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掲載日:2023年6月29日

サクラの外来害虫“クビアカツヤカミキリ”情報

埼玉県では、平成25(2013)年に、県南東部の草加市と八潮市で、クビアカツヤカミキリによるサクラの被害が初めて確認されました。その翌年の平成26(2014)年に八潮市のサクラで新たな被害が確認されたものの、その後しばらく被害報告はありませんでした。しかし、平成29(2017)年になって、県南東部の越谷市、県北部の羽生市、行田市、熊谷市、深谷市及び加須市で、新たなクビアカツヤカミキリ被害が確認され、それ以降、年々被害地域が拡大しています。

そこで、このホームページでは、クビアカツヤカミキリ(特定外来生物)の被害防止と注意喚起を目的として、その属性や生態、県内への侵入状況などの基礎的情報と、防除方法などの被害防止に関する情報を掲載します。

なお、「サクラの外来害虫“クビアカツヤカミキリ”被害防止の手引(第6版)(PDF:5,173KB)」とクビアカツヤカミキリの「資料用画像素材集」を作成しましたので御利用ください。

 

<1>「クビアカツヤカミキリ発見大調査2023」がスタートしました!皆さま、ぜひ御協力ください!!

この調査の詳細は、「クビアカツヤカミキリ発見大調査マニュアル2023」をご覧ください。

はじめに

  • 春から夏に向け、クビアカツヤカミキリ成虫の発生時期(6月~8月)を迎えるとともに、幼虫による被害も多くなってきます。環境科学国際センターでは、令和5(2023)年度も、多くの皆さまに御協力をいただくことにより、埼玉県内におけるクビアカツヤカミキリの被害状況を把握し、被害対策に活用することを目的として、「クビアカツヤカミキリ発見大調査2023」を実施します。この調査は、県内の公園や河川敷、学校などにあるサクラで、クビアカツヤカミキリの被害や成虫が確認された場合、当センターにその情報を報告していただくものです。埼玉のサクラを守るため、皆さま、ぜひ御協力ください。

調査参加者

  • 県内在住・在勤・在学のかたであれば、どなたでも御参加いただけます。

調査と報告の方法

  • 県内の公園や河川敷、学校などにある主にサクラを対象として、クビアカツヤカミキリの成虫の生息やフラスの排出状況を確認し、写真を撮るとともに、電子メールまたは郵便などにより、環境科学国際センターにその情報を報告していただきます。なお、ウメ、モモ、スモモなどのバラ科樹木に関する被害情報も受け付けます。調査や報告の方法の詳細は、「クビアカツヤカミキリ発見大調査マニュアル2023(PDF:689KB)」をご覧ください。
  • クビアカツヤカミキリの成虫やフラスを確認した場合は、市町村の環境関連部局や樹木・土地の管理者へ報告していただいても結構です。情報は、環境科学国際センターと共有されます。
  • スマートフォンからも簡単に報告していただけます。スマートフォンからの報告は、こちらか、下のQRコードをスマホで読み込んで行ってください。

クビアカ調査報告URLの二次元コード

調査期間

  • 集中調査期間を、令和5年8月31日(木曜日)までとして設定します。なお、集中調査期間外の情報提供も歓迎します。

その他

 

<2>「クビアカツヤカミキリ発見大調査2022」結果報告

  • 令和4(2022)年度に実施された「クビアカツヤカミキリ発見大調査2022」では、県内47市町村の1034か所から報告があり、そのうち、22市町村(草加市、八潮市、越谷市、羽生市、熊谷市、行田市、深谷市、加須市、吉川市、三郷市、鴻巣市、寄居町、幸手市、久喜市、本庄市、東松山市、美里町、長瀞町、滑川町、神川町、小川町、東秩父村)の598か所から被害発生(成虫のみの確認を含む)の報告がありました。また、これらの情報に基づき、「クビアカツヤカミキリ調査地点マップ」を作成しました。このマップでは、県内の被害発生地域や、被害発生及び被害未発生地点に関する情報が確認できます。この調査に御協力いただいた皆さまに、深く感謝申し上げます。
  • 当センター自然環境担当では、県民の皆さまの御要望に応じて、クビアカツヤカミキリの被害防止に関する出前講座や研修会を実施していますので、ぜひ御活用ください。詳しくは、同担当(電話: 0480-73-8370)までお問合せください。

 

<3>クビアカツヤカミキリについて

属性

  • カミキリムシ科ジャコウカミキリ属に属する。
  • 学名は、Aromia bungii (アロミア・ブンギ)。
  • 特定外来生物に指定され(平成30(2018)年1月)、飼育や運搬などは原則禁止。

形態

  • 成虫の体長は25-40mm程度。
  • 成虫の前胸背板は明赤色で、他は光沢のある黒色。前胸背板の側面に頑丈なとげ状の瘤(こぶ)を一対持つ(図1及び図2の青矢印の部分)。
  • 触角は黒色で、オス(図1)の触角は体長より長く、メス(図2)の触角は体長と同等か、やや短い。

 

クビアカツヤカミキリ(オス成虫)の写真

図1 クビアカツヤカミキリのオス成虫

 

クビアカツヤカミキリ(メス成虫)の写真

図2 クビアカツヤカミキリのメス成虫

生態 

  • 自然分布は、中国、モンゴル、朝鮮半島、ベトナムなど。
  • サクラ、モモ、スモモ、ウメなどの主にバラ科の樹木を加害する。
  • 幼虫(図3)は、バラ科樹木の生木(辺材や心材)を摂食し、フラス(フンと木屑が混ざったもので、褐色のカリントウ状で比較的硬い)(図4)を排出しながら、樹体内で2~3年かけて成長し、蛹(さなぎ)となる。
  • 幼虫の活動期は春から秋にかけてであり、この間にフラスが排出される。
  • 蛹は6月中旬から8月上旬に成虫となり、樹体外に脱出する。
  • メスの成虫は交尾後、幹や枝の樹皮の割れ目などに産卵する。卵は8~9日後に孵化する。メス1頭あたり1000個近くの卵を産むこともある。
  • 成虫の寿命は、野外では1ヶ月程度。成虫で越冬はしない。

 

 クビアカツヤカミキリの幼虫の写真

図3 クビアカツヤカミキリの幼虫

 

クビアカツヤカミキリのフラスの写真

図4 クビアカツヤカミキリのフラス

 

<4>国内及び県内への侵入状況

侵入経路

  • 輸入木材や梱包用木材、輸送用パレットなどに幼虫が潜んだまま運ばれてきて、国内で成虫に羽化し、繁殖したものと考えられている。

国内への侵入状況

  • 平成24(2012)年に愛知県、平成25(2013)年に埼玉県、平成27(2015)年に群馬県、東京都、大阪府、徳島県、平成28(2016)年に栃木県、令和元(2019)年に奈良県、三重県、茨城県、和歌山県、令和3(2021)年に神奈川県、令和4(2022)年に兵庫県で、それぞれ初めて被害が確認された(表1)。ただし、埼玉県では、平成23(2011)年に、深谷市でオスの成虫(1頭)が捕獲されたが、このとき、当地周辺では被害は確認されなかった。
  • 被害が確認された13都府県での被害樹種は、主にサクラ、モモ、スモモ、ウメといったバラ科の樹種である(表1)。 

 

表1 国内でのクビアカツヤカミキリによる被害確認の状況と被害樹種

Table1_20230420

県内への侵入状況

  • 平成23(2011)年に、深谷市で成虫(1頭)が捕獲されたが、このとき実施された捕獲地周辺の調査では、被害は確認されなかった。
  • 県内での初めての被害は、平成25(2013)年に、県南東部の草加市と八潮市を流れる葛西用水沿いのサクラで確認された。翌年の平成26(2014)年には、八潮市で被害が確認されたものの、その後県への被害報告はなかった。
  • ところが、平成29(2017)年になって、県南東部の越谷市、県北部の羽生市、行田市、熊谷市、深谷市及び加須市で、新たに同種の侵入・被害が確認され、急激な被害の拡大が懸念された。
  • このような状況を受けて、当センターでは、県内での同種による被害の実態を明らかにするために、平成30(2018)年から、県民参加による「クビアカツヤカミキリ発見大調査」を実施し、県内での被害状況を把握する調査を開始した。
  • その結果、平成30年度は、県南東部の草加市、八潮市及び越谷市、県北部の羽生市、行田市、熊谷市、深谷市及び加須市で、被害(成虫のみの発見を含む)が報告された。以降、同調査は、令和3年度まで毎年度実施している。
  • 令和元(2019)年度は、平成30年度までに被害が確認された8市に、三郷市、吉川市、鴻巣市及び寄居町の3市1町が新たに加わり、計12市町で被害が報告された。
  • 令和2(2020)年度は、令和元年度までの12市町に、上里町、幸手市、久喜市及び本庄市の3市1町が新たに加わり、計16市町で被害が報告された。
  • 令和3(2021)年度は、令和2年度に被害が確認された15市町(上里町からの報告はなかった)に、東松山市、美里町及び吉見町の1市2町が新たに加わり、計18市町で被害が報告された。なお、令和3年度までに被害が報告された市町は延べ19市町となった。
  • 令和4(2022)年度は、令和3年度に被害が確認された17市町(吉見町からの報告はなかった)に、長瀞町、滑川町、神川町、小川町及び東秩父村の4町1村が新たに加わり、計22市町村で被害が確認された。なお、令和4年度までに被害が報告された市町村は延べ24市町村となった。
  • このように、県内では年々被害地域が拡大する傾向にあった。なお、図5に、令和4年度までにクビアカツヤカミキリによる被害が確認された地域を示す。このマップに関する詳細は、クビアカツヤカミキリ調査地点マップを参照されたい。
  • 県内では、報告された被害の多くがサクラだったが、モモ、スモモ及びウメの被害も報告されている。

⇒ 更なる被害の拡大が懸念される!

 

fig5_20230420

 図5 令和4年度までにクビアカツヤカミキリによる被害が確認された地域(色付きのメッシュの地域)

 

<5>被害実態

  • 樹体に幼虫が侵入すると、根元に大量のフラスがばらまかれて溜まる場合が多い(図6)。また、フラスは、木の葉に絡みついている場合や幹が二つに分かれる股の部分に溜まっている場合などもある。これらのことから、フラスは、排出されたものが上から落ちてきて溜まる場合が多いと考えられる。
  • フラスが溜まっている場所の上方の幹や枝には、フラス排出孔が認められ(図7)、そこから挽き肉のようにフラスが排出される。
  • 1頭の幼虫による樹体の摂食範囲はかなり広く(図8)、被害は心材にまで至る(図9)。
  • 幼虫は樹体を摂食しながらその内部で2~3年を過ごし、蛹になった後、樹体表面に開けられた成虫脱出孔(楕円形で、長径が2~3cm程度)(図10)から成虫となって樹体外に脱出する。 
  • 1本の樹体に複数個体の幼虫が侵入・羽化すると、その内部は激しく食害を受け、地上部への水揚げなどが悪くなることから、樹体が枯死することもある(図10)。

⇒ 木を枯らさないためには、早期発見、早期防除が必要!

 

 サクラの根元に散乱したフラスの様子の写真

図6 サクラの根元に散乱したフラス

 

フラスの排出孔が確認された樹木の写真

図7 フラス排出孔(黄色の矢印)

 

サクラに侵入した1頭の幼虫による摂食範囲を確認された写真

図8 サクラに侵入した1頭の幼虫による摂食範囲

 

心材まで摂食された樹体断片の写真

 図9 幼虫に心材まで摂食された樹体断片

 

樹体の枯死と成虫脱出孔が確認された樹木の写真

図10 サクラの樹体に生じた成虫脱出孔(黄色の矢印)と枯死

 

<6>被害確認の方法

1)フラスの確認

  • 根元などに大量に散乱・堆積するフラスがあるか否かを確認する(図6)。 
  • フラスは、通常、褐色のカリントウ状で比較的硬いのが特徴である(図4)。

 → フラスがあれば、樹体内に幼虫が侵入し、生存していることを示す。

2)フラス排出孔の確認

  • フラスが樹体のどこから排出されているのかを確認する。
  • 樹体からフラスが挽き肉状にとび出している場所がフラス排出孔である(図7)。ただし、フラス排出孔が小さく、見つけにくいことがある。

→ フラス排出孔は、農薬を注入するときの注入口や、注入場所決定の目安となる。

3)成虫脱出孔の確認

  • 樹体に成虫脱出孔があるか否かを確認する(図10)。
  • 成虫脱出孔は、楕円形で、長径が2~3cm程度である。 

→ 成虫脱出孔があれば、過去にその樹体から成虫が羽化したことがあることを示す。

→ 複数の脱出孔がある場合、樹体内部は大きく食害を受けている可能性がある。

4)樹体枯死の確認

  • 樹体に枯死した箇所があるか否かを確認する(図10) 。

⇒上記の4項目について確認し、被害の程度を把握した上で防除の方法を検討する。

 

<7>防除の方法

(1)野外で成虫を見つけたらすぐに捕殺する。

(2)春から秋にかけて、樹木の根元などにフラスが確認された場合、フラス排出孔を見つけ、針金や千枚通しなどでフラスを取り除くとともに、そこから針金を挿入して幼虫を刺殺するか、登録農薬(薬剤名:ロビンフット、アクセルフロアブル、園芸用キンチョールE、マツグリーン液剤2またはバイオセーフ)を注入して駆除する(図11)。なお、農薬を使用する場合は、取り扱い上の注意に従うこと(表2)。処理後には見回りを実施し、フラスの排出がないことを確認する。フラスの排出が確認された場合は、再度、農薬を注入する。

 

羽生市での防除事例の写真

図11 農薬処理の事例

 

表2 サクラに関するクビアカツヤカミキリの防除農薬と農薬登録上の規定

サクラに関するクビアカツヤカミキリの防除農薬と農薬登録上の規定の表

 

(3)フラス排出孔から大量で大型のフラスが確認された場合、羽化時期が近づいていると考えられるため、(2)と同様に、フラス排出孔から農薬注入などを実施するとともに、成虫の拡散防止のため、羽化期前の5月下旬頃までに、樹木の幹にネット(目合4mm以下の防鳥ネットなど)を、1周から1周半程度巻き付ける(図12)。また、ネットを巻き付ける前に、樹体の幹または幹の分枝部分に、登録農薬のバイオリサ<カミキリ>スリム(昆虫寄生性糸状菌製剤)を巻き付けておくと効果的である。成虫が、同製剤に触れて糸状菌に感染すると、カビが生えて死に至る。なお、農薬を使用する場合は、取り扱い上の注意に従うこと(表2)。ネットを巻き付けた後は、定期的に見回り、羽化した成虫がネット内にいれば捕殺する。また、ネットは、羽化期が終わった9月以降に取り外す。

 

農薬処理とネットの巻き付けを併用した事例の写真

 図12 農薬処理とネットの巻き付けを併用した事例

 

(4)樹体からフラスの排出が認められた場合、フラス排出孔よりも下の根際部にドリルで穴を開け、そこから登録農薬(薬剤名:アトラック液剤、ウッドスターまたはリバイブ)を適量注入することにより(図13)、幼虫を駆除することができる。この方法では、樹体に注入された農薬成分が蒸散流に乗り、樹体全体に拡散・浸透する仕組みになっている。幼虫は農薬成分が浸透した樹体の一部を摂食することにより駆除される。しかし、幼虫による被害が大きく、すでに樹体の一部に枯死の兆候が現れているような場合は、農薬の拡散・浸透が進まず、効果が低い可能性がある。また、蛹化した個体や成虫には効果が現れないと考えられる。したがって、樹体内からの羽化・脱出時期が近づいていることが予想される被害木の場合は、ネットの巻き付けとの併用を推奨する。なお、農薬を使用する場合は、取り扱い上の注意に従うこと(表2)。

 

ドリルで開けた穴に農薬(ウッドスター)を注入する様子の写真

 図13 ドリルで開けた穴に農薬(ウッドスター)を注入する様子

 

(5)樹体に複数のフラス排出孔や成虫脱出孔が確認され、特に枝などに枯死が確認された場合は、伐倒処理することが望ましい。伐採した材は、幼虫が潜んでいる可能性があるため、必ずチップ化または焼却処分する。直ちにチップ化や焼却処分ができない場合は、伐採した材をビニールシートなどで覆い、登録農薬(薬剤名: キルパー40またはNCS)を用いて、くん蒸処理し、材の内部にいる幼虫を死滅させる。また、残った切り株から成虫が脱出しないように、ネットを被せておくなどの処理(図14)が必要である。

 

ネットを被せた切り株の写真

 図14 伐採後にネットを被せた切り株

 

(6)県内におけるクビアカツヤカミキリによる被害地域は、年々拡大している。このことから、すでに被害が発生している地域の周辺で、まだ被害が発生していない地域でも、今後成虫が飛来・産卵することにより被害が発生する可能性がある。このような成虫に対応するため、成虫発生初期や成虫発生期に、樹体または主幹に登録農薬(薬剤名: 表2の「樹体に散布する農薬」参照)を散布する方法がある。なお、散布農薬を使用する場合は、取り扱い上の注意(表2)および「埼玉県における県有施設・樹木の消毒等に関する取組方針」に従うこと。

 

<8>被害防止の手引の入手

 

<9>出前講座

  

<10>お問合せ 

  • このサイトとクビアカツヤカミキリに関するお問合せは、以下の連絡先までお願いします。

 

<連絡先>

 埼玉県環境科学国際センター自然環境担当

〒347-0115 埼玉県加須市上種足914

 電話: 0480-73-8370 又は 0480-73-8331(代表)

 ファックス:0480-70-2031

 E-mail: g738331@pref.saitama.lg.jp

 

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 自然環境担当 三輪誠

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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