平成13年度 県民経済計算の概要
 
1 はじめに
 県民経済計算は、県内の経済活動によって生み出された所得を、生産・分配・支出の3面から明らかにし、県内経済の実態を総合的・計量的に把握したもので、経済見通しを立てる際の資料などに使われています。
 本稿は、平成13年度県民経済計算の推計結果をとりまとめたものです。なお、平成12年度以前の数値は、その後の確定値により推計し直しているため、以前に発表された数値とは異なっています。
 
2 概要
 県内総生産は、名目で19兆8403億円で、前年度比3.9%減(平成12年度は2.4%増)と、マイナス成長に転じました。また、実質でも20兆7457億円で、前年度比1.9%減(平成12年度は4.4%増)と、同じくマイナス成長に転じました。
 一方、県民所得も、総額が19兆7215億円で、前年度比4.7%減(平成12年度は1.7%増)となり、マイナス成長に転じました。さらに、1人当たり県民所得も、282万7千円で、前年度比5.2%減(平成12年度は1.5%増)となり、マイナス成長に転じました。
 
  表1 埼玉県経済の概要

 
実数(1000億円) 対前年度増加率(%)
10年度 11 12 13 11 12 13
名目県内総生産(=総支出)
実質県内総生産(=総支出)
名目県民総生産(=総支出)
実質県民総生産(=総支出)
県内要素所得(=純生産)
県民所得( 分 配 )
202
200
259
257
154
211
202
203
252
253
153
204
206
211
257
263
157
207
198
207
245
257
150
197
-0.4
1.1
-2.8
-1.3
-0.8
-3.5
2.4
4.4
1.8
3.8
2.5
1.7
-3.9
-1.9
-4.3
-2.3
-4.3
-4.7
1人当たり県民所得( 万 円 )
総人口( 万 人 )
306
689
294
693
298
694
283
698
-4.0
0.5
1.5
0.2
-5.2
0.5
  1 名目値とは物価上昇分を含んだ数値であり、実質値とは物価上昇分を除いた数値である。
  2 実質値は、平成7暦年を基準年次としている。
  3 県内要素所得は純付加価値のことで、県内純生産(要素費用表示)である。
  4 総人口は、各年10月1日現在(県統計課)の推計人口(平成12年度は国勢調査人口)である。
  5 対前年度増加率については、後掲統計表により求めたものである。
 
3 県内総生産
 平成13年度のすべての生産活動によって生み出された粗付加価値の合計である県内総生産は、名目で19兆8403億円、前年度比3.9%減とマイナスに転じました。
 経済活動別に生産額を見ると、全体の93.4%を占める「産業」は、「製造業」が4兆3005億円(構成比21.7%)で最も大きく、次いで「不動産業」3兆6882億円(同18.6%)、「サービス(同17.9%)。「政府サービス生産者(国や地方自治体)」は1兆6685億円(同8.4%)で、他に「対家計民間非営利団体(私立学校など)」は4015億円(同2.0%)となっています。
 
 表2 経済活動別県内総生産
  項目
 
県内総生産
平成12年度
(億円)
平成13年度
対前年度
増加率(%)
構成比
(%)
産業 192 242 185 322 -3.6 93.4
(1) 農林水産業
(2)
鉱業
(3)
製造業
(4)
建設業
(5) 電気・ガス・水道業
(6)
卸売・小売業
(7)
金融・保険業
(8)
不動産業
(9)
運輸・通信業
(10)
サービス業
1 222
119
48 908
14 649
6 773
26 428
7 914
37 172
13 502
35 556
1 185
117
43 005
13 229
6 532
26 665
9 081
36 882
13 205
35 422
-3.0
-1.2
-12.1
-9.7
-3.6
0.9
14.8
-0.8
-2.2
-0.4
0.6
0.1
21.7
6.7
3.3
13.4
4.6
18.6
6.7
17.9
政府サービス生産者 16 447 16 685 1.4 8.4
対家計民間非営利サービス生産者 3 890 4 015 3.2 2.0
小計(1+2+3) 212 580 206 023 -3.1 103.8
 輸入税 54 54 0.7 0.0
  (控除)そ の
  (控除)帰属利子
1 218
5 059
1 327
6 347
8.9
25.4
0.7
3.2
 県内総生産(市場価格) 206 356 198 403 -3.9 100.0
 
 経済活動別の伸びをみると、農林水産業は3.0%減(12年度8.4%減)と引き続きマイナス成長になりました。
 鉱業は1.2%減(12年度9.5%減)と引き続きマイナス成長になりました。
 本県の産業で最も構成比の大きい製造業は、12.1%減(12年度0.4%増)と大きくマイナスになりました。これは、化学業など産出額が増加した業種がある一方で、電気機械業や一般機械業など多くの業種で産出額が減少したためです。
 建設業は、産出額では民間土木事業が増加したが、建築業及び公共土木事業の大幅な落ち込みにより、9.7%減(12年度4.2%減)とマイナス幅を広げました。
 電気・ガス・水道業は、各々産出額が減少し、3.6%減(12年度2.2%増)とマイナスに転じました。
 卸売・小売業は、ともに産出額が減ったものの、それ以上の割合で原材料や燃料などの中間投入額が減少したため、0.9%増(12年度11.5%増)と引き続きプラス成長になりました。
 金融・保険業は、金融業の産出額が大きく増加し、14.8%増(12年度1.1%減)とプラスに転じました。
 不動産業は、0.8%減(12年度1.5%増)とマイナスに転じました。
 運輸・通信業は、ともに産出額が減少し、2.2%減(12年度0.3%増)とマイナスに転じました。
 サービス業は0.4%減(12年度3.8%増)とマイナスに転じました。
 「政府サービス生産者(国や県など)」は、1.4%増(12年度4.0%増)と引き続きプラス成長になりました。
 「対家計民間非営利サービス生産者(私立学校など)」は3.2%増(12年度3.0%減)とプラス成長に転じました。
 
4 県民所得(分配)
 県民所得(分配)は、19兆7215億円で前年度比4.7%減となり、マイナス成長となりました。これは、全体の約8割を占める雇用者報酬が前年度比1.9%減(12年度3.1%増)となるなど、全体がマイナスに転じたことによります。県民所得は大きく、「雇用者報酬」「財産所得」「企業所得」の3つに分けられます。このうちの雇用者報酬が1.9%減となったのは、雇用者報酬の約8割を占める「賃金・俸給」が2.3%減となったことによります。
 また、財産所得(利子、配当、賃貸料など)は、26.6%減と大幅に減少しています。これは家計部門の利子収入が低迷し、20.0%減と大幅に減少したことによります。さらに、企業所得(法人企業の分配所得受払後)も、11.2%減と減少しました。これは、民間法人企業の企業収益が51.0%減と大幅に減少したことによります。
 
 表3 県民所得(分配)                            










 

 項             目
実 数 ( 億 円 ) 対前年度
増加率(%)
構成比
(%)
平成12年度 平成13年度
1 雇用者報酬 162 959 159 815 -1.9 81.0
2 財産所得 10 963 8 043 -26.6 4.1
3 企業所得(配当受払後) 33 066 29 357 -11.2 14.9
4 県民所得(1+2+3) 206 988 197 215 -4.7 100.0
5 間接税(控除 補助金) 11 676 11 595 -0.7 5.9
6 県民所得(市場価格表示)(4+5) 218 664 208 810 -4.5 105.9
7 その他の経常移転(純) 1 825 4 831 164.7 2.4
8 県民可処分所得(6+7) 220 489 213 641 -3.1 108.4
(参考)民間法人企業所得(配当受払前) 8 676 4 018 -53.7 2.0
 
 県民所得を総人口(平成13年10月1日現在)で割った1人当たり県民所得は、5.2%減の282万7千円となりました。また、県民可処分所得は21兆3641億円と3.1%減であり、このうちの約8割を占める家計(個人企業を含む)の可処分所得は、雇用者報酬が減少したため2.6%減でした。労働分配率(県民所得中に占める雇用者報酬の割合)は、81.0%(12年度値78.7%)と、平成2年度以降ほぼ一貫して上昇しています。
 
5 県内総支出
 県内総支出は、名目で19兆8403億円、前年度比3.9%減、実質では20兆7457億円、前年度比1.9%減(12年度は名目2.4%増、実質4.4%増)と県内経済成長率は共にマイナスに転じました。
 また、デフレーター*1の上昇率は2.0%減となり、実質成長率が名目成長率を上回りました。デフレーターのマイナスは、10年度以来、4年連続です。
 県内総支出の約7割を占める民間最終消費支出は、名目1.7%減、実質0.2%増(12年度は名目0.2%減、実質0.5%増)と、前年度の伸びを下回りました。
 そのうち、家計最終消費支出は実質で0.1%増(12年度0.6%増)でした。食料被服・履物、その他の消費支出、教育が落ち込み、住居、保健医療などが増加したものです。
 一般政府消費支出は、名目6.2%増、実質6.5%増(12年度は名目6.5%増、実質7.0%増)と前年度並に増加しました。 
 県内総資本形成のうち総固定資本形成は、名目1.6%増、実質3.6%増(12年度名目1.5%増、実質3.6%増)と3年連続でプラスとなりました。これは公的部門が実質19.8%減(12年度5.5%減)と大きくマイナスであったものの、民間部門が実質10.6%増(12年度6.6%増)と好調であったことによります。
 内訳をみると、民間部門では、企業設備投資が民間部門全体を押し上げました。民間住宅は実質8.2%減(12年度2.6%減)と引き続きマイナスになりましたが、民間企業設備が、実質18.0%増(12年度10.8%増)と大きくプラスとなったためです。
 公的部門は住宅が実質6.0%増(12年度80.3%増)とプラス幅が小さくなり、企業設備も実質51.7%減(12年度1.7%増)とマイナスに転じました。
一般政府も実質2.7%減(12年度11.2%減)と引き続き減少し、全体としてマイナスとなりました。
 財貨・サービスの移出*2は、実質6.2%減(12年度5.7%増)、財貨・サービスの移入*3は実質4.8%減(12年度4.8%増)でした。
 *1 デフレーター:名目価格から実質価格を算出するために用いられる価格指数、基準年(平成7暦年)を100とする。
 *2  財貨・サービスの移出:県内において県外居住者が行う商品・サービスの購入
 *3  財貨・サービスの移入:県外において県民が行う商品・サービスの購入
 
  表4−1 県内総支出(名目)

 項             目
実 数 ( 億 円 ) 対前年度
増加率(%)
構成比
(%)
平成12年度 平成13年度
1 民間最終消費支出 143 226 140 805 -1.7 71.0
2 政府最終消費支出 30 798 32 721 6.2 16.5
3 県内総資本形成 50 154 50 453 0.6 25.4
4 財貨サービスの移出 142 842 132 310 -7.4 66.7
5 (控除) 財貨サービスの移入 208 360 196 416 -5.7 99.0
6 統計上の不突合 47 695 38 529 -19.2 19.4
A 県内総支出(市場価格表示)
     (1+2+3+4−5+6)
   
206 356
   
198 403
  
-3.9
 
100.0
7 県外からの要素所得(純) 50 151 47 060 -6.2 23.7
B 県民総支出(市場価格表示)(A+7) 256 507 245 463 -4.3 123.7
 
  表4−2 県内総支出(実質)

 項             目
実 数 ( 億 円 ) 対前年度
増加率(%)
構成比
(%)
平成12年度 平成13年度
1 民間最終消費支出 141 780 142 022 0.2 68.5
2 政府最終消費支出 30 997 33 015 6.5 15.9
3 県内総資本形成 54 123 55 570 2.7 26.8
4 財貨サービスの移出 150 938 141 537 -6.2 68.2
5 (控除) 財貨サービスの移入 215 288 204 974 -4.8 98.8
6 統計上の不突合 48 864 40 287 -17.6 19.4
A 県内総支出(市場価格表示)
     (1+2+3+4−5+6)
   
211 413
   
207 457
  
-1.9
 
100.0
7 県外からの要素所得(純) 51 380 49 208 -4.2 23.7
B 県民総支出(市場価格表示)(A+7) 262 794 256 665 -2.3 123.7