「埼玉県における中小企業の賃金事情」から
 
1 はじめに
 
 賃金実態調査は、県内の中小企業に働く労働者の賃金構造等の実態を明らかにし、労使関係者の参考資料として提供することにより、合理的な賃金決定、ひいては労使関係の安定に資するために実施しているもので、毎年7月31日現在で行われ、3月に公表しています。 
 調査対象は、「建設業」、「製造業」、「運輸・通信業」、「卸売・小売業」、「金融・保険業」、「サービス業」を営む県内の中小企業1,330事業所及びこれとの比較のための大企業170事業所を抽出して行ったものです。
 公表された中から主な項目について、概要を紹介します。
 なお、「埼玉県における中小企業の賃金事情」は統計課ホームページである「彩の国統計情報館」にも掲載しています。
 
2 事業所の現況 
 
() 労働組合の組織状況
 集計対象となった中小企業636事業所における労働組合の組織状況をみると、労働組合があるのは、19.2%に当たる122事業所、ないのは80.8%に当たる514事業所となっています。
 なお、大企業では、集計対象146事業所の55.5%に当たる81事業所に労働組合があり、中小企業を大きく上回る組織率となっています。
 
() 年間所定労働時間
 中小企業における年間所定労働時間は、前年と同様に1,989時間となっています。これを産業別にみると、金融・保険業が1,915時間で最も短く、以下、サービス業1,963時間、製造業1,980時間、建設業2,016時間、運輸・通信業2,017時間、卸売・小売業
2,029時間の順となっています。(図1、表1)。
 なお、大企業における年間所定労働時間は1,935時間で、前年に比べ7時間増加しています。中小企業と大企業とでは、54時間の開きがありますが、その差は前年(61時間)より7時間縮小しています。
 
図1 年間所定労働時間の推移
 
表1 産業別年間所定労働時間の推移
                                      (時間)
業種・規模
10 11 12 13 14
中小企業計 2,040  2,023  2,019  2,014  1,989  1,941  1,976  1,985  1,989  1,989 
建設業
製造業
運輸・通信業
卸売・小売業
金融・保険業
サ−ビス業
2,079 
2,027 
2,171 
2,074 
1,890 
1,993 
2,045 
2,013 
2,141 
2,062 
1,835 
1,985 
2,055 
2,010 
2,112 
2,061 
1,846 
1,990 
2,064 
2,008 
2,078 
2,009 
1,856 
1,997 
2,029 
1,996 
2,039 
1,992 
1,854 
1,942 
1,966 
1,947 
1,955 
1,903 
1,863 
1,939 
2,019 
1,975 
1,990 
1,997 
1,839 
1,942 
2,034 
1,982 
2,000 
2,005 
1,862 
1,952 
2,024 
1,979 
2,000 
2,030 
1,886 
1,972 
2,016 
1,980 
2,017 
2,029 
1,915 
1,963 
大企業計 1,970  1,959  1,956  1,939  1,935  1,900  1,918  1,929  1,928  1,935 
 
() 週休制の形態
 週休制の実施形態については、中小企業の94.3%(前年93.3%)の事業所が何らかの形で週休2日制を採用しており、3.5%(同5.3%)の事業所が週休1日制、2.2%(同1.4%)の事業所が週休1日半制を採用しています。
 週休2日制実施事業所においてその形態別内訳をみると、「完全」が最も多く、週休2日制実施事業所の35.8%を占めています。続いて、「変則」の26.2%、「月2回」の13.0%、「月3回」の11.2%、「隔週」の10.3%、「月1回」の3.5%の順となっています。
 なお、「変則」とは時期により週休2日制の実施形態が異なる場合や、年間の特定の時期のみ週休2日制を実施している場合、また、年間休日総日数を定めて企業独自に作成した休日カレンダーにより実施している場合など、実質的に週休2日制の変則的な形態とみられるものを言います。
 産業別に週休2日制の実施状況をみると、金融・保険業が100%で最も高く、以下製造業が98.1%、建設業95.1%、サービス業90.8%、卸売・小売業87.9%、運輸・通信業86.9%の順となっています(表2、図2)。
 一方、大企業では、週休2日制を採用している事業所は99.3%(前年100%)で、中小企業の実施率より5ポイント高くなっています。また、週休2日制実施事業所での形態別内訳では、「完全」が最も多く、大企業のうちの66.2%を占めており、中小企業に比べて完全週休2日制の占める割合が高くなっています。このように、週休2日制の実施については、中小企業と大企業で導入状況に格差があります。
 
図2 週休制の事業所数の割合
 
        中小企業                     大企業
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
表2 週休制の形態別事業所数の割合
  区 分

  業 種

 計
 
週 休
1日制
 
週休1
日半制
 
       週  休  2  日  制
小 計
 
完 全
 
月3回
 
隔 週
 
月2回
 
月1回
 
変 則
 

中小企業計
 
%
100.0  
 
%
3.5  
%
2.2  
%
94.3  
(100.0) 
%
33.8  
(35.8) 
%
10.5  
(11.2) 
%
9.7  
(10.3) 
%
12.3  
(13.0) 
%
3.3  
(3.5) 
%
24.7  
(26.2) 
建設業
製造業
運輸・通信業
卸売・小売業
金融・保険業
サ−ビス業
100.0  
100.0  
100.0  
100.0  
100.0  
100.0  
  3.7  
  1.6  
  8.2  
  4.5  
  0.0  
  5.5  
  1.2  
  0.3  
  4.9  
  7.6  
  0.0  
  3.6  
  95.1  
  98.1  
  86.9  
  87.9  
 100.0  
  90.8  
 17.3  
 38.6  
 26.2  
 18.2  
 91.7  
 40.0  
  7.4  
 14.4  
  6.6  
 12.1  
  0.0  
  4.5  
 19.8  
  6.5  
  9.8  
 12.1  
  0.0  
 10.9  
 23.5  
7.5  
16.4  
16.7  
0.0  
13.6  
  4.9  
  0.7  
  4.9  
  6.1  
  0.0  
  7.3  
 22.2  
 30.4  
 23.0  
 22.7  
  8.3  
 14.5  
大企業計
 
100.0  
 
  0.0  
 
  0.7  
 
  99.3  
(100.0) 
 65.8  
(66.2) 
  4.1  
 (4.1) 
  4.8  
 (4.8) 
  3.4  
 (3.4) 
  0.0  
 (0.0) 
 21.2  
(21.4) 
 (注)( )内は、週休2日制実施の事業所を100とした数値である。
 
3 平均賃金
 平成14年7月分の平均賃金は、基準内賃金が293,977円、基準外賃金が22,607円で、総額では316,584円となっています(平均年齢41.1歳、平均勤続年数13.0年、平均扶養家族数1.0人)。
 基準内賃金は、前年に比べ、額で355円、率で0.1%増加しました。また、基準外賃金は前年に比べ、額で△1,168円、率で△4.9%減少しました。
 これにより両者を合わせた総額でも、前年に比べ額で△813円、率で△0.3%の減少となりました(表3)。
 
表3 平均賃金の推移
    区分
 年
年 齢
 
勤続年数
 
扶 養
家族数
基準内賃金
 
基準外賃金
 
 総  額
 











10

11

12

13

14

 40.2  

 40.4  

 39.8  

 40.3  

 40.4  

 40.3  

 40.5  

 40.2  

 40.7  

 41.1  
 

11.5  

 11.5  

 11.4  

 12.0  

 12.3  

 12.3  

 12.8  

 12.8  

 12.8  

 13.0  
 

  1.0  

  1.0  

  1.0  

  1.0  

  0.9  

  0.9  

  1.0  

  1.0  

  1.0  

  1.0  
 

283,850  
(3.9) 
286,960  
(1.1) 
288,118  
(0.4) 
290,555  
(0.8) 
291,817  
(0.4) 
288,116  
(△1.3) 
293,917  
(2.0) 
297,068  
(1.1) 
293,622  
(△1.2) 
293,977  
(0.1) 

21,068  
(△7.9) 
22,380  
( 6.2) 
21,382  
(△4.5) 
23,091  
( 8.0) 
26,167  
(13.3) 
21,793  
(△16.7) 
21,496  
(△1.4) 
23,695  
(10.2) 
23,775  
(0.3) 
22,607  
(△4.9) 

304,918  
(3.0) 
309,340  
(1.5) 
309,500  
(0.1) 
313,646  
(1.3) 
317,984  
(1.4) 
309,909  
(△2.5) 
315,413  
(1.8) 
320,763  
(1.7) 
317,397  
(△1.0) 
316,584  
(△0.3) 
 
(注)
1 ( )内は対前年上昇率である。△は減少である。
2 基準内賃金 就業規則や労働協約等に定められた労働時間(所定労働時間)に対して支給される賃金をいう。
3 基準外賃金 早出・残業・休日出勤など、所定外の労働に対して支給される賃金(時間外手当・休日手当)をいう。
 
(1) 産業別平均賃金
 産業別に平均賃金を基準内賃金でみると、金融・保険業389、730円を最高に、以下、建設業338,064円、卸売・小売業303,922円、サービス業291,312円、運輸・通信業291,204円、製造業281,894円の順となっています。
 産業により、平均年齢、平均勤続年数などの条件が異なるため、賃金水準を単純に比較することはできませんが、全産業平均を100とすると、最高の金融・保険業132.6、以下、建設業が115.0、卸売・小売業103.4、サービス業及び運輸・通信業99.1、製造業95.9の順となっています。
 大企業の平均賃金は、基準内賃金が323,722円、基準外賃金が28,610円で、総額では352,332円となっており、いずれも中小企業を上回っています(表4)。
 
表4 産業別平均賃金
    区 分

 項 目

年  齢
 

勤続年数

扶 養
家族数

基準内賃金
 

基準外賃金
 

 総  額
 

中小企業計

41.1  

13.0  

1.0  

293,977  
(100.0) 

22,607  

316,584  
建設業

製造業

運輸・通信業

卸売・小売業

金融・保険業

サービス業
40.4  

40.7  

45.2  

41.4  

39.9  

39.7  
  14.3

12.9  

12.6  

13.3  

14.4  

12.4  
1.4  

0.9  

1.3  

1.0  

1.4  

1.0  
338,064  
(115.0) 
281,894  
( 95.9) 
291,204  
( 99.1) 
303,922  
(103.4) 
389,730  
(132.6) 
291,312  
(99.1) 
   12,593  

   23,674  

   44,897  

   10,385  

   10,469  

   17,096  
 
350,657  

  305,568  

  336,101  

  314,307  

  400,199  

  308,408  
 

  大企業
 

   39.4  
 

  15.2  
 

  1.1  
 

323,722  
 

   28,610  
 

  352,332  
 
 (注) ( )内は中小企業計=100である。
 
(2)男女別平均賃金
 男女別に基準内賃金をみると、男子321,910円、女子203,284円となっており、男子を100とすると、女子は63.1となり、前年(61.5)と比べると1.6ポイント格差が縮小しました。
 また、年齢階層別にみると、20歳代までは、男子の8割以上であるのに対して、年齢が高くなるにつれて男女間の賃金格差は拡大し、40代後半からは5割台となっています(図3)。
 
図3 年齢階層別にみた男女間基準内賃金格差(男子=100)