県土都市整備委員会視察報告
調査日
令和7年5月28日(水曜日)~29日(木曜日)
調査先
(1)iti SETOUCHI・福山市中央公園(広島県福山市)
(2)国土交通省中国地方整備局岡山河川事務所(岡山県倉敷市)
調査の概要
(1)iti SETOUCHI・福山市中央公園
(民間投資による公共空間の整備について)
【調査目的】
■本県の課題
- 公園などの公共空間の整備においては、施設を適切に更新し、にぎわいを創出する空間の整備が必要であるため、民間の投資を誘導し、民間のアイデアを取り入れた整備が求められている。
■視察先の概要と特色
- iti SETOUCHIは、市が保有する元百貨店をリノベーションした複合施設である。施設内の半分以上をパブリックスペースとして整備し、「施設内に道路が走る屋内公園」のような開放的な空間とすることで、人々の流れを生み出している。
- 福山市中央公園は、Park-PFIが導入され、令和3年5月にリニューアルオープンした。ハード面の整備は最小限にとどめ、ソフト面の取組を重視している。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 同市では、駅前再生ビジョンを策定し、ウォーカブルな街づくりを推進すべく、駅前を四つのエリアに分割し、集中的にハード・ソフト両面の施策を行っている。
- iti SETOUCHIは、開業前から地域の人たちと一緒に「どうあるべきなのか」を考え、地域に必要とされるような施設を目指して整備した。様々なプロセスに市民が関わることを重視し、一緒に再生していくことに力点を置いた。また、実際にまちを見て感じ取った文脈を基に、公開空地の換地などの手法も用いながら、まちとの連続性を持たせた施設の整備を行なった。
- 同公園は「市民による市民のための公園」のコンセプトの下、最小の投資で使い方のリノベーションという視点を重視して整備を行なった。20年というPark-PFI事業の設定の中で、1事業者が運営をし続けることは難しいと考え、様々な団体が自主的に公園を活用できるようにする取組を行っている。
- 現在は、様々なイベントを実施することで、芝生の劣化など、公園の環境が悪化してしまうことがあると気付いたため、公園の中でエリアを分け、日常的なエリア価値の向上も考慮し、周辺環境と共存した公園の整備ができないかを検証している。
■質疑応答
Q:商業施設が商業に頼らない施設に生まれ変わるに当たり、住民を巻き込む際に、これまでの商業施設を求めているような人もいたかと思うが、反応はどうであったか。
A:現在でもそのような声はあるが、そういった人ほど一緒に施設を作る過程に関わってもらい、直接的に思いを伝える機会を設け、直接的な対立構造にならないよう、コミュニケーションを取る努力をしている。
Q:事業を続けていくための採算はどのように取っているのか。
A:同公園においては、公募対象公園施設のレストランの収入が主となっている。iti SETOUCHIは、駐車場とオフィス関係の収入が主となる。オフィス関係では、駅前で好立地ということから、サテライトとしての利用を希望する話が多くあり、当初計画からサイズを半分にして区画数を増やしたが、満室となった今でも多くの入居希望の話を頂いている。イベント関連も、施設内のスペースを利用してシンポジウムを企画開催してもらいたいといった依頼があり、ソフト事業などでも想定外の収入がある。

福山市中央公園にて
(2)国土交通省中国地方整備局岡山河川事務所
(流域治水対策について)
【調査目的】
■本県の課題
- 気候変動の顕在化及び都市化の進展等により、社会の水害に対する脆弱性が高まり、浸水被害の拡大が懸念されるため、「防災力」の強化とともに、「減災力」を高め、レジリエントな社会の実現を目指す必要がある。
■視察先の概要と特色
- 平成30年の集中豪雨により、高梁川水系小田川では、倉敷市真備町で堤防が決壊し、大規模な浸水被害が発生した。
- 浸水被害により明らかになった様々な課題に対して、国、岡山県、倉敷市の三者で「真備緊急治水プロジェクト」を策定し、ハード面、ソフト面で整備を進めた。
- 小田川合流点付替え工事については、当初の予定より5年前倒しで事業を完了させた。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 小田川合流点付替え工事は、令和6年11月の出水では、事業実施前に比べ、高梁川側で約0.8m、小田川側で約4.6mの水位低減効果があったと推定されている。これは合流河川の出発水位が下がったことと、新合流点にかけて勾配があるため流れやすくなったことが要因だと考えている。
- 埼玉県では、内陸県であるため徐々に水位が上がる傾向があり、治水対策では合流点に水門やポンプ場などの逆流防止設備を作り、強制排水を行うことが多いが、小田川の付替え事業においては、新合流点において、模型実験や水理解析により、そのような施設がなくとも問題ないことが検証された上で事業が実施された。
- 河川防災ステーションは、水防及び復旧資材を広域的に補う備蓄基地として、また河川管理施設の保全活動及び迅速な緊急復旧活動を実施するための拠点施設となっている。これにより、不足していた備蓄資材問題が解消し、アクセスの良さから迅速な対応が可能となった。なお、平時にはスポーツ公園やコミュニティの場として利用されている。
■質疑応答
Q:小田川付替え事業の工期が短くなった要因はどういったことからか。
A:南山の掘削について、工法の見直しを行なったためと聞いている。一段ずつ削っていかなければならないところ、掘削と法面保護を並行して行えるよう見直しをしたことで、期間が短縮された。
Q:既存農業用水路を活用した流域治水についての記載があるが、堰の改修が流域治水の下に進んだ、又はこれから進む予定のところはあるか。
A:岡山市が、農業用水路や市管轄の河川堤防の整備は継続的に行っている。しかし、農家の減少により、堰の改修は難しくなっていくため、その点は課題となる。