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掲載日:2019年7月12日

令和元年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(木下高志議員)

熊谷市上之地内における農地転用許可等について

Q   木下高志  議員(自民

6月15日に上田知事は、次の選挙に出馬しないとする旨、自らの出処進退を明らかになさいました。政治家の出処進退については御自身が判断することでありますので、コメントは控えますが、その気持ちを踏まえた上で質問をさせていただきます。
さて、一般的に政治家を語るには、権力の中枢に上り詰める姿にその政治家自身の本質を見がちでありますが、実はそれ以上に本質を表わしているのが退陣する姿であります。知事は常々「基本はいつも任期をきちっとベストで果たしていく」と話されております。正にこの考えに同感であり、今任期である8月30日まで全身全霊を傾けて与えられた職責を全うしてくれることを期待するものであります。
そこでお伺いいたします。
昨年10月に、埼玉県議会では熊谷市上之地内における農地転用許可等調査特別委員会、いわゆる百条委員会が設置されました。実に本県議会においては26年ぶりのことであります。百条委員会では延べ15名の証人に対して計16時間に及ぶ質問を行うとともに、163点もの記録や任意提出資料等を精査し、現地への確認も行うなど多様な観点から調査事項の解明を目指しました。
ここで、分かりやすくこの事案の概要を申し上げます。
該当地である熊谷市上之地内の土地は、転用が原則として許可されない第一種農地でしたが、例外的に転用が許可されました。しかし、許可条件に違反して転売されていたことが発覚し、そもそも十分な審査が行われていたのか経緯や手続を調査することとなったというわけであります。一般に農地転用は身近な例でも数多くありますので、審査の厳しさを御存じの方は大勢いると思いますが、この案件では信じられないようなことが起こっておりました。特に印象深く記憶に残っていることは、この農地転用許可と深く関与している熊谷市所管の開発許可や農用地利用計画の変更に関わることであります。
今回、公共移転という制度の利用を発端として、それぞれの許可がおりております。公共移転とは、公共事業によって移転せざるを得なくなった建物と同じ用途の建物を建築する目的で行う開発行為のことであります。この事案の当事者である企業は山形に土地を所有しておりましたが、その土地の一部が高速道路の建設にかかってしまい、国土交通省に売却することになりました。そのため、その企業は公共移転により熊谷市上之地内に移転して新たな事業を始めることを計画いたします。
その申請の過程で驚くべきことが行われておりました。実際に高速道路にかかってしまった土地は、敷地のごく一部でしかなかったのに、企業が保有する全ての土地が高速道路にかかってしまったと勘違いしてしまうような証明書が発行されていたのです。この企業は、実際の収用面積の70倍もの面積が記載された証明書を熊谷市に提出し、大型スーパーが営業できるほどの広大な土地の開発許可を得ていました。こんなことがまかり通るんでしょうか。発行元の国に確認したところ、この証明書は収用された土地等を証明する文書ではないと認めており、公共移転の根拠となり得ないという事実が分かりました。
また、こんなこともありました。熊谷市が申請者である企業に対して出した開発行為許可通知書ですが、企業側が保管していた通知書の許可条件と内容が違うんです。2つの通知書を重ねて透かしてみると異なっているんです。ここにその開発許可条件の原本がございます。御覧ください。見えないでしょう。これを片方は熊谷市が提出したものであります。もう片方は申請者が受領したものであります。本来であるならば、これは当然ながら一致するべきものであります。これを透かしてみます。何と違っているんです。どうして違っているんでしょうか。見えませんか。見えないと思いまして、この異なっているところに附箋をつけて、この時点で分かるのは、この部分が違っていることであります。知事、分かりますでしょうか。交付した熊谷市と受領した申請者の双方に聞いても、どちらのほうも自分が持っているものが本物だと主張しました。
このようなことのほか、百条委員会で判明したことは多岐にわたっていました。しかし、残念ながら百条委員会の調査範囲は埼玉県の事務だけであります。もちろん警察のような捜査機関でもありませんから、極めて釈然としませんが、これ以上の調査権限はないため、更なる追及を断念せざるを得ませんでした。
しかし、百条委員会が真摯に調査して得たこれらの事実を含む結果に対し、県の主張は、熊谷市の自治事務に対してとやかく言う立場にないというもので、熊谷市の事務が適正であったことを前提として、県の判断は適正であったとのことでありました。確かに県側から見たらそのような判断もできるのでしょうが、私は非常にがっかりしました。
この埼玉県の判断を例え話で言いますと、埼玉県では毎年恒例で埼玉県駅伝が開催されますが、この駅伝に熊谷市と県庁農林チームが合同チームを組んで出場したとします。1区走者の熊谷市は会心の走りを見せ、中継点の県庁農林にたすきを渡します。そして県庁農林もすばらしい走りを見せ、ぶっちぎりでゴールして優勝いたしました。しかし、その後に、熊谷市が走ったコースを間違えたのではないかとの声が上がりました。県庁農林はマスコミからインタビューを受け、「熊谷市のことは分かりませんが、県庁農林としてはコースを間違わないで走ったから適正であり、合同チームの優勝に変わりはありません」とコメントを出しました。このコメントに社会は納得できるでしょうか。目の前にある事実に対し権限外だとして目をつぶり、ほかは知らないが県としては適切だったと繰り返すことがベストなんでしょうか。私としてはどうしても納得のいくものではありません。
知事は常々「人のために役に立つから役人」と言われておりますが、今回関与した役人たちは役に立つエネルギーを誰のために発揮したのか疑問が残ります。知事は初当選なさった際、しがらみ一掃を掲げ、選挙公約では多選による県政停滞と腐敗を防ぐと述べられております。一般的に見ておかしな事実が次々露呈しましたが、知事はおかしいとは思いませんか。適切だとお思いでしょうか。深く追及したくてもできないのはしがらみも要因ではないでしょうか。判断したことが錯誤であっても、事実が判明した場合は是正するのが当然ではないでしょうか。事実を受け止めず済ませるような理由を探し、真実を深く追及しない姿勢は腐敗を防ぐ、ベストを尽くすという政治姿勢に矛盾しておりませんか。
埼玉県にも開発許可の権限がありますが、今回のような収用証明書が提出されましたら許可を出さなかったと私は考えます。ついては県民全体の利益を守り、失墜した本県農林行政の信頼を回復するため、県は再度適正な手続により本件事案を見直し、その結果に基づき適切な処分を行うとともに、熊谷市においても同様の対応をすべきだと考えます。
今回の農地転用許可に対する百条委員会の結果を踏まえ、本県の対応状況を含めて、知事の見解をお伺いいたします。

A   上田清司   知事

百条委員会は県が行った農地転用許可と熊谷市が行った開発許可などに疑義があるとのことで、県議会が強い権能をもって調査を実施するために設置されました。
その中で、県の転用許可は本来許可されるものではないとし、併せて県側に事案の見直し・精査などの指摘がありました。
先ほど、議員は駅伝チームの例え話を用いて御指摘をされました。
しかしながら、現実の行政は所掌や所管法令に基づいて、それぞれの権限の範囲内で行うものでございます。
このことも踏まえつつ百条委員会の指摘を受けて、県は農地法の適用などについて精査を行いました。
まず、転用許可処分当時の判断についてでございます。
県は当時、熊谷市による開発許可の「見込み」の確認をした上で事業計画の確実性の判断を行うなど、転用許可基準の適用を適正に行ったと考えています。
したがって、転用許可処分時の判断には問題は認められないものと考えています。
次に、議員お話しの「百条委員会で判明したこと」に対し、県が現時点においてどのような判断をするかということについてでございます。
例えば是正と言えば、極端なケースは転用許可処分の取消しということになるでしょう。
判例などによると、転用許可のような利益的処分についての取消しは自由ではなく、それを必要とするだけの公益上の理由がなければならないものとされております。
そして、その検討の際にはそれによって生じる不利益、例えば法的安定性への影響などを十分に考慮する必要がございます。
したがって、この案件に限らず一般論としても、是正措置の実施には大変慎重な判断が要求されるものと考えております。
以上が農地法の適用についての私の見解でございます。
他方で百条委員会の指摘では、議員お話しのとおり熊谷市の対応についても言及をされました。
これを受け現在、市に対し開発許可に関する考え方などを照会しているところでございます。
最後に、私は議会の見識によってなされた百条委員会の指摘については、しっかりと受け止めなければならないものと考えております。
具体的には申請者への指導、許可後の履行確認、組織内での情報共有などについて、事務の改善を講じてまいります。

 

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

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