日)~ 29日(火曜日)

調査先

(1)積水メディカル株式会社岩手工場(八幡平市)

(2)株式会社花巻バイオマスエナジー(花巻市)

調査の概要

(1)積水メディカル株式会社岩手工場

(自然環境・生物多様性の保全に向けた取組について)

【調査目的】

■本県の課題

  • 本県の持続可能な発展のため、多様な主体が協働して、生物多様性の保全・回復に取り組み、ネイチャーポジティブ(経済)を推進することが課題である。

■視察先の概要と特色

  • 同工場は、十和田八幡平国立公園に隣接する地域に位置し、45万平方メートルに及ぶ敷地のうち、大部分を自然のまま保持している。敷地内には、951種の動植物が生育・生息しており、カモシカやヤマネなどレッドリストに該当する22種の希少種も確認されている。
  • 豊かな自然に囲まれており、環境に配慮した排水処理システムやCO2削減などを行い、周囲の自然環境との調和を図りながら高品質な医薬品を製造し、持続可能な生産活動を行っている。

【調査内容】

■聞き取り事項

  • 昭和48年に工場用地として取得したときは、林野の中に畑などの耕作地が点在し林野部を分断していたが、現在では、工場の建屋を取り囲むように自然林が形成され、動物たちが自由に活動できる場所になっている。
  • 現在に至るまで、従業員自らが、落葉広葉樹を継続的に植樹したり、トウホクサンショウウオやモリアオガエルの産卵場所としてビオトープを整備するなど、50年以上の歳月をかけて、自然環境を守っている。ビオトープでは、両生類、水生昆虫やヤゴなど野生生物も水場として利用している。
  • 同工場では、医薬品を製造する過程で、岩手名水20選にも選ばれた長者屋敷清水を1日約600トン使用している。製造排液は、嫌気処理・活性汚泥処理を行い、八幡平市の協定値より厳しい自主規制を設定して水質管理をし、生物観察池での観察を経て、河川に放流している。また、排水処理の過程で生じるメタンガスを、蒸気ボイラーの燃料として活用することで、燃料の約3割を削減している。
  • 同社では、「自然・社会資本のリターンに貢献」というビジョンを掲げて、温室効果ガス排出量削減に取り組み、現在購入電力の100%がCO2フリーとなっている。今後は、業容拡大に伴う電力使用量の更なる増加が見込まれることから、環境負荷が低いものを使うだけでなく、再エネ創出による環境貢献を推進していく。その中で、現在同工場では、従業員駐車場や工場敷地内に太陽光発電設備導入を進めており、計画では年間工場使用量の8~10%に相当する電力を創出する予定である。

■質疑応答

Q:ビオトープの管理は、具体的にどのようなことを行っているのか。

A:外来種の駆除を年間通して定期的に行っている。また、動物との共生では、距離を取る必要があり、人が通るための通路の整備として草刈りなどをしている。これらの取組は、安全環境課だけでなく、工場全員参加型で行っている。令和4年から整備を始めているが、トウホクサンショウウオなどの生き物が、徐々に根付き始めているのが目に見えて分かるようになってきた。

Q:この土地に工場を設立した理由と、自然との共生において苦労していることはあるか。

A:この土地を選んだ理由は、工業用水として使える水が豊富かつリーズナブルである点が大きかった。ここは、自然豊かな環境であるが故に、虫も多い。工場では医薬品を製造しているので、品質管理の面で、虫などの異物混入への対策には細心の注意を払っている。

                                                                                       積水メディカル株式会社岩手工場にて議員とスタッフの集合写真

                                                                                                          積水メディカル株式会社岩手工場にて

(2)株式会社花巻バイオマスエナジー

(再生可能エネルギーの活用と森林再生について)

【調査目的】

■本県の課題

  • カーボンニュートラルの実現のため、農山村地域から発生する多様なバイオマスの利活用を促進し、循環型社会の形成や農山村の活性化を図ることが課題である。

■視察先の概要と特色

  • 同社は、グループ企業の花巻バイオチップ株式会社、株式会社タケエイ林業とともに、保有する森林の植林、間伐、未利用材の調達から木質バイオマス発電用木材チップの製造・供給、発電まで一貫体制で取り組んでいる。
  • 同社の木質バイオマス発電施設は、平成29年2月から運転を開始した。岩手県産の間伐材と松くい虫被害木を主な燃料とし、化石燃料に依らない電気を生み出している。発電した電気は、花巻市内の全小中学校等に供給し、「電力の地産地消」を実現している。

【調査内容】

■聞き取り事項

  • 同社の発電事業スキームにおいて、木材調達では、丸太だけでなく、林地残材と呼ばれる、伐採地に未利用のまま放置された枝葉や「タンコロ」を集中的に集めて、チップ加工して発電に使用している。
  • さらに、令和4年から産業廃棄物中間処理業の許認可を取得して、これまで廃棄物となり燃料化できていなかった「木の根」や「剪定枝」も燃料化している。林地残材や木の根は、大雨や台風で流れて、河川を詰まらせ被害を大きくするので、これらの再資源化は防災にも寄与している。
  • 発電には岩手県産木材を100%使用し、発電された電気は市内の全小中学校のほか、岩手県立大学や工業団地にも供給している。木材を燃やした際に出る灰は、埋め立てせずにセメントとして再資源化している。また、発電で発生する熱を利用して、キクラゲを栽培して学校給食等に提供しており、同社発電事業スキームで外部に出ていくものは、水蒸気と二酸化炭素のみとなっている。
  • 令和3年に取得した社有林では、出材される丸太・枝葉・タンコロを余すことなく使用・販売し、また、地元森林組合と共同で森林経営計画を策定し、伐採跡地の再造林を行うことで、林業の再生・活性化にも貢献している。同社の事業により、年間約2万トンのCO2削減に加えて、発電所職員や木材運搬人員など約100名の新規雇用も創出されている。

■質疑応答

Q:発電事業の中で、現在苦労していることは何か。

A:木材調達に関しては、丸太が値上がりしたウッドショックがあり、材料費が約2倍になったことである。売電に関しては、材料費が上がる一方で、売電単価は上がっていない状況のため、林地残材などを使って発電燃費を下げる努力をしている。

Q:案の一つとして、地元の小中学校や工業団地などに木質ペレットを使った暖房を導入するなどして、木質ペレットへの事業展開はできるのか。

A:木質ペレットを作るのに、相当のエネルギーや費用がかかるため難しい。また、暖房の燃料として使う場合、燃焼灰の処理や六価クロムの問題がある。10年前に一度導入したが、今は灯油に戻るか、我々の電気を利用したエアコンを使用している状況である。

Q:植樹はどのように行っているのか。

A:「伐採した分はしっかり植える」という方針の下、これまで2年間、地元の大迫高校や花巻農業高校等と一緒に植樹に取り組んできている。また、少花粉杉を植樹している。

お問い合わせ

議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

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