「電車の絵」 森川里緒奈

TITLE

「電車の絵」

ARTIST

森川里緒奈/MORIKAWARiona
社会福祉法人昴　デイセンターウィズ

Review

　無数に引かれた青い線。

　真っ白な紙に迷いなく、かつ丁寧に、ゆっくりと手を動かす姿が印象的だった。

　この絵は電車が描かれている。

　インタビュー中はお互いに緊張しながら話していたが、家族が会いに来たことに気付いた瞬間、森川さんの表情がぱあっと明るくなった。

　そこからだんだんと、絵について、自身の好きなものについて、色んなことを教えてくれた。兄と一緒に出かけたこと、母と祖母はこれから歯医者に行くこと、お祭りで友達と踊ったこと。

　彼女の話は何気ない日常の中から宝石を取り出すかのようだった。

　話している時のきらきらした表情から、家族のことが、そして誰かと一緒に出掛けることが本当に大好きなのだと伝わってくる。

　彼女にとって、電車に乗ってどこかへと向かうことは楽しい記憶と強く結びついているのだと感じた。

　壁一面に飾られた電車の絵をじっと眺めて見る。細い線、太い線、かすれた線。青の油性ペン、たった1本だけなのに、表情豊かでひき込まれてしまう。

　きっと彼女の輝かしい記憶が色に、線に、いたるところに現れているからなのだろう。

　

武蔵野美術大学造形学部油絵学科1年 西谷 二葉