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掲載日:2024年4月2日

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答申第75号 「平成14年4月分の情報提供者に対する捜査費の個別の執行に係る書類(県費)(狭山警察署)」外23件の不開示決定(平成18年1月31日)

答申第75号(諮問第78号)

答申

1 審査会の結論

埼玉県警察本部長(以下「実施機関」という。)が、平成16年2月16日付けで行った「平成14年4月分の情報提供者に対する捜査費の個別の執行に係る書類(県費)(狭山警察署)(ただし、開示請求された内容に係る分)外23件」(以下「本件文書」という。)を不開示決定とした判断は、妥当である。

2 審査請求及び審査の経緯

(1)審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成15年12月22日付けで埼玉県情報公開条例(以下「条例」という。)第7条の規定に基づき、実施機関に対し、「狭山署の所有する経理文書で、平成14年4月から平成15年3月までの情報提供者に対する報償費のわかる文書で報告書、精算書、領収書」の開示請求を行った。

(2)実施機関は、本件請求に対する公文書を本件文書と特定した上で、平成16年2月16日付けで、条例第10条第3号に該当するとして不開示決定し、請求人に通知した。

(3)請求人は、実施機関の上級庁である埼玉県公安委員会(以下「審査庁」という。)に対し、平成16年2月18日付けの審査請求書を提出したところ、平成16年2月27日付けで審査庁から補正を依頼され、同年3月1日付けで補正書を提出し、審査請求を行った。

(4)当審査会は、本件審査請求について平成16年5月19日付けで審査庁から条例第22条の規定に基づく諮問を受けた。

(5)当審査会は、本件審査に際し、審査庁から平成17年9月28日付けの「開示決定等理由説明書」(以下「説明書」という。)の提出を受けた。

(6)当審査会は、平成17年9月29日付けで請求人に説明書を送付し、反論書の提出を求めた。(請求人からの反論書の提出はない。)

(7)当審査会は、平成17年11月17日に実施機関から意見聴取を行った。

3 請求人の主張の要旨

請求人が、審査請求書において主張している内容は、おおむね次のとおりである。

(1)請求人は、「狭山署の所有する経理文書で、平成14年4月から平成15年3月までの情報提供者に対する報償費のわかる文書で報告書、精算書、領収書」の開示請求を求めたのに対し、実施機関は、不開示決定通知書の開示しない公文書の名称に「平成14年4月分の情報提供者に対する捜査費の個別の執行に係る書類(県費)(狭山警察署)(ただし、開示請求された内容に係る分)外23件」と特定し、何故に捜査費にすり替えることができるか明確な説明を求める。

(2)報償費の内訳を示す文書として、報告書、精算書、領収書の三種類について存否を明らかにすべきである。

(3)当該経理文書は、北海道警察で裏金として使用されている事が新聞紙上で明確であるので、警察の体面を維持する為にも公開すべきである。

4 実施機関の主張の要旨

実施機関が、主張している内容はおおむね次のとおりである。

(1)本件文書について

本件文書は、捜査費の個別の執行の過程において作成、取得されるものであり、これらには、

  • ア 捜査費の支払いをした捜査員の官職・氏名
  • イ 捜査費の支払年月日
  • ウ 捜査費の支払いの相手方及び支払金額
  • エ 捜査費の支払事由(捜査対象事件名、捜査目的、捜査活動場所等)等の個別執行情報が記録されている。

(2)条例第10条第3号該当性について

  1. 捜査中の事件に係る捜査費の個別執行情報は、捜査活動を費用面から表すものであり、一の執行に関する情報が即ち捜査に関する情報であるばかりでなく、これを事件単位にまとめれば、当該事件の捜査体制、捜査方針、捜査手法、捜査の進展状況といった捜査情報の把握を容易にする情報とみることができる。
    これらの情報が公になれば、当該事件の捜査の全容把握が可能となり、被疑者等事件関係者が逃走、証拠隠滅を図り、或いはこれを奇貨として更なる犯罪等を企てるおそれがあり、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあることは明らかである。
  2. 捜査中事件以外の事件に係る捜査費の個別執行情報は、当該事件捜査が終結していることから、これらを公にしても事件関係者による逃走、証拠隠滅のおそれはない。
    しかしながら、個別執行情報は、事件単位に捉えると当該事件ごとの捜査体制、捜査方針、捜査手法、捜査の進展状況等の把握を容易にする情報であることから、個別執行情報の収集により、警察が現実にどのような体制・方針をとり、どのように捜査を進めているのかといった分析が可能となる。
    このような個別執行情報に基づく捜査手法等の分析がどの程度可能であるかはケース・バイ・ケースであるが、当該事件について新聞・雑誌等から得られる情報のほか、事件関係者等から得られる各種情報との照合によって、分析精度が高まり、犯罪捜査に支障を及ぼすことになることは明白である。
    以上により、これらの情報を公にすることにより、警察の捜査手法等の分析が可能となり、ひいては、将来においてこれらの捜査手法等に応じた犯罪を敢行するなどの対抗措置が講じられるおそれがある。
  3. 本件文書に記録された情報のうち、情報提供者等に係るものについては、上記1、及び2が該当するほか、これらを公にするとことにより、情報提供者等が特定または推測され、これらの者が被疑者等の事件関係者から報復を受けるおそれがある。さらには、当該事由から以後の協力を得ることができなくなるおそれがあることから、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあることは明らかである。

(3)その他

犯罪が多様化し、複雑・巧妙化し、捜査が困難化している現状にあって、いかなる手段を利用しても、警察の手の内を探り、その裏をかこうとする犯罪者・犯罪者集団に対して、警察の厳正な対応が求められている。
長年の警察活動により培ってきた捜査手法や情報提供者との信頼関係等が揺るぐ事態は、県民の生命、身体、財産等の安全に対する直接の脅威と治安の著しい悪化を招き、県民に対して回復し難い不利益を課す結果となる。

5 審査会の判断

(1)本件文書の特定について

実施機関が本件文書を特定した点について検討する。

  1. 請求人は、情報提供者に対する報償費のわかる文書の開示を求めている。
    一方、実施機関が特定したのは、捜査費に関する公文書である。これは、犯罪捜査等の過程において、捜査員が捜査等の現場にて直ちに支出しなければ、目的を達せないという場合に、捜査員自ら支出をする経費であり、緊急を要し、若しくは、秘密を要するような捜査活動等に使う経費に関する文書である。具体的には、捜査協力者や情報提供者に対する現金謝礼等で、県の支出は、県費捜査報償費として、国の支出は、国費捜査費として区別されている。
    よって、請求人が求めた公文書と実施機関が特定した公文書は、情報提供者を対象として支出された同一のものである。そして、この県費捜査報償費は、県の歳出区分の報償費の中に含まれているものである。
  2. 請求人は、「本件情報は、北海道警察で裏金として使用されている事が新聞紙上で明確であるので、尚更、警察の体面を維持する為にも、公開すべきものであります。」と主張しているが、この内容は、犯罪捜査の協力者への謝礼や情報を入手するための活動費として支出した捜査報償費が問題となっているものである。
  3. 以上、1、2から判断すると、請求人が求める報償費は、情報提供者に対する捜査報償費(捜査費)と理解することができ、実施機関の文書特定に問題は認められない。
    よって、以下、本件文書を検討する。

(2)本件文書について

本件文書は、狭山警察署において、平成14年4月分から平成15年3月分の情報提供者に対する捜査費の個別の執行に係る書類(県費・国費)であり、具体的には、請求人が求める報告書、精算書、領収書に該当する「支払報告書」、「立替払報告書」「支払精算書」、「支払伝票」及び「領収書」が含まれた文書である。
なお、これらの文書には、次の個別執行情報が記載されている。

  1. 支払報告書
    発議年月日、捜査員の官職・氏名及び印影、支払年月日、支払場所、支払金額、支払先、特記事項、取扱者確認印の印影
  2. 立替払報告書
    発議年月日、捜査員の官職・氏名及び印影、立替金額、支払年月日、金額、債主名、支払事由、確認年月日、取扱者確認印の印影
  3. 支払精算書
    決裁欄(取扱者、補助者、出納簿登記)の印影、発議年月日、捜査員の官職・氏名及び印影、受領年月日、既受領額、支払額、支払年月日、支払事由、金額、差引過不足額、返納額の返納を受領した年月日、不足額を受領した年月日及び印影
  4. 支払伝票
    発議年月日、捜査員の官職・氏名及び印影、支払年月日、金額、支払先、支払事由
  5. 領収書
    領収額、領収年月日、債主の住所(所在地)・氏名及び印影

(3)捜査費について

捜査費は、経費の性質上、特に緊急を要し、正規の支出手続を経ては事務に支障を来し、又は秘密を要するため、通常の支出手続きを経ることができない場合に使用できる経費であり、現金で管理することが認められている。
また、その使途は、聞き込み、張込み、追尾等に際し必要となる交通費、飲食費、物品費などの犯罪の捜査等に従事する職員の活動のための経費及び捜査等に関する情報提供者等との接触や謝礼に要する経費であり、その執行手続の概要は、次のとおりである。

  1. 取扱者(警察本部においては担当課長、警察署においては警察署長)が、継続中の捜査の進展状況や今後予想される事案等を踏まえて、翌月の所要額を取扱責任者である警察本部長に申請する。
  2. 取扱責任者である警察本部長は、県内の犯罪情勢等を総合的に勘案して交付額を決定し、各取扱者に交付する。
  3. その後、取扱者は、捜査費の執行の必要が生じた場合に、捜査員に対し捜査費を交付し、捜査員は債主(情報提供者等)に対して所要の支払をした後、取扱者に支払精算書、領収書等を提出して精算を行う。

(4)条例第10条第3号(公共の安全等に関する情報)該当性について

実施機関は、本件文書に記載されている情報は、条例第10条第3号で規定する不開示情報に該当する旨主張しているので、まず、この点について検討する。

  1. 条例第10条第3号は、「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」を不開示情報とし、これらの情報が記載されている公文書については、公文書開示原則の例外とする旨を規定している。
    本号の趣旨は、地方公共団体の責務として、社会生活の基盤となる公共の安全と秩序を維持し、県民全体の利益を擁護するという観点から、公文書の開示による犯罪の誘発その他の社会的障害の発生を防止することにある。
    本号に該当する情報については、その性質上、開示又は不開示の判断に犯罪等に関する将来予測としての専門的・技術的判断を要することなどの特殊性が認められることから、実施機関の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つものとして許容される限度内のものであるか否か、すなわち相当な理由があるか否かについて審理・判断するのが適当であるとしたものである。
    なお、当該判断については、実施機関の裁量を無制限に認めるものではなく、合理性を持つものとして許容される限度内のものでなければならないのは当然である。
  2. 本件文書は、狭山警察署において、捜査費の個別の執行過程において作成・取得されたものであり、特定の捜査費の支払等をした捜査員の氏名、支払年月日、支払の相手方、支払金額、支払事由など、5の(2)で述べた情報が記載されている。
  3. 実施機関は、これらの情報は、事件ごとの捜査体制、捜査方針、捜査手法、捜査の進展状況等の各種捜査情報を反映していると主張しているが、実施機関が、当審査会における意見陳述の際に、具体的事件を引き合いに当該事件の捜査活動の進展状況と捜査費の執行状況との間に相関関係があるとして行った説明は、この主張を裏付けるものであることが認められる。
    また、仮に被疑者等の事件関係者や犯罪を企図する者がこれらの情報を入手した場合、事件関係者等のみが知り得る特殊な情報等と当該情報を照合・分析することにより、正確かつ具体的に捜査等の進展状況を推察することが可能となり、実施機関が主張するように、逃走や証拠隠滅等を図るおそれや、犯罪捜査の網をかいくぐって更なる犯罪を敢行するおそれがあるなど、犯罪の予防、捜査に支障を及ぼすおそれがあると認めることができる。
    また、既に捜査が終了した事件に関する情報についてみても、これらの情報を公にすることにより、過去の警察の捜査手法等の分析が可能となり、ひいては、将来においてこれらの捜査手法等に応じた犯罪を敢行するなどの対抗措置が講じられるおそれがあるとする実施機関の主張が失当であるということはできない。
    さらに、情報提供者等の捜査協力者に係る情報に関していえば、公にされることにより、これらの者が被疑者等の事件関係者から報復を受けたり、以降の協力を得ることができなくなり、結果として犯罪捜査における捜査力が低下するなど、犯罪の捜査等に支障を及ぼすおそれがあることが認められる。
    万が一にも、このような事態が発生すれば、警察に対する県民の信頼は揺るぎ、結果として県民の生命、身体、財産等の安全に対する脅威が増大し、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすこととなると実施機関は主張しているが、その主張は、合理性を有するものと認めることができる。
  4. ところで、本件文書に記載されている情報のうち、決裁欄の印影等の情報については、他の情報と異なり、条例第10条第3号に該当しないとする考えもあり得る。
    しかしながら、これらの情報を公にすることになれば、対象公文書の枚数が明らかになることとなり、そこから捜査費の執行件数が推認され、総体的な捜査状況の活発さを推測することが可能となる。
    さらに、前述したように、仮に被疑者等の事件関係者や犯罪を企図する者がこれらの情報を入手した場合、報道等により既に公にされている情報やその他の情報と当該情報とを照合・分析することにより、捜査活動の状況が推察される可能性が格段に高まることが考えられることから、これらの情報の条例第10条第3号該当性を否定することはできない。
  5. 以上のことから、本件文書に記載された情報は、条例第10条第3号で規定する「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」に該当するものと認めることができる。

以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
飯塚英明、礒野弥生、大橋豊彦

審議の経過

年月日

内容

平成16年5月19日

諮問を受ける(諮問第78号)

平成17年9月28日

実施機関より開示決定等理由説明書を受理

平成17年11月17日
(第一部会第7回審査会)

実施機関より意見聴取及び審議

平成17年12月15日
(第一部会第8回審査会)

審議

平成18年1月27日
(第一部会第9回審査会)

審議

平成18年1月31日

答申(答申第75号)

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