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掲載日:2018年4月5日

生態園だより 平成19年度

平成19年4月27日号

種漬花(タネツケバナ)と褄黄蝶(ツマキチョウ)

生態園には、冬の終わりごろから春にかけて二種類の「タネツケバナ」が入れ替わるように咲きます。その一つは、今年の2月28日号「蒲公英(たんぽぽ)と初蝶」の写真でご紹介したミチタネツケバナで、こちらはタネツケバナよりもずっと早くから咲き、花も小さく、やや乾燥したところでよく見かけます。一方、タネツケバナの方は、桜も散って暖かくなってから咲き、主に水田や水辺の湿ったところで見られます。二種類ともよく似ていて紛らわしいのですが、莢果(きょうか:種子が鞘の中に並んででき、熟して乾燥すると鞘が開裂して種子を散布する果実)が花軸に寄り添うように伸長するのがミチタネツケバナで、花軸から離れるように伸長するのがタネツケバナです。タネツケバナ(種漬花)の和名は、苗代(なわしろ)を準備し、種籾(たねもみ)を水に漬けるころに開花することから名づけられました。タガラシ(田芥)と呼ばれることもあり、食用にもされます。なお、これらとは別種のオオバタネツケバナは、主に山地で見られ、お浸しにしたり、生のまま刺身のつまとして食用にされ、愛媛県では亭藶(ていれき)と呼ばれて料理店では珍重されているようです。また、利尿薬として用いられる生薬・葶藶子(ていれきし)は、韓国などではタネツケバナの種子を用いますが、日本ではイヌナズナ(花は黄色)の種子が用いられます。ともあれ、タネツケバナが咲けば、春はたけなわ。野山は次第に緑に覆われていきます。今では見られなくなりましたが、昭和30年代には、現在のさいたま市あたりでも、前の年に刈り取った稲の切り株が残る水田に真っ白な花が一面に咲いていたものです。

タネツケバナ(JPG:91KB)

タネツケバナ

タネツケバナの花(JPG:58KB)

タネツケバナの花

タネツケバナの莢果(JPG:42KB)

タネツケバナの莢果

ミチタネツケバナの莢果(JPG:35KB)

ミチタネツケバナの莢果

タネツケバナが咲く頃に、モンシロチョウを追っていた昆虫少年たちが少し毛色?の変わった個体が紛れていることに気づき、当センターに質問を寄せてくることがあります。その変わったチョウの正体は、たいていがツマキチョウです。ツマキチョウのオスは前羽の褄(つま:本来の意味は、和服の前の裾端を指す。チョウの名に付けられた場合は、先端の部分を言う)に黄色味の強いオレンジ色を配した可憐(かれん)なチョウなのですが、メスはこの部分が白いので、慣れないと飛んでいる時にモンシロチョウと区別するのは難しく、子供たちは採ってみて初めて違うことに気づくようです。しかも、ツマキチョウは年一回、春の短い期間(埼玉県あたりでは4月中旬ごろから5月上旬にかけて)にしか現れないので、意識して観察していないと気づかれないことも多いようです。ツマキチョウの幼虫は、各種アブラナ科植物の蕾(つぼみ)、花、果実を食べますが、関東の平野部あたりではタネツケバナを特に好みます。また、幼虫は孵化(ふか)してから2~3週間で蛹になりますが、蛹のまま夏、秋、冬を過ごし、翌春になってようやく成虫が羽化してきます。ところで、嬉しいことに、最近市街地ではツマキチョウの個体数が増えています。これは、公園や民家の庭に観賞用として植えられたショカツサイや家庭菜園で栽培されているコマツナなどもツマキチョウは食草として利用できるからです。開発が進んで市街地が拡大し、雑木林が減り、田畑には農薬が撒かれ、総体的に見れば確かに昭和30年代以前に比べてチョウの数は減りました。それでも、ツマキチョウが教えてくれているように、たとえ市街地であっても、公園や庭に植えた草花が虫に食べられるのをほんの少し許してあげることで、チョウの数を増やすことも可能なのです。付け加えるなら、ツマキチョウの食草のひとつであるタネツケバナなどは、「雑草」として十把(じっぱ)一からげに引き抜かれてしまうのが常ですが、そのような「雑草」ひとつひとつにも、それらに依存して生きている虫がいるのだということを忘れたくないものです。

ナズナで吸蜜するツマキチョウ(オス)(JPG:52KB)

ナズナで吸蜜するツマキチョウ(オス)

ノイバラの若葉に止まって休むツマキチョウ(メス)(JPG:54KB)

ノイバラの若葉に止まって休むツマキチョウ(メス)

芽吹いたコナラの枝先で休むツマキチョウ(オス)(JPG:59KB)

芽吹いたコナラの枝先で休む
ツマキチョウ(オス)

枯れ草にそっくりなツマキチョウの蛹(写真)(JPG:49KB)

枯れ草にそっくりなツマキチョウの蛹(写真)

(埼玉県環境科学国際センターOB 長田志朗)

平成19年4月16日号

「なのはな」とモンシロチョウ

生態園にも「なのはな」が咲き、モンシロチョウが舞う季節になりました。いかにも古くからの日本の春の風物詩に見えますが、よく調べてみると意外な事実もあります。一般に「なのはな」と称されるアブラナ(ナタネ)が属するアブラナ科植物は、その花が十字形に開くので、十字花植物とも言われます。この仲間を挙げてみれば、ダイコン、カブ、ハクサイ、キャベツは言うに及ばず、タネツケバナ、ナズナ(ペンペングサ)、イヌガラシ、ショカツサイ(諸葛菜:オオアラセイトウ、ムラサキハナナ、ハナダイコン)、カラシナ、セイヨウカラシナ、オランダガラシ(クレソン)、ワサビ・・・と、身近な畑や野原で見られるものだけを拾っていっても枚挙(まいきょ)に暇(いとま)がありません。カブとアブラナは分類学的には同種(学名はBrassica rapa)で、アブラナはカブの変種とされ、また、アブラナに似たコマツナも同様にカブの変種として扱われています。アブラナは弥生時代に渡来したと言われており、江戸時代までは搾油作物として広く栽培されていました。現在、全国各地で普通に見られる「アブラナ」は明治時代にヨーロッパから持ち込まれたセイヨウアブラナであって、古くからあったアブラナが栽培されているのは京都(ハタケナ)や東北地方(クキタチナ)など一部の地域になってしまったようです。いずれにせよ、厳密に言えば、アブラナは外来種ということになります。そればかりでなく、実は上に列挙した植物も、純粋に日本の在来種と言えるのはワサビだけで、子供の頃から馴染みが深く、春の野原でからからと鳴らして遊んだナズナまで帰化(外来)植物なのですから、人里では在来種を捜す方が大変です。ともあれ、「菜の花や月は東に日は西に」と詠った蕪村が見ていた「菜の花」と、今の時代に私たちが普通に見ている「菜の花」は別種ということになると、弥生時代に渡来したというアブラナが咲いている地で、蕪村を偲びながら朧月(おぼろづき)と沈もうとする夕日を眺めてみたいものです。

セイヨウアブラナ(JPG:127KB)

セイヨウアブラナ

セイヨウアブラナの花(JPG:97KB)

セイヨウアブラナの花

ダイコンの花(JPG:64KB)

ダイコンの花

ショカツサイの花(JPG:58KB)

ショカツサイの花

さて、誰もが知っていて、真っ先に名を挙げることができるチョウは、モンシロチョウでしょう。でも、よく観察してみると日本では森林地帯や標高の高い地域、換言すれば、自然度の高い地域で見かけることはほとんどありません。逆に、キャベツや「アブラナ」を栽培しているような人手のかかった耕作地では普通に見られる、言わば、人里のチョウです。特に、農薬を使用していないキャベツ畑では、しばしば大発生して栽培農家を困らせます。数年前に技術支援のためにメキシコ盆地で仕事をしていた時のことです。民家の花壇に舞っている白いチョウをよく見ると、なんとモンシロチョウでした。メキシコで昆虫を研究している人に「Artogeia rapae(モンシロチョウの学名)がいた」と告げると、「あのチョウは近年になってアメリカから侵入したのです」と説明してくださいました。実は、現在では日本全国で普通に見られるこのモンシロチョウも、元々はヨーロッパから(時には中国を経て)持ち込まれたアブラナ科の植物とともに、比較的新しい時代に侵入してきた外来昆虫なのです。ちなみに、沖縄県には1958年頃以降に侵入しています。このように、私たちの身近なところで大昔からいたような顔?をして舞っているモンシロチョウまで人間の営みに伴って侵入した外来種だとすると、今盛んに議論されている外来生物問題の根は深いと言わざるを得ません。確かに、外来生物の侵入が、古来の、あるいは在来の生態系を壊すおそれがあるという主張に疑問を呈する余地はないように思えます・・・が、果たしてそうでしょうか。致命的な問題点とも言えるのは、その古来、あるいは在来と言ったときに、一体いつ頃の時代を想定すべきなのか、あるいはいつ頃の時代に設定して考えるべきなのかということが、まったく議論されていないことでしょう。原始時代とするのか、それとも近代のある時期とするのか・・・そして、どうやってその線引きをしたらよいのか・・・。これによって、当然のことながら、考え方も対応の仕方も変わってくるはずです。議論をしている各人が、ばらばらの時代を想定していたのでは、いつまでたっても結論が出るはずがありません。

セイヨウタンポポの種子上で休むモンシロチョウ(春型オス)(JPG:80KB)

セイヨウタンポポの種子上で休むモンシロチョウ(春型オス)

セイヨウタンポポで吸蜜するモンシロチョウ(春型オス)(JPG:81KB)

セイヨウタンポポで吸蜜するモンシロチョウ(春型オス)

モンシロチョウ(夏型オス)2006年6月15日撮影(JPG:68KB)

モンシロチョウ(夏型オス)2006年6月15日撮影

モンシロチョウ(夏型メス)2006年5月30日撮影(JPG:70KB)

モンシロチョウ(夏型メス)2006年5月30日撮影

(埼玉県環境科学国際センターOB 長田志朗)

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