ハートいっぱい さいたま ユニバーサルデザイン
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第2回講演会講演録
講師のご好意により発言内容のほぼ全文を掲載させていただきました。
講演中の写真などの資料につきましては、「建築とユニバーサルデザイン」(古瀬敏著・オーム社)にその多くが掲載されておりますので、参照いただけると幸いです。

悪いものは悪い
〜建築のユニバーサルデザインを考える〜

               講 師:古 瀬  敏  氏 

               日 時:平成131121(水)

               会 場:彩の国すこやかプラザ   

 ただ今、御紹介をいただきました建築研究所の古瀬です。私どもは、4月1日から独立行政法人になりました。前は建設省建築研究所と呼んでおりました。

 今日、お話しする内容は、「悪いものは悪い!〜建築のユニバーサルデザインを考える〜」というタイトルになっておりまして、お手元にお配りしてございますのは、ちょっと長いですけれど、後でお読みいただければと思います。最初に何項目か最近の動きについての簡単なメモをつけまして、その後に少し長めの経緯を綴ったものがついています。

 1時間半近く時間がございますけど、最初の方に要約の要約と言うことで、簡単なメモを作りました。

 最初に「人口の高齢化とその意味」ですが、とにかく日本、我々が直面している問題というのは、先ほど柴田課長もおっしゃいましたように、人口の急速な高齢化であるということを申し上げます。それから、それを解決するのに一番良いのがユニバーサルデザインという概念なんですけど、7原則というのがあります。ただ、7原則は、デザイナーにはよく分かるのだけど、普通の立場から言うとやや分かりにくい側面があるので、むしろ良いデザインという言い方で迫ってみようと。そうすると、これは使いにくいではないか、使えないかではないかということに対して、こちらから議論ができるよということでございます。では、それを実際にどうやって達成するのというのがありまして、幾つかのアイディアを示しまして、最終的にはやっぱりユニバーサルデザインの概念を基本にしなければならないということで話をまとめたいと思います。

 最初の人口の高齢化とその意味でございます。65歳以上がどれくらいいるかというのが、一番のもの差しになるわけですけど、日本が他の国と比べてどこの位置にいるかということが、これが本当に問題なのか、否、大したことないという議論をする目安になります。これが、1950年から2050年まで、65歳以上の人口がどのくらいのパーセンテージいるか、世界各国の実績と将来設計を示した図でございます。

 簡単に申し上げますと、1950年の時に5%位の非常に低いところであったのがアジアの各国です。10%に近いところに出発点があるのがヨーロッパ、アメリカと思っていただいてほとんど間違いないと思います。日本は、1950年には5%、今年は大体18%、2015年には25%を超え、2050年には約33%、約3人に1人は高齢者というふうに急激に変化する。これが日本でございます。他のヨーロッパ諸国、アメリカも含めて見ていただきますと、10%から25%位まで、この100年間にその位しか動きません。日本は、5%から33%まで動くということで、その変化の急激さ、これは前例がないということでございます。北欧の高齢化推進国、スウェーデンその他の国を今年くらいで全部追い抜いております。一番右側を見ていただきますと非常に面白いことが分かります。日本が一番上にあると思いきや、イタリアがあり、実はドイツがそれに匹敵するくらいのところにあります。日本とイタリアとドイツ、これは第2次世界大戦の枢軸国として戦った国でして、個人に最大の価値を置くのではなくて、グループ、集団指向であったということが読みとれます。私はドイツのことはよく知らないのですけどくともイタリアと日本は、大家族制を標榜しておりまして、三世代、四世代で仲むつまじく暮らすのが良い、あれが理想であるというふうに言われてきた国です。実は、それに対して女性が、それは嘘っぱちであると反逆して、元に戻らないだろうというのが日本とイタリアであると、私は認識しております。

  この図は9月の頭に作ったものでして、ちょうどその時にアジアの各国が何をやらなければならないということについて、特に建築家の連合体の会議がシンガポールであった時に、私は結局行かなかったのですが、変わりに話してもらうために用意した図でございまして、他の各国、日本に比べてアジアがどこにあるかということを示してございます。黄色い△が中国でございまして、日本より30年遅れて同じ速度で高齢化しています。韓国もほぼ同じところを走っています。そうすると、高齢化はアジアの人口の大きな国に対して非常に重要な問題だけど、日本がやることを見ていて、失敗したことは繰り返さない、成功は真似するということをやれば多分うまくいくだろうと、私は、その国の人たちには言うことにしています。

 こういうふうに高齢化、高齢化といって、65歳以上が増えることが一体何の問題があるのか。昔から不老長寿というのが理想ですけど、さすがに歳をとりますとそれなりの問題が少しずつですけど起きてくる、というのが高齢化の問題なんです。これは、年齢を生まれてから死ぬまで、一応横軸には80年と書いてありますけど、それとその時の能力のおおよその程度を線でひいております。生まれた瞬間は能力はゼロであります。10代の後半になると大人と同一ということで、15歳から大体54歳まで、しばらく前まではここが労働力人口と思われていました。統計的には15歳から64歳までが労働力人口なんですけど肉体労働が平気だというのは15歳から54歳までだと思われておりまして、ちょうどその線のところだけが、その横にひいたこれまでの要求水準という横軸の上に出ています。通勤電車に揉まれても平気だという世代が15歳から54歳と申し上げればおおよそ当たっていると思います。今、公務員の定年は60歳となっていますが、しばらく前は定年制がなくて、早い時には50代前半で追い出すということになっていたわけです。その頃までが現役ということですが、それを超えても我々は瞬時にしてらリタイアするわけではない。65歳の前後で高齢者とか言いますけど、そこで急に変わるわけでもない。緩やかに能力は落ちていきますけど、一夜にして高齢者と非高齢者が切り替わるわけではないのです。御覧のように70代、80歳くらいまでは緩やかに落ちていくだろうと。落ちたところをちゃんと支えてくれるか、くれないかが問題でありまして、我々が作っているもの、大体それがデザインしたものと考えますと、それが我々の暮らし、活動を支えてくれれば問題はなくなる。ですから、今考えるべき水準ということで、下に点線で引いてございますが、ここにユーザー、利用者に要求する水準のレベルを下げようということ、これを前提として考えようと言うこと、これが基本的には、ユニバーサルデザインを分かりやすく考えたときの言い方です。すべての人と言ったときに、0歳の子供からすごく体力の衰えた100歳の高齢者の方まで全員をカバーできるかどうかは分かりません。ただ少なくとも、小学校に入った頃から、80,90代で特段障害がたくさん出ているというのでなければ普通に暮らしていると思っている高齢者が排除されてはならない。少なくともそれをカバーしていなければ、すべての人ため「アヘ全く言えないということでございます。

 先ほどの資料に書いてありますので、ちょっと駆け足で。ユニバーサルデザインの7原則というのがあって、@だれにでも公平にということ、A使う上での自由度、B使い方が簡単であること、C必要な情報がすぐに理解できること、見て分かるということ、Dうっかりミスや危険に繋がらないデザイン、しばらく前に良く使われた、フール・プルーフ、ヘルプ・セルフということで分かりやすくて安全ということ、E無理な姿勢をとることなく少ない力でも楽に使えること、家の中で一番この原則にはずれているのは、毎日掃除をする掃除機のコンセントです。あっち差し、こっち差しということを考えますと、昔の住宅はしゃがみこまないとさせなかった、これが無理な姿勢ということです。Fアクセスしやすいスペースと大きさということで、例えば車いすが移動できないようであれば、明らかにユーザーを限定しているということでございます。私のところの研究所のホームページにPDFファイルでございますけど貼ってあります。また、PDFではなくてHTMLですと別のアドレスに用意してございます。

原則の説明はもっと長文があるわけです。

 さて、今の表現は分かりやすいだろうかということを考えますと、ちょっと説明を加えなければいけないわけです。デザイナーの人に対しては理解されるわけです。デザインしているものがうまくいっているかどうかという点でのチェックリストとしては非常に役に立ちます。でも、普通の人に7原則を今くらいを書いただけで説明してメッセージが伝わりやすいかどうか。ちょっと分かりにくいんではないか。そこで、私は、今の7原則をバラバラにして、建築とかそういうものを作るときの基本要件とかをもう一度考え直して、再整理をいたしました。そうすると、言い方を変えて良いデザインであることが重要であり、そういう言い方に変わるということを発見しました。それで、良いデザインの6要件という形に持ってまいります。まず、@安全であること。危険なものは許されない、これは皆さん合意されると思います。Aアクセシビリティ。これはカタカナのままですけど、狭い意味でのバリアフリー性能と考えていただきたい。要するに障害者を排除しているというのがすぐに分かるものというのは困るということです。B使い勝手。使えるから良いかというと、否、実は使いやすいものと使いにくいものがあって、余りていないで使いやすくないものというのはたくさんあります。これを、厳しく問いつめていけば随分変わるということで、使い勝手という言葉を使います。C価格妥当性。バリュー・フォー・マネーとか言われますけど、要するに財布の紐を緩めてくれるだけの価値がちゃんとあるのか。高すぎてあんなものとても買えないよというのでは困るわけです。たとえ性能が良くても高すぎたら誰も買ってくれない。ごく一部の人のものというのは困るわけです。D持続可能性。地球環境にやさしいか。昔はこんなこと考えなくても良かったわけです。最近になりまして、人間の文明の進歩、科学技術の進歩のためにこれを考えなければならなくなった。壊れた後、ゴミとして捨てられるんだろうか。今や捨てられない、処理するために大金を払わなければならない、それでも処理しきれずに抱え込んでいるものというのはたくさんございます。例えば、PCBは未だに抱え込んだままなわけです。E審美性。デザイナーは寝ても覚めても忘れない。これさえやればうまくいくと思っていたのは、昔々の牧歌的な時代。今は@番からD番が満たされていなければ、良いデザインは見てくれだけということになります。もう一回おさらいしますAS性@的要件の第1番目です。アクセシビリティに関しては、例えば交通バリアフリー法がこの間できましたし、建築に関しては、まだ義務にはなっておりませんけどハートビル法というのがある。情報通信機器も使えなければ駄目ということで、アクセシビリティがそろそろ法規制がかかるかも知れません。これは、そういう意味で、当たり前だよねというふうになりつつあります。使い勝手、これを少し補足しますと、最後はその人が自分にとって使いやすいかどうかを決める。利用者が選ぶという切り口でありまして、そうするとこれは実は選択肢があり得る場合が少なくないということがございます。価格妥当性は、先ほども申し上げましたけど、これは個人個人が買う買わないというのがまとまりまして、結局市場が答えを出すということです。市場が答えを出すから放っておけば良いだろうと考えると、それで済むだろうか。日本の急速な高齢化だと、実はそうではない。間に合わないというのが我が国でユニバーサルデザインという言葉で、しきりに何とか説得せざるを得ないという事態の根元でございます。持続可能性、これもじわじわと法律の網が押し寄せてきています。既に建築関係ですと、建設リサイクル法「うェござワす。建物を壊して廃材をどうするの、埋め立て処分できないよと。昔は銭湯で燃やしてくれた古い木造住宅の部材。銭湯は無くなったし、実は今や木材だけではなく新建材とか、石膏ボード、石膏ボードなんて燃せないですから、あれは無機質ですから燃えない、あれをどうするんだということ。そういう問題がございます。審美性はデザイナーの領分、だろうか。デザイナーは良いものを作ろうとしている。でも受ける側があれは美しいと言ってくれなければ、結果的にはうまくいかないということがございます。

 しばらく前までは、バリアフリーを何とかしようと言われていたわけですけど、それが何故ユニバーサルデザインになったか。これについて少し説明しようと思って、ここに書きました。要件の最初の三つ、安全性とアクセシビリティと使い勝手、少なくともこれはバリアフリーに必要です。ただし、価格妥当性はバリアフリーを議論した時に、表に出ないこともありました。それがなくては私は生きていけないと言われれば、大金がかかっても用意しなければならない場面がもちろんあります。そうしますと、お金を出してくれるところがあるからということで、価格妥当性に近づける努力がなされなかったりしました。ここのところが担保されていなければ、バリアフリーだけしか念頭にない、ユニバーサルデザインは意識していないということになります。

 そして、どうやって、達成すればいいかということになります。これは、ものによって全部話が違ってくるわけですけども、大まかに言うと、消費者商品、我々がポケットマネーで買う、その代わり寿命が短いもの、例えば文房具だとか携帯電話とか、数年で世代交代をするようなものは、一つで全員をカバーするのはたいてい無理です。その代わりに選択肢があれば良いです。私は、これが一番良いです、あるいは、あれとこれとそれを比べて、これが一番良さそうだからこれにしますというような選択肢がなければなりませんということです。現実には、選択肢がなかなか無い。携帯電話で、例えば使いやすいものというのは、しばらく前までは、NTTドコモが出している「らくらくフォン」というのしかないと言われていました。最近、「らくらくフォン2」というのが出まして、iモードが使える、字も大きい、音も使える、音というのは音声で要求するということもあるし、読み上げもできるということです。ところが、これも一つしかない。あのデザインがちょっと気に入らないから他のものにしたいと言っても、外側と中身でセットで一つしかない。そうすると、選択肢がないというのと実際には等しいわけです。これなか困る話になります。それは、ポケットマネーで買える程度のものの話なんですが、寿命が長くなる、それから、公のお金が何らかの形で絡んできますと、選べれば良いでしょうということではなかなか済まなくなります。一番極端なのはまちづくりでございまして、まちというのは一つつくって、あなたはこのまちに住めないから出て行きなさいという訳にはいかない。そのまちは、誰にでも使えるものでなければならないだろうと。そうしますと、これは、one design fit all 、一つのデザインですべて人をカバーするという言葉が生きてきます。もちろん中を見ると、私はあのルートを使う、あなたはこのルートを使うというのが、部分的には存在します。でも最終的には、選べるものが全部組み込まれていて、差別されている、区別されているのが意識されなくて済むような形でできなければならない。既にできてしまったまちを変えるのは大変だというのは、お金もかかって長持ちしているのをどうやって変えるかということなのですけど、新しく作るところは比較的やりやすい、例えばさいたま新都心などは、かなりそういう意味では努力されたと思っています。こういう形で、ユニバーサルデザインというのは達成しなければならないだろうということなんですけど、そこにたどり着かなければいけない最大の理由というのは、やっぱり多くの人にとって不都合というのは困るということでございます。そうすると、多くの人というのは誰と聞きますと、もちろん、歳をとって私が使えなくなるなんておかしいじゃないの、という一言でございます。税金で払ったもので準備されるというのが、例えば公の施設なんですね。そうすると、若いときには何の気もなしに使っていたものが、歳をとったら使えった。でも、あれを用意したお金は私の税金だというふうに考えると、当然けしからんと言う権利はあるし、義務もある。そしたら、後になって言うのではなくて、今のうちに言ったらどうと言うことになります。今の個人でお金を出すというのと、公が出すというもの、それから寿命が短い、長いということを縦軸、横軸にとり、縦軸の下が個人のもの、上が公のもの、横軸の左側が短い、右側が長いというふうにしますと、消費者製品というのは左の下にあって、それから耐久消費財、次に車、住宅、建築、まちづくりみたいなインフラストラクチャーということで、左下から右上に大体並びます。左下の方は選択肢があるのが良いと、例外もありますけど、普通はそういうことで答えが出そうだし、右上に行くにしたがって、一つで全部カバーしてくれないと困るということになります。

 では、良いデザインのものとはどんなものだろうということで、幾つかの例を挙げます。住宅、最近オフィスにも随分出ています温水洗浄便座。最近データが出てきたものは、半分以上の住宅にあるそうです。新築ではなくて既存の住宅にも入っていったということですね。快適で、その割りに値段がそこそこになってきたということです。次が段差解消の浴室ユニット。最初は新築住宅、それも戸建てから始まって、集合住宅も今はお風呂場に段差があると売れなくなりつつあります。それから、三番目がロンドンタクシー。日本では、これはつい最近までほとんど意識されていませんでした。ところが私も声を併せてワーワー喚いていたものですから、国土交通省、元の運輸省の部分が、タクシーをロンドンタクシー型、車いすでも乗り込めるものを作ろうという方向で動きつつあります。日曜日から動き出したICカード、SUICA。その前までは何を使っていたか。カードをきちんとスロットに入れなければいけなかった。あれに手際よく入れるのは、歳をとると面倒くさくなります。面倒くさくなるだけではなくて、難しくなります。ICカードはタッチする、否、近くに寄せれば実は良いということなので、考えてみれば駅員が定期券をチラッと見ればそれで終わりという時代にようやく戻る。機械の方が人間の能力に合わせるようになりつつあるということでございます。それから、建築ではもう当たり前になっている自動ドア。これも、お任せという意味では非常に便利。不都合をこちら側にしわ寄せしないということで、非常に役に立つものです。それから、建物のドア。よくよく考えたら、しばらく前まではドアノブで全部回さなければいけなかった。今は、それがレバーハンドルに変わりつつあり、これで随分楽になっているということがございます。温泉洗浄便座、こういう形ですね。段差なしの浴室ユニット、手前側が脱衣室、向こう側が洗い場ということです。水をちゃんと止めるのにこれくらいやれば大丈夫だということで、いろんな実験をしつつ試作を繰り返したということです。10年くらい前に、お風呂場に段差が無いというのはほとんど例が考えられなかったわけです。特注しなければいけなかった。今は、段がないなんて当たり前になりました。この劇的な変化に対して誉めて頂戴と言ったら、記憶の悪い人はもう、「そんなことってあったっけ」と言うくらいです。これはロンドンタクシーです。車いすでも乗り込めて、フフ潟Aランスがありますからぶつからないということです。もちろん中に入って降りても良いですし、そのまま車いすに座っていても良い、選択ができるわけです。

 では、今ユニバーサルデザイン、良いデザインと申し上げましたけど、一体世の中のものって今までどうやってできていたんだろう、どういうふうにしなくてはいけないんだろうと考えますと、否、普通のものがそもそもユニバーサルデザイン、すべての人の利用を念頭に置いて作らなくてはいけないんだよと。どうでも良いというふうに作っていて、それで使いにくいといわれて慌ててというのは困ると。そうは言っても、すべてをカバーするわけにはいかない。私はこのコンピューターを持ってきたんですけど、このブックコンピューターには普通のコンピューターにあるテンキーというのがございません。でも、データーを高速で入れたいと言ったらテンキーが必要だと。そうするとブックコンピューターにどうするかといったら、テンキーパッドをプラグインするわけです。そうすると、数字キーが瞬時にして使えるようになります。これが2段目に書いてあります改変不可というやつです。もう一つの例は携帯電話です。運転中に携帯電話を使ってはいけないというふうになったものですから、慌てて各人がマイクロホンとイヤホンがセットになったものを買うようになりました。道路交通法の改正前までは、このマイクロホヤホンは極めて高い特別のものでした。道路交通法が改正された瞬間、数百円で買えるようになりました。極めて便利なものです。これが改変不可の例です。その上に、技術による自立支援というのが書いてありますけど、改変不可程度では片が付かないものが世の中にはたくさんあります。本当はバリフリーと言ったときに、ここにエネルギーを全部投入して欲しいと我々は思っています。例えば、電動車いすというのは、我々は通常は欲しいとは思いません。今日、実は東京ビッグサイトに言って、あそこからひたすら歩いてきたのですけど、これでかなり速度の出る電動のカートがあれば楽なんだけどなとついつい思いましたけど、そういう場面以外は電動で動くものを歩く立場で必要と思わないんですけど、電動車いすを使っている方は常にそれが必要です。そうすると、それによって初めて生活が成り立つという意味で自立を支援する機器というふうになります。こういうものは、ですからユニバーサルデザインでカバーできるものもありますし、そうではない場合もあるということでございます。

 なぜこういうことに辿り着いたのかというのを、この後、スライドで説明いたします。15年前に人口が急速に高齢化するぞということで、政府が長寿社会対策大綱という政策方針を作りました。その時に、各省庁がうちはやるから予算をくれと言って、寄ってたかって予算要求したんですけど、私のおりました建設省も同じでありまして、長寿社会に向けて居住環境をどう変えるか研究するからお金をくれということで、首尾良くお金をいただいたわけです。都市でどうしよう、建築でどうしようと考えたのですが、建築の方で最大の問題だと我々が思ったのは実は住宅だったわけです。なぜかというと、住宅はその時には高齢者専用住宅と、特別養護老人ホームに入ればそれで済むと浅はかにも多くの人が思っていた。普通の人だけではなくて建築の専門家の圧倒的多数が思っていた。私は、この研究プロジェクトの委員会で、1対大勢でそれは違うという議論をずーっとやりました。5年間継続してやりました。5年間やっても、最後に説得された方はまだ小数でした。今、同じ議論をしたら高齢者専用住宅と老人ホームで済むとおっしゃる方はまずゼロだと思いますが、十数年前はそういう時代でした。そして、住宅をどう変えるか。普通の人が住んで、そのまま老いて、そのまま死ねる住宅でなくては駄目なんだよということを説得させるためには、データーで示すべきだということで、調査をしました。戸建ての2階建てで同居で住んでお高齢者にアンケートをかけまして、どういう能力をお持ちですか、家のことをどう思いますか、簡単に言えばこういうことを質問したわけです。ここに書いてある、T型というのが駆け足ができる高齢者。UーT型というのが、駆け足はもうごめんだけど杖も手すりも要らないと答えられた高齢者。UーU型というのが、杖、手すりを使っている高齢者。V型が車いす、W型が寝たきりかそれに近いという方でございます。御覧のように60代の後半では、半分くらいは、私、駆け足できるとおっしゃいます。あと半分が、駆け足はごめんだけど杖も手すりも要らないよとおっしゃいます。年齢が上がるにしたがって、実際に住んでおられる方の数が減りますし、だんだん減っていく割合は、駆け足ができる人がどんどん減るというふうになっています。80代後半になって初めて、杖、手すりを要るという人と要らないという人が半々くらいかなということになります。でも人数は随分減るわけです。こんな形ですから、結構ピンピンして住んでおられるわけですが、でも住宅の中って不便でありませんかという質問をしますと、段差がやっぱり困るというふうにおっしゃる。それも、駆け足ができるという人は全然平気だとおっし「キ?、手すりも要らないという人も、若干、段差はちょっと・・・という方が出てまいります。もちろん、杖、手すりを使われる方は段差は困ると半分くらいの方はおっしゃるわけです。そして、困るんでしたらどうしましょうということで、こうしたいですか、手すりをつけたいですかどうですかという質問をします。そうしますと、駆け足ができる人はそんなものは要らないとおっしゃる。階段の手すりも要らないとおっしゃるわけです。杖、手すりは要らないけれど階段は嫌だという人は、10〜20%の人が手すりは欲しいねと本当におっしゃる。杖、手すりが欲しいと人は、数十%、50%とかそのくらい、やっぱり手すりを付けたいとおっしゃるわけです。これは本人の意識の問題です。実はもう一つ、家の中で事故を起こしていませんかという質問をしますと、まあそこそこの人は事故を起こしています。事故を起こしている内容がどういう事故かを聞きますと、杖、手すりが欲しい人は、当然、高齢者の事故のタイプ、いわゆる平らだと思われるところで転ぶ、躓くということをやっております。階段から落ちたとかとんでもないことではなくて、普通の床で転んでおります。駆け足は嫌だけど、杖、手すりが要ら「と、人A同じような事故を起こしております。足腰は私は丈夫と思っていて、でもやっぱり転ぶんです。普通のところで転ぶ。そういうことを踏まえて、どういう住宅を作っておくべきだろうかということを考えました。歳をとっても追い出されない住宅にはどういうものが良いか。それは、最終的に、長寿社会対応住宅設計指針というものを作り上げました。それは時間がかかりまして、阪神淡路大震災の時に建設省の住宅局長から公表されたんですが、その翌年には住宅金融公庫の基準金利要件に適用されました。最低限これはやってもらわないと困るというのが、床段差を止めようということ、それから必要に応じて手すりを付ける、これは立ったり座ったりとかのバランス、片足立ちをするところでございます。ですから、家の中でいうと、玄関はあったら良いでしょう、浴室、トイレということになります。それから、ここでは介助車いすと書いてしまいましたけど、体調が落ちたりした時に、せめて何とかなるようなくらいのものがないかなということで、廊下とドアの幅をちょっと広めにしたいということでございます。長寿の住宅設計指針が出たのが平成7年でございます。それから公庫が、それを有利な金利のたフ要件オて採オたのは平成8年でございます。その下に、住宅性能表示制度、住宅の品質確保法というのが平成11年に成立しまして、性能表示制度が12年から動き出しました。ここに、高齢者等への配慮ということで、指針で議論したもののうちで、住宅のハードに関係する部分を大体組み入れました。それから今年になりまして、住宅性能表示制度というのはどちらかというと持ち家に対しての意識が強いものですから、借家はどうするんだ、高齢者は借家で困るよということで、その議論が重要になってまいりまして、高齢者の居住確保安定法ということで、むしろ借家に対してのことを考えようということで導入されました。そういう意味で言いますと、歳をとっても住める住宅というのは当たり前になったということでございます。

 床を平らにしましょうということの最初のスタートは、敷地境界、道路から自分の敷地に入る所も段差を作らないようにしようということになるわけです。ところが、御覧のように、玄関の所にゲートを作りまして階段が3段ございます。これをやると、足腰が不自由になったら、まず家の敷地の中にはいるところから問題になるわけです。 それは止めようよというのがありまして、敷地境界から緩やかなスロープにしようではないかということが、これはアドバイスでございますけどできます。ところが、設計をずーっとやってきた住宅の設計者にお願いしたときに、そこまでは緩やかなスロープになっているのですが、玄関ポーチはやっぱり階段が残ってしまった。普通、ここは図面に書かないものですから意識しないのですけど、残ってしまった。たまたま、この住宅は高齢者が住んでいたので慌てて手すりを付けました。そして、最初に使ったのは自転車通学をしていた高校生の息子。自動車にぶつけて、膝をしたたか打って、階段を上り下りするのもしんどいということで、手すりは本当は居住している高齢者のために作ったのですけど、最初に使ったのは若造だったということでございます。そこで、全部平らにできるかというと、玄関のドアの所は隙間風を止めたいですから、ちょっと段を付けたわけです。これでないと隙間がふさがらないだろうと。

 一つ前のやつは、ドアの召し合せの所は真っ黒で色が違っていますから、まあ見えると。ところが、この写真を見てください。ドアの召し合せの所は、色が同じで見えない。これはある所で見たモデル住宅なんです。私は建築の安全が専門ですから、見た瞬間にあれは躓くのが当たり前と思いまして、脇にどいて意地悪にも観察しておりました。5分もしないうちに、ちゃんと次に来てくれた人が躓いてくれました。それは知らないから躓くのだというふうに言って、自分の家で躓くのは自分が悪いかと考えますと、否、歳をとって足が上がらなくなったら躓くのは当然です。お客さんが来て躓いた時に誰の責任だと、転んだら歳をとっていれば骨を折っても当たり前だということになりますと、さあ責任は誰がとるということになります。ですから迂闊なことはしてはいけない。これぞ良いデザインの安全性に見事に反している例です。

 段を平らにしようと言っても、玄関の上がり框はとれないなということになりますと、履き物を脱ぎますから段がついていても、それなりに意味があるということを考えますと、手すりぐらい付けようねということです。この手すりを付けないと、壁が真っ黒になります。子供がいれば下の方が黒く、大人だったら上の方が黒くなります。確実になります。ですから、手すりを付ければ綺麗に保つのに役に立つということがあります。床、原則平らというルールを破るとこういうことになります。

 これは高齢者専用、シルバーマンションです。ワンルームですから狭い、畳用コーナーが要るだろうということで畳を作ったのですが、わずかこれくらいしか空けていない。明るいガラス窓の所のソファーでくつろいでいて、玄関にお客さんが来てチャイムが鳴ったら、パッと立ち上がって、突っ走ってショートカットするでしょう。そうすると畳の所で引っかかって転んで、さあどうする。私は意地悪ですから、ここの管理の人にどうしますかと言いました。その人は、嫌な顔して、実はこれより後に作った住宅は平らなんでが・・とポロッとおっしゃいました。民間のシルバーマンションだけではなくて、公のシルバーハウジングでも実は段はついていました。ただし、この場合にはドアが半間ですからショートカットはありません。でも、やっぱり不便は不便。我々が言ったのは平らにしなさいということでございます。畳と板の間を平らにするとこうなります。何となくしっくりこないなあと。例えばリビングと畳を繋げますとおかしなことになりますから、だったら畳を40pぐらい上げなさいというのがこれでございます。畳の上には正座、板の間はテーブルと椅子です。畳の間に多分布団を敷くだろうから、あそこから足ったら転がり出てきて、板の間の方に足を降ろせば、ベッドから出るのと同じように割にさらりと動けますよということで、お嫁さん、娘さん孝行になります。

 平らに作っていないというのは10年くらい前までは当たり前でございまして、これは超高層マンション、多分1億円くらいする超高層マンションです。コンクリートの床をまず平らに打って、それから仕上げをしますと、排水管、捨てるための水の配管は太くなります、これを床の上に当然置くんですね。中に入れると大変なことになりますから上に置くんですが、そうすると御覧のように段差がこのくらい出てきております。歳をとったらどうするの、こんなに使いにくい住宅はないよということでございまして、分かっていたハウスメーカー、デベロッパーもございます。これは佃島でございますけど、排水管が来るのは多分この辺ということで図面の中で当たりを付けまして、そこを全部下げた。これが下がっているところです。下がっているところを共通にして、コンクリートの型枠を使って打って、次の階作って、次の階作ってというふうにやっていけば、極めてコスト的には有効に使えているわけです。こうやって仕上げをするとほぼ平らになって、仕上げをすれば完全に平らになるということでございます。

 階段ですけど、日本の階段は急勾配ということで良く知られています。これは、江戸時代の金沢の料亭。その意識が続いてきていましたから、ハウスでも急勾配で、180度6回転という手すりなしの階段が当然のように作られました。これが使いやすい、質の良い住宅と言われたわけです。それでは駄目だというので、住宅金融公庫の高齢対応の融資誘導を導入したときには、手すり階段片側は必須ということになりました。せめて、これくらいはということです。ついでながら、その時には、階段の手すりは、建築基準法施行令では義務ではございませんでしたけど、昨年の6月からは義務になっております。だから新しい建物は、手すりがなければ×です。古い建物も、今の法律を満たしていないという意味で、既存不適格というありがたくない称号をいただくことになっています。

 これは、階段勾配を緩くした方が良いといってもなかなかできないというときには、リビングから階段を上に上げれば、まあ作れるよと、ただし、床暖房をしないと冬は寒くて仕様がないよということです。

 先ほどの写真にもトイレの手すりがありましたけど、10年くらい前は手すりの何たるかを知りませんでした。頭の中でこの手すりが使えるかどうか考えてみてください。特に縦の方。本当はこういう形でなくL字型でないと駄目です。それから、温水洗浄付きのトイレですけど、手すりを付けたわけです。それからお風呂場、先ほどのシルバーハウジング、公のものですが、リビングルームから1段上がって脱衣場、そこからお風呂場に入るのにもう一回段があります。これではいくら何でも困るよねということで、段差なしの浴室ユニットが出てまいります。お風呂でなくシャワーで良いんじゃない、海の向こうはみんなそうだよという議論できるのですが、実は難しくて、夏はべとべとになる、シャワーだけでは綺麗に落とせない、冬は全館暖房していませんから寒くて風邪を引いてしまうという問題がございます。浴室ユニットには、バスタブの中に入るために手すりを付けるというのは今や当たり前になっています。 家の中ですと台所どうするの、やっぱり調理するんですよねということで、住宅都市整備公団、今の都市基盤整備公団がシニア住宅を作った時に、キッチンキャビネットを用意いたしました。座って使えるとんですが、私は見た瞬間にこれは使えないと申し上げました。膝がぶつかるぞ、足が入らないと。都市基盤整備公団の方の返答が奮っております。右側と左側と横一線に並んでいないと美しくないとデザイナーが申したものですからと、そういうふうに言われました。美しいものを作るのがデザイナーではない、使えるものを作るのがデザイナーであると私は申し上げました。こういう形に、割と薄くしてやらないといけないということでございます。

 これは間にナイフが入っていますけど、これは台所関係で握りやすいナイフというのが世の中にはあるんだよということで、これはオクソのグッドグリップスというものです。使いにくいという人の事情に合わせますと、ちゃんとしたものが実はできます。台所包丁でも別のものがございます。それから、ガラス拭き。上から下まで一気に拭こうとしたら1本の棒より卵形の取っ手の方が楽だよというものです。

 また、家の中に戻ってまいりまして引き戸。開き戸よりは引き戸の方が使いやすいと言うんですが、鍵をかけるのにフックで回すんですけど、つまみが御覧のとおりドアの中に納めようとして、親指と人差し指でつままないと回せません。こんな巧みに使える人が、車いすをひょいひょいと使うんだろうか。それは違うだろうと、昔から使いやすさはこうしなくては駄目だよねということで、レバーを長く伸ばしたメーカー、10年前から分かっているところがある。

 後からモデル住宅を作ったところがそうでもないということで、これは、水平のレバーハンドルを空けるときとロックをするときに使い分けた例でございます。

 それから水道の蛇口。極端に使いにくかったので頭に来て、写真が入っているんですけど、デザインしたデザイナーはこれを使っていないことは明白でございます。普通はやっぱりレバーハンドルでないといけないねということです。同じ金物で十時形のインターフェイスを付けますと、右側も左側に回したくなります。それが当たり前なんですが、下が同じだと、当然のことながらレバーを引くというのは右回しになります。ですから、この右側の蛇口は右に回さないと水が出てまいりません。これを見つけて使ったときには非常に不愉快でした。

 こういうことをデザイナーがミスったりするものですから、連中の頭をトンカチで殴るにはどうするか。とりあえず歳をとったり障害が出たことをシュミレーションしたらどうかということで、インスタントシニアというのを体験させている絵でございます。この方は、不運なことに深いバスタブの中に、さあ入ってみろと驚かされているわけです。住宅に関して言えば、自分の住みたい住宅が良い住宅なんですよということで、先ほどの三つの段差なしと、手すりと、幅がある程度考えられたものということで、プラスαで使いやすさを目指した設備とか、住まい手に合わせられる仕掛けというのが必要になってくるだろうと思うわけです。

 まちなかに出て幾つか建築を見てまいります。電話、今は高さを変えた公衆電話というのは当たり前なんですけど、アメリカではそれに加えてテキストテレフォンということで、聴覚障害者がキーボード入力でやりとりできるというものが昔から存在しております。それから、この建物にもあるのか、自動販売機で操作部、品物等が全部真ん中の高さで片が付くものです。私は背が高いですから、物を取るのとお釣りを拾うのが非常に不愉快でございまして、こういうのがありましたら、絶対こっちで買います。

 それからトイレ。これは10年くらいの前の写真でございますが、車いす対応のマークがありますけど、左右は男性、女性用全部階段で上がらなくてはいけない。杖をついたお年寄りはさてどちらを使うだろうかということでございます。それに対して、最近みんなのトイレということで、だれでも自分の状況に応じてお使いくださいというのが出てきております。ここの車いす対応トイレもおむつ替えのテーブルが用意してございますね。

 これは、段差解消機です。デンマークのコペンハーゲン美術館で見たのですけど、私が見ていただきたいのはこの簡単さ加減です。御覧のとおり柵なんていうのは、手を突っ込んだりしようとすれば簡単に入る。これは、弁えが無くてここに手を突っ込むような子供は、保護者が放置してはいけないと。放置しても良いような自分で分かる人間が事故を起こしたときには、それはそいつの責任だという原則が貫徹されているということでございます。日本でこんなものを作ったら、喧々諤々の大騒ぎになります。新聞が書きたてますけど、それは子どもだということです。他の建物の所で、段差解消機、階段昇降機ですけど、これに車いすが乗れるかなり大きいきちんとした形になっています。御覧のとおり柵なんか何もないということです。

 それに比べますと日本は遅れていまして、これはしばらく前のある駅ですけど、ボタンを押して駅員を呼んで、駅員がコントロールボックスを開けて、そこのボタンを操作して初めて使える駅のエレベーターです。これは新橋の駅ですけど、エスカルが用意されてあって、これも呼ばないと駄目で、呼んで用意してということで、5分、10分はすぐにかかるやつです。さすがにそれでは駄目だということが時々起こりまして、これは中央線の四谷駅なんですが、地下鉄南北線が来たために乗換駅になりまして、南北線は非常にアクセシブルなものですから、中央線にも付けろと言われて付けたエレベーターです。こちら側から入って、向こう側から出るという通過形のエレベーターです。トンネルがすぐにあるので中で回転できないということで、やればできるじゃないというエレベーターの例です。同じくやればできるじゃないというエレベーターの例が、近鉄の新田辺駅にありまして、90度回って方向を変えて出ていく。プラットホームと改札階がレイアウトが違ってそういうふうにしなきゃいけないというと、こういうエレベーターになります。うちの研究所でたまたま住宅用でこれと同じものを開発しました。プラットホーっかく行ったって、まだ段差があって駅員さんの手伝いが必要なんですけど、まだ首都圏は良いんです。地方の、これ福井の駅ですけが、京都から乗った特急ですけど、乗るときは平ら、降りるときは何10pというのが実態でございます。ですから、交通バリアフリー法で、努力義務でやらなくてはいけないことは山のようにあるという実例でございます。

 まちなかでは、本当は路面電車でもう少しやったら良いんではないか。路面電車だと、プラットホームを少しずつ上げていけばちゃんと乗れるよねということで、東京ですと都電の荒川線が唯一残っています。あそこは平らになっています。普通の路面電車ですとまだこんなに段差がついています。

 バスも交通バリアフリー法のお陰で、最近はノンステップバスがかなり用意されるようになってきた。東京都は全部ノンステップバスを注文するそうです。これは金沢のまちなかを走っているフラットバスというミニバスですけど、この平らにする板は実は手動でございます。ついでながら、アーケードの中を走っている面白いバスです。 これは、先ほどのロンドンタクシーです。自分で運転をしようと思ったら車いすリフトを付けるというのも一つの手でございます。

 これがユニバーサルデザインの父・ロンメイスです。

 車いすを使うほどではないけど、長時間を歩けないという方のために、電動カート、三輪車を用意する商店街が所々で出てきております。来たらお貸しするというのですが、同じ商店街にあるデパートは来るなと言っております。風除け室があって、表の扉も中の扉も押して開く重たい扉です。足腰が弱ったお年寄りはもはや客ではないと、このデパートはメッセージを送っているわけです。これだったら中心市街地に客が来なくなるのは当たり前ということです。

 視覚障害者誘導ブロック、これは建築家がデザインしたものでして、どこにブロックが敷いてあるか分からないと思います。これも建物の中なんですけど、極力同じ色にしようとした努力が見えます。これは弱視の人にとっては全く役に立たないです。 同じく色が同じ、おまけに階段の段板がカーブしていて、向こう側が明るくて眩しくて、段がそもそも誰にも見えないというすごい設計の階段です。あと、事故の問題で1段の段差。先ほども申し上げましたけど、写真では非常に写りが悪くて見えないんですが、ここに黄色い注意警告があります。実は影になったワンステップぐらいいったところが1段、段がついていまして、転びます。名誉教授がたくさんここに訪れるということで、会合のあるときには守衛さんが立ちます。それほどひどくなくともデパートのトイレだと思いますが、段差を付けてしまった。テープを貼って、危険という警告の紙をあちこちべたべた貼って、こんなみっともないことやりたくないよという話です。紙が貼れないので、仕方がないから物理的にブロックした例です。さすがにこれだけピッチを狭くしてバーを建てれば、よそ見しても落っこちないだろう、よそ見したらバーにぶつかるという例で

 設計者のミスというのは結構世の中にあります。これは10数年前に撮った写真です。ちょっと見えにくいので読みますけど、御年配の方、お子様は階段を御利用ください。お子様は危険ですので・・・・。と書いてあります。そこそこ楽だからエスカレーターというのがあるのに、一番それでメリットを受けそうな高齢者を蹴飛ばすということは、客としては全く見ていないということでございます。今、こんなことを書いたらはり倒されます。可処分所得は高齢者が一番多いんですから。これはその対極にございまして、車いす対応のエレベーター、トイレございます。どうぞ必要ならお使いください。と書いてあり、これは仙台の青葉通りです。ただし、私が今まで見た限り、これ一つしかありません。日本中で他で見たことありません。郊外のショッピングセンターは、お客さんどうぞおいでくださいということで、ハートビル法準拠と言っています。

 視覚障害者は全盲の人だけではありません、弱視の人の方がずっと多いということで、これニューヨークのライトハウスという視覚障害者団体の建物なんですけども、非常に大きな分かりやすいサインになっております。地図は触知図、階段も弱視者用に枠を分かりやすい色で塗ってございます。向こう側のトイレも、別のマーク、男性用の大きな三角形のマークがついていますけど、やはり同じような形で綺麗に切り分けられておりまして、視覚障害というのがどういうことかをよくよく分かったデザイナーがやったデザインでございます。

 階段というのは、最近はエレベーターが普通ですから、階段を使う時というのは滅多にない。隣の階に行く時とか、あるいは火事だからエレベーターを使わずに階段で降りてくれという時にしか使わないんですが、この写真を見ていただきますと、防火扉の閉まるところの床を緑色に塗ってございまして、ここはドアが回ってくるから気をつけてくださいということが非常にメッセージとして伝わるわけです。そして、手すりがちゃんとついている。ところが、この階段の図を見ていただきたい。同じ建物の1階、2階の所なんですが、ここに斜めにあります。階高が高いので階段の段数が足りないから無理矢理継ぎ足してイレギュラーになっています。もう一つここを見てください。扉が閉まるという所が、階段の段板に踏み込んでいます。この方が寄りかかっている所が実は手すりなんですけど、どいてもらうとこうなりまして、手すりを見つけた瞬間にはあなたはもう真っ逆さまに階段の踏み板を踏み外しているということになります。これで非常階段の役目を果たすでしょうかということです。これは当たり前の設計です。では、どういうふうにすれば良いか。それはもう、降りるのを止めろということ、あるいは、他の人がど降りている間に私が降りない方が安全だという場合には、階段の踊り場で待つというのも一つのやり方でございます。そうすると、車いす2台分ぐらいの場所を用意してそこで待っているというのが一つのアイディアとしてございまして、実はアメリカのADA、アクセシビリティガイドラインでは新築の建物ではこうしろというのが一つの目安になっております。スプリンクラーがあれば要らないと言っていますけど、スプリンクラーは万能ではないので、誰がそれを要らないと言ったのか、そこに謎があると言われています。以上で、用意したスライドは全部終わりました。駆け足になりましたけど、出来の悪いデザインというのも結構間あったと思います。ああいうものは駄目だとみなさんにはっきり言ってもらいたいというのが私のお願いです。以上です。


質疑応答

Q1 障害者協議会の者です。この建物の身障者用のお手洗いの話を先生がされましたが、私行きましたら、車いすに乗って鍵がやっと届く位置なんですよね。こういったものは高さとかの決まりがあると思うんですが、なぜここはそんなに極端になったのか。先生には聞いても分からないと思うんですが、どうしてこうなったのか推測いただければと思います。

A1 最後にも言及しましたアメリカのADAのアクセシビリティガイドラインには、ある程度の範囲の中にいろんな操作物は押さえてくださいというのがあります。大体1メートル前後、80pか90pからできれば120pくらいにしてくださいというふうに言われております。多分ここのはそれより高いですね。多分、図面を書いた人がミスったのだと思います。長寿社会対応住宅設計指針では、住宅の中のいろいろな操作物をということを書いたときに、コンセントを最低で下の方で45pくらいに上げてくださいということにした。そうでないと15p〜20pなんですけど、あれは困るから45pくらいに上げてくれと。45pというのは多分車いすでかろうじて手に届くくらいだと思います。普通の人でちょっと腰をかがめるくらいでさせる場所ですね。上も120p〜125pくらいに押さえてくださいと書いてあります。ただ公庫の融資基準だとかになりますと、そんなところまでいちいちチェックできませんので、要点の数カ所だけがそれが無くては駄目よということになっていまして、あとは推奨で、まあデザイナーならこんなこと忘れるわけないだろうと考えているわけです。実際には、往々にして忘れるわけですからここの高さも、多分自分で車いすを使って測ったんだけど、あまりに元気な人だからシュっと手が伸びたのか、そういう問題があろうかと思います。本来はそれはあるべきではないと私は思います。 


Q2 トイレに関してもう1点伺います。ベビーベッドは常設されているんですけど、最近は介助用のベッド、大人が使えるベッドが必要だと思います。最近はデパートなどでは時々見かけるんですけど、まだ余り普及していないような気がします。もう一つは、視覚障害者の方、全盲の方で公共のトイレを利用する場合、男性用、女性用というのがまちまちだと思うんです。右側が男性用、左側が女性用というふうに統一してあげれば、すぐにどっちに行けば良いかが分かると思うんですけど、そういう点が今後どうなっていくのか、先生のお考えを伺いたいと思います。

A2 最初のベビーベッドだけではなくて、大人用、ある意味で休憩したりというのも含めて、確かに少しずつ出てきています。ただ、もちろんベビーベッドに比べれば面積が要るということですので、最初から意識されていないと後からはできないということがございます。ただ、特に改修したいというときには、ではということで出てきているものがありますから、やっぱり必要だという声が出てくる、あるいは現実にまちなかに出ていってその需要があるということをみんなが認識するようになれば、当然それが設計要件、改修の時の条件に盛り込まれると思うので、やっぱりここには無いと困るよという場所には、作ってくださいとお願いしていくというのが一つの手かと思います。
 それから、トイレの右が男性、左が女性、あるいはその逆というのを決めるのは、実に難しいです。図面を書くときに自由度があればそれはそれで良いんですけど、なかなかそれが取れない場合があったりするし、それから、多分ですね、これはデザイナーとクライアント、施主さんの意識の問題だと思うんですけど、やっぱり入るのが見えない方がいい、そういう意識でそれが条件だというふうに言われますと、こっちから来るとこういう組み合わせでないといけないし、その逆だとその鏡対象になるわけですからその逆になるわけですよね。ですからその辺は非常に難しいだろうと思います。ですから、男性トイレと女性トイレを分かりやすくするということは、全体を考えてもう少し見なければいけないんだろうと思いますけど、現段階ではやっぱりなかなか統一というのは無理だろうと思います。


Q3 清水建設の者ですけど、例えば日本建築学会でも結構なんですけど、学会としてのこういうユニバーサルデザインへの取組というのは現在どういう感じになっておりますでしょうか。

A3 私も加わっている学会というのはそんなに多くはないんですけど、一番ユニバーサルデザインというかこの関係に最も深く入っているのは、たぶん福祉のまちづくり学会だろうと思います、これは、阪神淡路大震災の後、その時の問題となった、障害者が一番しわ寄せを受けたわけですけども、高齢者もしわ寄せを受けたし、普通の人だって思いもかけないところで随分不便を被った。その被った原因が実はデザインの思いこみ。若くて健康な人間ばかりだと思っているところにそもそも原因があるということがあって、それに対して変えていこうという意識をみんなが強く持ったので、作り上げた学会なんですけども、全部の分野、学際的にすべての分野の人間が来て議論しようということで、最初は福利のまちづくり研究会と言っていましたけど、この間、その名前を福祉のまちづくり学会と変えたんですが、それがございます。これは、建築も土木も、福祉系、リハビリテーション工学、医学、経済学、社会福祉すべてをカバーしようということで、どちらかと言えば見えやすいということで、やはり土木、建築がかなりいろんな形で表には出ておりますけど、中で複数の分野が意見の交換をして、知恵を出しあってというこ指しております。
 建築に関しては、昔からのバリアフリーでずっと議論していたというその続きがございますので、それはあるんですが、ユニバーサルデザインについては、何しろ結果として良いものがきるかどうかというのが最後の勝負なので、なかなかこれは自身があるというデザイナーにかかりますとアドバイスを聞かないという問題点がありまして、実はミスっているということが良くございます。
 元々の専門学会では、例えば建築学会ならその学会の中で、リハビリテーション工学会ならその学会の中でという形で、それぞれの所に少しずつユニバーサルデザインをキーワードにして議論をしているグループがあると、あるいは大会の発表のセッションがあるという形でございまして、そういう意味で、全体としてユニバーサルデザイン学会というものはございません。ただ議論は昔に比べれば随分増えていますし、それぞれの分野で出て来つつあるというのは事実です。


Q4 身障者用トイレについてですが、便器に座った位置に小さな手洗いを付けて欲しいと思うんです。最近、時々そういうものを見かけるんですが、あっても遠いというのがある。私たち足の悪いものにとって、手を汚したからといってすぐに洗面器まで行くことはできない。そういうことで、便座から手を伸ばして届く位置に手洗いを付けてもらえればありがたい。
 それから、手すりがみんな付いているがその高さが問題である。今はU字型の手すりが非常に多いのだけど、人によってその位置で力が入る人と、力が入らなくて立ち上がれない人も結構いると思うんです。私も、前はどんな位置でも立ち上がれたのだが、最近は手すりの位置によって苦労することが結構あるんです。縦の手すりも付けていただくと、どの位置でも掴むことができる。水平なのは決まった位置でないと利用できないので、先ほどもありましたけど、90度に曲がった手すりとかが良いと思いますので、建築関係の人が多いと思いますのでお話させてもらいました。
 
A4 トイレの手洗いということで言えば、最近、人工肛門対応のオストメイトトイレというのが少し増えてきており、それは割と近くにセットされているようです。ただ、この需要が顕在化したのが比較的最近なのものですから、例えば池袋に一つあるとか、新宿にあるとかで、まだ数えられるくらいのものです。デパートなどは比較的備えられているようですけど。多分、需要があるんだということがもう少し見えてくれば、対応が良くなるんだろうなと思っています。
 それから、手すりの横の位置に関しては、実は一番難しい問題なんです。なぜかというと、実は上下関係の寸法というのは、座った時の肩の位置で決まるわけですよね。そうすると、そこでの許容範囲というのは相対的には非常に狭いんです。まず、簡単な話から申し上げますと、例えば、キッチンの台の高さを何pにしたら良いかということでは、私は90p位ないと低すぎる。我が家の大人、身長150pない妻の母親と身長160pくらいの妻、180p弱の私と3人いるわけです。そうすると、キッチンの高さは80pから90p、私の妻は90pでも平気なんですけど、母親がいるから85pに引きずり降ろされたんです。私は皿を洗うと腰が痛くなるわけです。それはなぜかというと、ある作業の位置というのは、使いやすい位置というのは実は幅が非常に狭いということです。それよりも、ちょっと低いと非常に不都合だということがあるわけです。手すりの高さも正にそうで、しかも座った位置からの相対関係となるので、もっと幅が狭くなるんですね。それはどういうことを表すかというと、一つでみんなを満足させることは無理だということです。ですから、例えば、高さを変えたトイレがいろんな階にあって、そのあるトイレに行ったときに分かるようになっていると非常に望ましいということになります。トイレに関して言えば、右勝手と左勝手も人によってはあるわけですし、それから手すりがずっと長い横のバーが良い場合もあるし、否、立った方が良いという人もいるわけです。その辺のバラエティがあるということについて、今まで余り意識されずに、とにかく建物には一つか二つ車いす対応のトイレを付けるということでやられていた。それはもう古いというか、それではもう間に合わないという状況になってきた。まちなかを歩いて、あったらそっちを使いたいなと思うバラエティがもの凄く増えているわけです。設計する側、供給する側がそれを意識していないという根本的な問題があると思います。トイレに関しては、私はまだ一度も参加していませんけど、日本トイレ協会というのがあってずっと議論されています。ですからそこで蓄積されているわけですけど、そこでの蓄積がすべての設計者にフィードバックされているかというと、とんでもないというのが実態です。そこの橋渡しをどうしたら良いかというのは非常に難しいと思います。


Q5 私は難聴者・中途失聴者協会の者です。ユニバーサルデザインということですので、耳の遠い人たちも住みやすい住宅が欲しいということなんですね。例えば人が来てチャイムが鳴っても聞こえない。そこで、せめてフラッシュなどにより来客があったらすぐに分かるようにして欲しいこととか、ニュースがさっぱり分からないということでテレビに字幕を付けて欲しいとか、あるいはIT社会ですからパソコンなども欲しい、ところが高価でなかなか買えないというのがあるんですね。ただいまの話は、ハートビル法の中に耳の聞こえない人への何らかの対応が載っていないというのが問題でありまして、そこら辺をさらに一歩進めて対応していただきたい。

A5 ハートビル法は建築基準法で規定していることとほぼ同じようなことを別の形でアクセシビリティ、バリアフリーとして作ろうとしたわけです。建築基準法で決められないものは決められないというのが、他との関係で制約条件のようでして、そういう意味で情報関係は建築基準法で押さえていないので駄目だということだったようなんです。ただ、法律は法律だけど、設計する場合にはこうした方が良いよということで設計標準というアドバイスがあるわけです。これに則らなくても罰はないけど、あった方が良い、頭の良い、手際の良い設計だろうと。これに、聴覚障害の対応とか、視覚障害の対応とかを少しずつ折り込もうとしているわけです。実は、レジュメの頭の方に書いてありますが、ハートビル法の見直しというのがありまして、昨年から今年のはじめにかけて委員会をやって、少し踏み込んだことをやるべきだということで、渋っていた業界もあるんですが、一応その方向には踏み出した。それに併せて、設計標準というのも、ハートビル法ができてから数年経っていますから、今だったらこれくらいのことができるのではないかということで、今聞いています。設計標準のワーキングという形で、私もそれに加わるのですが、エレベーター協会の方から、エレベーターで何ができるのか、今決まっていることと実際にできそうなこと、あるいは無理難題で違うやり方の方が良いのではないかということについてヒアリングを行いました。それ以外に、聴覚障害者の方、視覚障害者の方からもお話を聞こうということになっております。先ほどお話しました、ADAのアクセシビリティガイドラインでは、ホテルの客室では、非常時にサイレン、フラッシュ、場合によってはバイブレーターなど、非常事態を知らせるものを用意しようと、そして、アメリカの場合にはそれがパッケージになった、要するに機器がすべて入ったカバンがありまして、必要に応じてお客さんの部屋に持って行ってそれを差し込むという形になっております。同じ仕組みはやろうと思えば、日本の住宅でもホテルでも簡単にできないわけではなかろうと。ただ需要が今のところあまり顕在化していない。顕在化しているのかしていないのかもよく分かっていないというのが本音だと思います。必要だということであれば議論できますし、たぶん火災警報が音とストロボというのは割合と簡単にできるはずです。そこから出発点かなと思っています。
 それから、情報のことで言えば、コンピューターの値段が安くならないのは、性能が高くなったものを同じ値段で出しているということです。日本で非常に致命的なのは、日本語を使うことでアルファベットよりCPUに要求される性能が高いんです。要するに、ローマ字で入力して漢字かな文字に変換しているわけですから、すごく高い能力が要求されます。ただアルファベットをたたき込むだけですと、もの凄く遅いコンピューターでも全然問題なくやれちゃうんです。その問題があって、高い性能のものを出して、それが高くなったからコンピューターのプログラムもどんどん高性能になって、早いコンピューターを前提にしてしまうというある意味で悪循環がございます。どっちか、特にプログラムが止まってくれればCPUはある程度の能力で大体カバーできるんですけど、現実にはそうではなく、両方がおっかけっこをしているという問題があります。
 それから、字幕に関してはそういう早いコンピューターでさえ、音声を聞き取って漢字・かな混じりで入力するというのはかなり時間がかかると言うことです。英語は、聞き取って文字に変えていくというのはかなり完璧に近づいているんですけど、日本語はもう一回やらなければならない仕事、しかも非常に重たい仕事がありますのでなかなか難しい。ですからもう少しお待ちいただかないと本当の意味ではできない。字幕放送は、著作権法の規定で勝手に字幕に入れるな、それは著作権の侵害だということで議論がされていたんですけど、昨年でしたか、著作権法が変わって、それについては著作権の侵害にならないということが明言されました。ですから、字幕は導入することはできるんですけど、いずれにしても今は、人間が耳で聞いてそれを入力しなければならないので大変でああります。NHKは増えているけれど民法は惨たんたる状況です。これはしばらく時間がかかると思います。でも着実にその方向には進んでおります。


Q6 私は建築会社の者ですが、持続可能性の社会の可能性に対してユニバーサルデザインということで、モジュール、尺モジュールですとか、我々住宅会社ではそれを中心にやっていますけど、先生みたいに背の高い人とかがこれから高齢社会になっていくときに、ユニバーサルとしてはモジュールのあり方が問題でないか。建築材もモジュールが多いと無駄が出たりする。そういった点で、モジュールを統一するような具体的な動きというのはあるのでしょうか。


A6 数年前に建材産業協会でそのモジュールも含めて議論がチラッとあったんです。ところが、既に建っている住宅は尺モジュールであり、それを改修したりするときに無駄のでない寸法を考えるとやっぱりそれは尺モジュールの材料であろうということで、メートルにしたら大損、もの凄くゴミが出ると、その点を踏まえると尺モジュールを止めてメートルにするというわけにはいかないねということで話が止まってしまいました。実は、世の中で尺モジュールでなく住宅を作っているところもございます。そこは、かなり大きなところですと、自分で寸法を指定してメーカの工場で作らせることができるので、ゴミになる部分が減っているわけです。それから、よく考えると、尺モジュールというのは、日本は芯芯で決めていますから、3尺の材料を持ってきたとしても3尺の間口にベタッとはめ込むとなると両側を捨てているんですね。ですから、捨てるものがゼロではない。ということは逆に言えば、3尺では駄目だからモジュールを広げて、通路は1,050にしようとか、1,200からやろうというふうに考えたときには、結局材料を2枚の中から使ったりするわけですけど、いずれにしてもそれは昔からやってきていることであって、モジュールは3尺であっても、3.5だとか4とか、あるいは6のところからこちらに収納を付けてこちら側が通路空間プラスαにするとか、やり方があるわけです。それは設計者が設計の基本的考え方を変えればいいと。要するに、この空間には絶対この寸法が要るということで切り取っていきますと、残りの所で調整すればいずれにせしても関係ないんですね。それは確かに全部が1メートル、2メートルの平面だけでなく立面も作られれば、1メートル、2メートルの材料だけで済むんですけど、高さ方向というのは実はそうではないんですね。だから、やっぱり駄目といえば駄目なんです。もう、あまりその辺は気にしない方が良いと思います。逆にちゃんとした形で必要な空間を取っていくということを優先させる方が私は良いと思います。これは実は何年か前に、海の向こうで建築の設計をやっている人と一緒に高齢者専用住宅を見せてもらった時に、ここはモジュールをどうしていますかと設計者が質問したら、あんなものはもう止めてしまったという言い方をしたわ。要するに、モジュールに合わせて空間を取るのではなくて、必要なところは最初に寸法が取られる、そして最低それを前提として、もう少し広げておいた方が材料がうまくいくとか、他の使い道と上手く組み合わせられるというのであったら、手際よく材料を使うということだと思います。今までそのように考えたことがなくて、成り行きでずっと作ってきた。そこの発想の転換がまず必要なんだろうと私は思っています。


Q7 先ほどのお話の中で住宅金融公庫のバリアフリーの住宅の基準が三つくらいあったと思うんですけど、その中で車いすが介助形の車いすを基本としていたかと思うんですが、自走式の車いすの方が当然幅が広いわけなのに、何故介助形の車いすが基準になっているのでしょうか。

A7 自走式の車いすの幅の方が必ずしも広いとは言えません。まちなかであちこちを精力的に動き回っておられるような方の車いすというのはスポーツ形で小さかったりするわけです。ですから、車いすはどれが小さい、どれが大きいというのは今や言えなくなってきています。特に、JISは既に寸法の規定をかなり外してしまっわけです。しばらく前は、中型とか小型とかあったわけですけどそれを外してしまいました。どれを参考にしようかということでかなり苦労したわけですが、設計を良くやっている人が、このくらいだったらすべての車いすをカバーできるかなと言う寸法を目安にこうしましょうという数字を拾いました。ですから、電動車いすの方は全然入らないわけですが、それを要求しますと、普通の住宅でこれをやらないと貸さないよという言い方が理不尽だと言って潰れてしまうというせめぎ合いのバランスでこのくらいはないと駄目だよねという数字を出したわけですから、ある意味では妥協です。ただ、普通に作っておけば体力が落ちて介助車いすになっても、あるいは事故で車いすを使うようになっても、このくらいの寸法で押さえるんだったら使えるよというのを考えたわけです。もう一つは、室内が平と、外の車いすよりコンパクトなものが使えます。勾配がないということを考えればひっくり返らないわけですね。家の中では少なくともこれだったら大丈夫というコンパクトな車いすを使って、外では当然ヘビーデューティなものでなければいけませんから、履き替えをしてくださいというお願いはできるだろうと。それをやることによって、普通に今までより少し高い水準の住宅を作って、ほぼ間違いなくそこで歳をとってずっと死ねるまで住める住宅をまず当たり前にしたいと。もちろん、自分の使っている車いすその他のことと比べ合わせて、普通のユニバーサルデザインの考え方では駄目だということが分かっていれば、それはあらかじめ自分に合わせて広げた設計をすると。作っていた住宅が駄目であっても、改修すれば大丈夫なようにちゃんと知恵を加えておいてくださればもっと良いです。頭の良い設計者はそれができますよねということを我々は内心は思っているわけです。ただ、一番のネックは敷地が狭い、そして無理矢理部屋の数をたくさん取りたいということでございまして、それを変えていただけると、狭い、広いというのは本当はそんなに議論にはならないと思っています。


Q8 道路は歩車分離になっていてバリアが多いと思います。ユニバーサルデザインと道路の関係が今後どういう方向に向かうのか教えていただきたい。

A8 ともかく利用者が主人公という発想から言えば、我々が主張するのはただ一つでございまして、自分の家を出てから目的地まで行くのに、無理がなく、無駄がなく行かせて欲しいということです。そして、移動経路を選ぶのを意識する必要がないようにして欲しいというのが究極の願いなわけです。現状は、それが全部ブツ、ブツと切れていた。一番最初は何もなかったのですけど、目的地の建物が少しずつバリアフリーということで少しずつ整備されてきた。全部ではないけど主要な所ができてきました。住宅については全く意識がなかったのが、住宅の指針等で住宅も作りました。そうすると、住宅もできて、出先もできて、その間をどうするんですかということで、さすがにそれがこらえきれなくなって交通バリアフリー法ができたわけです。新しく作る公共交通機関はこうしましょうと、既存のものも努力義務ですけどいずれやってくださいねということを言ったので、少しずつ変わっていくわけです。変わっていくのに、最初はできるところからなされていく。でも本当は、私が家から出てあそこの目的地まで行くのに自分が障害があったり、歳をとって足が弱ったから、こう回って行かなくてはいけなくて、時間もかか金もかかってとんでもないということに当然本心ではなるわけですね。ですから、普通に真っ直ぐ今まで行っていたのと同じようにできるようにしてくださいとなります。やりやすい所から最初はやられるだろうと、だけど、もう一つの条件としてみんなが望むところはやりにくくてもやってくださいということです。それは優先度の問題だと思います。その優先度の議論をして、それで整備していくというのが重要だと思います。その優先度を決めるのに、実は皆さんに議論に加わっていただきたい。交通バリアフリー法そのものには、当事者参加、ユーザー参加というのはあまり明示的ではありませんけど、現実的にはそれをやらなければ駄目ですよという方向に動いているわけです。自治体で計画を作るときにも当事者の参加を得てやってくださいということですし、当然、当事者参加が望ましいと言われております。今やそれを排除するのは事実上無理ですから、そこの場面に加わって、いろんな人が自分達の立場を議論してやっぱり優先度はこうしようと、次はあっちにするけど今回はこっちにしましょうという議論のプロセスに是非皆さんに参加していただきたい。そうすることによって、まちは早く良くなると思いますサiナ歩車分離の所をどうするんだとか、電車のプラットホームがやはり危険だからゲートをつけようとか、そういうことになろうかと思います。



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