トップページ > 埼玉県議会トップ > 委員会 > 委員会視察報告 > 県土都市整備委員会視察報告

ページ番号:137237

掲載日:2019年8月1日

ここから本文です。

県土都市整備委員会視察報告

期日

平成30年6月4日(月曜日)~6日(水曜日)

調査先

(1)   国道208号大川佐賀道路(九州地方整備局佐賀国道事務所)(佐賀市)
(2)   九州北部豪雨復興出張所(朝倉市)
(3)   国営海の中道海浜公園(福岡市)
(4)   九州大学伊都キャンパス(福岡市)

調査の概要

(1)国道208号大川佐賀道路(九州地方整備局佐賀国道事務所)

(幹線道路ネットワークの整備について

【調査目的】

   国道208号「大川佐賀道路」は、福岡県大牟田市~佐賀市~鹿島市を結ぶ延長約55kmの地域高規格道路「有明海沿岸道路」の一部となる9.0kmの道路である。平成24年度から用地買収を開始、27年度に着工し、現在も整備が進められている。なお、有明海沿岸道路は国道208号及び同444号のバイパスでもある。
   有明海沿岸道路の整備により、有明海沿岸都市の交流促進や、佐賀空港、三池港のアクセス向上が見込まれている。また、大川佐賀道路については、完成により佐賀空港から各観光拠点へのアクセスが向上し、観光拠点間の結び付きが促進され、有明海沿岸地域間の連携強化による観光振興に期待が持たれている。
   同道路の整備状況を調査し、本県の幹線道路ネットワークの整備等の施策推進の参考とする。

【調査内容】

   地域高規格道路「有明海沿岸道路」の一部を形成する「大川佐賀道路」は、地域間の連携及び交流の促進を支援するとともに、並行する国道208号の交通混雑の緩和等を目的としている。
   有明海沿岸道路は、有明海沿岸の都市群のネットワーク化を進め、深刻な渋滞箇所が存在する国道208号等の混雑緩和と交通安全の確保を目的として計画及び事業化された。同道路は、現時点で、大牟田高田道路、高田大和バイパス、大川バイパス、大川佐賀道路、佐賀福富道路及び福富鹿島道路が整備区間に指定されている。そのうち、大牟田高田道路、高田大和バイパスの全線と、大川バイパス、佐賀福富道路の一部が供用されている。
   また、大川佐賀道路は完成4車線で計画されている自動車専用道路である。事業の概要としては、計画延長:9.0km、幅員:20.5m(4車線)、計画交通量(平成42年):1日当たり27,900~39,600台とされている。
   同事業の事業区間となる有明海湾奥部の低平地は、佐賀平野と白石平野が広がる九州最大の沖積平野であり、極めて軟弱な粘土層が9~16mにわたり堆積している。一方で、同事業は自動車専用道路であり、既存の道路、河川や水路と立体交差するため、高盛土の計画となり、それを安定させる工法選定が重要な課題となっている。
   同事業により期待される効果であるが、並行する国道208号は主要渋滞箇所が点在し混雑時に速度低下が発生している状況である。同事業の整備により交通分散を図ることで、国道208号の交通混雑が緩和され、走行速度の向上が見込まれている。なお、国道208号の現状の通行量1日当たり19,780台に対し、平成42年の整備後は、大川佐賀道路が1日当たり33,100台の通行量となり、国道208号は1日当たり8,500台にまで減少する見込みである。
   これにより、平成28年度時点では三池港ICから(仮)白石3ICまでの所要時間が79分であったものが44分へと約45%短縮され、物流等の効率化に大きな効果がある。
   概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「大川佐賀道路及び有明海沿岸道路の開通は、いつ頃が見込まれているのか」との質問に対し、「今後、自然環境調査をはじめとした様々な調査が控えているので、まだ具体的な開通時期を示すのは難しい」との回答があった。また、「同事業の実施に当たって、軟弱地盤の地盤改良を行うのと橋梁化では、どちらの方が経済的なのか」との質問に対し、「現在試験をしているのは、軟弱層の全てを地盤改良するのではなく、地盤の途中まで行うものである。この工法であれば、工費が安く収まる予定である。7m程度の盛り土であれば、高架化よりも盛り土の方が安上がりである。山間部の谷が深い地形などでなければ、橋梁化は選択しない」との回答があった。
   質問の終了後は、大川佐賀道路整備予定地における試験盛土実施状況等の視察を行った。同事業を調査できたことは、幹線道路ネットワークの整備を推進している本県にとって、大変参考になるものであった。

(2)九州北部豪雨復興出張所

(豪雨災害の復旧に向けた緊急対策について

【調査目的】

   平成29年7月の集中豪雨で甚大な被害を受けた筑後川水系赤谷川、大山川及び乙石川(いずれも朝倉市)では、福岡県知事からの要請を受けて国が権限代行により改良復旧工事を実施している。
   国は、赤谷川等において、平成29年度からおおむね5年間で「九州北部緊急治水対策プロジェクト」に取り組むこととし、再度災害の防止・軽減を目的に、緊急的・集中的に治水機能を強化する改良復旧工事を河川事業・砂防事業の連携により推進している。
   災害復旧に係る緊急的な取組について調査を行うことで、今後の本県の災害復旧事業の参考とする。

【調査内容】

   平成29年7月の九州北部豪雨では、観測史上最大を記録する雨量により筑後川右岸流域の河川が氾濫し、浸水面積1,913ha、床上浸水1,195戸、床下浸水1,378戸、全壊家屋197戸、半壊家屋102戸の大きな被害が発生した。特に、福岡県朝倉市内の筑後川水系赤谷川、大山川及び乙石川の被害が甚大であった。そのため、国土交通省九州地方整備局では、福岡県知事からの要請を受け、権限代行により改良復旧工事を実施することとなった。
   権限代行制度とは、工事実施体制や技術上の制約等がある場合に、河川法第16条の4第1項に基づき国土交通大臣が県に代わって工事を実施することができるものであり、平成27年9月の関東・東北豪雨での鬼怒川の堤防の決壊による被災を受け、平成29年7月に創設された。
   九州北部緊急治水対策プロジェクト(河川)は、赤谷川等の治水安全度を高めるため、川幅を広げ、急な湾曲区間を緩やかにして流れやすくするとともに流木等の貯留施設整備など、本格的な改良復旧工事を実施するものである。
   本事業の事業費は、筑後川水系赤谷川、大山川、乙石川の整備等、合計で約336億円となっており、事業期間は、平成29年度から概ね5年間としている。改良復旧による整備効果としては、1時間当たりの想定降雨上限について、被災前の河道は46mmであったものが、河道整備後は85mmに改善されることとなる。
   このほか、砂防事業についても併せて実施する計画である。現在、ワイヤーネット、土砂止め工等で応急的に実施されている砂防工事について、流域全体の土砂洪水氾濫を防止するため、おおむね5年間で集中的に本設の砂防堰提の整備を実施するとしている。
   本事業の応急復旧の経緯であるが、次のとおり緊急的で速やかに取組が行われた。

  1. 平成29年7月5日:九州北部豪雨により福岡県管理区間の筑後川水系赤谷川、大山川及び乙石川に大量の土砂や流木が流出し、甚大な被害が発生。
  2. 同7月14日:豪雨被害の迅速な復旧のため、河川法の権限代行制度により国土交通省で工事を実施することを福岡県知事が要請。
  3. 同7月18日:要請を受け、国土交通省が緊急的な河道の確保に向けた土砂等の除去を実施することを決定し、工事開始(改正河川法で新たに創設した制度の適用第1号)。
  4. 同7月19日:現地での土砂及び流木の撤去に着手するなどの迅速な対応を実施。

   概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「災害が起きた地域は、元々豪雨災害の危険性が認識されていたのか」との質問に対し、「土砂災害特別警戒区域には指定されていた。ただし、災害の少ない地域だったので、危険性はあまり感じていなかった。近くの寺院の古文書に、300年前にも、この地域に山津波が発生していた記録があるのが発見された。この地域は、別荘などもある落ち着いた土地との認識だったが、このような災害に直面した。災害の記憶を引き継ぐことが、とても大事だということであろう」との回答があった。
   質問終了後は、改修工事中の赤谷川及び松末小学校跡を視察した。同事業を調査できたことは、今後の本県の豪雨災害の復旧に向けた緊急的取組を行うにあたり、大変参考になるものであった。

松末小学校跡

松末小学校跡にて

(3)国営海の中道海浜公園

(公園施設の整備・管理におけるPFI事業の活用について)

【調査目的】

   国営海の中道海浜公園では、水族館「マリンワールド」について、平成28年4月からPFIによる管理運営事業をスタートさせ、平成29年4月にリニューアルオープンした。
   さらに、ホテル、マリーナ等についても、平成29年5月に22年間の長期に及ぶ民間事業者との契約を締結し、サービスの向上に取り組むこととした。
   これらの取組は、民間事業者がPFIも活用しながら長期管理運営を行うことによりサービス水準の向上を図り、また、海浜公園とマリンワールドとの連携により公園全体の利用者を増加させることを目的としている。同公園事業の調査を行い、今後の本県における施策の参考とする。

【調査内容】

   国営海の中道海浜公園は、昭和56年10月に開業した全国で5番目となる国営公園である。「緑の樹林」「碧い海」「輝く太陽」をテーマに、地理的・植生的特性、計画理念、建設手順及び管理運営手法等を勘案し、全体を4つの地区に分けて運営している。
   同公園の概要としては、計画面積539.4ha、供用面積297.7ha、年間来園者数(平成28年)196.4万人となっている。
   主な施設としては、水族館は教育施設である、という理念の下、教育・研究活動に注力している「マリンワールド」、春夏秋冬、1年を通して花が咲き、訪れる人を楽しませてくれる「海浜公園」、流水プール、噴水プール、ウォータージャングルなど数多くのアトラクションがある「サンシャインプール」、福岡の中心から車で30分で行けるリゾート地として好評な「ホテル・ザ・ルイガンズ」がある。
   同公園では、これまでUR((独)都市再生機構)が管理・運営を行っていた水族館・ホテル等の収益施設について、PFI事業を国営公園として初めて導入した。同事業は、事業者が自ら施設の改修と長期間の管理運営を行うことによりサービス水準の向上を図ることとし、公園全体の利用増とともにインバウンド観光や地域活性化の拠点として発展させることを目的としている。
   同事業の実施により、「マリンワールドPFI(株)」による平成28年4月より20年間にわたる管理運営がスタートし、29年4月12日のリニューアルオープンから同年9月30日までの来場者が約78.2万人と前年に比べ1.4倍に増加するといった成果があった。
   また、サービス向上事例としては、九州の海をテーマに九州各地の多様な海を表す水槽を展示したこと、エントランスホール、レストラン、ショープール等を大改修したことや、4か国語に対応したスマホアプリによる音声ガイドを導入したことなどが挙げられる。
   さらに、研修宿泊施設(ホテル)、テニスコート及びマリーナで、平成30年4月から20年間にわたる管理運営事業がスタートした。テニスコートと一部の駐車場は国所有のものを使用、それ以外の施設・設備については、選定事業者がUR・現事業者から資産譲渡を受け、自らの所有により維持管理・運営を行うこととなる。
   概要説明後、委員から活発な質問が行われた。その中で、「マリンワールドの来場者が増えているが、PFI事業により民間企業に長期委託をすることの優位性は何か」との質問に対しては、「来場者増については、リニューアルオープンによる影響が大きい。国がずっと管理運営していると、様々な制約によりリニューアルなども難しいが、改修から運営・管理までを長期民間委託することにより、民間の資金やアイデアが活用され、良い効果が生まれた」との回答があった。
   質問終了後は、マリンワールド内の視察を実施した。同事業を調査できたことは、本県の公園施設の整備・管理を進める上で、大変参考となるものであった。

(4)九州大学伊都キャンパス

(下水の再生等による水の利活用について)

【調査目的】

   九州大学では、平成17年度から伊都キャンパスへの移転が順次進められている。同キャンパスがある丘陵地の周辺平野部では、地下水が生活用水及び農業用水として利用されているが、海に近く、標高が低いこともあり塩水化が懸念されている。同大学では地下水位を低下させないための保全措置として、雨水貯留浸透施設等の設置を行うとともに、給水センター内に「再生水処理設備」を設置し、地下水を使用しない、水資源の効率的利用を実施している。また、同キャンパスには、平成27年に福岡県美しいまちづくり建築賞を受賞した「椎木講堂」等の優良建築物が存在している。
   下水をはじめとした水の有効利用を調査することで、本県の施策推進の参考とする。

【調査内容】

   平成23年に創立100周年を迎えた九州大学は、次の100年を築くための舞台ともなる「伊都キャンパス」の整備を進めている。糸島半島の豊かな自然環境と共生し、産学官の連携によって整備される学術研究都市の中核として、また、「都市と共に栄え、市民の誇りと頼りになる大学」、「アジアを重視した世界の拠点大学」として発展を続けるため、同キャンパスの整備を行うとしている。
   同キャンパスでは、クリーンで高効率な次世代型燃料電池の研究開発に取り組む「次世代燃料電池産学連携研究センター」、低炭素社会の実現を目標に研究を行い、文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラムにも採択された「カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所」などの先進的施設が設置され、活発な研究が行われている。
   同キャンパスは、最高標高100m程度のなだらかな丘陵地帯に設置されており、その麓の地域には農地が広がり、地下水等が生活用水及び農業用水として利用されている。一方、周辺平野部は海に近く、標高が低いこともあり地下水の塩水化が懸念されている。そこで、同キャンパスの移転が周辺環境に悪影響を及ぼさないよう、地下水位を低下させない保全措置として、雨水貯留浸透施設等の設置を行うとともに、食堂や校舎から排出される下水を再生処理し、地下水を使用しない方法による水資源の効率的利用を実施している。これらにより、再生水の利用率が、同大学全体では約13%であるのに対して、同キャンパスでは約58%となっている(平成28年実績)。また、下水を再生水として利用する取組は、経費削減にも大きく貢献している。
   給水センターは、延床面積:2,043平方メートル、建築面積:1,822平方メートル、地下1階・地上2階建、鉄筋コンクリート造の建物である。その地階には、中水処理原水受槽及び中水処理水槽など大小30の水槽があり、再生処理装置類を1階と2階に設置している。これらの設備により、学生・教職員合わせて約12,000人が活動をし、多くの研究施設を擁する同キャンパスの水需要が賄われている。
   給水センター内を視察しながら説明を受ける中で、委員から活発な質問が行われた。「再生水を利用した場合、市の上水・下水を使った場合と比べ、どの程度コスト削減になるのか」との質問に対し、「補修費、運転管理費やランニングコストを含めた経費で比べても、再生水の利用は市の上水・下水の半分以下のコストで運営することが可能である」との回答があった。
   同事業を調査できたことは、本県が下水の再生等による水の利活用を推進する際に、大変参考となるものであった。

九州大学伊都キャンパス

九州大学伊都キャンパスにて

お問い合わせ

議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4922

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?