文教委員会視察報告
調査日
令和7年9月2日(火曜日)
調査先
(1)東京都立町田工科高等学校(町田市)
(2)東京都立田柄高等学校(東京都練馬区)
調査の概要
(1)東京都立町田工科高等学校
(魅力ある高校づくりについて)
【調査目的】
■本県の課題
- 社会の変化に対応できるよう、地域産業を支える実践的なキャリア・職業教育と、進学を見据えた高等教育機関等との連携強化による、高度な専門的知識・技術を習得した人材の育成が求められている。
■視察先の概要と特色
- 東京都は「Tokyo P-TECH」事業として、民間企業・専門学校と連携したデジタル人材の育成に取り組んでいる。P-TECHは、STEM、職業教育、技術教育に焦点を当て、企業が幅広く参加する教育モデルで、世界28か国で展開されている。
- 同校では、1学年は「総合情報科」を学び、2学年以降は「情報デザイン」「情報テクノロジー」「電気システム」「機械システム」の4系列から選択して学ぶ。
- また、日本工学院八王子専門学校、日本アイ・ビー・エム株式会社、シスコシステムズ合同会社、株式会社セールスフォース・ジャパンと連携しており、生徒は最新IT技術者によるメンタリング、課題研究支援、職場訪問等を通して、自身のキャリアを形成していく。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同事業は、これから始まるIT社会をリードしていくため、経営的な視点と技術的な視点を持つ人材を育成すること、変化の多い環境に置かれた若者にIT分野で新たな教育環境を提供することの二つの目的からスタートした。
- 日本では、茨城県、東京都、神奈川県及び長野県の4都県が実施している。
- 各学年、年間5、6回のプログラムを計画している。1学年では全生徒を対象に、2学年以降は「情報テクノロジー系列」の生徒を対象に実施している。
- 2学年以降は、生徒と企業メンター1対1のメンタリングセッションが中心となる。1社6名程度のメンターを依頼しており、生徒とメンターのマッチングを行う。また、2学年では企業訪問、3学年では課題研究支援も実施している。課題研究支援では、技術的な部分の指導のほか、プレゼンテーションに対する指導などを受ける。
■質疑応答
Q:メンターの選定基準はあるのか。また、メンターはどのような役割か。
A:各企業で社員ボランティアとして募集する形であり、選定基準は設けていない。役割としては、社会で通用する人材を育成するキャリア教育の観点から、メンタリングを通して、コミュニケーション力、コラボレーション力、分析的思考、リーダーシップ、責任感といった、生徒の社会人スキルを育成することも重要な役割と捉えている。
Q:同事業の予算はどうか。
A:東京都で同事業を実施している3校まとめての予算となるが、講師謝金の報償費と、企業と各学校との調整を行うなどの事業運営企業への委託料を予算計上している。また、設備については、工科高校に予算措置されている設備関係の予算で対応している。
Q:同事業の実施が、生徒募集に当たって良い影響を与えていると感じているのか。
A:同事業の生徒募集に与える影響に限って分析をしていないが、日本で初めて実施していること、企業と連携していることなどは、中学生や保護者への好印象につながっていると感じている。
(2)東京都立田柄高等学校
(外国人児童・生徒への日本語教育支援について)
【調査目的】
■本県の課題
- 在留外国人の増加に伴う外国人児童・生徒等の増加が予想される中、学校生活へ円滑に適応できるよう、日本語指導を行う教員の配置、実践的な教員研修の実施、日本語指導が必要な児童・生徒に対する教育支援の充実が求められている。
■視察先の概要と特色
- 同校では、在京外国人生徒等対象の入試を実施しており、令和6年度は新入生の約4割が日本語指導・支援を必要とする外国人生徒等であった。
- 日本語学習支援として、対象生徒には週2回、放課後に外部支援団体と連携した日本語指導を行っている。
- 日本語指導担当者会議を定期的に開催し、生徒の成長や課題を確認するなど、実態に応じた指導・支援を実施している。また、計画的な研修会の実施によって、教職員の理解促進、認識共有を図っている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 在京外国人生徒等対象入試のほか、一般入試でも外国につながる生徒が入学している。
- 入学後、日本語能力アセスメントテスト(J-CAT)を実施し、日本語指導が必要な生徒を把握し、校内組織「日本語指導委員会(日本語指導担当者会議)」にて対象生徒を決定する。
- 日本語指導は放課後週2回、日本語能力プレイスメントテスト(JLPT準拠)によって、1学年の対象生徒を4クラスのグレードに分けて実施している。2学年以降も、学校設定科目「日本語」や「やさしい日本語」による取り出し指導等を行っている。
- 多くの外国籍生徒が在籍する同校では、母語を使ったコミュニティの中で学校生活を送っている生徒は日本語習得に時間がかかるという課題、放課後日本語指導は生徒の学校内外の活動との調整が必要という課題が見えてきた。
- 東京都教育委員会から、令和6年度及び7年度の日本語指導推進校に指定されており、授業公開や研究協議会開催によって、小・中・高・大学での日本語指導に携わる教員のつながりや、視点を共有することができるなどの成果を感じている。
■質疑応答
Q:都立高校の外国籍生徒数は何人か。
A:都立高校に在籍する日本語指導が必要な外国籍生徒数については、令和6年度調査で754人である。
Q:教員の負担感や言語への対応はどういう状況なのか。
A:クラスに多くの外国籍の生徒がいる中で、「やさしい日本語」での指導などの配慮をしながら、コミュニケーションをとって授業をすることは、困りごとも多く苦労している。そのような中で、授業では1人1台端末の翻訳表示機能を活用したり、面談の対応等ではポケトーク端末を活用している。保護者との対応は、通訳を介した電話サービスを活用している。
Q:同校の外国籍生徒における国及び地域の内訳はどうか。
A:約50%がネパール、約25%が中国、残りの約25%がその他で、20の国及び地域とつながりを持つ生徒が在籍している。

東京都立田柄高等学校にて