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掲載日:2022年12月1日

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アニメ業界の「働き方改革」シンポジウム

令和4年10月22日(土曜日)に第10回アニ玉祭のコンテンツの一つとして、アニメ業界の「働き方改革」シンポジウムを開催しました。
 

シンポジウム

プログラム

オープニングトーク

「みんなアニメが大好き、今も、もちろんこれからも!」
■ゲスト
    久保田 未夢さん(i☆Ris)

基調講演

「アニメ業界の働き方の“今”」
■講師
    小野打 恵さん(株式会社ヒューマンメディア 代表取締役社長)

パネルディスカッション

「埼玉発!制作スタジオ、クリエイターとともに進める働き方改革」
■ファシリテーター
    小野打 恵さん(株式会社ヒューマンメディア 代表取締役社長)
■パネリスト
    船越 英之さん(株式会社亜細亜堂 労働組合 委員長)
    菅野 雄二さん(有限会社スタジオパストラル 代表取締役)
    瀬谷 新二さん(株式会社手塚プロダクション アニメーター・作画監督)
    森田 宏幸さん(アニメーション監督)

オープニングトーク「みんなアニメが大好き、今も、もちろんこれからも!」要旨

オープニングトーク

ゲストに久保田さんをお招きし、小野打さんとオープニングトークを実施しました。
まず、久保田さんに声優を目指した理由・デビューのきっかけを伺いました。
久保田さんから、小さい頃からアニメが好きでアニメに関する仕事をしたいと思ったこと、声優さんが生アフレコをするイベントを見て興味を持ちオーディションを受けて声優になったことなどをお話しいただきました。
また、久保田さんが過ごしていた秩父がどのような街か伺いました。
久保田さんから、アニメの聖地になってからは至る所にアニメのポスターが貼ってあり、それを見に来る観光客が増えたり、コスプレをしている人が街中にいたりと聖地になるってこういうことなんだなというご感想をいただきました。
最後に、声優さんがアフレコする際の映像について色が付いているか伺ったところ、久保田さんから、付いていることが少ないとご回答いただきました。
小野打さんは、アニメ業界は忙しく色が間に合わないことが多いこと、そうした中で働いているアニメ関係の仕事をしている人を応援してほしいと締め括られました。

基調講演「アニメ業界の働き方の“今”」

基調講演

小野打さんから、初めに「埼玉県内のアニメ産業」と題して、埼玉県内の制作会社の数やその業種などについて説明がありました。
次に、「アニメ制作に携わるスタジオやクリエイターの働き方」と題して、アニメ制作の工程やアニメ業界で働く人の職種について、
「アニメ業界の『働き方』に係る法律等」と題して、アニメ業界で働く雇用者やフリーランスに適応される下請法、独占禁止法、働き方改革関連法等について説明がありました。
最後に、現在、アニメ業界の「働き方」に起きている変化として、フリーランスの社員化、アニメーターの研修、テレワークが増加していることをあげられました。
こうした取組のように経営者と社員、フリーランスが一緒に働き方を良くする方法を考えることが大事であるとのお話をいただきました。

基調講演資料(PDF:5,662KB)

パネルディスカッション「埼玉発!制作スタジオ、クリエイターとともに進める働き方改革」要旨

パネルディスカッション

まず、自己紹介を兼ねて、パネリストの皆様の働き方を変える活動や考え方について順番にお話いただきました。
船越さん:
約5年前に亜細亜堂で労働組合を立ち上げました。仕事で忙殺され、最近は活動が停滞気味です。すぐに解決できない案件も多く、その間に会社を辞めていく人もおり、組合を大きくすることが最大の課題です。また、動画単価は1枚200円台と言われていますが、この単価を1枚800円台にしないと新人アニメーターは最低賃金に届きません。新人アニメーターが辞めないためにも単価を上げる必要があります。そのためには業界全体で改善しないといけません。

菅野さん:
弊社ではアニメーター育成のため、有給で研修生を募集しています。研修期間後試験に合格すると契約社員として採用し、その2年後正社員として採用することを目標としています。新人には、作画監督を目指さないとアニメーターとは言えないという誤った価値観を持っている人が多いと思います。その拡大解釈が長時間労働につながっていると思います。そうした中、弊社は完全週休二日制、祭日休み、8時間労働を基本とし、残業は無理のない範囲でやってもらっています。アニメ業界の働き方の課題は、勤務中にインターネットで動画を見たり、たばこを吸ったりダラダラ働いている人が多いことだと思います。弊社のように8時間しっかり働いて、それ以外は自分の時間に充ててもらうことが一番の解決方法だと思います。

瀬谷さん:
弊社ではアニメーションのフルデジタル体制を計画実行中です。デジタルとアナログが混在することで無駄な経費が発生しているので、フルデジタルを進めています。その一環としてデジタル作画講習会を開催しています。フリーのアニメーターが機材の購入費や時間を捻出できないことから弊社が参加者に5万円を支給し、受講してもらっています。また、作画が紙の場合、制作スタッフが自動車などで作画を回収する必要があり、事故が多発していました。デジタル化が進むことでその業務がなくなるので、制作スタッフが一番恩恵を受けると思います。

森田さん:
動画からキャリアを始めて監督になり、食うや食わずの時代も長く、苦労してきました。また、日本アニメーター・演出協会の理事を務めながら業界の待遇改善の方法を模索していました。その過程でデジタルツール勉強会のようなものを実施し、デジタル作画の普及に貢献してきました。現在は、自分の仕事をしながら映演労連の組合員になり、引き続き業界の待遇改善の方法を模索しています。

次に、制作スタジオとクリエイターそれぞれの立場からどのように働き方の問題を解決していけば良いかお話いただきました。
船越さん:
人材育成の面で、原画の一原二原の制作体制が育たない原因だと思っています。一原のリテイク作業を二原が実施しているという話をよく聞きます。つまり、一原にフィードバックをしないので間違いをずっと犯すことになります。やはり、人材を育てるためには実際に会って習うことが良いこともあります。そうした中、完全デジタルになると本当に孤立してしまうことを危惧しています。でも、良いシステムだとも思います。
※一原・・・第一原画のこと、原画のラフ。二原・・・第二原画のこと、第一原画の清書。

森田さん:
一原二原の体制になったのは、原画単価が安いことから、原画マンが仕事を受けすぎて締切りに間に合わなくなり、作業の後半を制作進行が別の原画マンに再発注するケースが増えていった結果です。現状の原画単価が実際の仕事内容に見合っていないことが問題の根本で、値崩れを起こしているということです。私の実感では、原画単価は今の3倍が適正です。人件費を3倍にすれば問題はすべて解決します。そのために、力の強い労働組合を作る必要があります。

菅野さん:
弊社は人材育成のために期間の短い仕事は基本的に取らないようにし、自分で描いた一原は確実に原画までやることを徹底させています。また、予算は増えることはない、減る一方だと思います。その中でどうやっていくかを考えたときに、お金にならない仕事は取らないようにしています。取らないことにより仕事が無くなった場合は休んでもらい、仕事がある時にプラスアルファで働いてもらう形で割り切っています。この考えに至るまでに時間がかかりました。

瀬谷さん:
業界全体がデジタルにどんどんシフトしていく中で、デジタルツールを使うスキルを持っていない人は仕事がなくなるだろうと思います。デジタル庁が進めるDXの補助金などの活用も大いに考えるべきだと思います。また、値崩れの問題については日本動画協会さんも日本アニメーター・演出協会さんも大変充実した活動内容を持っているので、この2つが頑張って行政へのもっと強い働きかけをすることが考えられます。

森田さん:
行政に訴えるのはやめた方が良いです。国を動かすよりも、労組を通じて業界内で話し合った方が早いです。菅野さんから予算は増えないとお話がありましたが、もちろんすぐには無理なので、ゆっくりとやります。企業別組合で一社だけを標的に交渉するのではなく、業界全体に時間をかけて働きかける必要があります。

小野打さん:
政治に訴えるという話がありました。私は行政に理解してもらう必要があると思います。国会などでアニメ業界は儲かっているのに誰かが搾取しているからアニメーターは残酷な立場にあると曲解されてしまいます。そうではなくて、単価も状況により違い、単価制だけでもない。数字上の話だけではなく多様な働き方があることを理解してもらう必要はあると思います。

参加者の皆様からご質問を受け付けました。
参加者:
作り手の皆様は何を大事にして作品を日々作り続けていますか。
船越さん:
何でこんなものを作ったのかと言われないようなみんなが納得してくれるものを作らないといけないと思っています。

参加者:
これから業界に求められる人材を教えてください。
菅野さん:
アニメーターの仕事を特殊な仕事だと思わないで、一般の仕事と同じだと捉えて仕事以外の時間を有意義に使える人材が求められると思います。ゆっくり成長すれば良く、長い目でこのアニメ業界で働きたいと思ってくれる人と共にやっていくことが一番良いと思っています。

参加者:
10代の頃から監督を目指していますが、制作会社に入る以外に何か方法はありますか。
森田さん:
監督は大きく分けて、大きな予算でお金を儲けたいタイプと、自分の好きなものを作りたい、文化的に優れたものを世に出したいタイプがいます。前者ならやはり会社に入って組織の中で学んでほしいですが、後者なら自主制作で自分の気持ちのこもった作品を作ることをお勧めします。今は、海外の映画祭でもネットを通じて出品できるので、そうして道が拓けます。

参加者:
アニメ関連の消費をしてアニメクリエイターに還元したいのですが、どのような方法がありますか。
菅野さん:
一番良いのはネットで面白い感想を書いてもらうことです。業界の人やメーカーの人は投稿を見ています。話題が無いと売れないのでそういった感想を書いてもらうのが一番効果があると思います。
瀬谷さん:
作品を作りたいというクラウドファンディングがあれば賛同していただいて、直接資金の協力をしてもらう方法もあると思います。

最後に、改めてパネリストの皆様からご意見をいただきました。
船越さん:
今日話したアニメ業界の改善について現実的な落としどころを見つけていくことができれば良いと思います。

菅野さん:
業界のためにも、元請会社がアニメーターを引き抜くのは止めてほしいです。下請会社はお金をかけて動画マンを原画マンに育てているので、原画マンになったからといって引き抜かれてしまうと大損になります。節度を持ってほしい、それこそトレードや移籍金みたいな制度化が必要だと思います。

瀬谷さん:
動画という作業は大変な仕事です。最近では自動化のソフトウェアが試されているので、こういうものを使うことで負担を減らせるかもしれません。一方で、動画マンが育たないという問題が出てくるかもしれない、良い面と悪い面を上手く学んでいく必要があると考えています。また、就労環境などの問題は場合によっては自ら招いていることもあると思います。そこから抜け出すために今世の中はどうなっているのか、自分は何をしたら良いのか、よく学んで自分の付加価値を高める努力をすることも必要です。

森田さん:
私が人件費を3倍に、と言うとむちゃに聞こえますが、アニメには特別な才能に裏付けられた高い技術が必要です。たとえば自動車メーカーの技術者のような、上級サラリーマン並みの人件費が適正です。そうした待遇をなんとかして手に入れて技術を磨くことによって、先ほど久保田さんのお話にあったアフレコ時の映像に色が付かないという問題も解決したいものです。

小野打さんから、いろいろな業界がデジタル化や働き方改革に取り組み、努力している中、アニメ業界は特殊な働き方だからできないではいけない。今日一番重要なことは経営者、社員・フリーのクリエイターの方が公の場に集まり、それぞれの立場で赤裸々に意見を交わしたこと。経営者だけ、クリエイターだけで集まっても解決しないところに来ているので、こういった機会をここ埼玉で始められたことに非常に意義がある、とお話いただきパネルディスカッションを終了しました。

お問い合わせ

産業労働部 多様な働き方推進課 働き方改革・テレワーク推進担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 本庁舎5階

ファックス:048-830-4821

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