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掲載日:2023年11月21日

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サーマル化工株式会社 (戸田市)

純水素ガスによる焼鈍(しょうどん)により、組織の配列を整えて金属の導電性を高めたり、還元作用で表面を綺麗にする企業

サーマル化工は、1967年に戸田市中町にて磁性材料の光輝焼鈍処理会社として創業し、1971年1月に得意先の増加に伴い工場設備拡張のため、現住所に工場を移転しました。
1986年に先代の石井文任社長(現石井社長の父親)の下、新体制がスタートしました。
その後、2001年に現社長の石井孝德氏が社長に就任しています。
純水素ガスによる焼鈍処理は聞きなれない言葉ですが、純水素ガスを使用した磁気焼鈍、光輝焼鈍、応力除去焼鈍の熱処理のことであり、雰囲気熱処理(ガス熱処理)による焼鈍(しょうどん)により、組織の配列を整えて導電性を高めたり、還元作用により金属の表面の錆をとり綺麗にしたりするものです。
サーマル化工では、金属熱処理の中でも特殊行程と呼ばれる焼鈍(しょうどん)と磁気焼鈍(じきしょうどん)に特化しており、取扱部品は、電気自動車のモーター部品、ウインカーのリレー・ブレーキランプなどの車載部品を数多く手掛けており、その他にも通信技術関連、航空宇宙部品、医療電子機器などを取り扱っています。
サーマル化工処理の専業事業者は、現在では、全国的に見ても十数社しかなく、ニッチな産業となっています。
大手メーカーでは自社工場内部でサーマル化工処理が行える設備を内包していますが、製造対象となる精密部品等の熱処理加工にしか対応できないため、自社でちょっとした研究開発を行いたいと考えても、炉の温度管理等の部分で小回りが利かず、試験研究などは外部に頼らざるを得ないのが実情です。
現在では、そういった研究開発に係る試験研究案件での仕事の発注が増え、大手鋼材メーカーなどの研究開発部門との取引も増えています。
サーマル化工が得意とする管理工程は、同一サイズの材質違い、雰囲気(ガス)による金属特性試験など、少量試験、一点ずつのロット識別となっています。

 

                                                                                                                                                           サーマル化工  本社・工場 

   

         

    

                                                                                                  工場内部の様子

 

今回の訪問に先立ち、「サーマル化工処理」のことをインターネットで検索している中で、YouTubeで会社の業務内容を説明している動画を見つけました。
その動画の中で、「工場は金属の温泉宿であり、温泉かけ流しの源泉が水素である。それが温まって、金属のストレスが取り除かれる。そうすると、部品になったとき金属の性能がぐんとアップする。」と説明されており、非常にわかりやすい説明だなと感じました。

【YouTube動画/彩の国  はたらく情報館  「サーマル化工株式会社」】

        https://youtu.be/uq_KdgjNgHk
 

ホームページの作りにもこだわっており、磁気焼鈍と水素還元について、目を引くつくりとなっており非常にわかりやすいものとなっています。
また、熱処理に関する疑問点などはオリジナルキャラクターがチャットで返信してくれます。
外部へのアピールを非常に上手に行っている印象を受けました。
企業訪問の際に、会社のリーフレットを提供いただきました。
その中でも「純水素ガスによる焼鈍処理」について詳しく説明されています。


【参考/会社案内リーフレット】

    会社リーフレット

 

今回のサーマル化工への訪問のきっかけの一つが、小規模事業者において策定実績が少ないBCP(事業継続計画)を2010年9月に策定している点です。
BCP※(事業継続計画)とは、企業が災害などの緊急事態に遭遇した場合において、損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続の方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
  ※BCP・・・Business Continuity Planの略。
BCP策定の経緯については、中小企業庁の『2019年  小規模企業白書』の中でも事例として取り上げられています。
石井社長は、2010年に偶然新聞でBCPの記事を目にし、小規模事業者の策定実績が非常に少ないことを知り、同社では水素炉を用いた熱処理に水素ガスなどを使用し、炉の内部が約1,000℃の高温に達する状況であるため、災害時に万が一のことが起きてはいけないという強い危機感を持ったそうです。
そこで、公益財団法人埼玉県産業振興公社のBCP策定のためのコンサルタント派遣制度を活用し、策定に向けての取組を開始し、同年中に完成させました。
細部まで作り込まれたサーマル化工のBCPは、大手企業でも参考にされているそうです。
BCPの策定は、小規模事業者にとって大きな課題となっています

 

【参考/『2019年版  小規模企業白書』の事例紹介】

    

                                                                                                                      中小企業庁ホームページ『2019年版 小規模企業白書』から引用

 

訪問のきっかけのもう一つが、国や県から様々な指定や認定を受けているという点です。
埼玉県から、2009年11月に「彩の国工場」の指定を受けています。
その後も、県から、2015年1月に「埼玉県ウーマノミクス事業 多様な働き方実践企業」の認定、2019年12月に「埼玉県多様な働き方実践企業」の認定、2021年5月に「彩の国公害防止取組推進事業所」の認定等、様々な指定や認定を受けています。
また、経済産業省からは、2020年1月に健康優良企業(STEP1、STEP2)の認定、2022年3月に健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)の認定を受けています。
今回の訪問で、石井社長から様々な話を聞く中で、これらの認定や指定は得ようと思って何かをしたわけではなく、実際にやっていることを見てみたら認定や指定が得られることが分かったので申請したとの発言があり、深く印象に残りました。


【参考/彩の国工場】
        https://www.pref.saitama.lg.jp/a0812/a14.html

                  指定書                          (埼玉県/彩の国工場のホームページ)

 

【参考/多様な働き方実践企業】

        https://www.pref.saitama.lg.jp/workstyle/diversity/about.html

                    会議室に掲示された盾                                 (埼玉県/多様な働き方実践企業認定制度とは?)

 

【参考/健康経営優良法人】

         https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html

               認定書                                  (経済産業省/健康経営優良法人認定制度)

 

直近では、令和5年7月18日に、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、とだ SDGs パートナーとなり、戸田市とともに取り組んでいくことを宣言しています。
具体的には、「目標3:すべての人に健康と福祉を」に関連して、医療電子機器部品を高性能、高技術で熱処理を行うことで健康と福祉に貢献すること及び社内で健康部を発足し、様々な活動にて健康促進に努めることを宣言しています。
また、「目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう」に関連して、研究開発、試作開発などに協力し産業と技術革新への貢献すること、「目標13:気候変動に具体的な対策を」に関連して、製品の開梱作業時のテープ、プラバンドなどを再利用できるように開梱し、ゴミ、CO2 削減につとめることなどが宣言されています。
工場内部を見学した際にも、作業場にはストーブが置かれており、商品を納品する使いまわしの段ボールのガムテープや送り状をストーブで温め、きれいに剥がしてお客様に綺麗な状態で出荷できるようにしている様子を見させていただきました。
また、ホームページにおいても「梱包」に対するこだわりが掲載されており、現場での作業風景を実際に見せていただくことにより、きめ細やかな気配りと顧客サービスが実践されていることを直に確認させていただきました。

 

        
                                 処理済み部品の梱包の様子                                                                                       梱包用テープの再利用の状況

【参考/とだSDGsパートナー】

        https://www.city.toda.saitama.jp/soshiki/214/keizai-sdgspartner.html
                 宣言証                         (戸田市/「とだSDGsパートナー」制度について)

 

   SDGs宣言書2    https://www.city.toda.saitama.jp/uploaded/attachment/62508.pdf

                 チラシ                         (戸田市/サーマル化工株式会社の宣言内容)

 

新規顧客の獲得のためにホームページ制作に力を入れたり、展示会において独自のオリジナルキャラクターを用いて自社のサービスをアピールしたりと創意工夫をする姿勢は、率直にすごいなと感じました。
また、社員の健康や幸せに重点を置き、年2回実施する健康診断のメニューを充実させることにより健康経営を追求したり、社員が長期間の休暇を取得できるようにすることで自己研鑽が図れるように環境を整えたり、社員の資格取得を会社として全面的に支援することで、社員一人一人の能力が存分に発揮できるように努める企業の姿勢を目の当たりにし、社員の皆様をうらやましく思いました。
ご対応いただきましたサーマル化工株式会社の石井代表取締役社長、ありがとうございました。

 

    
    「『DOYOUさいたま 2021.10 Vol.521』/埼玉中小企業家同好会会報」から引用

 

サーマル化工株式会社

お問い合わせ

企画財政部 南部地域振興センター  

郵便番号332-0035  埼玉県川口市西青木二丁目13番1号 埼玉県川口地方庁舎2階

ファックス:048-257-0529

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