トップページ > 県政情報・統計 > 情報公開 > 情報公開審査会 > 平成14年度情報公開審査会答申 > 答申第16号 「通勤届(平成6年4月1日受理 ○○校長分」外4件の非公開決定(平成15年2月27日)
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掲載日:2024年4月2日
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答申第16号(諮問第21号)
答申
1 審査会の結論
埼玉県教育委員会(以下「実施機関」という。」が平成9年11月5日付けで行った、通勤届(平成6年4月1日受理 ○○校長分)、通勤届(平成7年4月3日受理 ○○教頭分)、通勤届(平成8年4月1日受理 ○○教諭分)、通勤届(平成4年10月26日受理 ○○教諭分)及び通勤届(平成5年2月24日受理 ○○教諭分)(以下「本件文書」という。)の非公開決定は妥当である。
2 異議申立て及び審査の経緯
(1) 本件異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成9年10月22日、埼玉県行政情報公開条例(昭和57年埼玉県条例第67号。以下「旧条例」という。)第5条第1項の規定に基づき、実施機関に対し「平成8年度の○○○高等学校の次の職員の通勤届出 ○○校長、○○教頭、○○教諭、○○教諭及び○○教諭」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
(2) 実施機関は、本件請求に対する行政情報を本件文書と特定した上で、平成9年11月5日付けで、本件文書は、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るものであり、旧条例第6条第1項第1号に該当するとして非公開決定を行い、申立人に通知した。
(3) 申立人は、平成9年11月12日付けの異議申立書により、実施機関に対し、本件文書の全面開示を求めて異議申立てを行った。
(4) 当審査会は、本件異議申立てについて平成14年2月1日付けで実施機関から埼玉県情報公開条例(平成12年埼玉県条例第77号。以下「新条例」という。)第22条の規定に基づく諮問を受けた。
(5) 当審査会の本件審査に対し、実施機関から平成14年5月20日付けの「開示決定等理由説明書」の提出を受け、申立人から平成14年7月22日付けの反論書の提出を受けた。
(6) 当審査会は、平成14年10月4日に、実施機関である高校教育課の職員から事情聴取を行った。
(7) 申立人は、平成14年11月11日に、口頭による意見陳述を行った。
3 申立人の主張の要旨
申立人は、本件文書について公開するよう求め、その主な理由として以下の点を主張している。
(1) 本件文書は、「学校職員の給与に関する条例」及び「学校職員の通勤手当に関する規則」に基づき届出されたもので、旧条例第6条第1項第1号ハで規定される、法令等に基づき届出されたものである。
(2) ○○校長は出張手続きと実際の出張に違いがあることを認めており、○○校長等の出張手当と通勤手当の二重請求が疑われる。
(3) したがって、このような事が「職員の旅費に関する条例」等に基づき適正な支出負担行為として認められるのかを今後県庁の関係部署へ問い合わせる資料の一つとして本件文書は必要であり、また、納税者として適正な行政執行であったかどうかを確認する必要があることから、本件文書は旧条例第6条第1項第1号ハで規定される、公開することが公益上必要な行政情報である。
(4) ○○校長等の住所については電話帳で既に公開されており、旧条例第6条第1項第1号には該当しないものと考えられる。
4 実施機関の主張の要旨
本件異議申立てに対する実施機関の主張の要旨は、次のとおりである。
(1) 本件文書に記録された情報は、職員の職名、氏名、住居及び住居から勤務学校までの区間別通勤方法・距離・所要時間・乗車券等の額等並びに通勤経路の略図等である。職員の氏名、住居及び住居から勤務学校までの区間別通勤方法、距離、所要時間並びに通勤経路の略図等は「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」に該当する。
(2) 本件文書は、学校職員の通勤手当に関する規則(昭和33年10月21日埼玉県教育委員会規則第5号)第3条の規定により届出されたものであるから、「法令等の規定に基づく届出の際に作成した情報」に該当するものと認められる。
(3) しかし、「公開することが公益上必要であると認められるもの」とは、公共の安全や秩序の維持あるいは人の生命、身体、財産の保護といった公益を守るために公にすることが認められるものであり、本件文書に記録された情報は、ただし書ハには該当しないものである。
(4) また、申立人が主張する「通勤手当と出張旅費の二重請求の不正がある」という点については、直行直帰の制度がなかった当時の旅費制度の下では、通勤手当と旅費を二重に支給したことは違法ではない。
なお、この点について申立人が行った住民監査請求において、「通勤手当は、職員の通勤に要する経費の補助を目的とする一種の生活給的給与であるとされており、旅費は、旅行中に必要となる交通費、宿泊料等の経費に充てるため支給される費用であるとされている。したがって、通勤手当と旅費は、その支出目的を異にするものであり、それぞれ別個に支出することが可能であるので、本件については違法又は不当であると解することはできない。」との監査委員の判断が示されている。(平成10年6月9日付け埼玉県監査委員告示第3号)
5 審査会の判断
(1) 答申するに当たっての適用条例について
新条例は平成13年4月1日に施行されたが、本件は旧条例に基づきなされた処分に対する不服申立てであるため、当審査会は、旧条例の規定に基づき本件不服申立ての検討を行う。
(2) 本件文書について
本件文書は、○○校長外4名の学校職員が、学校職員の通勤手当に関する規則第3条の規定により届出を行い、受理された平成8年度分の通勤届であり、当該学校職員の勤務学校名、学校所在地、職名、氏名、職員番号、住居、通勤方法、距離、所要時間、通勤経路の略図及び通勤手当の月額等が記載されている。
(3) 旧条例第6条第1項第1号本文の該当性について
旧条例第6条第1項第1号は、個人の尊厳という憲法原理に基づいて、プライバシーに関する情報を保護しようとするものであり、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」については、原則として非公開として扱うことを定めている。本件文書は、まさに「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」であり、同号本文に該当することが認められる。
(4) 旧条例第6条第1項第1号ただし書ハの該当性について
申立人は本件文書が旧条例第6条第1項第1号ただし書ハに該当すると主張しているので、次にこの点について検討する。
ただし書ハは、同号本文に該当する個人情報であっても、「法令等の規定に基づく許可、免許、届出等の際に作成し、又は入手した情報で、公開することが公益上必要であると認められるもの」については、公開するものとしている。
これは、法令等の規定に基づく許可、免許、届出等の行為の中には、その性質上、県民生活に少なからぬ影響を及ぼすものがあることから、これらの行政上の手続の過程で作成し、又は入手した個人に関する情報のうち、公共の安全や秩序の維持あるいは人の生命、身体、財産の保護といった公益を守るために公にすることが必要であると認められるものについては、個人情報保護よりも公益を優先させるという趣旨であると考えられる。
本件文書について検討すると、本件文書は、当該学校職員が通勤手当の支給を受けるために教育委員会に届出をしたものであるが、公務員の雇用関係上の手続として届出されたものであって、行政上の手続として届出されたものではないため、ただし書ハで規定する「法令等の規定に基づく許可、免許、届出等の際に作成し、又は入手した情報」とは認められず、その内容からみても、プライバシーを侵害するおそれがあったとしてもなお公開するべき公益上の必要性があるとはいえない。
したがって、本件文書は、旧条例第6条第1項第1号ただし書ハに該当するとは認められない。
以上のことから、「1 審査会の結論」のとおり判断する。
年月日 |
内容 |
---|---|
平成14年2月1日 |
諮問を受ける(諮問第21号) |
平成14年5月22日 |
実施機関より開示決定等理由説明書を受理 |
平成14年7月23日 |
異議申立人より反論書を受理 |
平成14年10月4日(第17回審査会) |
実施機関より意見聴取及び審議 |
平成14年11月11日(第18回審査会) |
異議申立人より意見聴取及び審議 |
平成15年1月30日(第20回審査会) |
審議 |
平成15年2月17日(第21回審査会) |
審議 |
平成15年2月27日 |
答申 |
氏名 |
現職 |
備考 |
---|---|---|
礒野 弥生 |
東京経済大学教授 |
|
遠藤 順子 |
弁護士 |
会長職務代理者 |
大森 彌 |
千葉大学教授 |
会長 |
田村 泰俊 |
東京国際大学教授 |
|
馬橋 隆紀 |
弁護士 |
|
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