平成14年9月定例会開会日の9月25日の本会議において、行政視察団の報告が行われました。
埼玉県議会米国行政視察団報告
代表 鈴木 聖二
埼玉県議会 米国行政視察団、団員、舩津 徳英、小島 信昭、大山 忍、中森 福代、中村 興夫、渋谷 実、矢部 節、そして
鈴木聖二、以上8名を代表いたしまして、視察の概要につき報告申し上げます。
我々視察団は、去る7月5日から8日間、シカゴ、ニューヨークを中心に11カ所の機関、施設を訪問し、7月12日に帰国いたしました。
視察内容は、米国における経済、農業、教育、NPO活動など多岐に渡りましたが、最も大きなテーマは、同時多発テロの際におけるアメリカの救助活動・危機管理対策についての調査研究、そして更に、土屋義彦知事並びに秋谷昭治県議会議長のテロへのお見舞いと復興への激励の親書をニューヨーク市に届けることでありました。
視察の詳細につきましては、後日、文書により報告させていただきますので、本日は、主な視察先の概要のみ報告申し上げます。
まず、農業についてですが、シカゴから北へ100キロほどの穀物農家と酪農農家を訪問し、アメリカ農業の現場を調査しました。 穀物農家は、家族経営で約600ヘクタールの農地を耕作するアメリカでも比較的大規模な農家でありますが、自己所有の農地は、50ヘクタール弱であり、残りの農地はリースであるとのことでした。リースによって、農地の集約化を図り、企業としての農業を確立している姿は、本県農業の将来を考える上で、大いに参考になったところであります。
次に、教育については、ニューヨーク郊外のスカースデール村を視察しました。
クロンレイン村長は、「村に産業はほとんどなく、村の財源は、大部分を住民の税金で賄っている。教育にかける費用には住民はその税を惜しまない。そのため、情報公開には、特に力を入れている。」と話し、また、スーザン教育委員長からは「この村の学校は公立だが、有名な私立に負けない教育を行っている。学校の質は、すなわち教員の質であり、先生の再教育に特に力を入れている。」との説明がありました。
日米では、教育制度が異なりますが、目的は同じであり、今後の教育改革を考える上で、大いに参考になりました。
ちなみに、村長さんは、サッカーの大ファンで今回のワールドカップでもテレビから離れず、特に「さいたまスタジアム」の素晴らしさに目を奪われたそうで、土屋知事さんによろしくとのことでした。
さて、次に、今回の視察のメインであります危機管理対策でありますが、私たちは、まず、自治体国際化協会ニューヨーク事務所において、9・11同時多発テロ事件について詳細な説明を受けた後、現場でありますグランド・ゼロと4カ所の機関を訪問しました。
グランド・ゼロでは、現在も関係者以外は立ち入り禁止のため、隣接するビルの屋上から視察を行いました。すでに瓦礫も撤去され、整然とした状態となっておりましたが、高層ビル街の中に突然ぽっかりと空いた地下7階にも相当する巨大な穴と、そこかしこに残る被害の傷跡を目の当たりにしたとき、団員一同、大きな衝撃を受けました。そして事件直後、レスキュー犬を連れて、いち早く救助に駆けつけた元消防士のスコット氏から生々しい体験談を聞くことができました。
そして、危機管理・災害対応に係わる4つの機関、まず、おびただしい数の死傷者の搬送と救助活動の後方支援を行った赤十字社ニューヨーク本部では、全国から集まるボランティアの人たちの車で道路が塞がってしまい救命活動に大変手間取ったという話、また、自分たちの仲間が二次災害に巻き込まれたことでの精神的動揺など生々しい説明を受けました。
次に、実際の救助活動の最前線を担ったニューヨーク市消防本部では、危機管理対策として、「5人の法則」、つまり、どんな組織も基本単位5人で構成するという説明を受けました。一人の人間が命令や情報を正確に伝えられるのは5人までが限界であるという、彼ら消防やレスキュー隊の経験則によるものであり、リーダーの下に5人の部下を配置し、物事の企画立案は下の5人の部下が行い、リーダーは決断・選択のみを行うとのこと。したがって、意思伝達の速さ、目的意識の明確さは、素晴らしいものがあり、わが国の上意下達のマニュアル主義とは大きな差違をなすものであり、今後の危機管理システム構築に向け、大変参考になりました。そして、救助の際に亡くなられた消防隊員の冥福を祈り、団から献花を行いました。
また、グランド・ゼロの跡地再開発を担うロウアー・マンハッタン開発公社では、復興に関する説明を受けたあと、一般の人々は入れない、遺族の方々だけがお祈りする部屋に特別に入れていただき、団員一同、心から犠牲者の冥福を祈りました。
そして4つ目のファミリー・アシスタント・センターでは、被災者のストレス障害対策や生活支援対策などの説明を受けました。
ところで、土屋知事と秋谷議長の親書をニューヨーク市長、市議会議長に手渡す当日、急遽、ブッシュ大統領がウォールストリートを訪れ、株価急落を受けて経済演説を行うということになったため、市長、議長ともその対応に出てしまい、親書は代理の首席報道官及び市議会議員に手渡しましたので、ここに報告いたします。
以上、視察の概略について報告いたしましたが、今回のアメリカ滞在中、最も印象に残ったのは、街中にはためく、星条旗の多さでした。
ビル街はもとより、ストアー・デパート、民家の屋根、郊外の建物、山の上、鉄橋など、ありとあらゆる場所に国旗が掲げられていました。
現地の方に、「テロの後、愛国心の高揚によるものですか」と尋ねると、「いや、もちろんそれもありますが、それ以上に、我々にとって星条旗は自由の象徴なんです。この旗が掛かっている限り、我々は自由そのものでいられるのです」という返答が帰ってきました。
我が日本の国旗を揚げることさえ議論せねばならぬという状況は、一見、自由のようでありながら、まだまだ呪縛の中にいるような悲しく、恥ずかしい感がいたしました。
最後になりますが、日米友好通商条約締結50周年という大きな節目の年に、そして、あの悲惨なテロの後の初めての、また、他の都道府県に先駆けての視察という、大きな任務をお与えくださった秋谷議長をはじめとする県議会の皆様及び土屋知事をはじめとする執行部皆様方に、心から御礼申し上げまして、視察報告とさせていただきます。
ブランデンブルグ州友好親善訪問・教育・雇用・少子高齢社会対策欧州行政視察団視察報告
代表 近藤 善則
議長のお許しをいただきましたので、埼玉県議会ブランデンブルグ州友好親善訪問・教育・雇用・少子高齢社会対策欧州行政視察団として派遣されました松下裕、福永信之、長沼明、そして私、近藤善則、以上4名を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。
私たち視察団は、去る7月10日から9日間にわたり、ドイツ、ノルウェー及びオランダの3か国、計13か所を訪問いたしまして、7月18日に無事、帰国いたしました。
このたびの視察の主な目的は、友好協定を結んでおりますドイツ・ブランデンブルグ州を訪問し、より一層の友好親善を深めるとともに、各訪問国における教育、雇用、少子高齢社会対策等の実情をつぶさに調査し、今後の県政の進展に資することでございます。
最初に訪問したドイツのブランデンブルグ州では、まず、州政府を表敬訪問し、マティア
ス・プラツェック首相をはじめ政府要人とお会いし、プラツェック首相に土屋知事からお預かりした親書をお渡しいたしました。
我々の友好親善訪問の直前に州首相の交代があり、プラツェック首相は前任のマンフレッド・シュトルペ氏から交代し、首相に就任した直後でございました。
この中で、プラツェック首相からは、「両県州には共通の課題が少なくない。ドイツには、『最大の投資は人的交流である』という諺がある。厳しい財政状況の中、互いの経験を交換してまいりたい。首相になって間もないが、これまでの友好の維持、そして、これからの発展に全力を尽くす所存である」との言葉をいただき、両県州の友好発展に対する強い熱意を感じた次第でございます。
また、州議会におきましては、ハベルマン副議長を表敬訪問し、お預かりした秋谷議長の親書をお渡しいたしました。ハベルマン副議長には、州議会の現状についてお話をいただくとともに、首都に隣接する両県州が抱える問題やワールドカップサッカー大会などについて、多岐にわたり親しく懇談をしたところでございます。
政府並びに議会の要人との会談のほか、ブランデンブルグ州では介護保険制度と教育政策を主要テーマに視察を行いました。
このうち、介護保険制度につきましては、州の労働・社会・健康・女性省を訪問し、同省のアルヴィン・チール大臣から介護保険の状況の説明を受け、共通する課題について意見交換を行いました。
この中で、大臣からは、「社会保険制度の各州における保険者である疾病金庫間の財政調整が、ブランデンブルグ州など旧東ドイツ領域の州を含めて行われるなど医療保険制度の改革は進んだものの、決して順調ではない経済状況の中で、いかに高齢者ケア施策を推進していくかが大きな課題である」との説明がありました。
また、当日は、私たち視察団の要望により、要介護認定を行うメディカル・サービス機関である同州のMDKの担当者にも出席をいただき、介護保険制度に共通する課題である介護認定の運用について詳細な説明を受けたところでございます。
次に、教育政策につきましては、教育・青少年・スポーツ省を訪問し、同省のシマンスキー次官から州の教育制度の体系的な説明を受けた後、我が国では本年4月から始まった学校週休2日制に伴う諸課題や、体験学習、職業教育など教育問題に関する幅広い意見交換の機会を得たところでございます。
第二の訪問国ノルウェーにおきましては、少子社会対策を主要テーマに視察を行いました。
まず、こども・家庭省を訪問し、担当官からノルウェーの少子社会対策に関する説明を受けました。子育てで保育所を利用しない場合に、保育所に対して支給されている補助金に見合う額を親に支給する「現金給付制度」や、最長52週間の有給の育児休暇、さらには父親の育児休暇取得を促す制度など、欧州においても比較的高い女性の就業率と出生率を両立させているノルウェーの取組を詳細に知ることができました。
また、当日は保育の現場として私立幼稚園を訪問いたしました。
なお、ノルウェーでは上記の視察に先立ち、在ノルウェー日本大使館を訪問し、河合正男大使から、同国の現状と課題、日本との二国間関係などの説明をいただき、その後の視察が大変有意義なものとなった次第でございます。
最後の訪問国オランダにおきましては、雇用対策と高齢社会対策を主要テーマに視察を行いました。
このうち、雇用対策につきましては、オランダにおけるワークシェアリングの現場を視察するため、民間企業のキャノンヨーロッパN・V社を訪問いたしました。
「オランダの奇跡」とも呼ばれ、過去に2ケタ台であった失業率を劇的に改善したことで知られているオランダ型のパートタイム労働は、日本や他の欧州諸国で一般的な臨時・有期の補完的雇用ではなく、「週35時間未満で、様々な雇用パターンが選択できる正規の雇用」であり、しかも法的にフルタイムとほぼ同じ地位が保証されております。
いわゆる「政」・「労」・「使」の三者が協調して雇用の改革を推進し、働き方の多様性や労働市場の流動性を高めることによって雇用の創出を図ったもので、改革の推進には危機意識の共有や柔軟な対話が必要であることを強く感じた次第でございます。
なお、現在、オランダの労働者のうち概ね4割がパートタイム労働とのことでございました。
次に、高齢社会対策につきましては、同様に現場の視察を目的に、オランダの典型的な高齢者福祉施設であるフレスマン高齢者センターを視察いたしました。この施設は、アムステルダムの中心街に位置し、「自立」と「共生」をテーマに地域との交流に意を用いており、周辺の中華街の住民らが毎週、施設において催しや中華の食事サービスなどを行っているとのことでした。施設を郊外ではなく、できるだけ市街地に設置するオランダらしい取組の一端を垣間見ることができました。
以上、視察の概要につきまして御報告いたしましたが、団員一同、この視察の成果を生かし、今後の県政進展のために一層努力して参る所存でございます。
なお、この場をお借りして、私たちの視察後に、ヨーロッパの中東部を襲った大規模な洪水で、被害の及んだブランデンブルグ州にお見舞いを申し上げ、一日も早い被災地の復興をお祈り申し上げます。
終わりに、このたびの視察に当たりまして、派遣を決定いただきました県議会並びに知事をはじめとする執行部の皆様、その他多くの方々から賜りました御厚情、御支援に対しまして、心からお礼を申し上げ、御報告といたします。
御静聴、ありがとうございました。