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掲載日:2023年5月23日

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環境農林委員会視察報告

期日

平成29年6月6日(火曜日)~8日(木曜日)

調査先

(1) 石川県農林総合研究センター農業試験場(金沢市)
(2) ヤンマーミュージアム及びヤンマー中央研究所(長浜市、米原市)
(3) 滋賀県立琵琶湖博物館(草津市)
(4) JT生命誌研究館(高槻市)

調査の概要

(1)石川県農林総合研究センター農業試験場

(コメ生産の低コスト化及び省力化について)

【調査目的】

石川県農林総合研究センターは、農林業に対する多様なニーズに対応するとともに、試験研究の効率化や試験研究機関相互の連携強化を図るため、農業・畜産・林業の各試験研究機関を平成24年4月に統合し発足した。
同センター所管の農業試験場では、イネの種子を直接水田に播種(はしゅ)し、育苗や移植の過程を省略することで、低コスト化・省力化が期待される水稲の直播栽培技術の研究開発、普及の取組を行っているほか、民間企業との連携により水稲生産の各工程においてのコスト削減の研究を行っている。
同試験場の取組を視察し、本県における稲作農業振興に係る施策の参考とする。

【調査内容】

石川県農林総合研究センターは、農業・畜産・林業の相互連携による効率的な技術開発や、分野横断的な課題への取組強化を目的に平成24年4月に発足した。同センター所管の農業試験場では、石川県の農産物や特産品の生産者を技術で支援するため、新品種の育成や担い手の経営を支える生産技術、付加価値を高める技術研究等を行っており、特に企業と連携して農業の生産性を高める技術の開発に力を入れている。
同センター農業試験場では、低コスト化・省力化が期待される水稲直播栽培技術等の研究開発、普及の取組を行っている。水稲直播栽培は、従来の苗を育てて移植する方法と異なり、イネの種子を直接水田にまく方法である。育苗作業が不要で、作業時間の短縮や労力の軽減が図れることから、同センターでは、規模拡大を志向する大規模農家、集落営農組織、農業法人を中心に導入を推進している。
具体的に研究開発を進めている、ブルドーザによる不耕起乾田V溝直播栽培技術は、秋から冬に耕起・代かきを行ってほ場を平らにし、春にV字型の溝をつけながら種をまくものである。石川県と(株)小松製作所は、共同でこの技術の研究を進めており、小松製作所がこの技術に適したブルドーザを開発している。ブルドーザは、トラクターに比べて耐用年数が倍程度長く、機械の買い替えが少なくて済むことがメリットであるという。小松製作所は、「日本のモノづくりのDNAは農業にある」とし、創業の地である同県と農業に関する包括連携協定を締結しており、直播栽培技術と同社が開発するICTを活用したブルドーザにより、稲作において労務費に次いで大きな負担となる、機械の導入・維持コストの大幅な低減ができるようになったという。
直播栽培技術以外にも、同センターでは、企業と連携した技術の研究を進めている。例えば、水稲の密苗移植栽培技術の研究は、石川県とヤンマー(株)や農業生産法人などが共同で行っており、育苗箱に通常の3倍の種子をまき、短い育苗期間で移植するものである。密集するため移植時の苗が小さいが、企業と開発した特殊な田植え機により、小さな苗でも移植が可能となった。慣行栽培よりも育苗箱当たりの苗が多いことから、ビニールハウスなどの資材費の削減や、労務費の削減が実現できているとのことである。また、井関農機(株)とは、可変施肥田植え機の研究開発を進めている。これは、田植え機にセンサーを取り付け、土壌の状態を診断しながら即座に状態に応じた施肥を行えるもので、肥料代の大幅な削減ができるという。
同センターでは、直播栽培技術を含め、これらの技術の更なる発展を進めるとともに、企業との連携を一層推進し、農業分野でのICT活用を後押ししていきたいとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質問が行われた。その中で、「水稲直播栽培における課題にはどのようなものがあるのか」との質問に対し、「耕起・代かきには用水が必要となるため、石川県内では用水が豊富な加賀地域では適しており、秋から冬の用水が少ない能登地域には適さないなど直播栽培は地域を選ぶ。地域を考慮しつつ普及を図るとともに、収量が多くなる品種改良などにも取り組んでいる」との回答があった。また、ほかにも、小規模ほ場における直播栽培の適用、開発した機械の価格、今後の研究の方向性などについて活発な質問が行われた。質問の後、同センター農業試験場を見学した。
今回視察先を調査できたことは、コメ生産支援に関する取組を推進する上で大変参考となるものであった。

石川県農林総合研究センター農業試験場にて

(2)ヤンマーミュージアム及びヤンマー中央研究所

(農業におけるICTの活用について)

【調査目的】

ヤンマー中央研究所は、ヤンマーグループの研究開発のコアセンターとして平成12年2月に開所した。同研究所のアグリ事業本部では、農業経営の効率化、省力化、低コスト化を図るため、ICTを活用した製品の研究や開発を行っている。その中でも、通信端末を搭載した農業機械から発信される稼働情報やコンディション情報を基に同社が農業経営のサポートを行う「スマートアシストサービス」は、特色のある事業である。
また、ヤンマーミュージアムでは、同社が歩んできた歴史や食料生産への取組などを、展示品を通じ紹介している。
同研究所及びミュージアムを視察することにより、本県におけるICT農業に係る施策についての参考とする。

【調査内容】

ヤンマー(株)は、明治45年の創業以来「燃料報国」を理念に掲げ、高効率化による省資源・省エネルギー化を常に追求し、数々の高性能ディーゼルエンジンなどを開発してきた。その高品質な商品群は、現在世界130カ国以上で活躍し、高い評価と信頼を得ている。
ヤンマー中央研究所は、ヤンマーグループの研究開発コアセンターとして昭和31年に大阪府に誕生し、幅広い事業領域に向けた技術構築に取り組んできた。その後、平成12年に同センターが滋賀県米原市に移転したことを機に、デザインなどのあらゆる面で環境との調和を重視し、ゼロエミッション、リサイクルの考えを随所に反映し、また、ICTを適用した最新設備を導入し、エネルギーとその応用に関する様々な研究開発を行ってきた。同研究所では、GPSとインターネットを利用して無人走行するロボットトラクターなどの先端技術の研究開発に取り組んでおり、実証実験を行っている。ロボットトラクターによる農作業の自動化は、農家の減少や高齢化、若者の就農率の低下といった課題を解消することが可能である。
また、同社では、同研究所が開発した、ICTを活用し精密なデータの収集ができるトラクター等の機械から発令される情報を基に農業経営をサポートする「スマートアシストサービス」を展開している。ICTを活用することで、例えば、ほ場ごとの収量データを収集し、色分けして表示することで収量比較の分析を可能にしたり、トラクターの作業別稼働時間や位置情報から、作業の効率化や工程改善、日報の自動作成などが可能になるとのことである。また、適量施肥で環境に優しく、低コスト化にも貢献できる。さらに、インターネットにより機械の稼働状況を把握することができ、早めのメンテナンスを促したり、故障時の迅速な対応が可能となっているとのことである。
ヤンマーミュージアムは、ヤンマーの創業者・山岡孫吉氏の生誕の地である滋賀県長浜市に開館したミュージアムである。同社の創業100周年を記念して設立されたもので、地域を活性化することや、次世代の人材育成を推進していくことを目的としている。平成25年のオープン以来、累計で40万人が来場する人気の施設となっている。
同ミュージアムは、本物のショベルカーの操作や、プレジャーボートの操船シュミレーターなどの体験型展示をはじめ、ワークショップや体験農園などで、チャレンジする楽しさや、感動と元気を感じてもらうことをコンセプトにしている。ディーゼルエンジンの仕組みとパワーを大迫力のCG映像で紹介する幅約13mの円形シアターや、往年の名エンジンを観覧できるギャラリーなどもある。食づくりとエネルギー変換の進化とともに、農業、まちづくり、漁業といった、暮らしに密接に関わってきた同社の技術を紹介している。また、屋上に配置されたビオトープでの観察会や、自然と触れ合う体験農園など、環境学習の場や、未来を担う子供たちが感動体験をする場としても活用されているとのことであった。
概要説明の後、委員から、ICTを活用した機械の耐用年数や維持コスト、完全無人トラクターの開発状況、公的機関との連携などについて活発な質問が行われた。
今回視察先を調査できたことは、農業におけるICTの活用について、本県における取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

ヤンマー中央研究所にて

(3)滋賀県立琵琶湖博物館

(自然環境の保全について)

【調査目的】

滋賀県立琵琶湖博物館は、湖と人間との共存関係を考えるための生涯学習施設として、平成8年に開館した。同博物館には32名の学芸員が在籍し、様々な分野での調査・研究を行い、その成果を紹介している。
同博物館では、琵琶湖周辺での土地改良や治水工事によって自然環境に与えた影響などを調査・研究しているほか、自然環境を復元するための取組なども行っている。また、自然再生や農業推進の取組として、琵琶湖沿岸の魚の産卵繁殖場としての機能を有する水田の環境を整備する「魚のゆりかご水田プロジェクト」を実施している。
同博物館を視察することにより、本県における環境保全に係る施策の参考とする。

【調査内容】

琵琶湖は、約400万年の歴史を持つ、世界でも有数の古い湖である。長い年月は世界中で琵琶湖にしかいない固有の生物を生み出し、ユニークな生態系を発達させた。人間が琵琶湖の周囲に住み始めたのは約2万年前とされている。その後に、人間は琵琶湖の自然と共存し、その恵みを受けながら今日まで独自の地域文化を発展させてきた。
滋賀県立琵琶湖博物館は、「『湖と人間』というテーマに沿って、未知の世界を研究し、成長・発展する博物館」を基本理念の一つとしており、湖と人間との共存関係を考えるための生涯学習施設として、平成8年に開館した。琵琶湖は、自然環境が豊かであるばかりでなく、人との関わりが深い湖であるため、同博物館は、研究調査機能を柱として、自然と人の両面から、琵琶湖とその他の湖沼についての知識・情報を集積し、それらが展示や交流活動に反映できるような博物館を目指している。また、同館のほかの基本理念としては、「魅力ある地域への入口として、フィールドへの誘いの場となる博物館」、「多くの人びとによる幅広い利活用と交流を大切にする博物館」を掲げており、人々の関心が自己の生活の場や地域に向かうきっかけとなる展示や、地域の人々が交流し、情報のやり取りをする場になる、地域密着型の博物館を目指しているとのことであった。
同博物館の常設展示には、琵琶湖がどのような変遷を経て現在の姿になったのかを時間を追って展示する「琵琶湖のおいたち」や、湖底遺跡や湖上交通、治水・利水への取組など人間との関わりの歴史を展示する「人と琵琶湖の歴史」、琵琶湖の環境や生態系を展示する「水族展示室」などがある。これらの展示を通じ、琵琶湖の価値を認識してもらうとともに、琵琶湖の環境を守っていこうという思いを高めるような工夫をしているということである。企画展示では、同館で行われている研究の成果を基に、オリジナル性を重視した展示を行っている。展示の紹介に当たっては、展示交流員が、親しみを持ってもらえるよう、来館者と積極的に交流を行っている。また、「ディスカバリー・ルーム」と名付けられた同館の導入部では、展示に触れ、来館者自らが展示に参加して新たな発見ができるような工夫を行っている。
また、同博物館で行っている研究活動の一つに、「魚のゆりかご水田プロジェクト」がある。このプロジェクトは、琵琶湖と田んぼの間を魚類が自由に行き来し、産卵場や稚魚の成育場として利用されていた「魚のゆりかご」といわれていた田んぼの復活を目指すものである。ほ場整備などにより「魚のゆりかご」を失ったニゴロブナなどの在来魚は、近年問題となっている外来魚の影響もあり数を減らしているが、琵琶湖から魚類が遡上できる排水路にすることにより、田んぼを昔ながらの姿にし、生態系の再生を目指しているとのことであった。
概要説明の後、委員からは活発な質問が行われた。その中で、「『魚のゆりかご』は稲作と共存できているのか。また、どのような効果があるのか」との質問に対し、「中干しのための水抜きを通常よりもゆっくり行い、魚が湖に戻りやすくするなど農家に協力いただき共存している。湖で生まれた稚魚は成長するまでに9割程度死んでしまうが、『魚のゆりかご』では5割程度生き残り、その後中干しなどで死んでしまう分もあるが多くが湖に戻っていく」との回答があった。また、ほかにも、農家の支援や外来種の駆除などについて活発な質問が行われた。質問の後、同館内を見学した。
今回視察先を調査できたことは、今後の本県における自然環境の保全に関する取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

(4)JT生命誌研究館

(環境教育の推進について)

【調査目的】

JT生命誌研究館は、日本の生命科学の先端を担う研究機関である。同時に、生命誌(Biohistory)という広大な視界と長大な時間スケールで、生態系など生き物の世界を、展示・雑誌・実験室公開・コンサートなどの様々な工夫により来館者に伝える博物館である。また、学芸員や研究員が在籍しているほか、大阪大学との連携により大学院生も在籍し、様々な研究に取り組んでいる。
生物学者としても著名な中村桂子館長の講演は、幅広い世代に定評があり、また、スタッフによる展示ガイドや音声ガイドも充実していることから、同研究館は環境教育を目的に各団体が利用する施設となっている。
同研究館を視察することにより、本県における環境教育に係る施策の参考とする。

【調査内容】

JT生命誌研究館は、大阪府高槻市にある生命科学に関連した展示と研究を行っている博物館である。平成5年に設立し、日本たばこ産業(株)(JT)によって運営される企業博物館である。学芸員だけでなく一線の研究者も常駐しており、各人がそれぞれの研究を行っている点が特徴的である。また、大阪大学と連携しており、大学院生も在籍して研究を行っている。
生命誌とは、人間も含め、様々な生き物たちの「生きている」様子を見つめ、そこから「どう生きるか」を探す新しい知である。地球上の生物は約38億年前の海に存在した細胞を祖先とし、時間をかけて進化し、多様化してきた仲間であり、全ての生きものがDNAとして、それぞれの体内に38億年の歴史を持っていると捉え、生命の歴史アーカイブであるDNAにある歴史物語を読み解くことから、生命・人間・自然を知り、それらを大切にする社会づくりにつなげていくというものである。同研究館では、生物の発生・進化・生態系などの「生きている」様子についての研究の論文発表に終わらず、「どう生きるか」を季刊誌や展示、ホームページなどで表現することで、生命を大切にする社会の創造に貢献していくことを活動の中心に置いている。
館内の展示は、階段の1段が約1億年を表し、壁面に掛けられた56枚のイラストを眺めながら登っていくと、自分自身の足で生命の歴史を実感できる「生命誌の階段」や、ピースを組み合わせて遊びながら学べる「あなたの中のDNA」などの、ユニークな展示があり、表現することに対して力を注いでいる。同研究館には、様々なテーマについての表現方法を考え具体化する専門の部門である表現セクターがあることが特徴である。また、「生命誌の階段」はパソコンやスマートフォンでも見ることができるなど、表現方法についても工夫がされている。さらに、中村桂子館長やスタッフ、大学院生が、展示物を見ながら生物について説明を行うガイドや、じっくりと楽しむための音声ガイドの無料貸出しを行っている。音声ガイドでは、表現セクタースタッフと中村桂子館長が、展示に込めた思いやそこにある物語を語り、幅広い世代から好評を得ており、同研究館は環境教育を目的に各団体が利用する施設となっているとのことである。
同研究館の研究セクターでは、外部の研究機関や他の科学、芸術、人文学など諸分野の専門家と協力し、助言を受けながら活動している。大阪大学と連携しており、若い人が育つ場でもある。また、中学生・高校生を対象とした「サマースクール」や、実験室を一般に公開する「生命誌オープンラボ」など、地域に開けた研究館となるよう、積極的に催しも開催している。
概要説明の後、同研究館内を見学した。
今回視察先を調査できたことは、今後の本県における環境教育に関する取組を推進する上で、大変参考となるものであった。

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議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

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