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掲載日:2025年9月17日

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福祉保健医療委員会視察報告

調査日

令和7年5月27日(火曜日)~28日(水曜日)

調査先

(1)北海道大学病院(北海道札幌市)

(2)北海道介護福祉学校(北海道栗山町)

調査の概要

(1)北海道大学病院

(医療AI人材の育成及び遠隔医療の取組について)

【調査目的】

■本県の課題

  • 高齢化に伴う医療需要の増加、医師の地域偏在、生産性向上などの課題を解決し、質の高い医療を提供するため、医療の高度化・専門化に対応できる人材の確保が課題である。

■視察先の概要と特色

  • 北海道大学病院では、「医療AI研究開発センター」として、様々なAI研究開発を全科横断的に実施できる環境を整備している。また、文部科学省に採択された人材育成プログラムに基づき、医療AI研究開発を主導できる人材を育成している。
  • 同院は、遠隔医療での触診を可能にする次世代医療システムを開発中である。令和5年には、同院と道内(函館、帯広)の地域中核病院、3拠点を5G高速回線で接続し、触診デバイスを用いた触覚を同院で再現する実証実験に成功している。

【調査内容】

■聞き取り事項

  • 北海道は、広域に過疎地域が点在し、大きな離島として医療連携的に閉ざされた環境にある。同院は、北海道を日本の縮図と捉え、全国のモデルケースとなるべく医療AIの研究・教育を北海道大学と一体で実施している。医学系、情報系、薬学系など、様々な分野の教授が集まる総合大学の特色を生かして、これまで個別に行ってきた研究・教育を一つに集約し、迅速かつ効率的な研究・教育を推進している。
  • 研究・教育体制としては、北海道大学において、主に医学院博士課程、医学部大学院4年生を対象として、画像診断などの座学の講義やハンズオンでプログラミングを修得。病院側では、医療AI研究開発センターを設置し、出口として、研究開発したものを社会実装していく体制となっている。
  • 遠隔医療においては、触診できないことが対面診療と比較し誤診のリスクを上昇させる懸念があり、保険適用の上でも課題である。今回開発した遠隔触診技術は、送信側の医師の触診情報(硬さなど)を数値化し、画像データに埋め込み、仮想空間にデータベースを作り、そこに受信側の医師がアクセスする仕組みとなっている。

■質疑応答

Q:医療AIの技術進歩により、将来的に医師が不要となることも考えられるが、どのように考えているのか。

A:黙って見ていればAIに置き換わってしまう。AIができないような、患者さんの感情をくみ取れる心のある医師、手術の技術が格段に高い実力のある医師の数は逆に増えていくと思われる。こういった教育が今後、医師を育てる上で非常に重要だと考えている。

Q:遠隔医療でも重要となる医療情報の連携について、どのような課題があるのか。

A:北海道でもカルテの共有は、画像もデータが重くなかなか進んでいかない。現在、北海道内で様々な病院が一つのクラウドに画像共有して、どこの病院でも一つのクラウドを見れば、その患者さんがどこの病院を受診しても情報を追えるような仕組みづくりを、正に今年度始めようとしている。

Q:開発された遠隔触診デバイスの今後の展開はどう考えているのか。

A:医師だけでなく患者さんが自分で触った感覚も伝達できる。例えば、ふだんは医者がいないようなスポーツや学校教育の現場で、アクシデントがあった際に、本人やトレーナーが触った感覚を伝達し、医者が指示を出すこともできると考えている。また、経験豊富な医師の手術の技術を定量化することで、若手医師の教育にも活用できると考えている。

(2)北海道介護福祉学校

(介護人材の育成・確保について)

【調査目的】

■本県の課題

  • 急速に進む高齢化等に対応し、安定した介護サービスを提供するためには、安定的な人材の育成・確保に向けた取組が重要な課題となる。

■視察先の概要と特色

  • 北海道介護福祉学校は、栗山町が設置する「介護福祉学科」のみの町立の専修学校(2年制専門課程)である。町が専門学校を設置運営する、全国でも珍しい形態となっている。
  • 令和4年度から、介護分野における中核を担う介護福祉人材を養成するため、新たな教育モデルとして、栗山高校、栗山町、産業界(介護事業所等)と連携し、独自の高専一貫教育プログラムを開発・展開している。

【調査内容】

■聞き取り事項

  • 同校の特徴的な教育としては、国家試験対策のほかに、「地域活動研究」、「キャリア形成支援講座」を行っている。「地域活動研究」では、例えば、障がい者支援施設や町内会・老人クラブなどに行き、地域に暮らす人々の生活実態に触れ、個別・地域特有の課題を知ることで、幅広い視点と次世代の専門職に求められる資質を持った介護福祉士の育成を行っている。「キャリア形成支援講座」は、介護福祉士の資格取得後のキャリアデザインをどう考えていくのか学習する時間となっている。
  • 地元の栗山高校と実施する高専一貫教育プログラムでは、協働でカリキュラムを構築し、高校生徒全員が3年間で105時間の設定科目「栗山と福祉」を履修する。座学だけでなく、徘徊模擬訓練や認知症VR体験を通じて、職業としての介護・福祉について理解を深めている。北海道介護福祉学校の学生も、高校生との合同授業を通じて、学ぶだけでなく指導的立場も経験することで、中核人材の育成につながる実践的な学びとなっている。
  • 北海道内の介護福祉養成学校は、定員充足率が4割~6割で推移し、募集停止や閉校する学校も増加している状況である。背景には、高齢者が身近にいない世帯の増加や職業認知機会の少なさなどが考えられる。学生確保を課題とする同校を軸に、介護人材確保を課題とする道内自治体と包括連携を拡大している(現在20市町村)。同校を中心とした栗山町側では、自治体推薦入学制度、学費優遇、講師派遣をした福祉教育・職員研修支援を行っている。連携自治体側では、学生募集、学費助成、地元小中高校での福祉教育・啓もう、介護職員研修を実施し、相互の課題解決に向けて取り組んでいる。

■質疑応答

Q:道や国に求める支援はどのようなものか。

A:経済的理由や距離的な環境の問題で、高卒無資格で就職せざるを得ないこどもたちへの就学支援を手厚くしていただきたい。また、人材不足は、市町村や事業所の努力すべき部分もあると思うが、都道府県レベルでも何らかの支援に動いてほしい。都道府県が動くことで市町村も動いてくれると思う。

Q:今後の介護人材確保について、どのようなイメージ・考えをお持ちか。

A:人手不足のため、事業所の運営のために人を集めることに精一杯で、そこでの長期的な人材育成というのは難しい面がある。そこで、事業所独自の努力部分と、例えば、地域、県、国などのいろいろな形の選択肢の中で、資格取得にとどまらず、資質向上や深い学びができるような研修・人材育成の仕組みが求められてくると思う。

北海道介護福祉学校にて議員とスタッフの集合写真

北海道介護福祉学校にて

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議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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