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掲載日:2023年1月16日

水環境担当の紹介

 水環境担当の研究活動を紹介します。

 埼玉県は、県の面積の約3.9%を河川が占めており、その割合は都道府県の中で2位であることから、県民誰もが川に愛着を持ち、ふるさとを実感できる「川の国埼玉」を実現するための事業を展開していいます。河川環境については、かつて典型的な公害問題となっていた水質汚濁は大幅に改善され、全国と比較しても同等なレベルまで達しています。一方、平成24年度に見直し策定された「埼玉県環境基本計画」では、長期的な目標として「再生したみどりや川に彩られ、生物の多様性に富んだ自然共生社会づくり」が設定されました。

 このような背景を踏まえ、水環境担当では、行政の施策支援及び新たな水環境問題への対応を目標に調査・研究に取り組んでいます。

主要研究課題

1. 汚濁負荷低減策に必要な、発生源解明手法の開発と排水処理技術の高度化の検討

 BODで評価した県内河川の水質は、近年、大幅に改善しています。ついに、平成29年度には環境基準達成率100%を初めて記録しました。今後は、更なる水質改善対策により、アユが棲める水質の河川の割合の向上や全国水質ワースト5河川の脱却を図っていく必要があります。

 そこで、これらの課題に対応するために、排水処理技術の高度化、多様な汚濁発生源の特定手法の開発を進めています。

(1)PARAFAC-EEM法による水質モニタリングに関する基礎的研究

 急激な水環境の悪化を検知するためには、リアルタイム性の高い水質モニタリング手法を構築することが必要です。蛍光分析は、水中の重要有機物質を蛍光成分ピークとして、迅速かつ簡便に検出し、定量できる特徴を持ちます。生活排水など各負荷源に含まれる蛍光成分は特徴的であるため、蛍光成分は河川の汚濁のマーカーとして利用できます。本研究では、蛍光成分を最新の手法であるPARAFAC解析により分離定量し、成分の検出により汚濁を検知し、水質を評価し、さらに汚濁源の情報を得る新しい水質モニタリング手法の開発を進めています。

PARAFAC-EEM1

PARAFAC-EEM2

 

 

 

(2)県内河川におけるアナモックス反応による窒素除去ポテンシャルの調査

 窒素による水域汚染の防止は、健全な水環境保全のため必須な課題です。また、河川のBOD低減のためにはN-BODに寄与する窒素挙動の把握が必要です。近年、新しい窒素循環経路として、アナモックス(嫌気性アンモニア酸化;anaerobic ammonium oxidation)反応が発見されました。アナモックス反応を排水処理に応用すれば非常に低コストで運転できるため、既存の窒素除去方法のブレイクスルーとなる画期的な方法として期待されています。しかしながら、この反応は高水温条件下の排水処理系での検討が主であり、水環境中におけるアナモックス活性、さらには窒素代謝への寄与の把握は限定的です。そこで、本研究では、埼玉県内の河川の底泥試料を培養し、県内の水環境中におけるアナモックス活性を調査します。

アナモックス反応

2.汚濁負荷低減策に必要な、発生源解明手法の開発と排水処理技術の高度化の検討

 県内河川の水質は、以前に比べて大きく改善していますが、川自身の持つ水質浄化機能(自浄作用)も寄与しています。そして、水質が改善された県内河川では、水辺空間の親水利用が進められています。一方、これまで衛生指標の一つとして用いられてきた水質項目である大腸菌群数は、新たに大腸菌数へ変更される見通しとなっています。このため、県民が安心して親水利用できるように、河川における実態把握などの早急な対応が必要となっているところです。

 これらの課題に対応するために、河川が有する自然浄化作用の解明や大腸菌数の実態把握を実施しています。また、水質が改善され、生き物にもよい効果が得られることが予想されることから、河川の水生生物の生息状況を把握するため、新しい調査手法についても検討を行っています。

(1)埼玉県内の親水空間における大腸菌数の現状把握

 埼玉県内の湖沼、河川、公園、湧水地などの親水空間について水の中の大腸菌数を広域的に調べ、その安全性の確認を行っています。

 大腸菌数はこれまでの大腸菌群数に代わる衛生指標として、現在環境基準化が進められています。大腸菌は、人などを含む温血動物の腸内に多量に存在し、一部の腸管出血性大腸菌(O157など)を除き人には無害であり、ふん便汚染の影響を知るための指標として適しています。

 親水空間の大腸菌数を調べることで、病原微生物に感染するリスクを未然に防ぎ、安心して親水空間を利用して頂くことができます。

キャンプ場周辺の河川の写真

芦ヶ久保地域の河川の写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

埼玉県内の親水空間

 

大腸菌数の測定 (青いコロニーが大腸菌)の写真

 

 

 

 

 

 

    特定酵素基質培地による大腸菌数の測定

      (青いコロニーが大腸菌)

 

 

 

 

 

 

(2)県内河川の魚類生息密度推測法への環境DNA分析の適用の検討

 BODからみた河川水質は大きく改善されたものの、なかなか実感しにくいという声もあります。分かりやすいのは生息生物の情報ですが、生物多様性保全・改善のための情報も含めて不足しているのが現状です。また、魚類等生息環境の適正な評価には、生息実態の精確な把握が必要不可欠です。実捕獲調査は、多くの人員と時間を要する上、結果が調査者の技術練度に依存したり、希少生物の場合は生息環境を荒らしてしまう恐れがあります。一方で近年、環境DNA(eDNA)分析による魚類等の生息状況調査が注目されており、この手法の併用により、調査の効率化と精度の改善が期待されています。本研究では、魚類生息密度推測法へのeDNA分析の適用と実用化の検討を行います。

eDNA分析による特定種の調査対象の魚(コクチバス)の写真

eDNA分析方法の手順を表した図

 

 

 

 

 

 

 

 eDNA分析による特定種の調査法

 検討対象魚類の一例(コクチバス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行政支援業務

 県庁からの依頼による調査研究や試験検査、施策遂行に必要な研究を行っています。

(1)水質監視事業

 県内主要河川の環境基準達成状況を把握し、人の健康の保護と生活環境の保全を図ります。公共用水域水質測定計画に基づき、採水・分析等を実施しています。

環境基準地点(市野川徒歩橋)の写真

橋上からバケツを下ろして採水する様子の写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

環境基準点の様子(市野川徒歩橋)                                                          採水の様子

(2)工場・事業場水質規制事業

 工場・事業場規制の要となる水質分析の精度を確保するための事業を行っています。まず環境管理事務所が立ち入り検査時に採取した排水を分析し、分析委託先の報告値の精度を確認するクロスチェック分析を行っています。また、埼玉県内に事業所を持つ分析機関の分析精度の向上を図ることを目的として、同じ標準試料の分析結果を比較する水質分析精度管理調査を実施することにより、分析業務における改善点や注意点について検討しています。

 (1)クロスチェック分析(COD)           

クロスチェック分析中の写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (2)精度管理調査の結果報告(BOD)

精度管理調査結果報告研修会の様子の写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)川の国応援団支援事業

 埼玉県では、地域の川の再生活動のレベルアップを図るとともに、次代を担う川の守り人を育成するために「川の国埼玉検定」を実施しています。

 中・上級編では、河川の状況や生活排水対策等に関する比較的専門的な問題が出題されますが、問題の監修および事前講義を担当しています。

川の国埼玉検定の案内チラシの画像

(4)水質事故対策事業

 河川等における異常水質事故の汚染拡大防止のため、発生源及び原因物質の究明に向けて迅速な水質分析を行っています。

油流出事故により油膜が見える河川の様子の写真

異常水質事故によりへい死した魚たちの写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           油流出事故により油膜が見える河川                                                                   異常水質事故によりへい死した魚

 

(5)合併処理浄化槽短期集中転換によるふるさとの川復活事業

 単独処理浄化槽が多い県内の一地域で、合併処理浄化槽への転換やその適正な維持管理を促す新たな取組を展開し、「ふるさとの川」の復活を目指して地域ぐるみで河川等の水質改善、河川環境改善の機運を醸成します。当センターは、「主要研究課題」とリンクする形で、生息魚類調査への環境DNA分析の適用やPARAFAC-EEM法による河川水質特性の評価について検討しています。

eDNA分析による解析の流れを表した図

 eDNA分析による魚類相の網羅解析

国際協力

 海外における水環境問題を解決するための技術支援を行っています。

 ○ 中国山西省の持続的水環境保全に向けた環境学習

 文科省・科学研究費助成事業(JSPS科研費 JPSPS15H05126)の一環で、東北工業大学、山西省生態環境研究センターと協働で、同省太原市にある桃園小学校で環境教育を試みています。

 本事業の大きな成果として、本庄市立藤田小学校と桃園小学校との国際交流に発展しています。2018年5月、藤田小6年生の児童一人一人からの心のこもった手紙と同小の河川調査研究活動の資料を携え、訪中しました。桃園小にて交流セレモニーが開催され、こちらの想像を遙かに超える歓待をいただきました。桃園小からは校長、学年主任、クラス担任の各先生方と児童の皆さん、山西省生態環境研究センターからは国際交流や環境教育担当者、そして当センターの研究者がそれぞれ出席しました。校長先生のご挨拶などの後、当センターから、「プレゼン資料」を元に、この交流の経緯、本庄市や藤田小の概要、藤田小での河川・生物調査や保全活動の様子などについて説明しました。次いで、藤田小の皆さんからの手紙の代表的なものについて紹介し、手紙や記念品などを桃園小の児童の皆さんに贈呈しました。その後、桃園小の児童一人一人が丹精込めて用意した書、面、切り絵や藤田小あての手紙(その場で書いていただきました)などの記念品をお預かりしました。

 帰国後、藤田小の総合学習の時間をお借りして、桃園小での交流報告をしました。藤田小の6年生の皆さん始めご関係の皆さまに、素晴らしい交流であったことをお伝えしました。

太源市桃園小交流会の様子の写真

本庄市立藤田小学校で報告会を開いた様子の写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 太原市桃園小学校での交流セレモニーの様子

 

 

 

 

 

 

 

 

 本庄市立藤田小学校での報告会の様子

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究企画室

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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