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掲載日:2020年12月4日
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今月号は、横瀬町立横瀬小学校 林 和彦 主幹教諭の取組を紹介します。
林主幹教諭は、理科の研究主任として、「思考力・表現力を高めるような主体的な学び合い」を授業の中に多く取り入れる小グループの学習の仕方を実践・提案し、校内のみならず近隣小中学校の学力向上に大きく貢献しています。
本年度はさらに主幹教諭として教務全般に関わり、学校運営全体を支えています。
常日頃からどうしたら子供たちの興味を引き出せるか考え、そして着実に実践していく、理科大好きな先生です。
きっかけは、中学3年のときの進路指導の中で、先生に、教員に向いているんじゃないかと声をかけていただいたことです。
確かに、近所の小さい子と遊ぶのも好きでしたし、仲間と行事や部活に打ち込める学校という場所がすごく好きで充実していましたので、そこで仕事ができるということにすごく魅力を感じて、以来、教員を目指すようになりました。
本年度から主幹教諭になりまして、今までの担任としての仕事からはガラッと変わり、教務全般、学校全体に関わることをしています。
初めての仕事が多くて途惑うことが多く、他の職員に迷惑をかけてしまうことも多いのですが、これまではあまり多くなかった低学年の子供たちとの関わりを持つことができたり、学校全体、全校児童に関わることができたりするので、担任とは違った魅力を感じています。
子供たちの反応はもとより、様々な調査でも言及されていたりすることですけど、なんといっても理科といえば実験・観察ですね。私自身、中学3年の時に教員を目指したときも、理科の授業で特に実験の楽しさを感じていました。アンモニアを使った噴水実験は衝撃的で、今でも強く印象に残っています。普段見られない現象、事象を目の当たりにする、ということが理科の実験・観察の魅力だと思います。
ただ一方で、それだけに留まってしまってはもったいないとも思います。初任のころはとにかく実験・観察しようぜ!という感じで授業を進めていましたが、最近は、実験・観察をしたあと、このことから何がわかるとか、こんなことが言えるとか、子供たちが考える部分を大事にすることで、理科の授業がさらに魅力的になるのではないかとようやく感じ始めました。
そんなに大それたことではないですが、導入場面などでこんな実験器具を使ったら、子供たちが喜ぶかな、驚くかな、興味をもってできるかな、という点を意識しています。
授業中「先生、それもう知ってるよ」と子供に言われてしまうことがあります。5年生の理科の授業で「物の溶け方」を学ぶ単元があり、その中で食塩を溶かす実験をやるのですが、みんな食塩を溶かした経験はあるので、「水に食塩を入れたら溶ける。なんてもう知ってるよ!」という感じであまり食いつきが良くありません。
そこで、ちょっと普段見たことないようなものを取り出して「今日はこれを使うよ」というと、食塩の溶け方にさほど興味を持っていなかった子も、「なんか出てきたぞ」と興味をもって授業に臨めるようになったり、新たな発見をしたりします。子供たちが興味を持てるように自分なりに色々と工夫していくことが大事だと思います。
調査などを見てみると、依然として学年が上がるにつれて、小学校から中学校に上がるにつれて、理科よりも、やっぱり国語、算数(数学)、英語とかのほうが大事だという意識が強くなるようです。
小学校段階で、理科に対する意識が変わっていくと、中学校での理科に対する意識も変わってくるのかなと思います。
「ビーカーの中でかき回して溶かしても、家でコップで溶かす時とさほど変わらないので、子供たちも興味が湧かないようです。長い筒に水を入れて上から食塩を落とすと、水の中をおちながら食塩が溶けて消えていく様子が見られて、子供たちも興味深々見てくれました。」と林先生。
ちょうど良い透明な筒を見つけるために、ホームセンターを何軒もはしごしたそうです。
平成26年度に長期研修に出させていただき、話し合い活動を通して思考力を高めるということをやってきました。
「実験楽しかった!」のあとに、今日の授業で何が分かったのか、子供たち自身が考えられるように、3人グループを作って、話し合います。
ただ、子供たちは、グループを作って「それじゃあ話し合ってごらん」と言ってもなかなか話し合えないものです。それぞれが考えたことを「僕はこう考えます」「私はこうです」「僕はこう思いました」と話して終わってしまったり、グループの中で発言力がある子が「こうだと思う」と言うと他の二人が「そうだよね」と同意して終わってしまったり。
そこで、グループの中で「発表する子」と「質問する子」という役割を与えることにしました。
「質問する子」はあらかじめ渡した質問例を参考にして、「なぜそう考えたのですか」など質問をします。
質問された子は、それについて説明することで、自分の考えがもっと深まったり、自分の考え方が少しずれているのではと気づいたりできます。また、説明する際に最初発表するときには思ってもなかったことに気づき、説明に付け加えることもあります。
自分の考えをもう一回考え直す機会を作ることができるんですね。
説明と質問と再度の説明を繰り返すことで、思考力や表現力を高められる。そのような学習方法の研究に長期研修でじっくりと取り組むことができました。
特に役割を与えないで自由に話し合わせたグループとも比較をしましたが、役割を与えないグループの方が無言の時間が長かったり、3人が意見を言っておしまいだったり、という状況が分かりました。小学生の場合、話し合いの仕方を教えていくことも大切なのかなと思います。
もう一つはジグソー法を使った方法です。
最初に5人のグループを作り、「てこの仕組みが使われている道具を見つける」をテーマに、5人が別々に他のグループに行ってそれぞれ違う道具について話し合っていきます。
次に自分のグループに戻って、他のグループで話し合ってきた道具についてグループ内で発表します。「自分のグループの中でその道具について知っているのは自分だけ」という状況をつくることで、説明に主体性や責任を持たせます。
意図的にそのような場を用意することで、普段はなかなか発言しない子もグループ内で自分の意見を言えるようになります。
これを繰り返すことで、表現力を身に付けていきます。
本校では総務省の委託事業で、タブレット端末を50台程度使用しています。ひとクラスであれば一人1台使えます。ICTの活用を理科でも積極的にやっていくことで魅力的な、効果的な授業ができるのではないかと考えています。タブレットを含めたICTを活用した授業づくりに努めているところです。
ただ、子供たちはタブレットそのものに魅力を感じてしまって、タブレットに気を取られてしまってこちらの話を聞かないといった状況も当初はありました。
まずは、「先生が説明しているときは、タブレットを机の上に画面を伏せて置く。」などのルール作りから始まりました。
タブレットのための授業ではなく、あくまでもタブレットを活用しての効果的な理科の授業を実現するために、日々模索しています。まだまだ課題ばかりです。
私は教員になると決めた中学3年のときから、ずっと教員になることを目指して、そして現在この職についたわけですが、本当によかったなと思っています。
教師は、毎日成長していく子供たちの姿を間近で見ることができます。
例えば、同じ水曜日でも先週と今週では子供たちの表情や反応が違いますし、一日一日が違ってその変化を見ることができるのがこの仕事の一番の魅力かなと思います。
製造業などは、一定の品質を繰り返し作っていくことが大事かと思いますが、学校は子供たち一人ひとりにその子に合ったアプローチをして、子供たちのそれぞれの個性を伸ばしていく、そんなところが面白い仕事だと思います。
大変な面もあります。子供たちが下校したあと、夜遅くまで授業の準備をしたり。でも結果として子供たちの成長だったり喜びにつながっている様子を見ると、「やってよかったな」「次もがんばろう」といったことにつながっていきます。
将来的に今ある仕事の多くがAIにとってかわられてしまうといわれていますが、教員という仕事については、きっと人間にしかできないのではないかと私は思っています。「教育は人なり、人は心なり」という言葉があるように、心があってこその教育だと思いますので、人対人の情熱を持った仕事ができるのが魅力だと思います。
是非教員になって、AIにはない情熱を持って、一緒に子供たちのために働きましょう。
【インタビューを終えて】
林先生の話を聞いているうちに、小学校の理科の時間、学校の外に出て植物を観察して教室戻ってくると、時間がなくて最後の考察・まとめはほとんどできなかったことを思い出しました。短い授業時間の中で、実験・観察のあとに考える時間を確保することは大変なことだと思います。
様々な工夫を重ねて子供たちに理科の面白さを伝えていく、熱い先生でした。
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