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掲載日:2023年5月23日

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自然再生・循環社会対策特別委員会視察報告

期日

平成27年9月1日(火)~3日(木)

調査先

 (1) 日本家畜貿易㈱(帯広市)
 (2) 帯広の森(帯広市)
 (3) 釧路湿原野生生物保護センター(釧路市)
 (4) 野村牧場(釧路市)

調査の概要

(1)日本家畜貿易㈱

(新たなバイオマス発電の導入について)

【調査目的】

家畜排せつ物を使用したバイオマス発電を行う事業者の中では、牛などのふん尿をかくはんし、発生したメタンガスにより発電するというメタン発酵法が広く採用されている。
しかし、同法では、ふん尿をかくはんする際に大量に発生する副生成物を処理するため、広い農場が必要になるが、比較的農地面積が少ない本県では限界がある。
今後、本県において家畜排せつ物を使用したバイオマス発電事業を推進していくためには、様々な問題があるが、そのひとつとして、このメタン発酵により発生する副生成物の処理が問題である。
そのため、日本家畜貿易㈱が生み出した直接燃焼法はメタン発酵による副生成物が発生しないので、同社を調査し、本県でのバイオマス発電の取組の参考にする。

【調査内容】

2712自然再生・循環社会対策特別委員会視察報告(1)

日本家畜貿易㈱バイオマス発電プラントにて

日本家畜貿易㈱では、約7年前から、環境対策として、牛の堆肥を使った再生可能エネルギーについて検討を開始した。当初は、メタン発酵法による発電を行っていたが、費用やメンテナンスなどの問題から直接燃焼法による発電システムを考案し、2~3年前からバイオマス発電プラントを導入した。
この直接燃焼法の利点として、1点目は、建設コストがメタン発酵法の1/3から1/4と比較的安価になることである。2点目は、設備が構造的に簡単なものであるため、故障が少なく、メタン発酵法における設備の寿命は5~7年であるが、直接燃焼法では20~30年と長いことである。3点目は、メタン発酵法ではメタンガスなど危険なガスが発生するが直接燃焼法では発生しないため、危険なガスの管理が不要であることである。4点目は堆肥を燃やした焼却灰にはリンとカリウムが5%ずつ含まれている一方で、窒素がほとんど含まれていないので、農場等での肥料として十分活用できることである。
しかし、直接燃焼法は、日本のみならず、世界でも初めての取組であるため、再生可能エネルギーの固定価格買取制度では、現在のところ、「廃棄物燃焼発電」に該当する。そのため、売電価格が、メタン発酵法では39円/kWhであるのに対し、直接燃焼法では17円/kWhと低い価格となっていることが課題とのことである。ただし、燃焼した後の焼却灰が肥料として農家に比較的高値で売却できること、堆肥の処分費用がかからないこと、さらには、発電量が太陽光の6倍であり、24時間発電できるため、太陽光で発電できない時間帯に売電することが可能であることから、採算は十分取れるとのことである。
また、バイオマス発電プラントや完熟堆肥化処理場を見学した。堆肥盤というコンクリートの上で牛ふんをエアロマスターで週3回程度かくはんすると、80~90度の温度になり、水分含量が60%(当初約85%)となるという。
ただし、かくはんのみであると燃えてしまうため、時々、水をかけたり、中の微生物の発酵を促す作業を行っているとのことである。
なお、同社では肉牛の牛ふんを使用しているが、乳牛のふんの場合、水分含量が比較的高いため、稲わら等を混ぜてかくはんすることにより、臭気を発生させずに燃料化することが可能になるとのことである。
同社によるバイオマス発電の取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。

(2)帯広の森

(森の再生・保全・創出に向けた取組について)

【調査目的】

本県では、都市化の進展や間伐などの手入れの遅れなどから、約30年間でおおよそ6,500haもの森林が減少し、土砂流出防止や水質浄化など、森林の持つ公益的機能が少しずつ低下してきている。
そのため、官民連携により造成及び保全されてきた「帯広の森」は、当初農地だった市街区域の周辺部を帯広市民の手により造成し、現在も森の持つ公益的機能を維持してきている。本県における森の再生・保全・創出に向けた取組の参考にするため、帯広の森を調査する。

【調査内容】

帯広の森は、もともとカシワやハルニレなど生い茂る原生林であったところを開拓して、農地に転用した土地であった。しかし、町の繁栄とともに自然が減少してきたため、人間社会と自然環境の調和を図るという考えのもと、昭和45年に第5代の吉村博帯広市長により「帯広の森構想」が打ち出された。
その後、昭和49年に市民団体が結成され、昭和50年に市民植樹祭を開催して以降、平成16年度までに30回、約15万人もの市民の手で様々な樹木が植えられてきた。
しかし、市民植樹祭開始から15年が過ぎた平成2年頃から、成長の早いシラカンバやチョウセンゴヨウマツなどの植樹した初期の樹木が不健康な林相を呈してきたため、平成3年から平成17年までの15年間、市民育樹祭が開催され、生育の悪い樹木や混みすぎている樹木などを対象に間伐や下枝払い等が行われた。
市民植樹祭も市民育樹祭も大規模な森づくり活動は終了したが、現在でも学校行事や市民団体の活動により、小規模な森づくり活動は継続して行われている。
また、森の造成から30年が経過し、本格的な森を育てて利活用する段階に入った帯広の森において、森の育成・管理や利活用を推進する拠点施設が求められたため、「帯広の森・はぐくーむ」が整備され、間伐材によるペレット作りや小規模な植樹や育樹などの活動が行われてきている。
今後の展開として、森の景観を意識した本格的な利活用が求められる時期に入り、市民共同の森づくりがますます重要とされているため、同市は、市民が利用しやすいように施設整備を進めるとともに、「帯広の森・はぐくーむ」を拠点に森づくりの担い手を育成していくとのことである。
また、帯広の森の目指す「ふるさとの森」のモデルである帯広農業高校カシワ林、平成24年から平成27年に植樹された地区、「帯広の森・はぐくーむ」を見学した。帯広の森は運動区域や居住区域など8つの区域に分け、外周を森づくり区域と定めているとのことである。
帯広市による森の再生・保全・創出に向けた取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。

(3)釧路湿原野生生物保護センター

(野生生物の保護に係る取組について)

【調査目的】

本県では、人間活動の影響により希少野生生物であるシラコバトの生息数が激減している。昭和57年に約10,000羽が生息していたが、平成26年度には約100羽にまで減少しているため、シラコバトの保護増殖に向けた一層の取組が必要となっている。
釧路湿原野生生物保護センターは、シマフクロウやタンチョウなど絶滅のおそれのある野生生物の保護増殖事業に取り組み、近年、その個体数が回復するなど、事業の成果が見え始めている。同センターを調査し、本県における希少野生生物の保護に係る取組の参考とする。

【調査内容】

釧路湿原野生生物保護センターは、釧路湿原自然保護官事務所や湿地や野生生物に関する展示室、希少鳥類の傷病個体の治療・リハビリ・野生復帰を目的とした保護施設などが併設された共同利用施設として平成5年に開設された。同センターで保護増殖事業を行っている野生生物の種は、シマフクロウ・タンチョウ・エトピリカ・オジロワシ・オオワシの5種である。
シマフクロウは、1900年代には北海道内におおよそ1,000羽いたと考えられていたが、現在の生息数は把握されていない国後島を除いて、およそ140羽まで減少した。原因としては、森林から農地への土地利用転換に伴う生息可能地の減少や大規模森林伐採による営巣木の消失、交通事故及び感電事故など、人間活動による影響が主なものとなっている。
このため、保護増殖事業として、餌条件が悪い場所等での給餌活動や魚等の餌が取れる環境作り、営巣場所確保のための巣箱(ドラム缶)の設置、感電事故防止のための止まり木の設置など行っている。そのほか、生息地や寿命、血縁関係などを調べ、より繁殖しやすい環境をつくるために、ひな鳥を対象に標識を付け、血液検査や識別による遺伝的多様性の調査・研究も行っている。
シマフクロウに関する課題としては、保護増殖事業による成果は見え始めているが、人の手による給餌や巣箱に依存しているところもあり、そのため、生息地が4か所に分断され、近親交配が進み、生息地が孤立化してきていることである。
今後は、これまでの一個体ごとの保護ではなく、森林の保護育成や森林再生、河川環境の整備といった面的な保護活動を他の事業者とともに進めていくという。
一方、タンチョウについては、昭和10年ごろは30羽だったが、給餌活動や巣箱の設置により、現在は1,500羽まで個体数が増加した。今後は、人の手を加えない自然な形での保護増殖活動を進めていくという。
また、同センター内にある展示室並びにオジロワシ、オオワシ及びエトピリカの保護室を視察した。
同センターによる野生生物の保護に係る取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。

(4)野村牧場

(家畜排せつ物等を利用したバイオマス化発電について)

【調査目的】

本県では、牧場等で生じる牛ふんなどの家畜排せつ物の約8割は堆肥化処理され、ほ場還元されており、バイオマス発電に活用されている事例はごくわずかである。しかし、堆肥化処理は時間と労力がかかる上、乾燥される前の堆肥からのにおいの問題がある。そのため、臭気をおさえたバイオガス化発電を含めた家畜排せつ物の有効活用について検討していく必要がある。
野村牧場では、バイオガス化発電プラントを牧場内に建設し、独自にバイオガス化発電を行っている。同牧場を調査し、本県におけるバイオガス化発電に関わる事業の参考とする。

【調査内容】

2712自然再生・循環社会対策特別委員会視察報告(2)

野村牧場バイオガス化発電プラントにて

野村牧場では、平成18年に総額約8,00万円の費用を掛け、バイオガス化発電プラントを導入した。費用の内訳は、ふん尿をかくはんし、発酵させる発酵槽と発生したバイオガスを活用する発電機で約6,500万円、バイオガス等を貯めておく貯留槽が約1,500万円とのことである。
バイオガス化発電プラント導入のきっかけは、1頭の牛から50~60kg/日の大量のふん尿が排せつされ、そのふん尿を以前は堆肥化処理していたが、未完熟の堆肥などからひどい臭気が発生し、周囲の住民から苦情を受けていたことであるという。
バイオガス化発電プラントを導入してからは、排せつされるふん尿をバイオガス化しているため、ふん尿の臭いがほとんど生じず、周囲の住民からの苦情もほとんどなくなったとのことである。バイオガス化発電の利点としては、臭気だけではなく、ほかにも3つの利点があるいう。1点目は、今までの堆肥化処理で生じる硝酸態窒素による牛の病気がなくなったこと、2点目は、堆肥ではなく、ふん尿をかくはんする際に生じる副生成物を牧草畑に散布することで農薬も化学肥料も使わずに牧草が育つとともに、雑草の発生が抑制されること、3点目は、堆肥からアンモニアガス、亜酸化窒素ガス及びメタンガスといった温室効果ガスが生じていたが、バイオガス化発電により温室効果ガスの発生が抑制されることである。さらに、同牧場では、牛72頭から1日に4.5トンのふん尿が排せつされるが、バイオガス化発電により300kW/日の発電がされ、余剰電力を北海道電力に月額20万円程度で売電している。
バイオガス化発電の問題点としては、初期投資や維持管理費が高く、牛1頭当たり100万円から120万円の初期投資を要することに加え、バイオガス化発電プラントの維持管理に3年間で約100万円の費用が発生することである。このため、多くの酪農家がバイオガス化発電導入にちゅうちょし、バイオガス化発電の普及率が上がらないという。
また、同牧場内にある牛舎を見学し、その後、バイオガス化発電プラント(原料槽、貯留槽、発酵槽、発電機)を見学した。バイオガス発電において、最も失敗しない方法は、温度の管理とかくはんを常に行うこと、そして、40日から60日程度堆肥を置くことであるという。発酵に必要なメタン菌は低温菌、中温菌及び高温菌があり、牛の平熱が38.5℃であるため、37~45℃の温度で管理すると、温度の管理も比較的容易であるとともに、バイオガスも適度に発生するとのことである。
同牧場での家畜排せつ物等を利用したバイオガス化発電の取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。

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