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掲載日:2021年12月22日

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人材育成・文化・スポーツ振興特別委員会視察報告

期日

平成26年8月20日(月曜日)~22日(水曜日)

調査先

  • (1) 名古屋国際中学校・高等学校(名古屋市)
  • (2) 鈴鹿F1日本グランプリ地域活性化協議会(鈴鹿市)
  • (3) 三重県総合博物館(津市)
  • (4) 滋賀県庁[生涯学習課](大津市)

調査の概要

(1)名古屋国際中学校・高等学校

(グローバル人材育成の取組について)
【調査目的】
 名古屋国際中学校・高等学校は先進の国際教育を組み入れた中高一貫の私立学校であり、21世紀の国際社会が求める「未来の国際人」を育成している。
 広い視野、豊かな心、世界の人々と積極的にコミュニケーションできる力を身につけるための独自の国際教育プログラムを展開し、2015年4月から、国際的に認められている大学入学資格の1つであり、日本においても大学入学資格として指定されている国際バカロレアの認定校としてディプロマ・プログラムを開始する予定である。
 同学校の国際教育の取組を視察し、本県におけるグローバル人材育成の参考とする。
【調査内容】
 名古屋国際中学校・高等学校では、自国のアイデンティティを備え、異国の地においても平常心で行動ができ、異文化で育った人々とともに国際社会の発展を推進できる「未来の国際人」を育成している。開拓者精神を基軸として、国際教養が自然に身に付く環境を作り、論理的思考、表現力、異文化の理解と寛容性などを育むため、総合的でバランスのとれた国際水準のカリキュラムを導入していることが特徴である。
 生徒が世界へ羽ばたくためのサポート体制として、英語を母国語とする常勤のネイティブファカルティを登用している。担任として生徒に関わることで、授業以外でも、英語を「聞く」「話す」環境を整え、生徒に「生きた英語」に触れさせることで、英語力の向上を図っている。また、留学単位の認定による進級を可能とすることで、海外留学を促進し、一方で、海外からの留学生も積極的に受け入れており、活発な国際交流を行える環境にしている。また、ユニークな国際教育プログラムとして、「模擬国連」がある。生徒が幾つかの国のグループに分かれ、国連の会議と同様に国際社会が抱える課題について、国の代表として英語で各国の主張を述べるプログラムであり、入念なリサーチ活動と分析力、英語でのスピーチ力が求められる。そうして培った英語力を、中学3年生時及び高校2年生時の海外での語学研修において生徒だけで行動することで実践し、意思疎通の経験や至らない部分を自ら発見することにより、生徒の一層の成長を促している。「一つの国・一つの言語・一つのキャンパスで学校生活を終える時代ではない」という同校の教育理念を体現しているプログラムの一つである。
 また、年々増加する海外大学進学を希望す る生徒の意欲に、より確実に応えるため、国際的に通用する大学入学資格の取得が可能である国際バカロレアのディプロマ・プログラムの実施を予定している。2014年現在、国際バカロレア候補校であり、翌年度から認定校として実施する見込みである。実施に当たっては、生徒にも学校側にもハードルが高く、現在、日本における認定校は非常に少数である。しかし、同校は以前から次代を担うグローバルリーダー育成のために、語学力はもちろん、異文化を理解する多用な視点と柔軟な精神の涵養に努めてきた。また、ネイティブファカルティを筆頭に、英語で授業を行える人材も豊富で、世界水準の教育を実践する体制は整っている。将来、英語で考え、英語で論文等を構築する能力は大きな武器になると考え、参加する生徒を、国際社会を牽引するリーダーとして育てたいとのことであった。
 概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「来年度からディプロマ・プログラムを実施するに当たって、生徒にはどのような説明を行ったのか」との質問に対し、「英語の上達を目的とするものではなく、英 語力は前提条件であり、英語を使って、答えのない問題を学習するものである。また、全員が資格を取得できるものではないなど厳しいプログラムである旨伝え、それでも学習を希望する熱意を持った生徒に応募してほしいと伝えた」との説明があった。その後、同校の学習を支える様々な施設の見学を行った。
 名古屋国際中学校・高等学校における国際人育成の先進的な取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。

(2)鈴鹿F1日本グランプリ地域活性化協議会

 (スポーツを核とした地域活性化の取組について)
【調査目的】
 鈴鹿F1日本グランプリ地域活性化協議会は、国、県、市及び各商工会等様々な団体で構成されており、鈴鹿F1日本グランプリを観戦に訪れた方々が快適に楽しめるよう環境整備部会、おもてなし部会の2つの部会を設置し、施策を展開している。
 環境整備部会では、自動車交通の分散化や公共交通機関利用促進キャンペーンなどの交通円滑化策を実施している。おもてなし部会では、地域が一体となって様々なイベントを開催し、来場者にとって快適で思い出深い観戦となるよう施策を進めている。
 同協議会のスポーツを核とした地域活性化の取組を視察し、本県におけるスポーツ振興及び地域活性化事業の参考とする。 

鈴鹿サーキット国際レーシングコース

 〔鈴鹿サーキット国際レーシングコースにて〕

 
【調査内容】
 鈴鹿F1日本グランプリ地域活性化協議会は、鈴鹿F1日本グランプリに伴う集客による影響とその対策に向け、官民が連携して周辺環境整備と受入れ体制の向上等について連絡調整を行い、おもてなしの向上と地域の活 性化を図ることを目的として設立された。国、県、鈴鹿市周辺市町村及び関連企業等で構成され、会長の鈴鹿市長を筆頭に、運営委員会、環境整備部会、おもてなし部会で施策を検討・実施している。
 同協議会の環境整備部会は、交通円滑化を大きな目標とし、鈴鹿市内主要路線の渋滞解消、公共交通機関利用の向上及び鈴鹿IC利 用割合の分散等に、具体的な数値目標を掲げて取り組んでいる。主な施策としては、会場への交通手段を確保するため、交通関係各社や関係行政庁の協力のもと、臨時便の増加やシャトルバス専用ルートの設定を実施している。また、渋滞緩和のため、サーキット内に情報収集本部を設置し、交通関係各社、警察、Webカメラ、観戦者からの情報提供等を集約し、ホンダ開発のインターナビや国土交通省開発のスマートフォン専用アプリ「AcPro」、ツイッター、FMラジオ等で観戦者に広く情報を提供している。その他観戦席の完全予約制、駐車場事前予約制を導入するなど様々な手段を駆使して交通渋滞の緩和に尽力している。
 一方、おもてなし部会では、F1横断幕の設置等による一般的な広報活動のほか、地域の観光・物産PRブースを会場に設置することや、F1観戦者を対象とした感謝セール、観戦チケットの提示による割引等地域の協力を得て、広報を兼ねた地域活性化活動も行っている。参加店舗には共通のフラッグを掲出することで、利用者の利便性の向上と一体的なおもてなし感を醸成している。また、大規模スポーツ大会であることを考慮し、会場や周辺駅への通訳ボランティアブースや仮設トイレ等の設置をして観戦者への便宜を図る施策も同部会が担っている。その他ホームページを活用した宿泊情報の発信や前夜祭、レース翌日イベントなども実施している。近年特に力を入れているのは、地域住民に対するPRである。モータースポーツ都市宣言を行い、全国的にも有名な鈴鹿市ではあるが、周辺住民に対してF1への理解が浸透していないことから、例えば、小学生を対象とした「F1ジュニアピットウォーク」を実施し、子供たちが現場で働くスタッフや選手と触れ合う機会を設け、F1への興味・関心を促進している。また、「F1映画祭」を地元映画館で開催し、広く住民にPRしている。おもてなし部会の特徴は、構成団体個々が主体となって実施するものが多く、多彩な施策が可能となっている。
 概要説明の後、委員から活発な質疑が行われ、その後、国際レーシングコース内で詳細な説明を受けながら見学した。一般客がカート等で走行できる時間を設けたり、様々な見学コースを用意したりと、大会開催時以外でも来訪者へのおもてなしが充実していた。また、世界各国から大勢の選手や観戦者が来場するため、サーキットでは多数のモニター等を使用し、万全の安全対策を講じていた。
 同協議会によるスポーツを核とした地域活性化の取組を視察できたことは、本県で開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会やツール・ド・フランスさいたまクリテリウム等地域を挙げて開催するスポーツ大会に係る施策を推進する上で、大変参考となるものであった。

(3)三重県総合博物館

 (魅力ある博物館の運営について)
【調査目的】
 三重県総合博物館(MieMu)は、三重県立博物館をリニューアルして2014年に新館オープンした公立の博物館であり、旧県立博物館の60年間に及ぶ歴史と活動の蓄積を背景に、現代社会から求められる最先端の博物館として活動を展開している。
 テーマに「三重が持つ多様性の力」を掲げ、三重県の自然・歴史・文化を紹介する展示コーナーに加え、交流学習スペースが設けられている。また、博物館の機能に加え、公文書館の機能も有しており、博物館に公文書館機能を一体化させることで、三重についてのレファレンスをはじめ、資料の活用や発信などの機能を高めるとともに、調査研究においても、専門性や総合性をより一層深めている。同博物館の魅力ある取組等を視察し、本県における公立博物館の運営の参考とする。 
ミエゾウ全身復元骨格前

 〔ミエゾウ全身復元骨格前にて〕

【調査内容】
 三重県総合博物館は、博物館への社会的要請を基とした「三重の自然と歴史・文化に関する資産を保全・継承し、次世代へ生かす」「学びと交流を通じて人づくりに貢献する」「地域への愛着と誇りを育み、地域づくりに貢献する」ことを使命とし、調査研究、収集保存、活用発信という博物館活動を、利用者との「協創」や県内外で活動する多様な主体との「連携」により実現させている。
 同館は、「みんなに使ってもらえる博物館」となるように、様々な取組を行ってきた。例えば、敷居が高い、堅苦しいといった博物館のイメージを払拭するため、愛着を持ってもらえるよう公募にて決定されたMieMuという愛称を用いる、テーマカラーを温かみのあるオレンジに統一する、コミュニティシンボルとして「ミエゾウ」を使うなど、まずは利用者に一見して伝わる部分を工夫した。また、無料で利用できるエリアを広く確保し、有料エリアについても高校生以下は無料とし、大人向けにも年間パスポートを格安で設定するといった利用しやすい創意工夫を行っている。運営組織体制も広報・利用者サービス課を設け、利用者等の意見をくみ取り、より利用しやすい環境の整備や広報を活発に行っている。こうした努力により、開館後3か月で利用者数20万人を達成し、順調な滑り出しを見せている。
 利用者のための空間としては、大きく3つのエリアを設けている。まず、「交流創造エリア」は、「学習交流スペース」や子供たちが三重県について体を動かしながら学習できる 「こども体験展示室」「資料閲覧室」等を備えている。利用は無料であり、利用者の多彩な興味・関心に応えるべく様々な機能を備えている。より多くの人に使ってもらうための要となるエリアである。次に「展示エリア」は、多様で豊かな三重のあらましを、自然、歴史、文化の面から紹介する基本展示室と、いくつかの展示を組み合わせて様々な視点から三重の魅力を発信する企画展示を中心に構成されている。利用者から提供された資料や情報を反映する展示コーナー等もあり、利用者との「協創」や企業等との「連携」が最も発揮されるエリアである。また、内容を更新し続けることで、利用者が訪れるたび、新しい発見ができるよう構成を工夫している。次に「ミュージアムフィールド」は、敷地内の緑を生かし、人と自然の持続可能な関係を利用者とともに考え、創造することを目的としている。「里山」と「交流の広場」で構成されており、利用者は季節に応じて植物観察や昆虫採集等の野外活動を展開できる。三重にゆかりのあるものや地域に由来するもの、学習に用いるものなどの樹木や石材も配置されており、多様な屋外活動を想定して設計されている。
 概要説明の後、委員から活発な質疑が行われ、その後、詳細な説明を受けながら博物館内を見学した。当該博物館は、誰もが利用しやすい環境づくりを行っているが、特に、三重の未来を担う子供たちへの対応に力を入れており、開館以前からティーンズプロジェクトと銘打ち、子供たちが三重について学ぶ場の形成、ワークショップなどの体験など、学ぶことの楽しさをいかに伝えるかを模索してきたとのことだった。その成果がいかんなく発揮されており、子供の利用者が多く、研究者等特定の利用者のみが利用するという博物館のイメージを一新させるものがあった。
 三重県総合博物館の運営について視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。
 

(4)滋賀県庁

 (家庭教育力向上に係る取組について)
【調査目的】
 滋賀県では、家庭の教育力の向上に向けた職場づくりに、経営者・従業員を挙げて自主的に取り組む企業と同県教育委員会が協定を結び、子供たちの健やかな育ちのための取組を推進する「家庭教育協力企業協定制度(しがふぁみ)」を設けている。
 2014年4月現在で1,353社と協定を締結しており、滋賀県学習情報提供システム「におねっと」には協定企業の各社の取組が紹介され、一言PRの掲載と企業HPへリンクを貼ることができる。県で紹介されることが協定企業のイメージアップや社会貢献、従業員の職場環境や労働意欲の向上及び社会全体の子育て支援環境の向上につながっており、企業、学校、社会に相互互恵関係のある制度となっている。
 当該制度の運用状況等について視察し、本県の家庭教育力向上の取組の参考とする。  
【調査内容】
 滋賀県では、家庭教育力向上のための職場づくりを促進する家庭教育協力企業協定制度(通称しがふぁみ)を制定している。家庭教育が全ての教育の出発点であり、子供が基本的な生活習慣、豊かな情操、思いやりや善悪の判断、社会的なルールなどを身に付ける上での役割は重要であるが、現実には働く親の平日の帰宅時間が遅く、子供と接する時間も短い。そうした背景から、未来を担う子供たちを育てるには社会全体で支え合うことが重要と考え、制定されたものである。同県は、協定を締結した企業に対して、子育てについて学ぶ機会の支援、県教育委員会広報紙の配布、県ホームページや県教育委員会広報紙による企業の取組の紹介といった支援を行っている。
 当該制度の協定締結企業となるためには、以下の5項目の取組のうち、2つ以上に取り組むことが必要となる。まず、取組1「我が社の子育て環境づくりを進めよう!」では、職場で家庭教育に関する講座などを開催し、家庭教育について学ぶ機会の設定、家庭教育に関するポスターの掲示による啓発活動などを実施する。次に、取組2「働く姿を見せよう、仕事について語り合おう!」では、企業内における「子ども参観日」の実施、中高生の職場体験への協力などを行い、子供たちの勤労観、職業観及び社会人として自立できる力を育む。取組3「子どもの体験活動を支援しよう!」では、学校への出前授業や校外学習の受入れなどの学校支援や地域での様々な活動を積極的に支援する。取組4「学校へ行こう!」では、参観日などへの参加を働き掛ける、休暇の取りやすい環境づくりに努めるなど、従業員が学校へ行きやすい職場づくりを行う。取組5「『淡海子育て応援団』に加入しよう!」では、同応援団に加入し、企業活動の中で、子育てを応援する事業展開を図る。例えば、授乳コーナーや子供が遊べるスペースを店舗に設置するなど各企業の独自性を生かした取組が考えられる。
 同制度が施行された2006年度には協定締結事業所数135社だったものが、8年ほどで10倍となった。家庭教育に企業の力を生かす取組が広がりを見せていることは大きな成果である。また、家庭教育に対する従業員の意識が高まり、子育てしやすい環境づくりも進められている。一方、課題としては、制度の一層の周知、協定締結事業所数の一層の拡大、また、その取組の質の向上が必要であるとのことだった。
 概要説明の後、委員から活発な質疑が行われた。その中で、「協定締結企業が家庭教育力向上に係る取組を行ったことによる従業員への影響等については確認しているのか」との質疑に対し、「当該制度は、年度当初に取組計画を提出してもらい、年度末にその結果報告書を提出してもらっている。その中で、具体的にどういった効果があったといった成果についても報告されている」との説明があった。
 滋賀県による家庭教育力向上に係る取組を視察できたことは、本県の今後の施策を推進する上で、大変参考となるものであった。

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議会事務局 議事課 委員会担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

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