警察危機管理防災委員会視察報告
調査日
令和7年8月20日(水曜日)
調査先
(1)日本電気株式会社(東京都港区)
(2)HOTEL R9 The Yard 野田(野田市)
調査の概要
(1)日本電気株式会社
(最新の交通安全及び防犯技術について)
【調査目的】
■本県の課題
- 県内の交通事故による死者数は依然として全国平均を上回っており、より一層の安全対策が必要である。また、闇バイトによる強盗被害も発生しており、防犯への取組も必要となっている。
■視察先の概要と特色
- AI映像解析による高度な見守り技術により、複数の街頭カメラ映像を集約することで、事故や急病人などの異常発生について判定することを可能としている。また、5Gと連携したスマート信号機などの技術についても、実証実験を行っていた。
- 同社の顔認証技術は約30年前から研究・開発されている。世界的にも高い評価を得ており、防犯はもちろん迷い人の探索などにも活用可能である。また、多角的な照合が可能な高速・高精度の3Dデータ技術などの最新技術の研究にも取り組んでいる。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 映像解析技術では、鞄サイズの機器により、リアルタイムで映像の解析が可能で、防犯カメラに頻繁に映り込む人物や置き去りにされた不審物を検知することで、街中の防犯に活用できる。
- また、「この交差点は左折が多い」、「ふだんは人が滞留しない場所に人混みができている」といった解析結果から、渋滞解消や事故防止にもつなげることができる。
- 複数の映像を同時に解析できる上、録画であれば倍速にすることも可能なため、人力よりも効率的に映像の確認が行える。
- 顔認証技術については、三次元顔貌形状計測装置で撮影することで、簡単かつ高速に3D顔データを生成できる。撮影のための操作はワンクリックで、生成までに1.2秒ほどの時間しかかからない。
- 当該技術は、例えば、防犯カメラによるリレー捜査への活用が考えられ、周辺の防犯カメラ映像から解析を行い、人物を特定することができる点が評価されている。
- 2D顔データでも映像と照合することは可能だが、防犯カメラは設置場所の関係上、多くが斜め上からの角度であるため、事前に3D顔データが撮影できていれば、向きを調整し重ね合わせることで、人物の同定の精度をより高めることができる。
■質疑応答
Q:写真のような既存の2D顔データから、3D顔データを生成することは可能か。
A:技術的には高い精度で2Dを3Dにするのは可能であるが、あくまでも推定となるため、推定のままでも運用できるような使い方を検討する必要がある。
Q:3D顔データの撮影には、撮影装置とパソコンがあれば足りるのか。
A:撮影するだけであれば、その二つがあれば完結するため、大規模な設備は必要ない。データを撮りためる場合は、別に保存できるストレージが必要となる。
Q:3D顔データは防犯以外に医療行為などにも活用できそうだが、ビジネス展開としてはどう考えているのか。
A:もともとは美容分野で活用することを期待しての研究・開発だったが、需要がそこまで高まらなかったため、防犯方面に舵を切って現在の装置を開発した経緯がある。

日本電気株式会社にて
(2)HOTEL R9 The Yard 野田
(災害時の避難所等について)
【調査目的】
■本県の課題
- 首都直下地震などの大規模災害時には、避難生活が長期化することが予想され、二次避難所や復興従事者・職員の宿泊先等の確保が必要となる。
■視察先の概要と特色
- 建築用コンテナを用いた1台1室のホテルを、これまで宿泊施設がなかった地域を中心に展開を進めている。災害時には、ホテルからコンテナ型の客室を出動させて避難所等として利用できるほか、既存ホテルを地域の災害拠点として利用することも可能である。
- 関東を中心に北海道を除く全国各地に109拠点4,071室(令和7年7月現在)を配備している。国土交通省関東地方整備局をはじめ、全国140を超える市町村などと災害協定を締結しており、県内でも川越市や川口市など16市町と協定を結んでいる。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 東日本大震災の復興作業者の寄宿舎としてコンテナを提供したのが、会社としてレスキューホテルを始めるきっかけとなった。
- 平時はホテルとして、1泊約6,200円から宿泊可能で、コンテナ内はビジネスホテルの標準装備としており、設置間隔を空けていることから隣の音も聞こえない。
- 被災地に出動した際には、客室をそのまま活用することも可能だが、ベッドを取り払ったり内装を変更することで、会議室や診察室といった使い方もできる。
- 出動準備は、コンテナからインフラ設備や客室階段の取り外しを行い、牽引車への接続やクレーンでの積込みを行うが、客室1台につき20分程度で完了する。
- 平時には、ホテルとして利用しつつ、有事には避難所等として災害支援に活用ができることから、ホテルとして初めてとなるフェーズフリー認証を受けている。
- 仮設住宅の代わりというよりも、それまでのつなぎの役割や復興作業に従事する方への宿泊先の選択肢の一つと考えるのが現実的である。
■質疑応答
Q:平時はホテルとして運営されているため、宿泊予約が何か月も先まで埋まっている場合には、有事の際にすぐに出動できないかと思うが、どう対応するのか。
A:平時は、車移動が必要な仕事に従事する方やゴルフ客からの需要があり、平均して約8割の稼働率だが、宿泊約款では、有事の際は新規の予約を停止し、予約客には個別にキャンセルや近隣店舗への移動を依頼することとなっている。
Q:出動の際にコンテナを牽引する車両は、会社で所有しているのか。
A:輸送会社と提携しており、有事の際はそこに輸送を依頼する。また、インフラ面についても電力会社などと提携しているため、出動体制は整備されている。
Q:出動後の被災地でのインフラについては、どう対応するのか。
A:ガスはプロパンガスを接続すればよいが、下水道が一番の問題となる。コンテナをインフラが整っている場所に設置するか、行政の許可が得られれば、臨時的に仮設管に接続することとなる。