インタビュー・コラム
ここから本文です。
掲載日:2024年1月22日
ものづくり女子交流会
2023年10月28日(土曜日)ものづくり女子交流会
埼玉県では、働きたい女性・働く女性が抱える育児や健康などの課題の解決及び様々な業種への理解を深めるセミナーや交流会を実施しています。
2023年10月28日(土曜日)に「ものづくり女子交流会」を開催しました。家具の制作や板金・溶接作業からITエンジニアまで、様々なものづくりの現場で学んだ技術を生かして働く女性4名に、現在の仕事に就いたきっかけややりがいについてお話していただきました。
登壇者プロフィール
〇登壇者プロフィール〇
・平林 真智子 さん(株式会社TACSOL)
ポリテクセンター埼玉組込みシステム開発科(※)H30年度修了
現在はIT関係の会社に勤めており、企業における顧客管理のための情報システムの開発・改良を担当している。
(※現在の「組込みIoT技術科」)
・M.M さん(エクシオ・システムマネジメント株式会社)
ポリテクセンター埼玉組込みシステム開発科(※)R1年度修了
現在はIT関係の会社に勤めており、ネットワークシステムのサポート業務(ネットワークの監視や故障対応等)を行う。
最近ではシステム監視・保守の支援ツール等の開発・改修等を担当。在宅ワーク・出社・夜勤があるシフト体制。
(※現在の「組込みIoT技術科」)
・寺嶋 瑞代 さん(株式会社スガヌマ川越工場)
川越高等技術専門校金属加工科H27年度修了
株式会社スガヌマで8年間、溶接作業を担当。ガス検知器の部品や保安部品、鉄道信号機や非常ボタンの部品など精密機器の
製造をしている。小学校低学年の娘がおり、仕事と育児を両立している。
・角田 里紗 さん(atelier 2-D開業)
川越高等技術専門校木工工芸科R1年度修了
美術大学を卒業後、中学校や小学校での教育の仕事を経て、高等技術専門校に入校。修了後は家具業界に就職し、家具工房に
1年半勤務。現在は独立し個人事業主として活動するとともに、中学校や高校の授業で美術を教えている。
※写真
左上:平林さん、右上:M.Mさん、左下:寺嶋さん、右下:角田さん
※ポリテクセンター埼玉 の情報:https://www3.jeed.go.jp/saitama/poly/
※埼玉県立高等技術専門校 の情報:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0811/kgs/index.html
Q1:ものづくりの世界に入ったきっかけを教えてください。
〈平林さん〉
30歳までには定職に就くという家族との約束がありました。30歳になり就職活動をするにあたり、「手に職をつけたい」と考えるようになりました。その手に職の職が「技術」でした。その「技術」を見つけるため職業訓練校には絶対に行こうと決めており、ポリテクセンター埼玉に入りました。また、技術職の中でも、IT系のエンジニアやプログラマーであれば、「どこでも食べていける、将来性のある職種」という認識があり、学ぼうと思ったのがきっかけです。
〈M.Mさん〉
私は、子どものころから”作る”ことが好きで、大学でも文系創作といって小説を書くことを専攻にしていました。また、大学のサークルでWEBページの担当をしており、HTMLなどのプログラミングコードを編集していました。ここを変えたらこうなるんだ、ということに興味を持ち、大学が文学部だったので、IT系の技術を学ぶためにポリテクセンター埼玉の組込みシステム技術科(現:組込みIoT技術科)に行きました。
〈寺嶋さん〉
派遣社員を経験した後、電気関係の会社に正社員の事務職として就職しましたが、パソコンに向かって作業する仕事内容が自分には合わないと感じていました。その頃、20歳前後と若かったこともあり、将来のことを考え直していた時に、当時の同僚で電気工事士を取得した方に、「職業訓練校というのがあるんだよ。無料で行けるし、入学できたら1年間失業保険をもらいながら学べるよ。」という情報をいただき、調べたところ「これだったら、学びながら行ける!!」と思い、川越高等技術専門校の自動車の塗装科(※現在は廃科)に入校しました。塗装科に行った理由は単純で、整備士は勉強しなければならないけれど、塗装だったら何となくできそうだな、というノリでした(笑)。入校してからは楽しく、卒業後も自動車塗装の会社に就職しました。しかし、30歳ぐらいになる時に、ふと「このまま肉体労働(暑い中、ビニールハウスの中で防護服を着ながら塗装)をするのか…、この先これでいいのかな…と考えるようになりました。今までは直す側(凹んだものを直して塗装する)だったので、作る側はどのような仕事をするのだろうと思い、「最初の加工ができたらものづくりの工程を完璧にできるのではないか!!」と考え、31歳の時に再度、川越高等技術専門校の金属加工科に入校し、金属加工を一から学びました。
〈角田さん〉
私は美術大学を卒業しており、専攻は彫刻でした。教員免許を持っているので、大学卒業後に講師をしている友人の誘いで中学校で非常勤講師をしました。しかし、学校で働いているうちに、「美術の基礎知識や経験はあるが、どれも専門家というほどの知識や技術がない…。自分には専門性がないな…。」と悩むようになりました。その頃、たまたま行った美術館で、出展されている作家のプロフィールを読んだときに、『高等技術専門校を修了』と書いてあり、「高等技術専門校って知らないな、何だろう?」と、そこで初めて高等技術専門校、訓練校の存在を知りました。それがきっかけとなり、教育の仕事を一旦辞め、専門技術を学びに行くことにしました。
Q2:ポリテクセンター埼玉・高等技術専門校での経験について教えてください。
〈平林さん〉
私は組込みシステム開発科(※現:組込みIoT技術科)の修了生でして、組込み科はオームの法則や電気理論(電子基板を触ってその電子回路の電圧の計算する)などいろいろ学ぶことができるのですが、私には難しすぎたため、クラスメイト達に「何であれば就職後も役に立つか」ということを聞いたところ、「『言語』が一番必要とされると思う」とのアドバイスをもらったので、ひたすらプログラミング言語を書いてアプリケーションを作成して、を繰り返していました。
ひとつ自慢として、卒業課題でandroidのアプリケーションを作る課題があったのですが、チームを組んで作ったandroidアプリの写真が今年の受講生募集冊子に載っています!これはドヤ顔させてください!!この作成は本当に楽しかったです!
〈M.Mさん〉
私の場合は、電子回路やはんだごてなどを使った授業が印象に残っています。はんだごては楽しく、結構得意であり、ノリノリでやっていました。プログラミングの授業では、エラーが出たときに、どこがおかしいのかという原因を突き詰めるのが得意でした。カンマがピリオドになっているとか、綴りが違うとか、ほんの少し違うだけでエラーになってしまうのですが、それを切り分けるのが得意でした。合同の会社説明会で話を聞いた時に、監視・保守という仕事が自分の得意分野に似ているなと気付いたのが大きな発見でした。
あとは、ちょっと早めに授業が終わるので、そのあと1時間の居残り申請をし、クラスメイトの年上の男性と一緒に基本情報技術者試験という資格の勉強をしました。もともと数字が苦手分野であり、IT技術も分からないというところから始めたので、その基本的なIT技術を理解するため、基本情報技術者試験を勉強し、資格を取得できたのは良かったです!
〈寺嶋さん〉
技能五輪という、溶接作業やプログラミングなど42種類の競技職種があり、原則23歳以下の青年技術者を対象に行われる全国大会があります。金属加工科は、構造物鉄工2級の大会に出るための練習をしていました。私は年齢で大会には出られませんでしたが、6センチぐらいの分厚い鋼板を切ったり、アングルといって、V字の鉄を切って、熱を加えて曲げ、角度を出したり、基本的なことを練習しました。
また、金属加工科ではプログラミング、NC加工、ベンダー曲げ、三種類の溶接の基本を習ったり、皆さんが使っている普通のネジのネジ山を手作業で切ったりするなど基本的なことを学びました。
〈角田さん〉
木工工芸科は、18歳から65歳ぐらいまでの年齢層で30名程のクラスでした。そのうち女性は7、8名くらいでした。高校卒業してすぐ入校した方や、会社を定年退職してものづくりを基礎から学びたいという方など、多種多様な人がいました。これほど幅広い年齢層の方たちと一緒に授業を受ける経験は今までなく、すごく不思議な空間だなあと思いながら1年間通っていました。
実技の授業では最初に刃物の研ぎ方から習い、その次に木を削るかんなの扱いを習います。家具業界に就職すると、かんななどの手道具や木工機械が扱えることが前提です。就職してから基礎を教えてもらうことはほとんどできないので、学校で刃物の研ぎ方や機械に関する知識など、物の仕組みを学ぶことができて本当に良かったなと思います。最初の2ヶ月間は、刃物研ぎをひたすらやるのですが、その基礎ができるかできないかで、今後の自分のスキルが変わってきます。ゼロから教えてもらえる環境というのはなかなかないと思いますし、訓練校は基礎力を身につけるにはもってこいの場所です。私は給付金をもらえる条件に当てはまらなかったので、アルバイトをしながら通っていましたがそれでも通えたので、給付条件に当てはまらない人でも「技術を身につけたい」という気持ちがあれば通えると思いますし、とても楽しいと思います!
Q3:就職活動での経験を教えてください。
〈平林さん〉
ポリテクセンター埼玉では、学校の先生方が実際に企業に訪問したり、会社の中身を見たり、会社の方たちともお話をしたりしています。いろいろ求人広告を見る中で、ポリテクセンターの担任の先生が勧めてくれた会社があったのですが、「この先生が勧めるなら絶対ここに入りたい!」という思いもあり、就職したい会社は決まっていました。ただ、私は希望の会社に就職するために、業界のことを知っておきたかったので、いくつかの企業の面接は受けに行きました。
これから会社にどう貢献していくか考えた時、私の場合、「ポリテクセンターを卒業しました」という経歴しか持っておらず、資格なども特に取得していなかったため、希望の会社に入社するという強い想いをもって就職活動をしました。
また、いろいろな会社がある中で、自分が求める会社を見つけ出すのは難しいと思いますが、そういう時は信頼している先生に勧めていただいた会社の方が、安全性が高いなとすごく感じました。
自分で見つけて就職することはもちろん素晴らしいことですが、すぐに辞めてしまったという卒業生がいた、というお話も聞くので、入った学校がちゃんと精査をして勧めている企業というのを参考にしてみてもいいのではないかと思います!
〈M.Mさん〉
私は平林さんとは逆で、少なく受けようと思いました。面接の時に「第1志望ですか?」とよく聞かれると思うのですが、複数受けているのに「はい、そうです」と、嘘はつきたくありませんでした。なので、「もうあなたのところが第1志望です!」とはっきり言えるようにしようというのがまず一つありました。
二つ目に、面接で無理に笑うのはやめようと決めていました。無理に笑って入社して、偽りの自分ではないのですが、それで採用されても疲れてしまうのが想像できたので、無理に笑うのをやめるようにしようと思いました。
三つ目として、勉強できるところに就職したいと思いました。ポリテクセンター埼玉では、企業が来て説明会などをしてくださるのですが、その時に出会ったのが現在の会社です。監視・保守の業務は、基本的にシステムが壊れない限り、ただ座っているだけなので、その間勉強がし放題だよ、という話を聞き、夜勤に対して多少不安もありましたが、いい条件だなと思いエントリーしてみました。ある日、会社見学が台風の直後にありました。私の他に3名程いたのですが、台風直後ということもあり、全員キャンセルになり、私一人だけ人事の方とマンツーマンで会社見学ができました。そういう出来事もあり、面接に行った際、人事の方に顔を覚えていただいており、トントントンと採用が決まりました。現在の会社に入社できたのは少しラッキーな点があると思うのですが、この3つを軸に就職活動をしました。
〈寺嶋さん〉
私は高等技術専門校(金属加工科)を卒業する時に、子供ができても仕事を続けていきたいと考えていたので、「育児休業が取れるか」や「土日休みであること」や「1時間以内で通勤する」という視点で就職先を探していました。
また、就職活動をする際、高等技術専門校だからできることと言えば、会社見学をさせてもらえることです。通常の就職活動で、会社見学はなかなかできることではないと思いますが、専門校だからこそ、先生方や企業に協力していただき、会社見学に行くことができます。会社がどのような雰囲気なのか、専門校で学んだ機械が並んでいたら、こういうことをやっているんだ!と実際見ることができるので、就職後の自分をイメージすることができます!
〈角田さん〉
私も会社見学に行きました。おそらく10社ほど見学をさせてもらいましたが、いきなり面接をお願いするのではなく、どういう会社なのか、どんな仕事内容なのかというのを見に行きました。主に学校に届く求人票の内容を読み、自分のやりたいものに近いと思ったところに電話をしてアポを取り、特に気になる会社には2回お邪魔したこともありました。会社のご厚意で一日中見学させていただき、朝礼から就業終了の時間まで滞在し1日の流れを知れたのは貴重な経験でした。見学に行くことで人事の方に顔を覚えてもらえ、面接も和やかにできたのでそれはとても良かったなと思います。
会社の条件も大事ですが、どんな人が働いているのか、どういうふうな顔で働いているのかというのも見たいなと思い会社見学にたくさん行きました。平林さんもおっしゃっていましたが、「たくさんの会社を見る」ことによって、職場の雰囲気や会社がどんなものを作っているかなどを知ることができるため、自分に合う会社を見つけるという面でかなり有効かと思います。
Q4:現在の仕事内容ややりがいを教えてください。
〈平林さん〉
現在の仕事内容は、お客様から「このボタンを押すとこういう画面になるように作ってください」という依頼をいただき、その通りになるような仕様書を作成します。その後、機能やデザインなどが先方の依頼通りであれば実装します。実装後は、テストをし合格であればリリースをかけて、また別途テストをして…の繰り返しをします。エラーが起きないようにテストをたくさんするので、実装しているよりテストをしている時間の方が多いです。
ITの仕事は、実装している時間よりも、求められたものができるまでの設計や要件定義と何が起きてもエラーを起こさない、というテストの方が圧倒的に多いです。私はWebアプリケーションを作ったり、イラストを書いたり、美術的にきれいだなというものが好きで、ウェブ画面を作るというのが性に合っており、自分が実装したものが、その通りに動くのがとても楽しいです。
また、IT業界はデスクワークというイメージがあると思うのですが、実はすごくコミュニケーション能力が大事です。相手が何を求めているのか、その相手に対して自分がどういう想定でつくるのか、ということを伝えたり説明したりしないといけないので、齟齬があると永遠に終わりません。なので、面接においてもコミュニケーション能力がある人か、というのは割と重視されているのかな、と私は思います。
〈M.Mさん〉
私は、企業向けに提供されている大規模な通信ネットワークの基幹部分を監視・保守する業務を担当しています。イメージとしては、ドラマとかでハッカーが操作している黒いウインドウを操作しているイメージです。平林さんの仕事は、クリックしたら動く、みたいな内容ですが、私はキーボードでコードを打って装置を動かしています。
アラームや故障がなければ、発生しないお仕事なので繁忙期はないです。そして、シフト制なので、終わらない仕事は次の人に引き継ぐので残業もほぼないです。また、勤務先の最寄駅が東京駅なので、帰りにおいしい東京駅のスイーツを買って帰れますし、夜勤明けであれば数量限定のものも朝行って買うことができるので、そういうところがおまけで得しているなと感じます!
今の会社に就職して3年目になりますが、会社で使っているツールの改修なども上司に頼まれたり、業務に対する知識と業務改善能力を図る上級試験を受けてみないかと声をかけていただけたりするようになりました。実力があれば評価していただける会社です。
デメリットとしては夜勤勤務時の体調管理が大変なところです。実は私、ヘルニアがあるのですが、椎間板ヘルニアの病院に通院したり、座り仕事なので足がむくんでしまったり…そういうところは少し大変だと思うこともあります。
〈寺嶋さん〉
金属加工にはいろいろな種類の工程があります。例えば皆さんの目の前にある机です。机1つ作る時にも、指示書があります。横が90cmで縦が60cmの1枚の鉄板を折り曲げて穴を開けて、ねじで留める、というような加工。そして溶接すると、熱を加えるので歪みます。曲げている時は角度が90度ですが、溶接で熱を加えることにより鉄が歪んで、少し角度が変わってしまいます。それを熱が加わった時に90度を出せるように、先に曲げる角度をちょっと緩やかにしておくとかの工夫をして、自分が溶接した際に、ピタピタの90度を出せたり、仕上げた時にへこみが少なかったり、指示書の図面の寸法通りにできた時に、「よしっ!!完璧!!」と、やりがいを感じます。
※寺嶋瑞代さんは、「第17回(2023年度) 板橋青年優秀技能者・技術者」で最優秀賞に選ばれました!
〈角田さん〉
私は現在、個人事業主として木工の仕事をしているので、そのことについてお話します。私の場合は週に2日、中学校で美術の講師をしており、それ以外の時間が個人事業主としての時間です。そのため、スケジュールやお金の管理、確定申告などすべて自分でしなくてはいけません。個人事業主になって1年半くらいになるのですが、やらなくてはいけないことが幅広いので大変だなと日々感じています。優先順位をつけたり、時間を管理したりすることが少し苦手なので、そこを今後もっと改善していこうと思っています。
また、現場に家具を取りつけに行くことがあるのですが、現場作業をする女性が少ないので不思議な目で見られている気がしてしまうこともあります。最近ではお金が支払われないトラブルもありました。ものづくりは楽しいですが、大変なことも全部ひっくるめて引き受けていかなければならないなと痛感しています。
木工の仕事でも学校の仕事でも一貫してやりがいだと感じていることは、ありきたりですが、人に喜んでもらえることです。私が家具を納品したらとても喜んでくれたり、学校の授業で生徒が楽しそうに制作する姿が見れた時は、頑張ってよかったと思えます。自分が何かをすることによって誰かの生活や人生を良くすることができることができたらすごく嬉しいなと思って仕事をしています。