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掲載日:2020年12月4日
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今月号は、深谷はばたき特別支援学校 野口 玲行 教諭の取組を紹介します。
野口教諭は、特別支援学校の教務主任として、教務事務全般の迅速正確な処理、教育課程編成検討、管理職と教職員のパイプ役など、学校運営全般で活躍している先生です。
新たな特別支援教育の流れを常に踏まえた教育観、冷静な観察眼を持ち、校内研修や総合教育センターの研修の指導者としても毎年活躍されています。
特別支援学校の諸課題解決に向けて、常に自己研鑽に励みながら周りの教職員を支援、リードしている先生です。
自分の学生時代は、テレビドラマで学園ものが流行っていて、学校の先生には色々なタイプの人がいて様々な形で仕事をしていたのが印象的でした。
当時のドラマに出てくるような熱血先生を目指していたわけではないですが、自分の個性を活かせるとともに、子供たちに色々なタイプの先生に接してもらうことで多くの刺激を与えられる、教員という仕事も良いのかなと思って選びました。
元々、色々な学校で教員をやりたいな、という気持ちがありました。
過去に大宮中央高校の通信制・単位制ができたときに関わらせてもらったときも、普通高校とは異なる環境で勉強する子供の様子を見させてもらうことができました。
直接のきっかけというわけではないのですが、一緒に働いていた若い臨時的任用の先生が採用されたのがたまたま特別支援学校で、特別支援学校の様子を聞くうちにだんだん関心が向いていきました。
昨年までは担任は持たずに教務主任をしていました。学校の教務関係の様々な書類を作ったり、大きなところでは学校行事計画の作成や教育課程の編成などの仕事をしていました。
今年は担任も持つようになったのですが、主幹教諭もいらっしゃるので、協力して教務関係の仕事をしています。
文書のチェックや回覧は主幹教諭が中心になってやっており、私は学校行事関係の調整や来年度以降の教育課程の編成に向けての仕事を割り振りしながらやっています。
人にもよると思いますが、私の場合は自分でぐいぐい引っ張っていくというよりは、「つなぎ役」を心掛けていました。管理職とほかの先生をつないだり、あとは学校内にある様々な「分掌」や、本校でいえば小学部から高等部までの「学部」など、学校内には様々な単位の組織があるので、そういった組織がうまく連携して動けるように心がけました。
分掌の代表の先生や学年の係の先生と普段からつながりを持って、スムーズに学校のいろいろな動きが取れるようにしました。
学校の皆さんに本当に協力的にやっていただいていたので難しかったことは特にありませんでした。
本校はまだ開校7年目という新しい学校ということもあり、先生方から、様々な意見が出てくる中で良い点を採りながら全体で話し合っていく雰囲気を作っていくことを考えていました。
教務ではいろいろな文書を扱うのですけど、一般的な行政文書については基本を押さえて規則に則って保管していきましょうと皆で確認してやっています。
特に気を付けていることは、子供の個人情報が担任の先生にたくさん集まってしまう点です。連絡帳の中で生徒の状態についての細かいことがやり取りされていたり、検査などの結果が残っていたり、子供の個人のデータがどうしても担任の先生の手元に集まってしまいます。
個人情報を担任の先生が一人で抱えることはあまりよくないことですので、なるべくそういった情報を学校が管理して保管する。ただ、全部を保管すると小学部から高等部まで12年間もの膨大なデータになってしまいますので、サイクルを決めて必要最低限これは残して、こういったものは廃棄するということを決めて、個人情報の漏えい防止と、必要な情報を継続して保管することに対応しています。
文書作成の効率化というところも関わらせていただいています。
指導要録も昨年度からパソコンで作成するようになりまして、指導要録の作成を効率的にできるよう関係する先生と協力して取り組んでいます。
最終的には支援プランというものを作成していて、そこに情報を集約していきます。
私は教務主任だけでなく、教育課程委員会の長もやらせていただいてて、支援プランの管理も担当しています。支援プランの書き方も共通化を図れるように委員会を通して先生方にお願いしています。
本校中学部には木工、陶芸、農作業、紙リサイクルの4つの作業班があります。埼玉県ではシュレッダーから出た紙くずを固めて作る植木鉢(エコポット)を一時推奨していて、本校立ち上げの時にエコポット製作の機械が導入されたのがきっかけで紙リサイクル班が始まりました。
ただ、担当する先生がいなくて、私も経験はなかったのですが、個人的に興味があったことだったので担当になりました。
エコポットのほか、牛乳パックからハガキを作ったり、文化祭とか入学式などの行事案内のためのハガキを漉いたりします。
はじめはハガキを作るだけでしたが、今は印刷、ラベル貼り、切手貼りなども子供たちの仕事にしています。「君たちが今やっていることは、お客さんにちゃんと届く。それを見て学校に来てくれている方がいる」と伝えながら、実際に役に立つ仕事を実践的にやらせてもらっています。
役に立てているということを子供たちに知ってもらいたいと取り組んでます。
そうですね。自分がやりたいなと思うことがきっかけであることは多いです。
エコポットについては造花を入れたり鉢を飾りつけしたり、取り組んでいく中で、こんなことができるんじゃないか、ああしたらもっと良くなるのではと、工夫しながらやっています。
(飾りつけしたエコポット)
(紙で作ったダルマ)
「子供たちが誰でも作業できるようにと日々考えています。このダルマは手でギュッと握るだけで作ることができるので、手先が器用ではない子供も作業することができます。」と野口教諭
学習指導要領が今後変わり、小中学校はすでに説明なども始まっている中で、やはり次の教育課程をどうするかです。
今は「社会に開かれた教育課程」という点を大事にしていこうと話し合っています。学校から外に出て、こういうことをして生きていくんだというものをしっかり意識して、教育課程を見直していく必要があると考えています。あとはチャンスがあれば、「うちの学校はこんな教育課程で子供たちを育てています」というのをなるべく外に発信できるような方向でいきたいと考えています。
また、カリキュラムマネジメントも重要と考えています。
自分たちが一年間通してどの授業で何をやっているのか、先生方自身でもう一度整理しなおす必要があると思います。一つの授業が単独で存在するのではなく、全体がひとつのまとまりとして授業とか学校生活が成り立っていることをよく意識して、それぞれの授業の関連性を考え、内容を充実させていけば良いなと思います。
さらに、特別支援学校ということで、教科の学習の他、教科領域等を合わせた指導としての作業学習、生活単元学習といったものをしっかりとつないでいく、どの時期に何をするなどを考えていくことが大事です。学年の差もありますので、どの学年で何をするのか、最初から完璧は難しいですが、これらを意識しながら作っていくと、だいぶ変わってくるのかなと思っています。
特に特別支援学校勤務が長いから感じることなのかもしれませんが、子供ってどんな状況になっても、いっぱい学びたいという気持ちをみんな持っていると思います。本校のように知的障害のある子供たちも、何かを知るとか、何かを覚えるとか何かができるようになるとすごく喜ぶというのを実際に経験してきています。どんなところで教鞭をとるにしても、子供たちに「何かができた、新しいことが分かった」という経験をさせてあげたらいいだろうなと思います。難しいことですけど。
普段の授業でもこれをやるとみんな喜んでくれるということを意識して、ちょっとしたことでも子供たちが達成感が得られるような形で臨んでもらいたいですね。
学校は自分を活かせる職場だと思います。自分の生き方というと大げさかもしれませんが、自分の考えとか自分のやってきたことをストレートに子供たちにぶつけていくというやりがいがあります。
自分の今ある力、持っている好奇心を活かして、先生方自身が、特に若い先生が、今できること、こうしたいと思っていることを積極的にやってもらいたいなと考えています。校内では、先生たちがやりたいと思うことをやれるように応援してあげたいと考えています。
【インタビューを終えて】
学習指導要領が変わっていく中で、今後どのような方向を目指して学校を運営していくかという話を伺いました。話し方は落ち着いた感じでしたが、特別支援教育に対する野口先生の責任感が伝わってきました。
「子供ってどんな状況になっても、いっぱい学びたいという気持ちをみんな持っていると思います。」という言葉にははっとさせられました。
高校から特別支援学校に希望して異動したり、紙リサイクル班の担当になったりと、興味が湧いたことには実際に取り組んでみる、チャレンジを続ける熱い先生でした。
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