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掲載日:2021年8月2日

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グローバルな大気汚染を富士山頂で調べます

環境科学国際センターは、地方自治体の環境研究所としては唯一、富士山頂で大気汚染の調査・研究を実施しています。富士山頂では、大陸から直接運ばれてくる粒子を捉えられることから、平成27年度から微小粒子状物質(PM2.5)の調査を行っています。これまでの調査により、石炭の燃焼など人為起源粒子の影響を明らかにするためには、PM2.5より小さい、大きさ1マイクロメートル以下の粒子であるPM1に着目することが有効であると分かってきました。

今年は、新型コロナウイルス感染症対策を徹底した上で、富士山頂でPM1の調査を実施します。また、降雨の始まりとなる微粒子「氷晶核」の研究も新たに行います。

これらの研究は、越境大気汚染の埼玉県への影響や、気象災害につながる降雨の発生メカニズムを明らかにすることに繋がります。

1. 調査の意義

  • PM2.5は、登山者の歩行や強風により舞い上がった表土(自然起源の粒子)の影響を強く受けます。これに対して、大きさが1マイクロメートル以下であるPM1には、自然起源の粒子がほとんど含まれないため、中国大陸等で発生する石炭燃焼などの人為起源粒子の影響を調べるのに適しています。
  • 降雨は、氷晶核の周りで空気中の水分が凍ることで始まりますが、上空でどのような微粒子がどのくらい氷晶核になるかは、十分に分かっていません。雲ができやすい高さにある富士山頂は、氷晶核の解明に適しています。
  • これらの研究により、越境大気汚染による埼玉県の大気への影響とともに、降雨の発生メカニズムをより詳細に把握することができます。

2. 調査の特徴

埼玉県への越境大気汚染の影響を知るためには、上空を運ばれてくる大気を調べる必要があります。富士山頂は自由対流圏(図1、※1)にあるため、山頂の空気と地上の空気は混ざりにくく、上空を流れてくる汚染物質を調べることが可能です。環境科学国際センターでは全国でもほとんど事例の無い、次の2つの研究を行います。

(1)PM1の連続測定

PM2.5は自然起源の粒子と人為起源の粒子が混在します。人為起源による大気汚染を把握するためにはPM1の測定が有効であるため、日中と夜間とに分けたPM1の採取を約1か月間連続して行います。PM1の成分のうち、ヒ素や鉛は石炭の燃焼で多く発生します。同時期に当センター(加須市)のほか、韓国、中国の研究機関とも連携したPM1の観測を行い、成分を詳しく分析することで、大陸の影響を知ることができます。

(2)氷晶核の解明

降雨は、上空で水分が冷やされて氷の結晶ができ、それが落下することで始まることが知られています(図2)。この氷の結晶ができるには、その核になる粒子が必要ですが、この粒子を氷晶核といいます。国内では氷晶核の研究は非常に少なく、実態は十分に解明されていません。そこで、富士山頂で空気中の微粒子を日中と夜間とに分けて採取し、詳しく調べます。

 

7月中旬から8月下旬の間に、感染防止を図りながら数回に渡って富士山頂に登り、PM1や空気中の微粒子を採取し、分析を行います。

※1 自由対流圏

標高約2,500 mから上部の大気は、地上の大気汚染の影響を受けにくい「自由対流圏」と呼ばれます(図1)。富士山は山脈に属さない「独立峰」と呼ばれる山体を持ち、高さが3,776 mであるため、大陸方面から上空を長距離輸送されてきた大気を調べるのに最適です。なお、富士山頂測候所は、気象庁撤退後、「認定NPO法人 富士山測候所を活用する会」が借り受けて、夏季を中心に様々な研究に活用しています。

※2 越境大気汚染の影響

主に石炭燃焼で発生するヒ素に着目して解析しています。これまでの日中韓の共同研究で、北京市のPM2.5では、ヒ素の濃度が特に高いことが分かりました。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/taiki/48/3/48_140/_article/-char/ja

この“ヒ素”と石油燃焼で発生する“バナジウム”との比が富士山頂と加須とで同時に高まる期間が見られたことで、埼玉県でも越境大気汚染の影響を受けたことが分かりました。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/taiki/53/4/53_144/_article/-char/ja)

※3 PM1

空気中を浮遊する粒子状物質には自然起源のものと人為起源のものがあります(図3)。このうち人為起源の粒子はPM2.5中に多く含まれますが、土壌粒子などの自然起源の粒子も混ざっています。大きさが1マイクロメートル以下の粒子をPM1と呼びますが、PM1には自然起源の粒子はほとんど含まれません。

※4 氷晶核

私たちの身の回りで水は0℃で凍りますが、雲の水は-40℃以下で凍ります。鉱物粒子や微生物などの氷晶核があると、これらが雨や雪の種となり-15℃以上で凍結します。PM1に含まれる人為起源の粒子は鉱物や微生物と比べると氷晶核としての働きは低いといわれていますが、まだ分からないことも多いです。十分に水分を含んだ大気中で氷晶核が少なければ雨や雪は降りにくく、多ければ降りやすい傾向にあると考えられますが、実際は単純なものではありません。富士山頂のような高い場所で氷晶核から雨や雪が作られる仕組みを調べることで、埼玉県の気象災害や水資源の問題解決に役立てることを目指しています。

Fig1 Fig2 Fig3 Picture

 

 



報道発表資料(ダウンロードファイル)

 ・グローバルな大気汚染を富士山頂で調べます(PDF:365KB)

 



お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 大気環境担当 米持・村田

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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