インタビュー・コラム
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掲載日:2025年10月6日
前薗 麗奈(まえぞの れいな)さん
プロフィール
2016年小川工業株式会社に入社。 建築事業部 工事部工事課係長。
1級建築施工管理技士の資格を取得し、建築の現場で施工管理を行っている。
現場で働くことが好きで、現場の良い雰囲気づくりを心掛けている女性現場監督です!
建設業界へ入ったきっかけ
大学では建築学科に所属し、当初は設計の仕事を考えていました。学生時代に1週間、設計事務所でインターンシップに参加したのですが、そのインターンシップでは、椅子に座って図面を書くという業務が主で、自分のやりたいこととは、何か違うなと感じました。設計の仕事とは違い、設計管理や施工管理の仕事は、体を動かしながら建物を見たり、施工過程を見たり、図面を書いたりできる仕事だと知って、自分に合っているかもしれないと思い、方向転換をしました。
その後、大学で開催された会社説明会に参加した際、小川工業のブースで人事部の女性の方々、そして私の大学のOBの方とお会いする機会がありました。大手企業の説明会にも参加しましたが、大手企業は全国転勤があることや、コンクリート担当、鉄筋担当というように工程ごとに専門化されてしまう点が気になりました。
一方、地場ゼネコン※では、最初の段階から完成まで、すべての工程に携わることができるので、私は地場ゼネコンの方が、建設工程全体を学ぶことができ、より多くの経験を積めると感じました。
そこで、埼玉県内の地場ゼネコンを調べていくうちに、小川工業が最もしっくりきたので入社しました。
※地場ゼネコン:特定の地域に根差して事業を展開する総合建設業者
現場監督としての仕事とやりがい
現在、建築工事現場の現場監督として仕事を行っています。
具体的な仕事内容は、工事の各施工段階での写真撮影や、パソコンを使った図面作成などです。また、現場で作業をしてくれる職人さんや、お客様との打ち合わせも重要な仕事です。お客様の要望を丁寧に聞き取り、職人さんと一緒に、工程の進め方や問題発生時の対応策などを話し合います。「ここはこうしましょう」「何か良い解決策はないか」など、日々様々な意見交換を行いながら、建物を完成させていくことにやりがいを感じています。
現場監督として、仕事をしていて良かったなと感じる経験はたくさんあります。
入社して1年目の時、初めて携わった建物は、電気会社の事務所でした。こだわりが詰まった建物で、長年現場監督を務めている所長でさえ、初めての経験をするような内容もあったので、完成したときは、感慨深いものがありました。そして、完成した建物がグーグルマップに表示されているのを見たときは、本当に嬉しかったです。現物としてその姿を見た時の感動は、今でも忘れられません。
7年目の時には、初めて現場の所長として社会福祉施設の交流ホームの建築を担当しました。初めての所長業務ということもあり、不安が大きかったです。建物がちゃんと完成するのか不安でいっぱいで、毎日上司や先輩に電話で相談し、アドバイスをもらいました。職人さんとも連携しながら、一つずつ課題をクリアしていきました。
そして、ついに建物が完成し、確認検査、竣工式、引き渡しと、すべての工程が無事に終了した時は、本当に達成感がありました。「私でもできたんだ」という感動と共に、1年目の頃から積み重ねてきた経験が、今の自分の成長に繋がっていることを実感しました。これまで努力してきたことが無駄ではなかったと確信し、大きな自信になりました。
現場監督の苦労・常に気を付けていること
現場監督の仕事をしていて苦労したことや大変だなと感じることはたくさんあります。
一番難しいと感じるのは、お客様からの要望にどう答えるかということです。私自身、まだまだ経験不足で、上司や先輩に相談したり、職人さんにアドバイスをもらったりしながら対応していますが、時には、お客様の希望に沿えないケースもあり、とても悔しい思いをします。
また、近年、どの業界でも人手不足が深刻で、建設業界も例外ではありません。現場で働く職人さんは高齢化が進み、若い方が本当に少ないのが現状です。人手不足によって、工程の調整や手待ちが発生し、急な対応が必要になった場合には、対応が難しいと感じることがあります。
天候の影響を最小限に抑えることも、大変な作業です。しかし、天候に左右されながらもうまく調整できた時は、達成感を感じます。
日々の業務の中で、特に気を付けていることは、コミュニケーションです。現場に来てくださる職人さんは、職人気質の方が多いので、仕事の話をする時は、丁寧な言葉遣いを心がけています。なれなれしく話すと、相手に失礼に思われたり、指示を聞いてもらえなくなる可能性もあるからです。職人さんの仕事ぶりをしっかり見て、信頼関係を築くことが大切だと考えています。
現場の雰囲気は、作業の効率や安全にも影響するため、明るく話しやすいものになるように意識しています。
さらに、現場監督として、私が常に心がけていることは、自分が納得できないことは無理に進めないということです。経験不足で分からないことが多いにも関わらず、職人さんから「これはどうすればいいのか」「こうやっていいのか」と質問されることもあります。
その際、曖昧なまま「いいですよ」と答えるのではなく、一度考えさせてくださいと伝え、必ず自分の中で本当にそれで進めて問題ないのかを検討します。納得できない場合は、必ず上司に相談し、問題がないことを確認してから、再度自分の中で納得してから回答するようにしています。
一度進んでしまった工程を戻すのは非常に大変です。進んでからの手戻りは、関係するものが多くなり、余計な費用と工期がかかってしまうので、慎重に判断するようにしています。
充実したサポート体制と働きやすい環境
職場の雰囲気はとてもいいと思っています。上司や先輩に質問や相談もしやすく、私の話をよく聞いてくれる、聞こうとしてくれるのが伝わってくるので、すごく雰囲気の良い会社、職場だなと感じています。
会社のサポート体制も充実しています。基本的に土日が休みの週休2日制ですが、どうしても土日に休めない場合は必ず平日のどこかで休みを取り、1週間で必ず2日間休むことになっています。会社が徹底して週休2日を推奨しているので、現場でも「会社がそう言っているから、週休2日を取れるように最初から計画して、今週は誰と誰が土日休むか調整しよう」という雰囲気があります。会社がしっかり休暇取得をサポートしてくれるので、とても助かっています。
また、会社ではDX化も積極的に進められています。以前は、現場での工事写真撮影のために、カメラ、工事黒板、物差しを全て持ち歩く必要がありました。しかし、今はスマートフォンのアプリ一つで全てが完結するシステムが導入され、働き方改革の一環として、業務効率化が図られています。
現場は男性が9割で、女性は私だけですが、小川工業ではどの現場にも女性専用のトイレを必ず設置するようにしています。最近は、女性の職人さんも増えてきて、よく見かけるようになりました。休憩所は、どうしても男性社員と一緒になってしまいます。事務所が広ければ、仕切りを設け、カーテンをかけて、女性専用のスペースを設けられることもありますが、どうしても現場の条件で、事務所が小さくなる場合は、スペースを作ることができません。その場合は、皆さんにお願いして外に出ていただき、着替えています。それでも、社員の方々は皆、女性に優しく、快く了承してくれるので、それほど気になりません。会社全体で女性を大切にするという意識があり、とてもありがたいと感じています。休憩所については、会社として女性用の更衣室を設けるように努めていますが、現場の条件によって、それが難しい場合もあります。
建設業界を目指す女性に向けてメッセージ
私は、これから入社してくる女性社員や後輩たちが、気兼ねなく相談できるような先輩になりたいと思っています。結婚や出産など、ライフスタイルの変化によって、仕事に対する考え方が変わることもあると思います。そんな変化があっても、現場で働き続けられることを私自身が証明したいと思っています。
建設業界は、女性にとってまだまだ進出しにくい分野かもしれません。しかし、近年は活躍する女性も増えていると思います。若手技術者の不足は深刻な問題ですが、女性ならではの視点で、女性も男性も外国の方々も、みんなが働きやすくて働きたくなるような建設業界になるように発展させていければなと思います。