警察危機管理防災委員会視察報告
調査日
令和7年5月28日(水曜日)~29日(木曜日)
調査先
(1)香川県警察本部(香川県高松市)
(2)徳島県立東部防災館おきのすインドアパーク(徳島県徳島市)
調査の概要
(1)香川県警察本部
(警察と民間企業等との連携について)
【調査目的】
■本県の課題
- 特殊詐欺やサイバー犯罪による被害は拡大しており、深刻な状況にある。巧妙化する犯罪に対して、どのように県民を守っていくのかが課題である。
■視察先の概要と特色
- 同県警察は安全で安心して暮らせる地域社会を実現するため、様々な民間企業等と連携した取組を進めており、包括的連携協定の締結や、地域の見守り活動から防犯イベントの開催、ドライブレコーダー捜査への協力など多岐にわたる取組を行っている。
- ソフトバンク株式会社とは、生成AIを活用した「SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺Bot」 を開発しており、令和6年7月には当該ツールを使用した全国初の詐欺防止イベントを開催している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 警察も少子化による人手不足が懸念され、また、今まで活動していたボランティアも高齢化等によりこれまでどおりの水準で活動することが難しい状況にある。こうした状況の中で、民間のCSR企業等と連携することで、持続可能な活動が実現できると考えている。
- 詐欺対策については、LINE上での警告や監視は個人情報の関係で行えないため、警告が目に入りづらい。また、SNS型の投資・ロマンス詐欺は高齢者だけではなく、比較的若い世代が被害に遭っており、幅広い層に対して注意喚起する必要がある。
- SNS型詐欺の入口はLINE以外が大半だが、誘導される先の9割以上がLINEとなっているため、被害に遭わないためにLINEでのやり取りを実際に体験することは重要である。
- 生成AIを使った詐欺の仮想体験会には30~40代の若い世代が多く参加しており、体験者の9割以上が意識変容につながったといった結果も出ている。
■質疑応答
Q:生成AIを活用した詐欺の仮想体験には、1回当たりどの程度の費用がかかるのか。
A:生成AIの利用料は、1回当たり税抜で3万円である。一人が代表して体験する様子をスクリーンに映すことで、一度に数十人が見学することも可能である。
Q:個人の携帯端末で、アプリ等を使用することにより体験することはできないのか。
A:生成AIを活用する場合は、名前や住所などの個人情報の取扱いが難しいため、研修用端末に入力いただく形で体験会を行っている。生成AIを活用しない体験であれば、個人端末で行うことも可能である。
Q:体験会にはどのような層が参加しているのか。
A:幅広い世代が参加している。LINEを活用していない高齢者もこどものために参加している。また、近々金融機関の支店長向けに実施することも検討している。
(2)徳島県立東部防災館おきのすインドアパーク
(災害時の通信手段の確保等について)
【調査目的】
■本県の課題
- 首都直下型地震などの大規模災害では、長期間の通信障がいや避難所生活の長期化のおそれがあり、災害時の通信手段の確保や避難所の環境改善が求められている。
■視察先の概要と特色
- 徳島県では、南海トラフ地震に対する取組を積極的に進めており、令和6年度に四国で初めて衛星通信サービスの「Starlink(スターリンク)」を導入し、災害時の通信確保に取り組んでいる。
- おきのすインドアパークは、令和5年に災害時の広域物資輸送拠点として機能することを目的に整備された。全天候型スポーツパークとカルチャー&イベントスペースも備えた複合施設であり、通常時は多くの世代に利用されている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 災害時と平時をリバーシブルに活用する施設である。施設内のテーブルやキッズパークには、主に物流に使用されるコンテナが使われており、災害時には解体し、物資を運ぶ際のコンテナとして活用できる。
- 海沿いの施設のため浸水・津波対策も行われており、施設内は地上から一段高く設計されている。この段差はカフェスペースとして使われているが、災害時には支援物資の搬入を行う空間としても活用可能である。また、施設内の仕切りには防潮扉も併せて設置されており、手動で開閉が可能である。
- Starlinkの使用には、アンテナと電源、Wi-Fiルーターがあれば利用することができる。通信衛星が多く配備されている北側の空に向けて設置し、この1台でスマートフォン128台がWi-Fiに接続可能であり、家庭で使用している通信環境と同程度である200Mbpsの速度が出る。
■質疑応答
Q:Starlinkの導入費用や維持費用はどの程度となるのか。
A:本体の導入時に係る費用はオプションを含めて40万円程度であるが、それに加えて、月々の使用料が7万円ほどかかる。
Q:今後は県全体で何機程度まで導入していく予定なのか。
A:県としては現在5機保有している。市町村については、今後の導入予定も含めて30機ほどを導入していく予定である。ただ、市町村が負担することとなる月々の使用料が課題である。
Q:南海トラフ地震の発生確率が引き上げられたが、その中でも特に何について備えているのか。
A:地震・津波対策はもちろんだが、避難所の環境向上、トイレの衛生管理、食料備蓄などは、県内だけで3日間は対応できるよう準備を進めている。

徳島県立東部防災館おきのすインドアパークにて