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掲載日:2020年12月4日
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今月号は、ふじみ野市立福岡中学校 横山 勝志 教諭の取組を紹介します。
横山教諭は、道徳教育推進教師として、研究体制の整備や授業公開、授業改善を進め、教職員の道徳への意識改革を図り、学校内における道徳教育の重要性を高めています。
横山教諭の指導法を学んだり、自主的に道徳の研修会に参加するようになるなど、若手教職員の成長にも大きく寄与しています。
さらに、近隣市町村小中学校の校内研修においても講師として活動するなど、他校の道徳教育の向上にも携わっています。
自分が中学生のときに学校の先生を主人公としたドラマが流行っていて、学校の先生って面白い仕事だなと思ったのが一つです。
もう一つは、自分が中学生の時の理科の先生がすごく面白い先生で、自分も将来同じ仕事に就きたいなと思ったことです。その先生は、チョーク3本だけしか教室に持ってこなくて、目の前の生徒のノートを見て、「前の授業でそこまでやったか。じゃあ今日はここからだな」と言ってささっと授業を始めてしまうような、独特な方でした。
大きく4つあります。学年主任として学年をまとめること、数学科の担当なので数学の授業をすること、道徳教育推進教師として学校全体の道徳教育を推進すること、ソフトボール部の副顧問なので部活の指導もあります。
基本的に週1時間、担任によるクラスごとの授業を実施しています。学期によっては集中的に学年全体で実施したり、担任が違うクラスに行って授業を実施することもあります。私自身は学年主任でクラスを持っていないのですが、学年全体での授業のときに話すことはあります。
今のところは道徳の教科化に向けて特別にやり方を変えているということはないです。
ある地域では、道徳をきちんとやった学校と、ほとんどやっていない学校ではどのくらい学力差が出るとか、問題行動にどのくらい差があるか、10年ほど調べて道徳の効果をデータ化しています。道徳の効果は見事に表れているようです。
道徳をやっている学校には、荒れている学校はない。やったらやった分だけしっかり返ってきます。
年度当初に年間の実施計画を作りますが、とにかく着実に実施するということが1つ目のポイントです。時には、何かの行事や教科に振り替えられることもありますが、その場合でも再度振替直して道徳の授業をしっかりやることが大事だと考えています。
2つ目は横の連携です。本校は一学年5クラスで担任も5人いますから、例えば「1組でこんな内容の話をしたら反応がよかったから、やってみたら?」とか、「この前こんな話をしたら生徒の反応が今一つだったから、こんな感じに変えてみてはどう?」とか、担任同士の会話があるかないかで道徳教育の質が大分違ってくると思います。道徳の時間をどのように工夫していけるか横の連携で相談していければ良いと思います。
3つ目は情報提供です。私みたいな立場の教員が多くの実践例を紹介していくことです。道徳教育学会で紹介された内容を校内研修で伝えるとか、県の発表内容を伝えるとか。実践を一つでも多く伝えていくことが大事かなと。
色々な実践例を紹介していくことで、担任が道徳の授業で使う引き出しを増やしていきたいと考えています。
4つ目は国と県の動向ですね。国は教科化に向けてという動きがありますし、県もこういう道徳をしていこうじゃないかというのがあります。そういった情報をしっかり理解して授業することです。「俺はこういう道徳をするんだ」と独りよがりになってしまっては道徳としてどうなのかなと思いますし、国や県の動向を知って、それをもとに実践していくことが大事だと思います。
違いはあって良いと思います。指導案は一つでも10人教員がいたら10個の授業があるはずだと、お世話になった先生が昔言っていました。本来は指導案に沿って誰でも同じ授業を展開するべきですが、担任のカラーが出てもいいのではと思います。子供たちも「今日は横山先生は何を話すんだろう」と授業に臨んでくるので。お手本となるような素晴らしい授業があっても、そのままその授業をやることは自分の授業ではないです。自分らしい授業をすればいいし、それがきちんと子供たちに伝わればいいと思います。
その教員個人の思想的な部分を植え付けるようなことをしてはもちろんいけませんが、色々なやり方で担任のカラーが出るくらいで良いのかなと私は思っています。
主に8つのことを行います。
1つ目は、1年間の年間指導計画を作成してそれを職員に周知し、徹底させることです
2つ目は、道徳に関する様々な研修会や講演会に行ったときに、職員にその内容を伝えることです。
3つ目は、先ほどお話した国や県の動向を把握して職員に伝えていくことです。
4つ目は、道徳教材の整備充実です。文科省からも教材をしっかり整備するよう言われています。道徳教室みたいなのがあって、そこに授業で使える写真とか紙芝居とか、誰でも使えるように常備できるとよいのですが、今のところは、「横山先生あれ貸して、これ貸して」といった感じで他の先生に教材をお貸しして使ってもらっています。
5つ目は、校内の先生方の相談相手です。「道徳で良い題材がないでしょうか」などに応えていきます。あとは「授業の中でこんな展開にしたいのだけど」、とか、「この週末に道徳に関するイベントなどはないか」などの相談を受けることがあります。「こんなのどう?」とアドバイスするようなこともあります。
6つ目は、学校・家庭・地域のパイプ役です。これは道徳主任から道徳教育推進教師に変わり強く言われている点です。学校内だけでなく、家庭に対して発信したり、地域に対しても、その学校の道徳の顔となるポジションにならなければいけません。この点、私はまだまだです。
7つ目は、小中連携のパイプ役です。できてる地域は結構できています。福岡中学校は4つの小学校から進学してくる学校なので、4つの小学校との連携を考えなければいけない状況で、これがなかなか難しいです。三芳町は1つの中学校に2つの小学校の全ての児童が進学してくるので、小中の連携が進んでいます。中学校の先生が小学校にいって授業をしたり、逆に小学校の先生が中学校に顔をだしたり。
8つ目は、PDCAサイクルを回していくことです。1年通して取り組んで、じゃあ来年どうしようかと提案していきます。道徳教育全般の1年間の活動の反省と来年度への提案が大事なことです。
保護者を対象にした家庭教育学級などで、今学校でこんなことをやっていますよと保護者に紹介する先生もいます。一番良いのは授業公開だと思います。例えば全クラス道徳授業公開とか。ある地域はそういう取り組みをしているのですが、実際にやるのはなかなか難しいです。特に一学年が5、6クラスになってくると。
担任をもってないこともあるのですが、今担当している子たちは1年生から持ち上がりで担当している子たちです。
1年生のときに教員が出張で自習になったときに、漢字を書いたり英単語書いたりといった課題をやるのと道徳の授業やるのどっちがいいか子供たちに聞くと「道徳が良い」って言うんですよ。それで自習時間に私が道徳をやっていくうちに、子供たちも道徳の授業が嫌ではないんだな、好きなんだなってわかったので、じゃあきちんと計画立ててやろうと思ったのが、ドナーカードです。ドナー登録をするかしないか、1年生全クラスでやりました。
登録自体は中学1年生はできませんし、活用した資料も本来は中学3年生向けの教材に載っているもので、敢えて1年生の授業で使ってみました。やってみると、やはりまだ早かったようで「俺登録するよ」って簡単に言っちゃう子が3年生と比べると多かったですね。
あと、「お子さんがドナー登録をしたいと言い出したら、どのように声掛けをしますか。その内容を手紙にしてください」と保護者に依頼しました。授業の終わりごろに、お父さんお母さんから手紙預かっているから見てごらんと、そんな授業をしたのが1年生のときは一番大きな印象に残る授業でした。
親からはやっぱり「先生はドナー登録を勧めるんですか?」と問い合わせがありました。「ドナー登録を通して命の大切さや脳死について深く考えさせたいんです」と回答させていただきました。
ただ、子供たちも「先生がドナー登録の話をするということは、先生は登録を勧めているんだ」と勘違いする子も多かったです。授業の進め方をよく考えなければなりません。
親の直筆で書いた手紙を読んで、ポロポロ涙を流す子もいました。親が自分のことを大切に思ってくれていることを生徒は感じられたようで、よかったなと思います。
2年生の時はゲストティーチャーをお招きして、学年全体で道徳の授業を行いました。
まず1コマ目で、難病を患っている少女が闘病生活を送りながら絵本を製作するという実話をまとめた映像を見せました。少女は最後亡くなってしまいます。少女の母親も番組の中で登場しています。
2コマ目で、「実はさっき映像に出ていたお母さんに、今日来てもらっています」と生徒たちに紹介しました。そして、取材の様子とか闘病の様子とか、親の気持ちとかを話してもらって、みんな命を大切にしてねというメッセージをもらい、生徒には感想を書かせました。
3コマ目では難病と闘う子供たちの夢をかなえるために活動している団体の代表の方に来ていただき、ほかにもこんなに夢をかなえた子供がいるんだよと、3人の事例を紹介してもらいました。
病気でも夢をかなえる子たちがいっぱいいること、みんなも夢に向かってがんばろうねと話してもらいました。そして感想を書いて講師の方に郵送しました。
今年が3年生なのですが、1年生でやったドナーカードについて、本来の3年生の2、3月にやろうと考えています。入学間もないころと、卒業間近の今でどれくらい変容があるのか見てみたいです。子供たちもおそらく自分についての発見があるだろうし。ドナー登録できる年齢でもありますし、もう一回命の大切さを考えさせたいなと思っています。
道徳が教科になるということで、今、道徳は大きな変化の時期を迎えていると思います。また、教育現場ではICTの活用とか、アクティブラーニングとか色々な言葉が出てきています。
一方で、どんなに時代が変わっても子供たちは、朝学校に来て、先生がいて、授業があって、クラスメートがいて、部活やって帰ると、毎日の流れは何ら変わりはないと思います。
そんな中で教師は「子供たちが好きだ」とずっと言い続けられることが大事だと思います。
もう一つ、「出会い」を大切にしてほしいなと思います。
私は教員になって初めは生徒会とか特別活動、安全教育の担当などやっておりました。10年目過ぎたところで、道徳のすごい先生と出会ったことで、道徳を学ぶようになりました。その先生に出会わなかったら、全然違う仕事をしていたかもしれません。
出会いを大切にして、その人の良いところを見てあげると良いと思います。子供も、親も、仲間も同様です。この先生のこの部分が良いとか、保護者のこういうところが良いなど見つけていくと、仕事も楽しくなっていくと思います。
出会いを大切に、人の良さを見つけて、楽しく仕事をしてほしいなと思います。
【インタビューを終えて】
道徳の授業の話に出てきたゲストティーチャーの方々とは、数年来のお付き合いになるそうです。「出会いを大切に」と話す横山先生ならではのことだと思いました。また、話をしているだけで、子供たちが大好きで、子供たちにも好かれていることが感じられる先生でした。
道徳の重要性について話す姿が印象的で、今回の取材で道徳の大切さを改めて知ることができました。道徳教育への見方が今後変わっていくと思います。
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