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掲載日:2022年9月2日

実験検査部の研究開発

埼玉県立循環器・呼吸器病センター実験検査部(壁井信之 専門員、森厚夫 元センター医師)は、慶應義塾大学心臓血管外科(四津良平教授、志水秀行講師)、同大学麻酔科(武田純三教授、山田達也講師、石川明子医師)と、大動脈瘤手術に合併する脊髄虚血障害の予防手段として、脊髄硬膜外腔に冷却カテーテルと呼ばれる特殊な構造を持つ細い管を挿入し、局所的に脊髄だけを冷却するシステムを世界で初めて共同開発し、10例の臨床応用に成功しました。

研究の概要

大動脈瘤手術では病変部分を切除し人工血管につなぎ換える間、大動脈の血液の流れを遮断しなければなりません。この間、大動脈から枝分かれして脊髄に血液を送る血管への流れも遮断され、血液の流れは激減します。脊髄は他の臓器に比べ血流の減少に弱く、5から10%程度の頻度で患者は脊髄に障害を受け、下半身が麻痺になる危険性があります。これに対し現在、全身を低体温にして代謝を抑えて血流の減少に対処する方法が採られていますが、呼吸不全、免疫機能の低下、血液凝固異常、不整脈の頻発などの重篤な合併症が生じる恐れがあります。

埼玉県立循環器・呼吸器病センターでは、これらの問題に対処するため、液体を流すヘアピン型の循環回路を内蔵した外径1.5ミリメートルの冷却カテーテルをユニチカ、アストの協力を得て世界で初めて開発しました。このカテーテルを、脊髄を覆っている硬膜と背骨のわずかな間隙(硬膜外腔)に挿入して留置し、冷却された生理的食塩水をカテーテル内部に循環させることで、脊髄だけを選択的に25から30℃の低温にして代謝を抑えることができるようになり、動物実験でその有効性と安全性を確認しました。

臨床応用に成功

臨床応用は、高度先進医療の認可を得るための多施設臨床試験を実施する都合上、埼玉県立循環器・呼吸器病センターの関連大学である慶應義塾大学心臓血管外科で行うことにしました。泉工医科工業の協力により臨床用冷却液潅流装置を製作し、また同大麻酔科とユニシスの協力により、注射をするのと同様な方法で簡単にカテーテルを挿入(経皮的穿刺法と呼ぶ)できるように器具を改良して臨床応用の準備を整えました。慶應義塾大学の倫理委員会の承認を得た後、臨床応用を行い、すべての患者で脊髄障害を安全に回避することができました。

研究成果の発表

これらの研究及び臨床成果は、第62回日本胸部外科学会定期学術集会で紹介されたほか、米国の心臓血管外科及び麻酔科領域の有力誌「Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery」「The Annals of Thoracic Surgery」「Anesthesiology」に掲載されています。

この局所脊髄冷却法は、10分間という短時間で30℃まで脊髄を選択的に急速冷却できる性能をもつことから、世界的に多くの患者が発生している脊髄損傷の二次障害を抑える手法としても期待でき、海外からも注目されています。今後あらたにチームを組織して実用化に向けて、研究を継続していく予定です。

詳細説明

「詳細説明については、研究開発詳細説明をご覧ください。」

お問い合わせ

地方独立行政法人埼玉県立病院機構 埼玉県立循環器・呼吸器病センター  

郵便番号360-0197 埼玉県熊谷市板井1696

ファックス:048-536-9920

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