所属における障害者雇用に関するマニュアルの内容について説明するものである。 これ以降マニュアル本文 表紙 障害者雇用について 大項目1.職場における支援体制 大項目2.障害に関する基礎知識 大項目3.募集・採用 大項目4.職務の切り出し 大項目5.職場定着 大項目6.県教育委員会障害者活躍推進計画 大項目7.参考資料 埼玉県教育委員会 特定非営利活動法人サンライズ 1ページ はじめに 障害者が働きやすい職場づくりを進めていくためには、施設や設備の整備だけではなく、人々の多様な在り方を相互に認め合い、その上で適切な支援を行っていくことが重要です。 また、それぞれの立場に応じて役割を分担し、チームとして協力していくことが不可欠です。 本資料は、所属において障害のある教職員を採用・雇用しようとするとき、また、採用後の定着支援など、雇用段階に応じた様々な場面で活用できることを目指し作成しました。 所属長や、所属内で直接障害者雇用に携わる教職員だけではなく、職場環境を形成するひとり一人の教職員が障害への理解を深め、職場全体として協力する体制を構築し、適切な支援に結び付けていただきますようお願いいたします。 埼玉県教育委員会 教育総務部総務課 県立学校部県立学校人事課 市町村支援部小中学校人事課 2ページ 大項目1.職場における支援体制 中項目1.支援体制の構築 障害者雇用においては、所属内の責任や役割を明確にし、組織的に対応することが重要です。 責任や役割を明確にすることで、適切な支援、問題の早期解決につながります。 関係する職員が共通認識をもち、チームとして適切な支援を行い、職場定着を促していくことが必要です。 以下、所属における役割の説明 1.所属長 全体統括 心のバリアフリー推進員や、障害者職業生活相談員に対し、職場環境整備など必要な措置に係る指示を行う。 上司・同僚に対し、業務の割振りなどの指示、マッチングなどの状況や課題等の把握を行う。 2.心のバリアフリー推進員、障害者職業生活相談員 上司・同僚に対し、職場環境整備や障害理解研修を実施する。 3.上司・同僚 障害のある職員に対し、業務の指示、進捗管理、服務管理、体調面のケアなどを行う。 4.支援員 上司・同僚と障害のある職員のコミュニケーションを補完する。 ポイント 障害のある職員が、その能力を発揮して活躍できるよう、職員間の信頼関係を築くとともに、職場内で綿密に情報共有し、チームとして支援することが重要です。 注釈1、心のバリアフリー推進員は、教育局課所館及び県立学校のみ配置しています。 注釈2、職業生活相談員は、障害者が5人以上在籍する所属に、法に基づき選任されます。小中学校の場合は各教育事務所に配置しています。 注釈3、支援員は、障害のある会計年度任用職員の障害の状況や程度などにより、必要に応じて配置します。 役割の説明、以上 3ページ 障害者を雇用した場合、直接かかわる担当者に負担がかかりやすくなります。 所属内では解決が難しい問題などには、外部支援機関を含めたチームで対応します。 以下、所属内外を含めた支援体制の説明 1.各人事担当者(総務課・県立学校人事課・小中学校人事課) 所属長からの相談を受け、人事管理面のサポートを行う 2.所属長 障害のある教職員から合理的配慮等の申し出、相談を受け、関係職員に対して必要な措置に係る指示を行う 3.心のバリアフリー推進員及び障害者職業生活相談員 所属長の指示を受け、所属の職場環境整備や所属職員に対する研修を実施する 4.上司・同僚 障害のある職員の相談を受けたり、業務管理やサポートを行ったりするなど、直接障害のある職員を支援する 5.外部支援機関(障害者就労支援センター、ハローワークなど) 障害のある職員からの相談を受け、生活面を含めたサポートを行う ポイント 障害のある職員や担当者が悩みやストレスを抱えないよう、日ごろから所属長が各職員間のコミュニケーションを補完したり、直接声掛けするなど、相談しやすい雰囲気をつくることが重要です。 注釈、所属長からの相談は、小中学校の場合、服務管理面や施設設備面を含め、市町村教育委員会が相談受付及びサポートを行います。 支援体制の説明、以上 4ページ 平成31年4月1日施行「障害者が働きやすい職場づくり推進要綱」抜粋 所属長の責務 所属長は、障害のある職員が、その能力を十分に発揮できるような職場環境を確保するために、必要な措置を講じるものとする。また、障害のある職員から職場環境について相談等の申出があった場合においては、迅速かつ適切に講じるものとする。 職員の責務 職員は、障害者に対する理解を深めるとともに、障害のある職員が働きやすい職場づくりに向けた取組に全面的に協力するものとする。 心のバリアフリー推進員 所属長は、職員の中から心のバリアフリー推進員を1名指定する。推進員は、原則として所属長に次ぐ職位(副課長、副館長、副校長、教頭、事務長等)にある者とする。推進員は所属長の指示を受け、所属内の次の事項について取り組むものとする。 @障害者理解のための意識啓発等の研修、A障害者が働きやすい職場づくりの推進、B障害のある職員からの相談等の対応 障害者職業生活相談員 障害のある職員が5人以上在籍する所属に、障害者雇用促進法に基づき配置する。当該所属職員の中から資格要件を満たす者を選任する。 相談員の主な業務 @障害者の適性・能力に応じた職務の選定等に関すること、A障害者の希望に応じた研修の実施等、障害者の職業能力向上等に関すること、B障害者の障害に応じた施設設備の改善等作業環境の整備に関すること、C労働条件や職場の人間関係等障害者の職業生活に関すること、D障害者の余暇活動に関すること、Eその他障害者の職場適応の向上に関すること 就業補助員(支援員) 障害のある会計年度任用職員の障害の状況や程度などにより、必要に応じて配置する。所属長や上司・同僚と障害のある職員とのコミュニケーションを補完する。なお、所属における障害者雇用に関する事務などを中心的に担う立場ではないことに注意。 5ページ 大項目2.障害に関する基礎知識 中項目1.職場における対応と配慮 職場定着は、「本人が職場に受け入れられていると感じられること」、「受け入れる職場側の理解の醸成」が鍵となります。 「本人が職場に受け入れられていると感じられること」につなげるには、「周囲の方との良好な関係性」、例えば、日々のあいさつ、相談・質問のしやすさ、相手に合わせたコミュニケーション、や、「業務にすこしずつ自信が持てるように育成すること」、例えば、できることから確実に、適切な指導の方法、ほめ方、しかり方、などがポイントです。 また、「受け入れる職場側の理解の醸成」につなげるには、「見えない障壁を低くする」、障壁は接したことがないことから生じることを理解する、意識しすぎないで付き合えること、などや、「相手への理解と適切なサポート」がポイントとなります。 これらを実践するには、心のバリアフリー、障害の特性や主な配慮などの知識を活用することが重要です。 6ページ ポイント1 障害特性だけに縛られず、本人を知り、理解し、対応することが大切です。 早い段階での支援、切れ目のない支援を心がけましょう。 理解されないことは誰もがつらい事です。対応者が身構えない、相手を認める対応が重要です。 障害のある職員がチームの一人として力を発揮できる職場環境をつくることが大事です。 本人を理解し適切な支援を実行するステップ ステップ1、障害特性を知る その人を知るためのヒントとして障害特性を理解する ステップ2、本人について知る 本人はどんな事が得意か?どんなことが苦手か?障害特性に縛られずコミュニケーションをとりながら把握する なお、障害特性についての情報は本人の了解を得た上で共有するなど、個人情報の取扱いに注意が必要です。 ステップ3、気づく いつもと違う表情や態度に気づく 作業のミスに気付く ステップ4、理由を考える 行動には理由や原因があると考え探る なぜミスがでるのか、なぜいつもと様子が違うのか ステップ5、実行する 職場の同僚としてできることをやり、周囲にも相談する 本人の思いを聞く 上司に相談やフォローを依頼 ポイント2 職場の人間関係を良好に保ちましょう。 あいさつは、気持ちよくはっきりと 相手に合わせた距離感で接していく フレンドリーはOK。しかし、子ども扱いはNG 7ページ 中項目2.心のバリアフリー 心のバリアフリーとは 障害の社会モデルを理解すること 障害のある人への差別を行わないよう徹底すること 自分とは異なる条件を持っている方とのコミュニケーションをとる力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し、共感する力を培うこと 以下、障害の「医学モデル」と「社会モデル」の説明 車いすを使用している女性がカーショップに行こうとしています 狭い入口、階段、急な坂道、案内がない、などの困りごとがあります。 「障害の医学モデル」では、障害は障害のある方の中にあって、リハビリなどをして社会に適応できるよう、「障害者本人が乗り越えなければならない」と考えます。 一方、「障害の社会モデル」では、障害は社会の中にあって、これを取り除くことが必要であり、困りごとを取り除いていくことが社会の責務である、と考えます。 なぜ困りごとがあるのかを考えるとき、バリアは社会の中にあり、これを取り除くことがバリアをなくすことであると捉えることが重要です。 8ページ 中項目3.障害特性の理解 小項目1.障害者とは 障害があるとは、継続的に日常生活や社会参加に困難をきたしている状態のことを指します。つまり、生活のしづらさがあるということ 障害者手帳の認定も、生活のしづらさの度合いによって基準が設けられています。 小項目2.障害者手帳 身体障害者手帳、療育手帳(知的障害)、精神障害者保健福祉手帳、の3種類 以下、障害等級等の説明 1.身体障害 手帳等級は1から6級まで。なお、身体障害者程度等級表は7級まで @視覚障害、A聴覚障害、平衡機能障害、B音声機能、言語機能または咀嚼機能の障害、C肢体不自由(四肢、体幹)D内部障害(心臓、じん臓または呼吸機能の障害など) 2.知的障害(療育手帳) 等級は、マルA、A、B、C。なお、埼玉県の等級表記 全般的な知的機能が同年齢の子供と比べて明らかに遅滞し、適応機能の明らかな制限が、18歳未満に生じるときに判定される。知的指数(IQ)が70以下の場合に判定される。 3.精神障害 等級は、1から3級まで @精神疾患(統合失調症、気分障害、てんかん、適応障害 など)、A発達障害、B高次脳機能障害 障害等級の説明、以上 手帳は、従来は障害ごとに3種類のデザインがありましたが、平成27 年10 月1日に統一デザインが導入され、更新や新規取得などの場合は統一デザインの障害者手帳が交付されています。 なお、有効期限内であれば、身体障害の場合は赤い表紙の身体障害者手帳を、知的障害の場合は、緑の表紙の療育手帳を使っていることもあります。 9ページ 小項目3.障害の種別と主な配慮 以下、障害の分類説明 分類1.身体の障害 中分類1.身体障害 視覚障害、聴覚障害、言語障害、肢体不自由、内部障害 分類2.精神および行動の障害 中分類1.知的障害 精神遅滞、自閉症 中分類2.精神障害 統合失調症、発達障害、気分障害、パニック障害、不安障害、高次脳機能障害、てんかん、など 障害の分類説明、以上 10ページ 障害の種類ごとに、障害の概要、主な配慮事項について説明する 作成に当たっては独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構作成の「はじめからわかる障害者雇用、事業主のためのQA集」を参考とした。 分類1.身体障害 中分類1.視覚障害 障害の概要 全盲、弱視、視野狭窄(見える範囲が限定されている)などがあります。訓練を受けた視覚障害者は、基本的に単独で公共交通機関を利用することができます。また、中途で視覚障害となっても、通勤の安全確保のための歩行訓練や、就労支援機器を活用した職業訓練を受けることにより、それまでの経験や知識、ノウハウを発揮して働くこともできます。 主な配慮事項 安全の確保、情報提供の方法に工夫が必要です。 視覚障害者が安心して歩けるように室内の配置を伝え、通路には物を置かないようにしましょう。 物を指し示す場合には、「ここ」「そこ」といった指示代名詞ではなく、具体的に何がどこにあるか伝えます。 中分類2.聴覚障害 障害の概要 聴感覚に何らかの障害があるために全く聞こえないか、または聞こえにくいことをいいます。手話や筆談、口話(相手の口元を見て、内容を理解する方法)などがありますが、いずれもできる人とできない人がいます。相手に応じてより良い方法を見つけましょう。 主な配慮事項 コミュニケーション方法の工夫が必要です。 会議などでは、手話や筆談、要約筆記、メールなどで内容を伝えるなど、聴覚障害者も参加できるよう情報保障(代替手段により情報を提供すること)を心がけましょう。 筆談や口話はシンプルな文章で伝えます。難聴者がいる場合、ゆっくり、はっきり話しましょう。話すときは一音ずつではなく、意味のまとまりごとに区切ります(「コピーを」、「3部」、「お願いします」など)。 言い直すときには、同じ言葉で再度伝えます。 相手の発音が聞き取れない時は、遠慮なく何度も聞き返したり、紙に書いてもらうなどして、コミュニケーションをあきらめないことを、お互いに理解しておきましょう。 11ページ 中分類3.肢体不自由 障害の概要 上肢(腕や手指、肘関節など)の障害、下肢(股関節、膝関節など)の障害、体幹機能障害(座位、立位などの姿勢の保持が難しいこと)、脳病変による運動機能障害(脳性まひ)などがあり、それらのいくつかを複合している場合もあります。 上肢に障害がある場合、細かい物をつかむ、物を持ち上げる・運搬する、書字、小さなボタンスイッチやタッチパネルの操作などが困難なことがあります。 下肢に障害がある場合、立っている、座るといった同じ姿勢を保つことや立ち上がる、歩く、段差の昇降など移動動作が困難なことがあります。 主な配慮事項 安全の確保、移動時の配慮、設備の整備、勤務条件の配慮が必要です。 障害以外の部位の活用、機械化、治工具や補装具の利用、作業台の高さ調整、作業分担や作業編成の変更、工程の改善、ペア作業(相互の能力を配慮してペアを組ませる)などの配慮が効果的です。 また、下肢に障害がある場合、職場内での段差解消、通路の整頓、作業座席の配置、トイレの改造などの環境整備が考えられます。 中分類4.内部障害 障害の概要 心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱または直腸の機能障害、小腸機能障害、HIVによる免疫機能障害、肝臓機能障害など多岐に渡ります。 いずれも生命の維持に関わる重要な機能の障害です。臓器本来の働きを補助するために通院や治療機器の装着のほか、日常生活が制限される場合があります。 主な配慮事項 体力低下、健康維持・管理に関して配慮が必要です。疲れやすい傾向があり、ゆとりある勤務形態などの配慮が必要な場合があります。 身体障害については、ご自身の障害について説明可能なことが多いですが、本人が気づかない特性があることもあります。 12ページ 分類2.知的障害 障害の概要 先天的、後天的(おおむね18歳まで)に、様々な原因によって起こる知的機能の障害です。生活や学習面において知的な働きや発達が、同年齢の平均に比べてゆっくりとしています。障害者手帳における判定基準等はありますが、法的には定義されていません。 知的能力の程度や合併する障害によって障害の状態が異なります。また、経験によって可能なことも一人一人異なります。 主な特性としては、@指示の理解には時間がかかっても、一度覚えたことは忘れにくい、A反復した単純作業にも比較的飽きない、B適性にあったことは集中して取り組める、C臨機応変さや複雑な手順を必要とする作業は苦手、D同時並行的に、仕事をこなすのは苦手、といったことがあげられます。 主な配慮事項 いろいろな人から説明や指示を受けると混乱してしまいます。指導担当者をはっきりさせることが大切です。「それ」「あれ」などの言い方や抽象的な表現は避け、簡潔で具体的な表現が大切です。 作業の指示は、一工程ごとに区切って例示するようにします。また、変更点などは事前に伝えることで、本人が変更に対応する準備ができます。 指導方法のポイント 「正しい行動の強化」と「失敗のない学習」を心がけましょう。 その方にとって良い指導方法に統一した上で援助なくできるまで練習を重ねます。 うまくできた直後に「今のいいよ」と声をかけるなど、本人が自信を持てるように褒めましょう。 ミスが発生したら、直ちに作業の手を止め、正しいやり方を最初に戻って修正します。本人と一緒に正しいものと見比べ、気づいてもらうようにしましょう。ミスを責めたり、批判しては正しい行動の強化につながりません。 指示や注意をするときには本人が理解できるよう工夫することが大切です。 本人の注意が話し手に向けられているのを確認してから話す 明確で簡潔な話し方 穏やかな口調と表情 肯定的な表現で話す 「走っちゃダメ!」、ではなく、「ゆっくり歩きましょう」 「おしゃべりはダメ!」ではなく、「静かにしましょう」 話し言葉と理解に差があることを考慮し、相手の理解しやすい言葉を使う 13ページ 分類3.精神障害 障害の概要 様々な精神疾患が原因となって起こります。 主な精神疾患には、うつ病・そううつ病などの気分障害、幻想と現実の境が曖昧になる統合失調症、不安障害や適応障害・パニック障害などの神経症性障害、脳の神経が一時的に激しく活動することによる発作である、てんかん、高次脳機能障害や認知症などの器質性精神障害、アルコールや薬物などへの依存症、生まれながら脳機能の特性により社会生活に何らかの支障が見られる発達障害、現実の認識の偏りにより感情や衝動のコントロールに課題が生じるパーソナリティ障害、などがあります。 精神疾患は、「その人の持っている、ストレスに対するもろさや神経の過敏さといった特徴」と、「日常的なストレスや生活環境が及ぼす社会・環境的な要因」が相互に作用し、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで発症・悪化します。 「不安で眠れない」、「イライラして過食になる」、「人との付き合いが嫌になる」、「疲れが取れない」、などの延長線上に精神疾患があります。 とても身近な疾病であり、「先入観を持たない」ことが大切です。  主な配慮事項 心身が疲れやすいので、短時間勤務からはじめ、体力の回復状況をみながら徐々に延長するなど、自身の障害と働き方の理解につなげることが大切です。 信頼関係を築くことのできる援助担当者や指導者を決めておくなど、相談したいときに相談できる環境づくりや、指導方法を共有することが重要です。 判断・責任などの精神的プレッシャーに弱い場合には、当初は安全なストレスレベルから始め安定したら少しずつステップアップを図ります。 工夫・応用が苦手なことがあるので、仕事の手順を簡素化し、作業マニュアルやチェック表を活用するとよいでしょう。 根気良く、わかりやすい指導を心がけましょう。 不調の兆候〜不安定のサイン〜 不調の兆候が自身でわかっている方もいます。前兆やその時の対応など、あらかじめ本人に聞いておきましょう。 集中力がなくなる、物忘れが目立つようになる、人付き合いを避けるようになる、不眠・寝付けない・早く目が覚める、食欲不振または過食傾向、いつもと違う印象が続く、(怒りっぽい、無口、おしゃべり、身だしなみの乱れ)、単純なミスが増える、混乱した様子が見られる、指示が通らなくなる、できていたことができなくなる、など 14ページ 大項目3.募集・採用 募集から採用までの流れなどについて説明する。 作成に当たっては独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構作成の「はじめからわかる障害者雇用、事業主のためのQA集」を参考とした。 中項目1.募集から採用までの流れ 障害者雇用を進めるには、着実なステップを踏むことが大切です。 関連情報の収集、職場における障害者理解の促進、支援機関との連携など、幅広く活動することが求められるため、専任の担当者やチームを決めて対応していくと進めやすくなります。 なお、募集から採用までの実務については、各人事担当課や市町村教育委員会が担当する場合がありますが、その際にも、配置予定所属の協力や連携が不可欠です。 募集から採用までのステップ ステップ1 障害者雇用の理解を深める 職場内研修の実施 啓発資料の配布 他の職場での好事例収集 など ステップ2 職務の選定 職務の洗い出し 合理的配慮の検討 など なお、ここでいう合理的配慮は一般的な事項に限ります。 ステップ3 受入態勢の整備 指導担当者の選任 採用時期の決定 など ステップ4 採用活動 ハローワークへの求人登録 職場実習の受け入れ 面接選考の実施 個別の合理的配慮の確認 支援機関との連携 など 15ページ 参考 はじめからわかる障害者雇用〜事業主のためのQA集〜から抜粋 Q25.採用面接ではどのようなことを確認したらよいでしょうか?また面接時に気をつける点はありますか? A.採用面接では「スキルや能力」「意欲」「協調性」など一般的な事項を確認するとともに、職務遂行に関係した障害状況や職場での配慮事項についても確認しておくとよいでしょう。 雇用管理のために把握しておく事項 1.障害関係 障害の状況 治療の必要性・内容、通院・服薬の状況、必要な支援状況 2.職務遂行関連 希望する仕事 仕事に関するスキルの習得状況(専門知識、機器などの操作、パソコン操作、運転免許など) コミュニケーション方法(メール・電話・会話、聴覚障害者の場合は口話・手話・筆談) 3.職場生活関連 通勤方法(自家用車、自転車、公共交通機関の利用) 通勤経路と時間 職場内の移動方法 注意事項 障害に関する情報は個人情報の中でも特に取扱いに配慮を必要とするセンシティブ情報(機微情報)になりますし、また障害の種類や程度で採否を決めるべきではないことに留意しておく必要があります。 Q26.障害者の採用にあたり、何をポイントに採否を決めたらよいでしょうか? A1.仕事への意欲、マッチング、協調性、障害の自己理解がポイントです。 基本的には一般社員の採否の判断ポイントと同じです。@仕事への意欲、A職務経歴、スキル、職務遂行能力などから判断する職務とのマッチング、B周囲との協調性などがポイントとなるでしょう。 障害については、その内容や程度に加えて、本人が障害を正しく理解し適切に対応できることが重要です。 A2.知的障害者や精神障害者は職業準備性を確認します。 知的障害者や精神障害者の場合、理解力、判断力、職務遂行能力が高くても、基本的労働習慣が身についていない、通院や服薬の自己管理ができないなどの理由で安定出勤できず離職してしまうケースが見受けられます。 知的障害者や精神障害者の採否を判断する一つのポイントとして「職業準備性」を確認するとよいでしょう。 職業準備性とは 特定の職業に就くための技術や資格の習得状況ではなく、どの職業にも共通して必要とされる職業人としての基礎的な要件のことをいいます。 16ページ 大項目4.職務の切り出し 中項目1.職務切出しの進め方  「障害者に向いている仕事、向いていない仕事というものはない」と考えます。 障害の特性により不向きな仕事もありますが、障害の種類や程度だけで決めるのではなく、一人ひとりの障害状況に加え、スキルの習得状況、本人の希望・意欲などから総合して決めていくことが必要です。 一つの分掌(または業務)を任せることが難しい場合は、各職員が担っている職務から、その職員が行わなくても完了できる業務や定例的な業務を抜き出し、集約して新しい職務として再構築できることもあります。 参考 職務の整理手順の例 1.所属内業務の整理 所属内のすべての業務について洗い出しを行う 2.業務の選別 1.で洗い出した業務の中から業務を選別する 3.マニュアル化 2.で選別した業務のマニュアルや指示書などを作成する 17ページ 職務の整理手順の例の詳細 1.所属内業務の整理 次のa,b,c,d、に業務を整理する a、一定の権限が必要な、常勤職員が行うべき本務。例えば、各種決裁など b、法令や県の方針等の知識、実務経験等を基とした判断が必要な、常勤職員が行うべき本務。例えば、企画立案、予算執行管理、起案など c、本務ではないが、常勤職員が行うことで成果が向上する周辺業務。例えば、ひな形に基づく契約書の作成、定型的な通知文の作成など d、どちらにも当たらない業務。例えば、電話対応、文書受付、メール仕分けなどの軽微な定例業務 2.業務の選別 洗い出しを行った業務、c、d、の中から、処理手順や到達点の構造化が可能な業務を選別します。なお、障害のある職員の障害の状況やスキル習得状況によってはbも含めて考えます。 このほか、「必要なツール(はさみ、電卓など)」、「身体的負担の程度」、「対人コミュニケーションの有無」、「パソコン操作などのスキルの要不要」、も整理しておきます。 3.マニュアル化 処理手順の流れが把握できるように、かつ、処理に間違いが生じないよう、分かりやすい内容にします。 必要に応じて、絵や図を用いると効果的です。 作成後も、担当する職員から意見を聴取するなどして、適宜ブラッシュアップします。  職務の整理手順のポイント 所属内全ての業務について洗い出しを行うことで、障害のある職員のスキルアップに応じた職務拡大にも活用できます。  障害者雇用以外の場面での職務改善も期待できます。 18ページ 参考 業務切り出しシートの例 切り出しシート作成の例を説明する。表については割愛する。 ポイント 障害のある職員に任せる業務だけではなく、一つの分掌ごとに作成します。 できるだけ手順を細分化しておくと、業務切出しのアレンジがしやすくなります。 例1)判断が苦手な人の場合、法令等に基づく判断などが不要な手順を任せる 例2)コミュニケーションが苦手な人の場合、外部とのコミュニケーションが不要な手順を任せる 例3)パソコン操作ができる人の場合、財務システムなどの操作を任せる スキルアップに応じた職務拡大にも応用しやすくなります。 また、学校においては教員の業務(教材作成、保護者への配布物作成など)や、図書室業務(図書の配架、貸出返却業務など)なども含めて作成しておくと、業務の幅が拡大します。 19ページ 大項目5.職場定着 職場定着におけるポイントなどについて説明する。 作成に当たっては、内閣官房内閣人事局・厚生労働省・人事院作成の「公務部門における障害者雇用マニュアル(令和2年3月)」を参考とした。 職場定着は、その職務を行う上で必要となるスキルと本人の作業能力とのマッチングを図ることが重要な課題です。 障害の状態は変化することも考えられるため、マッチングについては本人のスキルアップの観点からも考えます。 本人を取り巻く環境や条件の変化によって可変的であることを理解し、引き続きマッチングを図る検討を怠らないことが重要です。 1.採用時の配置 障害の状態は変化することも考えられることから、職務との適合性についてはその人の能力開発の観点からも吟味を行う。 適合性の判断の重要な要素である体力や職業能力は、将来のその人の能力伸長を見込んで予測しておく。 適合性はその人を取り巻く環境や条件の変化によって可変的であることを理解し、引き続きその検討を怠らない。 職務に対する興味や仕事のやりがいとの間には、ある種の相関関係が考えられるので、職務との適合性についてはその人の興味や性格の吟味を怠らない。 2.配置後の職務の調整 障害のある職員の配置が適切でない場合、例えば「仕事が合わない」とか「仕事のスキルが足りない」とか「仕事が苦痛である」など、様々な離職の要因を作り出す結果となります。期待どおりの成果を上げられなかったり、職務の内容や方法が大きく変わって適合しなくなった場合には配置後の調整をする必要があります。 本人の能力と職務が適合していない要因を把握する。 本人の能力に合わせて職務の内容を改善するための職務の再設計を行う。 本人の作業を容易にするための支援機器の導入や職場環境の改善を行う。 本人の能力を向上させるための支援を行う。 障害特性により職務内容の一部について実行が困難な場合、その職務は別の職員が担当し、代わりにその職員の職務のうち、できることを担うなど職務の分担を変えることも一つです。 20ページ 職場にうまく適応しているかどうかを見るには、職場側と働いている職員側の双方から見ることが重要です。 人間関係、安全・衛生管理、その他人事管理全般にわたって障害のある職員の個性や特性を把握して、これらに配慮した対応を積極的に進めていくことが望まれます。 一人一人の障害のある職員が何を考え、何を望んでいるか、職場生活においてどんな問題に直面しているか、といった問題点を把握することから対策が生まれてきます。 問題点の把握のポイント 睡眠、食欲、疲れ、気分、通院や服薬の状況といった健康面 作業内容、目標、作業上の注意点、本人評価などの業務遂行面 その他、ストレスや不安といった要素、本人の希望、相談したいこと これらの要素を日常又は定期的な面談で把握し、問題点・課題点を本人と共有する 必要に応じて、「職場改善」と「本人の改善支援」の両面から対応する。 職場改善の例 作業環境の整備や障害理解研修など 本人の改善支援の例 外部支援機関へのサポート要請、業務上の指導、評価のフィードバックなど 21ページ 参考 作業日誌による把握の例 1.健康に関すること 睡眠、食欲、疲れ、気分、服薬、の状況について、本人が出勤後に記入します。 記載内容を踏まえ、その日に行う業務を決定します。 健康の記録を分析することで、不調の予測に活用することもできます。 2.業務に関すること その日に行う業務について、作業内容、目標、本人の振り返り、よくできたこと、改善したいことを記入します。 作業内容については、上司や同僚と打ち合わせをして決定します。 決定した内容について、本人が記入します。 スキルアップの視点から、必要に応じて目標を記入します。 その日の業務終了後、本人が「振り返り」、「よくできたこと」、「改善したいこと」、を記入します。 自己改善や、業務のマッチング精度の向上につなげます。 3.心と体の振り返り 休憩や気分転換、ストレスや不安の状況について、その日の業務終了後に本人が記入します。 ストレス要因などの把握につなげます。 4.その他 必要に応じて、本人がお願いしたいこと、相談したいこと、困ったこと、わからなかったこと、などを記入します。 業務以外でのストレスや不安の原因の把握につなげます。 5.職場からコメント 必要に応じて、上司からコメントを記入します。 業務についてよくできていた点や、改善が必要な点などを記入し、本人のモチベーション向上につなげます。 なお、把握した状況等については、個人情報保護の観点から取扱いに注意してください。 障害の状況や特性などによっては作業日誌の活用がなじまない場合もあります。方法(定期面談など)やどのような内容を聴取・共有するのか、本人と相談の上行うことが重要です。 22ページ 大項目6.県教育委員会障害者活躍推進計画 令和元年6月の障害者雇用促進法改正により、国や地方公共団体の任命権者は、障害者活躍推進計画を作成することとなりました。県教育委員会では、令和2年3月に本計画を作成しました。 県HP https://www.pref.saitama.lg.jp/e2201/syougaisya-keikaku202004.html 埼玉県教育委員会障害者活躍推進計画の概要 令和2年度から令和4年度までの3年間計画 障害者が活躍するための施策 1.障害者の活躍の場の拡大 職務の選定・創出 障害者の採用 障害のある本採用教育職員の採用 障害のある本採用事務職員の採用 障害のある短時間勤務職員の採用 キャリア形成 2.障害者が働きやすい職場づくりの推進 教育局における推進体制(「障害者雇用推進者」の選任、「埼玉県教育委員会障害者活躍推進計画策定・推進委員会」の運営、点検評価の実施) 各所属における推進体制 職業生活における相談体制の整備 所属以外での相談体制及び専門処理機関の整備 外部関係機関との連携体制の整備 支援員の配置 職務環境の整備 障害者理解等を促進する研修等の実施 人事管理 指標 1.障害者の活躍の場の拡大 教員採用選考試験における障害者特別選考の志願者数 現状34人から、令和4年度に50人以上へ 2.障害者が働きやすい職場づくり 障害者の職場定着率 現状92.2%から、令和4年度に92%以上へ 3.障害者雇用率 障害者雇用促進法における障害者雇用率 現状1.58%から、令和4年度に2.50%以上へ 23ページ 大項目7.参考資料 マニュアル、webサイト 1.厚生労働省「障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト(公務部門向け2020年版)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/soudanin_kousyu.html カウンセリング(第2章第8節)や、より詳細な障害別に見た特徴と雇用上の配慮(第8章)などが記載されています。 2.厚生労働省「就労パスポート」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06d_00003.html 障害のある方が、働く上での自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮などについて、支援機関と一緒に整理し、事業主などにわかりやすく伝えるためのツールです。 3.厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座(e−ラーニング版)」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/ 厚生労働省が進めているしごとサポーター養成講座のe-ラーニングサイトです。 4.(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構「ハンドブック・マニュアル」 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/index.html 「はじめからわかる障害者雇用〜事業主のためのQA集〜」「職場改善好事例集」などのマニュアルや動画が掲載されています。 24ページ 関係機関 1.埼玉県障害者雇用総合サポートセンター(受託者:NPO法人サンライズ) さいたま市浦和区北浦和5−6−5浦和合同庁舎別館1階 企業支援部門048-827-0540、定着支援部門048-823-9020 障害者の雇用開拓から就業支援、定着支援まで一連の支援を実施。 県HP https://www.pref.saitama.lg.jp/a0809/syougai-map/suportsenter.html 2.障害者就業・生活支援センター(県内10か所) 就職を希望している障害者や職場定着が困難な方を対象に、雇用・保健・福祉・教育等の関係機関と連携しながら、就業及びそれに伴う生活に関する指導・助言、職業準備訓練のあっせんなど、「就業面」と「生活面」の一体的な相談・支援を実施。国と県から事業を委託された法人が運営。 埼玉労働局HP https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_taisaku/seikatu-shien.html 3.障害者就労支援センター(県内41か所) 障害者の就労機会の拡大を図るために、地域で一番身近な市町村が設置する支援施設。障害者やその家族の求めに応じて、職業相談、就職準備支援、職場開拓、職場実習支援、職場定着支援の業務を実施。 県HP https://www.pref.saitama.lg.jp/a0809/syougai-map/syougai2020-01.html このほか、県内各地域のハローワークや、就労移行支援事業所(地方自治体から指定を受け障害のある方の一般企業等への就職をサポートする通所型の福祉サービス)などにおいても障害者に対する就業支援・定着支援を行っています。 なお、各関係機関は公的部門(国や地方公共団体)の事業主に対する支援を原則行えません。 以上