インタビュー・コラム
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掲載日:2025年12月12日
立石 絵美(たていしえみ)さん
プロフィール
1998年獣医師資格取得。動物病院にて臨床に従事した後、2017年に「動物往診+在宅ケアサービス にくきゅう」を開院。「人と動物に優しく諦めない医療を」を経営理念に、自宅に来てくれる相談しやすい獣医さんとして活動中。
鶴ヶ島市在住。一児の母。
「女性がつくる鶴ヶ島ブランド」2016年優秀賞
「SAITAMA Smile Women ピッチ 2017」奨励賞
〇取材対象者〇
代表 立石絵美(たていしえみ)さん

自宅に来てくれる獣医さん
私が獣医師を志したきっかけは、中学1年生の時に出会った小さな野良猫でした。親に「一生責任を持って面倒をみる!」と約束し、飼うこと許されましたが、その時この猫が病気になったら私が治さなければならないと思い(笑)、獣医師を目指したのがきっかけです。
勤務医としてのキャリアを積みながら、多くの患者さんと接してきました。特に印象的だったのは、弱って病院に通えなくなった大型犬のケースです。飼い主さんは体力的にも犬を車に乗せて通院することが難しく、私は勤務医の立場でありながら、院長の許可を得て機材を持って往診し対応していましたが、勤務医の立場上、自由に動ける範囲には限りがありました。
そのような中、通院が困難な飼い主さんが非常に多いことに気づきました。実は、往診や在宅医療でできるケアの幅は広く、わざわざ病院まで来なくても対応できる内容は多いので、もっと気軽に動物たちの健康を支えられる場を作りたいと考えました。そこで、現在は往診を中心に、飼い主さんが通院困難な状況でも諦めずに治療が継続できる体制を目指しています。動物だけでなく飼い主さんにも優しいケアを提供し、地域の動物医療を支えていきたいと思っています。


病院に行けなくてもできる医療
経営理念は「人と動物に優しく諦めない医療を」です。この思いは、「病院に行けない=何も治療ができない」という極端な考え方を変えたいという願いから生まれました。動物病院に行けないと治療はゼロだと考えがちですが、実際はそうではありません。動物の状態を正確に把握しないと治療方針は決められませんが、往診や在宅医療を通じて、病院に行かなくてもできることはたくさんあります。
動物医療は動物自身が望むものではなく、人間である飼い主さんの思いが出発点だと考えます。動物が病院に行きたいわけではなく、私たち人間がどうしてあげたいかという気持ちの現れです。だからこそ、単に病気を治すだけでなく、飼い主さんの状況や気持ち、生活環境に寄り添ったオーダーメイドの医療が必要だと実感しています。
例えば、手術や入院、抗がん剤治療は動物にとって大きな負担を伴うため、動物自身は望まないことだと思います。100%良くなる可能性が高い病気の場合は積極的な治療を勧めますが、末期医療の段階では飼い主さんの希望や環境に合わせて動物に負担の少ない治療法を提案します。当院では東洋医学を併用しており、鍼灸や漢方、栄養指導、マッサージ、生活環境の整え方をメインにお伝えしています。
また、動物病院で行う治療を往診でできる範囲で行っています。大型の機材や入院設備はありませんが、基本的な診察や投薬、鍼灸などは問題なくできます。ただ、私一人での対応のため、飼い主さんにも協力をお願いしています。緊急性の高い救急処置が必要な場合などは早めに大きな病院や二次診療施設へ紹介し、飼い主さんと動物の安全を最優先に考えています。
このように、決して完璧ではないものの、飼い主さんと動物双方の負担を減らしながら最適な医療を提案し、諦めることなく支え続けることを目指しています。今後もこの理念のもと、人と動物に優しく、飼い主さんと動物の気持ちに寄り添った医療を追求していきます。


今後目指している事業
今後は、できれば自宅近くにサロンのような拠点を作れればいいなと思っています。拠点があれば人を雇うことができますし、東洋医学を色々な方に知ってもらいたいので、その拠点で東洋医学に関してのセミナーを開いたりすることができたらいいなと考えています。飼い主さん自身にも漢方を知ってもらうために、おすすめの食事を紹介したり、分かりやすいポスターを展示したりして、東洋医学を広めていきたいです。
ただ、近所がいいとか、車に積んでいる機材を守るためにはやっぱりビルトインの車庫がほしいなとか考えると、なかなか理想的なテナントが見つからず苦戦しています。
起業を目指す女性に向けてメッセージ
私が起業できたのは運が良かったと思っていますが、実際には資格やスキル以上に「自分から動く姿勢」が大切だと感じています。私は獣医師の資格やキャリアを活かして起業しました。自分がやりたいことがあるなら、資格を取得したり、積極的に行動することが不可欠です。資格を何も持っていないからと躊躇せず、まずは動いてみること。分からないことがあれば、知っている人に聞くことも大切です。
また、起業家のコミュニティに参加するのも非常に有効です。私は川越で開催される女性起業家の朝活に参加し、美容サロンを運営する方々など、さまざまな起業家と知り合うことができました。資格がなくても学び、経験を積めば起業は可能ですし、自宅の一室から始める事業でも十分に意味があります。成功者から話を聞くことで、自分もできるという自信が湧いてきます。
大事なのは「何もできない」と思い込むのではなく、時間には限りがあることを理解し、行動することです。私が今のステップに進めたのは、相談できる人や支援団体を知り、チャンスに飛び込んだからです。起業は自分から動かなければ何も始まりません。動き出せば、必要な情報や人脈が自然と集まってきます。悩んでいるなら、まずは一歩踏み出してみてください。動くことで、新しい繋がりや情報が入ってきて、自分の可能性が広がります。起業は決して簡単ではありませんが、自分の夢や目標を信じてチャレンジする価値は大きいです。
恐れず、情熱をもって一歩踏み出してください。
