インタビュー・コラム

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掲載日:2025年12月22日

左近 恵子(さこん けいこ)さん

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プロフィール

【左近 恵子さん】40代
2023年株式会社オキナヤに入社。 建築事業部 鉄工部所属。
仕事と家庭を両立させながら、鉄骨の検査に必要な建築鉄骨製品検査技術者など多数の資格を取得し、検査業務のエキスパートとして活躍しています!

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鉄工製品検査業務の仕事

建物の骨組みは「木造」「RC(鉄筋コンクリート)」「鉄骨造」の3種類です。私たち鉄骨加工業は、鉄を切断・溶接して“骨格”をつくる役割。現在の私の担当業務は、鉄骨とイージースラブ・ラーメン橋(施工が容易で短期間での施工が可能となるよう工夫して設計された橋梁)の材料受入検査、製品検査業務です。

1つの工事に対して、寸法検査、溶接外観検査、超音波深傷検査、塗装膜厚検査、工事工程写真、各検査に不随する検査書類の作成に至るまで、多岐にわたる工程を一貫して担当しています。

鉄骨のわずかな傷や溶接不良、寸法の誤差は、建物の倒壊に直結するため、国が定める厳格な基準(大臣認定基準)に基づき、徹底した検査を行っています。

検査業務を行うにあたって、鉄骨製作管理技術者1級、建築鉄骨製品検査技術者、建築鉄骨超音波検査技術者、超音波探傷試験レベル1を取得し、検査業務に不随する資格として、フォークリフト技能講習、玉掛け技能講習、床上操作式クレーン技能講習、研削といしの取替え講習を受講し、イージースラブ・ラーメン橋は、ESB施工技術者認定登録の資格を取得しました。検査業務を行うには、専門知識と資格が不可欠です。

また、品質保証の一環として、提出用の工程写真管理も重要な業務です。材料の入荷時から最終工程に至るまで、溶接状況や切断角度など、すべての製造過程を記録するため、細部にわたり写真撮影を行い、品質の証拠を残しています。

工場で製作される鉄骨やイージースラブ・ラーメン橋は、材料入荷から切断、孔明け加工、組立て、溶接、キャンバー加工、塗装に至るまで、熟練した職人たちの手作業によって生み出されます。そのため、細心の注意を払っても加工工程の中で不備が発生する可能性はゼロではありません。

検査業務はそうした不備を未然に発見し、工場外へ流出するのを防ぐことです。自身が行った検査によって不備が修正され、高品質な製品として送り出せる瞬間は、大きな達成感と「建物の安全を守る」という責任を全うできた喜びを感じます。
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鉄骨製作工場認定のアップグレードを目指して

鉄骨製作工場の認定制度とは、鉄骨製作工場が適正な品質の建築鉄骨を生産・供給するために必要な品質管理能力と技術力を有していることを証明するため、工場で製作される建築鉄骨の品質保証の信頼度を国土交通大臣が認定するものです。認定は5グレード(高い順からS、H、M、R、J)あり、現在オキナヤは、Rグレードです。

この認定は、建築士や施工管理技士のような永久資格と違い、有効期間は5年。有資格者が抜けたり設備が欠けたりすれば更新不可で、いわば“工場の車検”です。審査項目では、製造基準の管理、管理者・技術者の育成と配置、作業品質などがあります。また、過去の製造記録から当日の製造品、設計図面、検査記録まで、全てが詳細に審査されます。その厳しさから、不合格となる工場もあると言われています。審査に合格した工場は、その技術レベルに応じてグレードが認定され、このグレードによって工場で扱える鋼材の種類や板厚、建築物の高さや延べ床面積などの制限も変わります。かつてオキナヤは、Hグレードを維持していましたが、人員確保が難しくダウングレードの局面もありました。

今、私たち鉄工部が一丸となって目指しているのは、鉄骨製作工場認定のRグレードからMグレードへのアップグレードです。Mグレードは管理技術者6名が要件で、審査当日は7名体制で対応する予定です。鉄工部の技術者のうち3名が女性で、この3名が審査に臨むというのは埼玉でも、全国でも珍しいと思います。私たち女性技術者も、これまで培ってきた経験と専門知識を最大限に活かし、この目標達成に向けて日々切磋琢磨しています。多くの男性が活躍している業界ですが、女性も十分活躍できる業界だと思います。

厳しい審査を乗り越え、より高いグレードを獲得することで、お客様からの揺るぎない信頼を得られるよう、全力を尽くします。
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仕事と家庭の両立について

仕事と家庭の両立については、限られた時間の中での多忙さや予期せぬ事態への対応で、優先順位をつけることに難しさを感じつつも、やりがいを感じています。職場には、同じく仕事と家庭を両立している仲間がいるので、自分だけではないという心強い励みになっています。

私には2人の息子がいますが、反抗期を迎えた時期は悩みました。同時期に私自身も勉強や仕事を優先しすぎて、子どもたちとの会話が減り、彼らの気持ちを疎かにしていると悩んだこともありました。当時はどう乗り越えようかと、心理学や色々な本を読んだりして対処法を模索しました。子どもと同じ趣味を持ち、同じ時間を共有しコミュニケーションを積極的にとる事で、乗り越えられたのではないかと思っていますが、今後も息子たちとの会話を減らすことなく、親子関係を築いていければいいなと思います。今は家庭が安定していることで、安心して仕事に向き合う事ができています。

資格取得のために勉強していた時期は、少し家事をおろそかにした時もありました。『今日のご飯、たいしたもの作れなくてごめんね』と息子たちに話すこともありましたが、文句を言う事なく食べてくれるので助かりました。その他、家事の動線を考え、工夫する事で家事を時短して、自分の時間を作り勉強に取り組んだ結果、現在保有している資格取得へと繋がりました。自分が勉強している姿勢が、息子たちに影響を与えられたら「一石二鳥」かなと思って頑張れました。

会社には、息子たちの学校行事や急病の際にも快く休暇を取れる環境にしていただき本当に感謝しています。どうしても仕事を休めない時には、近所に住んでいる両親にサポートをお願いできるので助かっています。

鉄鋼業を目指す女性に向けてメッセージ

建設業界や鉄鋼業界は男性が中心となって活躍している職種というイメージが強いと思います。そんな中でも、女性にも担える仕事が確実に存在し、私自身も全くの未経験からこの業界に入りました。今では日々同僚たちと鉄骨製作工場認定制度のアップグレードを取得するという目標に向けて、やりがいを感じながら働いています。

業務にあたっては、専門知識を身に付け、たくさんの資格を取得しなければならないので大変ですが、机上の知識だけでは得られない実践的な学びは、現場で上司や先輩、そして熟練の職人の方々が、実物を通して教えてくれます。疑問に思うことや分からないことがあっても、すぐに解決できる環境です。多くの女性がこの業界を目指す事を、心から願っています。
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