| Q | 八ッ場ダムは、国土交通省が、東京、埼玉、千葉、茨城、群馬、栃木の一都五県に対する都市用水の供給と利根川の洪水対策を目的として、約五十年前に群馬県長野原町に建設を計画した多目的ダムであります。 しかし、平成十五年三月末現在における工事の進ちょく状況は、事業費ベースでまだ三三パーセントであります。 国土交通省は昨年の十一月二十日に、事業費を二千百十億円から四千六百億円に倍増する等の基本計画の一部変更を発表しました。 この事業費の増額変更によって、埼玉県の負担額は三百六億円増えて五百六十九億円に膨れ上がります。 さらに起債の金利、水源地域整備事業、水源地域対策基金事業が加わりますので、八ッ場ダム事業費の埼玉県負担総額は、今回の基本計画の変更において一千億円近くにもなります。 財政難の折でありますので、基本計画の同意に当たっては慎重に対応する必要があります。 八ッ場ダムの建設については、八ッ場ダムを考える会、首都圏のダム問題を考える市民と議員の会、八ッ場ダムをストップさせる埼玉の会などの市民団体が、水余りが予測される中で、巨額の資金を投じて自然を破壊すべきではないと反対しています。 民主党県議団は、昨年の十二月下旬に八ッ場ダムの建設地域を視察して、関係者から様々な意見を聞いてきました。 また、この二月上旬には国土交通省関東地方整備局へ行って、八ッ場ダム建設の概要について、るる説明を受けました。 その結果、八ッ場ダムの建設については、ますます疑問を深めておりますので、主な事項について知事の率直な見解を伺いたいと思います。 第一点は、八ッ場ダムの完成時期についてであります。 国土交通省は、八ッ場ダム建設事業の今後の対応方針として、平成十九年度までに生活再建の基盤を完成し、平成二十二年度の本体工事完了を目指すとしています。 しかし、昭和六十一年に基本計画を告示した八ッ場ダムの建設状況は、十七年を経過した平成十五年三月末において、進ちょく状況はいまだに三三パーセント、生活再建の代替地取得についてはわずか一一パーセントであります。 このような事業の遅れから、平成二十二年度の完成は到底困難で、平成三十二年ごろの完成になるのではないかとの見方が一般的であります。 知事が設置した八ッ場ダム等の建設に関する基本計画に係る懇話会も、八ッ場ダム建設事業に関する基本計画の変更はやむを得ないものとして結論付ける一方、ダムの完了時期を懸念して、完成時期の厳守を付記しています。 完成時期が平成二十二年度から平成三十二年度ごろにずれ込むと、県の人口は平成二十七年をピークとして減少期に入りますので、人口減少期に入ってからダムが完成することになり、無駄な公共事業への投資になります。 知事は、八ッ場ダムの完成時期についていつごろと見込んでいるのかについて伺います。 第二点は、長期水需給計画についてであります。 埼玉県長期水需給の見通しによりますと、平成二十七年度の水需要は、県人口を七百二十八万人、一人一日最大使用量を四百二十九リットルとして、一日三百十二万立方メートル、これに予備の四パーセント、約十三万立方メートルを加えて、一日三百二十五万立方メートルとしています。 しかし、埼玉県における一人一日最大使用量の実績は、最も多いのが平成四年の四百五十一リットルで、それ以降逐次減少して、平成十四年度は四百十リットルになっています。 この実績に反して、埼玉県は長期水需給の見通しを平成十七年度四百三十三リットル、平成二十二年度四百三十一リットル、平成二十七年度四百二十九リットルと過大な数字を挙げています。 一人一日の使用量の実績が年々減少しているのは、経費節減と節水意識の定着及びリサイクル化、節水型トイレの普及等が進んでいるためです。 八ッ場ダムが完成すると見込まれている平成二十二年度以降の平成二十七年度の水需給計画は、平成十四年度実績の一人一日最大使用量の四百十リットルに予測人口を乗じた数量で十分間に合うのではないでしょうか。 もし不測の事態が生じても、年間を通して最大使用量の日数は数日と思われますので、各種水利権の調整で対応できるはずです。 また、長期水需給の見通しでは、平成二十七年の県人口を七百二十八万人として計算しています。 埼玉県の人口は、平成十六年一月一日現在で約七百四万四千人であります。 国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、埼玉県の人口は平成二十七年の七百二十二万人をピークとして、平成三十七年には七百八万人に減少します。 過大な水需給の見通しによって、不必要な水資源の確保対策を進めることは、貴重な県費を無駄な公共事業に投入することになります。 長期水需給の見通しについて冷静に見直す必要があると思いますが、知事の見解を伺います。 第三点は、水利権の転用権についてであります。 埼玉県は、既に九百二十四億円かけて農業用水合理化事業を実施して、毎秒十・九一三立方メートルの転用水量を確保しています。 この農業用水を、八ッ場ダム建設に参画することを条件として、非かんがい期には取水が制約される暫定水利権として水道用水の取水が許可されています。 利根川は、非かんがい期であっても河川の流量に余裕がありますので、取水することは十分可能であります。 国土交通省は、埼玉県に暫定水利権を許可する条件として、八ッ場ダム建設事業への参画を担保としていることは全く理不尽で不合理であります。 水道用水、工業用水、農業用水を現実に即して調整できる転用権を県に認めることによって、水資源の合理的な有効活用となり、無駄な水資源開発を抑制することができます。 県は、水利権の融通性を確保するために国に対して水利権の規制緩和を求めて、国と折衝する必要があります。 国土交通省は、新たな水資源開発基本計画では、これまでの利水ダム建設の計画を改めて、渇水期の安定供給をはじめ、用途転用などでの既存ダムの有効活用に重点を移す考えであると報じられています。 水利権の転用権や水利権の融通性と、このことについて国に折衝することについて知事の意見を伺います。 第四点は、八ッ場ダムの治水効果についてであります。 利根川の治水計画は、昭和二十二年のカスリーン台風の八斗島地点における基本高水流量、毎秒一万七千立方メートルを基礎に計画されました。 しかし、国土交通省は昭和五十五年に下流地域の都市開発を理由として、八斗島地点の基本高水流量を毎秒一万七千立方メートルから二万二千立方メートルに引き上げました。 昭和二十二年のカスリーン台風以降、戦時中乱伐されていた山の植樹が進み、森林が成長して保水力が向上してきていますので、同じ規模の台風が来ても洪水流量は確実に減少します。 利根川の現行の治水計画は、毎秒二万二千立方メートルの洪水流量のうち、六千立方メートルを八ッ場ダムを含む上流のダム群で調節し、残りの一万六千立方メートルを利根川の河道整備で対応することになっています。 国土交通省の説明によりますと、毎秒六千立方メートルのうち、既設のダムと八ッ場ダムで一千六百立方メートルを調整するとのことです。 残りの四千四百立方メートルの洪水流量は、今後新設する治水ダムによって調節する計画なのでしょうか。 いずれにしても、八ッ場ダムの治水上の効用はあまりないと判断されますが、八ッ場ダムの治水上の効果について、知事の見解を伺います。 第五点は、八ッ場ダム建設に要する費用の負担割合についてであります。 八ッ場ダム建設に要する埼玉県の負担率は、水道用水の一六・八パーセントで、最も高い負担率になっています。 建設に要する費用の負担については、今回の基本計画変更に伴い、建設の目的に、流水の正常な機能の維持を新たに追加したこと及び、ダム使用の設計予定者の参画量の変更に伴い変更したとあります。 参画者の水道用水全体の負担率は四七・五パーセントから四五・四パーセントと、二・一パーセント低減しています。 しかし、埼玉県の負担率は現行、変更計画共に一六・八パーセントで何らの低減措置もありません。 また、参画量については、埼玉県は水道用水で通年水利権は現行の毎秒四・一四〇立方メートルから、変更計画で毎秒〇・六七〇立方メートル、冬期水利権は現行の毎秒四・六七四立方メートルが、変更計画で毎秒九・二五〇立方メートルと変更になっています。 そして、建設費の負担率は、一立方メートル当たり、通年水利権にあっては変更計画も現行と同じ二・八三パーセントでありますが、冬期水利権にあっては一・〇九パーセントから一・六一パーセントへと大幅に引き上げられています。 これらが要因となって、埼玉県の建設費負担額が過大に算出されていると思いますが、負担額の減額調整を国と折衝することについて、知事の見解を伺います。 第六点は、八ッ場ダム建設の基本計画変更に対する意見の回答についてであります。 知事は、八ッ場ダム建設の第二回基本計画の変更について、二月定例会に承認の議決を求めています。 民主党議員団は、さきに述べたように、長野原町のダム建設地を視察して関係者から意見を聞いたり、国土交通省関東地方整備局へ行って種々説明を受ける中で、八ッ場ダムの建設問題についてはいろいろと検討してきました。 その結果、質問してきましたように、八ッ場ダム完成の時期、県の長期水需給の見通し、水利権の理不尽な転用権、八ッ場ダムの治水効果、八ッ場ダム建設費の不可解な負担率等について疑問を持ちました。 国土交通省関東地方整備局は、基本計画変更に係る県の意見について、特に期限を切って回答を求めていないことを明らかにしています。 このため、群馬県知事は二月十六日の定例記者会見で、八ッ場ダム建設計画の変更案に関し、二月県議会での意思表明の予定について、現段階でそこまでに至っていないと述べています。 さて、知事が一都五県の合同調査チームの検証結果を基に、更に徹底的な検証をするため、十二月に八ッ場ダム等の建設に関する基本計画変更に係る懇話会を設置をして、有識者による客観的な検証に努めてきたことについては評価しています。 懇話会は、知事の要請にこたえて精力的に懇話会を開催して、二月四日に検証結果を知事に報告しています。 報告書は、現行事業費約二千百十億円を二千四百九十億円増額し、約四千六百億円とする基本計画の変更はやむを得ないものとしながらも、引き続きあらゆる方法を駆使し、コスト削減に努めるよう国土交通省に対して求めるべきであると付言しています。 様々な問題を抱えている八ッ場ダム建設の基本計画変更について更に検証し、国土交通省と折衝した上で回答しても遅くないと思いますが、知事の見解を伺います。 |
| A | 上田 清司知事 八ッ場ダムの完成時期について、いつごろと見込んでいるかについてのお尋ねでありますが、国土交通省は平成二十二年度までに完成させると明言し、基本計画の変更に同意を求めております。 また、一都五県の職員による合同調査チームの検証においても、また、先般県独自に設置しました有識者による八ッ場ダムの建設に関する基本計画変更に係る懇話会においても完成すると報告を受けており、こうした観点から見ると、私も平成二十二年度に完成するものと考えております。 次に、長期水需給の見通しについてのお尋ねです。 冷静に見直す必要があると思いますがについてでございますが、平成十四年度の使用水量がそれまでに比べ少なかったのは、生活用水の使用量が前年に比べ減少していないことから、あるいはまた景気低迷による都市活動用水の減少によるものだと考えております。 このため、平成十四年度の実績をもって将来一人一日最大使用水量とすることは、今後の景気の上昇や気象の変化などに伴う使用水量の増加に対応できないと考えております。 また、平成二十七年度の人口推計については、彩の国五か年計画二一の推計人口を基にして、県内の大プロジェクトの進ちょくによる定着人口を見込んだもので、現状においても予測値を若干上回っております。 県の長期水需給の見通しは、現時点における様々な角度から判断したものでございます。 なお、水需給の見通しについては、今後も引き続き社会経済情勢の変化や水需要の動向を把握しつつ、適宜見直しはしてまいります。 次に、水利権の転用権や水利権の融通性について国に折衝することについてでございますが、これまで本県は、農業用水から水道用水、工業用水から水道用水へと水資源の有効利用を図ってまいりました。 また、貴重な水資源を有効に活用すべきとの御提案でございますので、利根川流域という視点から、関係都県とも連携し更に研究し、国とも議論は進めていきたいと思っております。 次に、八ッ場ダムの治水上の効果についてのお尋ねであります。 八ッ場ダムは、洪水調節容量六千五百万立方メートルで、この容量は、利根川上流の既設の矢木沢、藤原、奈良俣、相俣の四つのダムの合計に匹敵するものでございます。 八ッ場ダムが完成いたしますと、平成十年九月の台風五号で前橋地点における利根川の水位を六十センチメートル下げることができる効果があります。 上流ダム群の中でも、八ッ場ダムは流域面積及び洪水調節容量が最も大きく、利根川の治水上大きな効果を発揮するものと考えております。 本県におきましても、同じ台風五号では、羽生市、北川辺町で堤防からの漏水が発生しております。 また、平成十三年九月の台風十五号でも、加須市や北川辺町において堤防からの漏水や堤防の亀裂を生じています。 したがいまして、八ッ場ダムは上流ダム群の中でも最も大きな治水上の効果を発揮するものと考え、今後の治水対策の上からも八ッ場ダムは必要と考えております。 次に、負担額の減額調整を国に要請することについてでございますが、八ッ場ダムの事業費の利水者の負担割合は、ダムからの補給水量の割合によって決まります。 今回の基本計画の変更によって本県は、四月から九月までのかんがい期の補給水量を減らし、十月から三月までの非かんがい期における補給水量を増やしたものの、年間を通した補給水量には変化がないことから、本県の負担割合には変更がありません。 しかしながら、突然大幅な事業費の増額が示されたことは、私は非常に不快を感じております。 例えば、二千万円で契約をした家の完成が間近に迫ったときに、四千六百万円だと請求されているような思いでありますので、こうしたことが本当に世の中で通じるのか激しい怒りも感じております。 今後、事業執行段階における費用の圧縮や更なるコスト縮減を要請するとともに、工期が長期化している責任は、事業者である国が負担すべきと考えておりますので、国と都県との負担割合の見直しについては、関係都県と連携して国に強く求めてまいります。 ちょうどさきに、東京都知事、千葉県知事ともお目にかかったときに、この点については御了解をいただいております。 次に、基本計画変更について更に検証し、国土交通省と折衝した上で回答しても遅くないと思うがとの質問であります。 これまで一都五県の職員による合同調査チームで検証し、さらに外部有識者による懇話会を立ち上げ、延べ六回にわたる審議を行い、基本計画の変更はやむを得ないという結論をいただいております。 また、国からも、ダムの早期完成のために速やかな同意を強く要請されており、東京都、栃木県は既に去る十二月議会に提案し、承認を得ております。 また、茨城県及び千葉県も今二月議会に提案しております。 飲料水の安定確保、洪水対策、さらに同意が遅れることで事業期間が延びますと一層の事業費の増額につながりかねないこと、また、地元長野原町では補償基準の妥結を受け、代替地の造成や分譲も進むなど、ダムを核とした新しいまちづくりの機運が盛り上がりつつあります。 地元の方々の長い間の御心労に思いをいたした結果、基本計画の変更について同意していただけるよう御提案を申し上げております。 |