企画財政委員会視察報告
調査日
令和7年6月3日(火曜日)~4日(水曜日)
調査先
(1)ホテルカルティア太宰府(福岡県太宰府市)
(2)武雄市図書館・歴史資料館(佐賀県武雄市)
調査の概要
(1)ホテルカルティア太宰府
(地域活性化の取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 地域の成長力・競争力の強化を図るためには、民間のノウハウ・資金を活用したまちづくりを行い、地域の魅力を高めていく必要がある。
■視察先の概要と特色
- ホテルカルティア太宰府の改修を行なった西日本鉄道株式会社は、沿線自治体と包括連携協定を締結するなど、沿線活性化・魅力向上のために様々な取組を行っている。
- 同社は、太宰府市における持続的発展に向けたまちづくりに関し、2020年に同市と包括連携協定を締結した。
- 地元高校生と連携し「太宰府梅サイダー」を開発、製造販売を行うほか、地元金融機関等と株式会社太宰府Co-Creationを共同設立し、古民家を宿泊施設「ホテルカルティア太宰府」に改修するなど、様々な取組を行っている。
- 同ホテルは、宿泊者を対象にした地域の歴史や文化に触れられる体験プログラムを行うなど、滞在型の観光を促し、観光客は多いが、滞在時間が短いといった、同市の課題解決に寄与することが期待されている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 太宰府市の強みは、国内外から多数の観光客のかたに来ていただけることである。一方、観光の滞在時間が短く、梅ヶ枝餅を食べ歩きしてそのまま帰るなど、昼食、宿泊は福岡市や九州の別エリアに行くという通過型観光が課題である。
- 太宰府天満宮に車で来る方が非常に多く、コインパーキングが増加している。参道から1本中の道に入ると、結構な数の空き家がコインパーキングになってしまっていることも課題である。通過型観光とならないよう体験型観光を増やしていきたいということが古民家事業に至った経緯である。
- 分散型ホテルとし、太宰府の町全体をホテルに見立てて、夜の街歩きや、チェックインの際のお菓子ではなく、食べ歩きをしてもらう等、ホテルに籠るのではなく、街を楽しんでもらう形としている。地元コンテンツとの連携としては、宿泊者限定で、太宰府天満宮の本殿閉門後に神職による夜間参拝等を行っている。
■質疑応答
Q:弱みの中で景観の統一感がないという話があったが、開業してから、商工団体や飲食店と、どの程度関係を強めてまちがデザインされていったのか、実績を伺う。
A:建物がなくなり、駐車場があるだけの景観となってしまうところ、ホテルとして3棟残り、人の回遊性が生まれたことが実績ではないかと考えている。株式会社太宰府Co-Creationは観光協会に参加させていただいており、同市商工会とは西日本鉄道株式会社として梅サイダーを作っている。
Q:外国人と日本人の割合はどのくらいなのか。
A:公式なデータはだいぶ昔のものしかなく、感覚としては、国内が7割、1~3月の受験シーズンや年末年始はかなり日本人が来ている。
(2)武雄市図書館・歴史資料館
(指定管理者の取組について)
【調査目的】
■本県の課題
- 多様化する住民ニーズへの対応や公共サービスの質の向上、管理運営の効率化を図るためには、指定管理者制度の活用が効果的である。
■視察先の概要と特色
- 同館は、TSUTAYAなどを運営しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC)が指定管理者となり、これまでの公共図書館にはないサービス提供を実現している。
- 同館は“市民の生活をより豊かにする図書館”を作る「新・図書館構想」のもと、CCCを指定管理者として2013年4月にオープンした。
- 貸出し時のTカードの利用や、公共図書館内では初となるスターバックスコーヒーの出店など、多様な取組を行っている。
- 2017年からは、「より豊かな親子の育ち」を支援し、こどもを中心に親や多世代のかたがたが気軽に集い、遊び、学び、交流、リラックスできる施設をコンセプトに、同年、同館に併設する形で開館した「こども図書館」の運営も担っている。
【調査内容】
■聞き取り事項
- 指定管理者制度導入前の課題は、来館者数が伸びなかったことである。直営で運営していた頃は、休館日を年間34日まで削減したが、それでも来館者数は伸びなかった。また、講座も堅い内容のものだけで、企画力や提案力が弱かった。
- 大きな魅力は3点ある。1点目は、いつでも利用できる図書館として、365日朝9時から夜9時まで開館している。以前は、平日仕事をしている人の利用はまずなかった。
- 2点目は、居心地の良い図書館として、利用者のニーズに合わせていろいろな施設を用意している。例えば、雑誌を置いてほしいという要望に対し、館内に書店を併設し月刊誌に限って販売している。週刊誌や漫画は置かず、地元本屋と住み分けを図っている。書店の販売本は、雑誌も含め、館内の蔵書同様自由に閲覧可能である。また、カフェを併設し、館内に会話できるエリアを設けるなど、ニーズに応じスペースを分けている。
- 3点目は、体験できる図書館として、年間1,000回以上の講座を設けている。地元の企業や市民が講師となり、対象も高齢者からこどもたちまで満遍なく実施している。
■質疑応答
Q:かなり洗練された、役所的でない発想だが、当時、市役所側に耐性がなかったのではないか。役所と民間のアイデアを融合させるときの話合いの仕方、企画立案までのプロセス等で苦労した点は何か。
A:せっかく民間の力を借りるのに、いろいろ口を出してしまうと民間の良さがなくなるので、市はできないことのブレーキをかけ、できるだけCCCの行いたいようにという姿勢で対応していた。新しいもの好きという武雄市の市民性もあるかもしれない。
Q:人口の何倍もの来館者がいるが、どのような形で広報をしているのか。
A:市の広報誌には、必ずカラー刷りで図書館の行事を掲載しており、インスタグラムやフェイスブックへの投稿のほか、地元小中学校に行事予定を配布している。今年度は、LINEによるイベント情報の発信や図書館ホームページ以外からの蔵書検索・予約が可能となっている。

武雄市図書館・歴史資料館にて