平成12年埼玉県産業連関表の概要
 
1 はじめに
 産業連関表とは、一定の地域(通常国又は県という行政区域)において一定の期間(通常1年間)に行われた財・サービスの流れを、産業相互間及び産業・最終消費者間の取引として一表(マトリックス)に集大成したものです。「生産者価格評価表」、「投入係数表」、「逆行列係数表」等の表で構成されています。
 産業連関表からは、表作成年次の産業構造を読み取ることができるだけでなく、産業連関表を統計的に分析することによって、経済の将来予測や公共事業等経済施策の効果測定が可能であり、経済政策等を行う上で重要な基礎資料として利用されています。また、県民経済計算では考慮していない中間生産物の取引を産業別に詳細にとらえていることも特徴としています。
 埼玉県では「昭和50年埼玉県産業連関表」から5年ごとに作成しており、平成12年表は6回目の作成となります。
 
2 概要
 平成12年に、県内で生産された財・サービスの総額(県内生産額)は38兆8345億円で、平成7年に比べ2.5%増加しました。これは全国の増加率(2.3%)を0.2ポイント上回り、国内生産額に占める本県の割合(4.05%)は平成7年(4.04%)と比べてほぼ横ばいでした。  県経済に向けられた需要の総額(総需要)は、56兆1666億円で、2.5%増加しました。これは全国の総需要(1013兆476億円)の5.5%を占めています。総需要のうち県内生産で賄われているのは、69.1%に当たる38兆8345億円で、17兆3320億円(30.9%)は県外からの移輸入によって賄われています。
 
 図1 総需要の推移
 
   
 図2  平成12年産業連関表から見た財・サービスの流れ
 
 
3 供給
 本県経済を供給側から見ると、平成12年の財・サービスの総供給額は56兆1666億円で、平成7年より2.5%増加しました。うち、県内生産は38兆8345億円(69.1%)、移輸入が17兆3320億円(30.9%)で、増加率はそれぞれ2.5%増、2.6%増となっています。
 県内生産額の伸びを産業別に見ると、通信・放送(67.5%増)が最も高く、次いで公務(39.4%増)、サービス(15.3%増)と続き、これらサービス部門はほぼ全般に増加しました。一方、鉱業(24.4%減)、農林水産業(18.1%減)、建設(11.6%減)など、第一次産業、第二次産業での減少が目立っています。
 県内生産額の産業別構成比を見ると、製造業の36.2%が最も高く、次いでサービス20.3%、不動産10.2%と続いています。平成7年と比べるとサービスが2.2ポイント、通信・放送と公務が0.9ポイント上昇し、製造業が2.6ポイント、建設が1.3ポイント低下しました。全国と比べると、埼玉県は製造業が4.1ポイント、不動産が3.3ポイント高く、サービスは2.6ポイント、商業は2.1ポイント低くなっています。
 
 表2 県内生産額の産業別構成と増加率            (単位:100万円、%)



 
 平成7年              平成12年
県内生産額

 
県内生産額 増 加 率

 
構 成 比

 

 
中間
投入率
粗付加
価値率
産業計 37,884,427 38,834,525 46.7 53.3 2.5 100.0
  農林水産業 282,166 230,972 42.9 57.1 18.1 0.6
  鉱業 26,424 19,988 59.3 40.7 24.4 0.1
  製造業 14,715,235 14,065,218 66.4 33.6 4.4 36.2
  建設 3,484,836 3,081,533 53.7 46.3 11.6 7.9
  電力・ガス・水道 946,042 1,048,276 35.5 64.5 10.8 2.7
  商業 2,997,518 3,116,431 31.7 68.3 4.0 8.0
  金融・保険 1,096,314 1,025,286 32.5 67.5 6.5 2.6
  不動産 3,777,378 3,972,091 10.8 89.2 5.2 10.2
  運輸 2,060,700 2,096,284 51.3 48.7 1.7 5.4
  通信・放送 533,361 893,552 38.2 61.8 67.5 2.3
  公務 885,546 1,234,110 27.1 72.9 39.4 3.2
  サービス 6,839,965 7,883,114 38.5 61.5 15.3 20.3
  分類不明 238,942 167,670 81.3 18.7 29.8 0.4
 
 県内生産の投入構造を見ると、中間投入は18兆1528億円(46.7%)、粗付加価値は20兆6817億円(53.3%)となっています。中間投入率は平成7年より0.7ポイント低下しました。中間投入の内訳を見ると、商業、金融・保険、不動産等のサービス投入が45.2%、原材料、燃料等の財貨投入が54.8%で、サービス投入の割合が2.2ポイント上昇しました。各粗付加価値項目の県内生産額に占める割合を見ると、雇用者所得27.2%、営業余剰10.6%、資本減耗引当10.3%、間接税3.4%、家計外消費支出2.0%、補助金(控除)△0.3%となっています。
 
 表3 粗付加価値の構成比と増加率         (単位:100万円、%)

 
金額 粗付加価値率 増加率
 
平成7年 平成12年 平成7年 平成12年
家計外消費支出 804,225 792,030 2.1 2.0 1.5
雇用者所得 10,399,725 10,567,178 27.5 27.2 1.6
営業余剰 4,413,015 4,113,831 11.6 10.6 6.8
資本減耗引当 3,298,485 3,997,896 8.7 10.3 21.2
間接税(除関税) 1,133,036 1,329,672 3.0 3.4 17.4
補助金(控除) 129,849 118,858 0.3 0.3 8.5
粗付加価値計 19,918,637 20,681,749 52.6 53.3 3.8
県内生産額 37,884,427 38,834,525 100.0 100.0 2.5
 
4 需要
 需要側から見ると、平成12年の財・サービスの総需要額は56兆1666億円で、うち中間需要額18兆1528億円(32.3%)、最終需要額38兆138億円(67.7%)となっています。うち、最終需要は、県内最終需要(家計消費や投資など)、移輸出(他の都道府県・外国からの需要)からなっており、県内最終需要額は23兆5156億円(41.9%)、移輸出は14兆4982億円(25.8%)となっています。平成7年と構成比を比べると、県内最終需要が1.3ポイント上昇し、中間需要、移輸出はそれぞれ0.5ポイント、0.8ポイント低下しています。
 産業別に見ると、中間需要の割合は鉱業(96.3%)、金融・保険(71.7%)、電力・ガス・水道(55.7%)の順に高く、逆に低いのは公務(2.5%)、建設(5.7%)、不動産(8.6%)の順となっています。また、製造業においては移輸出が47.2%を占めています。
 
 表4 総需要の構成                (単位:100万円、%)



 
金 額 構成比
総需要      中 間
 
需 要
県 内
最 終
需 要



 
中間需要
 
   最終需要   
県内最終需要 移輸出
7年産業計 54,772,206 17,965,790 22,259,377 14,547,039 32.8 40.6 26.6
12年産業計 56,166,555 18,152,776 23,515,618 14,498,161 32.3 41.9 25.8
  農林水産業 698,008 383,353 230,662 83,993 54.9 33.0 12.0
  鉱業 91,561 88,188 202 3,575 96.3 0.2 3.9
  製造業 24,862,050 8,572,182 4,564,278 11,725,590 34.5 18.4 47.2
  建設 3,081,533 174,660 2,906,873 0 5.7 94.3 0.0
  電力・ガス・水道 1,301,984 725,103 468,461 108,420 55.7 36.0 8.3
  商業 4,914,776 1,559,521 2,695,493 659,762 31.7 54.8 13.4
  金融・保険 1,475,357 1,058,360 411,881 5,116 71.7 27.9 0.3
  不動産 4,015,541 345,474 3,656,334 13,733 8.6 91.1 0.3
  運輸 2,559,910 1,384,664 710,937 464,309 54.1 27.8 18.1
  通信・放送 1,029,711 467,957 408,255 153,499 45.4 39.6 14.9
  公務 1,234,110 31,238 1,202,872 0 2.5 97.5 0.0
  サービス 10,726,132 3,188,181 6,257,787 1,280,164 29.7 58.3 11.9
  分類不能 175,882 173,895 1,987 0 98.9 1.1 0.0
 
 最終需要の総額は、38兆138億円で、構成比を見ると、民間消費支出の38.4%が最も高く、次いで移輸出が38.1%、総固定資本形成が13.0%と続いています。
 構成比を平成7年と比べると、一般政府消費支出1.4がポイント、民間消費支出が1.1ポイント上昇し、移輸出は1.4ポイント、総固定資本形成は0.7ポイント低下しました。全国と比べると、埼玉県は民間消費支出で10.6ポイント、総固定資本形成で9.7ポイント、下回っています。また、全国には移出がないため、埼玉県の移輸出構成比が高くなっています。
 
表5 最終需要の構成               (単位:100万円、%)


 
埼玉県 全国
金額 構成比 金額 構成比
平成7年 平成12年 7年 12年 平成12年 12年
家計外消費支出 804,225 792,030 2.2 2.1 19,171,185 3.3
民間消費支出 13,740,306 14,580,211 37.3 38.4 280,990,212 49.0
一般政府消費支出 2,592,456 3,210,251 7.0 8.4 85,706,217 14.9
総固定資本形成 5,037,717 4,954,709 13.7 13.0 130,012,066 22.7
在庫純増 84,673 -21,583 0.2 -0.1 276,672 0.0
移輸出 14,547,039 14,498,161 39.5 38.1 57,486,717 10.0

 
輸出
移出
1,296,802
13,250,237
1,561,394
12,936,767
3.5
36.0
4.1
34.0
57,486,717
 
10.0
 
最終需要計 36,806,416 38,013,779 100.0 100.0 573,643,069 100.0

 以上、平成12年産業連関表から見た埼玉県の経済構造の概要を述べてきました。産業連関表の係数を使うことで、経済波及効果を分析することができます。例えば、県内で1000億円の公共投資(建設業)を行った場合、県内の各産業への波及効果は1509億円となります。
 なお、平成12年(2000年)産業連関表についての詳細な結果は、埼玉県のホームペー ジに掲載していますので、どうぞご利用ください。
 アドレスは、http://www.pref.saitama.lg.jp/A01/BP00/a152/menu1.htmlです。